・原作ゲームにおいてゲーム内の1時間=現実の1分とカウントすることから、本作でもおおむねそう取り扱う※
・つまり実プレイで1分かかる作業は、本作中で1時間作業として取り扱う。(ただし調合や調理などは時間停止するのもおかしいので、それ相応に調整する)
※描写の都合上どうしても、という場合は必要に応じて調整
門前宿場町にある「始まりの扉」から、始まりの台地へと上る私たち。いっつもここのあたりは土砂崩れ起こしそうで気にはなるのだけど、まぁ今のところは外壁の古代コンクリートの強度でなんとか成立しているから、これはこれでいいのだろうと納得する。
道なりに階段を上っていくと、時の神殿まで素直に到着する。
六賢者のレリーフが描かれたステンドグラスが、今日も綺麗といえば綺麗。
かつては閉ざされていたとされている奥、光の神殿への扉は既に取り払われていて、現在では全体を祭事用に使っている。
また神殿の最奥には、巨大な女神像とマスターソードを収める台があったりするのだけど、それはそれとして。
「はーい! みんな準備はおっけー?」
「あの、姉上? 勝負とは言っていましたが一体何を……」
なんだか心配そうにこっちを見るインパをスルーして、私は四人の男子諸君を見渡した。
確かそれぞれ、バクモン、ラッパス、オウトウくんだったか。髪が特徴的なのがバクモンくん、ひょろいのがオウトウくん、若干小柄なのらラッパスくんだ。
服装は特に指定しなかったら、三人ともそれぞれ個性的に色塗りしてきたリトの服を一か所ずつ着用してきてる(予算がなかったのかな? 三人でお金出し合って一式そろえはしたとか)。まぁ始まりの台地って場所によっては雪山めいているところもあるから、装備としては妥当なのかもしれない。
一方のリンリンはといえば、今日は案外まともな服装だ。ハイリアのフードに服にズボン。こちら上二つは緑色に染めて、下は黄色っぽい。
頭にかぶってる箇所を後ろに流して髪を払う。
うーん、様になってるというか非常に女子っぽい。
まぁそれはともかく。
「ゲームはそうねぇ……。名づけるなら『狩人の生活』かしら。
ルールは単純。この台地にいる生物、魔物問わず倒して、一番換金率の高かった人の優勝! 制限時間はざっくり3時間くらいかナ?」
ルールにはいくつか縛りを用意する。
まず、リンリンはマスターソード禁止。これは公平性をうたうのと同時に、彼らが納得しないだろうから。
「とりあえずインパ預かっておいて」
「わ、私ですか!?」
「審判がそれ持ってちゃ動きにくいでしょーが」
あと馬禁止。強襲しちゃうとごり押しで狩りを成立させてしまうので、生態系への影響が――主にリンリンの影響がちょっと怖い。
このあたりの旨を説明すると、三人の兵士くんたちはちょっと嫌そうな顔をした。
何か不満? と聞くと、バクモン君が頭頂部にそそり立つ赤毛をなぞる。……なんだその面白ポーズは。
「不満があるわけではないですが、それだと兵士リンクばかり制限をかけられているのでは? それを理由に結果に不服を申し立てられては叶いませんので」
「――――、すごい髪型ですね」
「うるせぇよ! 私の美学にケチつけるんじゃない!」
バクモンくんには悪いけど、こればっかりはリンリンに同意だった。
まぁ一見してリンリンってば、華奢な男の子って感じだからね。体格にしたって同じ十五歳くらいの年代にしても小柄な方だとは思う(1つ年下のインパが若干背を追い越しそうなくらいだし)。背が低くても筋肉質で太かったりすればまた別だろうけど、リンリンはそういう感じでもない。それこそ女装でもしたって気づかれないだろうって容姿だ。
そしてそんなリンリンに対しての態度としては、訓練兵としてのプライドがあるのかもしれないけど、一応確認しておこう。
「君たちって、そういえばいつからハイラル軍入りしたんだっけ? 一応確認なんだけど」
「はっ! ここ一年半にございます!」
あ、なるほどねー。
そりゃリンリンの実力知らないわけだ……。
いや、それはともかくハイラル軍入りした時期もちょっと遅いのかな? 年齢的に。
そのことを聞いてみると、実家の説得に手間取ったとか言ってるね。彼も彼で、ナイト系の一族であるらしい。そのあたりリンリンと共通している。
「人よりも遅れている分、精進している所存であります!」
「あー、まぁそうだね。がんばって?」
「はいっ!」
「それはそうと、さっきの話は却下しておくけど」
「なんと!?」「ええ!」「我々が甘く見られているでありますか?」
「いや、甘くとかじゃなくって、リンリンとあなたたちを比較するのが、そもそも間違ってるからね?」
そもそもリンリンについて伝え聞いていなかったのだろうか。まぁ、伝え聞いてたとしても実際に目にしないと信じられないところはあるかもしれないけど。
一方のリンリンはといえば、インパに退魔の剣(鞘入り)を手渡した後、どこか遠くを見ていた。相変わらず何を考えているかわからない。
「あなたたちが信じていなくても、リンクは間違いなく『退魔の剣』を抜いた剣士であるの。そしてそれ以上に、彼はあなた達より先輩剣士。そんな彼と戦う以上は、あなた達にも勝ち目を作るのが公平なゲームマスターってものでしょ。これについては反論させないわよ?」
「しかし――――」
「しかしもかかしもないの。わかる? 一応、今回のお題目としては『先輩の訓練兵の動きを学ぶ』って前提にしてあるの。これを私は、決して的外れとは考えてないからね。実際、リンクから学べることも多いとは思うし」
リンリンは決して、暴力的な実力だけの戦士というわけではない。そのあたりは、以前見ていた彼の勤務態度などから明らかだったりする。
なのでどちらかといえば、そういった振る舞いについてリンリンから学んでほしいところではあるんだけど、いきなりそれは無理だろうということで。まずは実力を示してもらおうというのが個人的な趣向だ
まぁあとは、そもそも野外演習とかはあんまりやってなさそうだしね。三人とも。
「リンリンもいいね~?」
「――――、……」
「いや、反応してってばぁ」
「まぁ、とりあえず勝てとうことだろう」
インパがそう言ってリンリンの方を見る。
と、リンリンはやっぱりしばらく逡巡するように間をおいてから頷いた。
「じゃ、準備はおっけー? レディー……、チェッキー!」
「姉上その掛け声はいかがなものかと」
リンリンは棒立ちのまま。三人はチェッキーが予想外だったのか、コミカルにずっこけていた。
※
「シ~カ~ゴ~グル~」
「……何ですかそれは? 姉上」
頭につけていたゴーグルを手に取る私に、インパが変な顔を向けてきた。むむぅ、失敬な。ちゃんとした専用器具だって、主に研究用の。まぁ用途は多岐にわたるけど。
「これはねぇ、望遠機能と顕微鏡機能を切り替えられる、お得な眼鏡的な装置だよ~? ロベリーと一緒に作ったのよ、研究とか発掘用に」
「まぁ確かに神獣発掘用にゴーグル発注とはありましたが、それを作っていたのですか……」
「そうそう。意外と重宝するよ? 今日なんかだと試合の様子をうかがえるし。インパも使う?」
「使いません。それを使っている間に姉上に逃げられたら、私の立つ瀬がありませぬ」
今日は「シ-ク」も居りませぬし、とインパはため息をついた。
むむぅ、失敬な。そんなに私ってば、だまし討ちするようなやり方で目を掻い潜ってやらかしてはいないぞ~?
やらかすなら正々堂々、正面から大いにやらかすのだ~。
「結局やらかしてるではありませぬか」
「細かいことはチェキ―チェッキー!」
「チェッキーにごまかされる要素が何一つないのですが……」
あと細かくはないのじゃ、とインパが若干怒って私の目を見た。
うぅ、怖いよ~。話題をそらさねば。
「そ、それはそうと。インパは誰が勝つと思う?」
「リンク殿でしょう」
「うわぉ即答……」
「むしろ負ける要素がどこにありますか」
「んん~、一応、彼らが勝てる穴は作っておいたんだけどね~」
今回のルールは、いろいろ解釈の余地を残した。それを正しく理解できれば、あの三人のうち誰かしら勝ち残らせることはできるだろう。
問題は、それをするには功名心とか「自分が自分が」という考えを捨てなければいけないということだ。
まぁあの性格の彼らだと、はやる気持ちを抑えきれないって点はあるかもしれない。気づくことが出来れば一つの成長だろうと、まぁそんな風に考えられる。
そして、意外と私が思っているよりさの3人も優秀だったということだ。成否はともかく。
「やってるやってる……、うーんただ知識不足」
「姉上?」
「いんや、なんでもないよ~」
ゴーグルで遠方を見る。精霊の森、カエル池付近の開けた場所。あえて木が刈り取られたその場所には、奴がいる。
岩石の巨兵、イワロック。
古の時代における石造の巨兵、それらと似たような理屈で動いていると「考えられている」、大型の魔物だ。一応魔物に分類されてるけど、本当に魔物なのかはちょっと不明。だって見た目からして、大きな岩を無理やり人型に結集したもののどこかしらに鉱石の塊があるような感じだし。
おおよそ一定周期で生まれる魔物で、いまいちこのハイラルの生態系とあってないような気がするけどそれはともかく。この魔物は基本、兵士がスリーマンセルで討伐できる最小単位の大型魔物だと判断されている。
陽動。
牽制。
そして襲撃。
大型の腕を陽動して他の仲間からそらし、弱点たる鉱石の塊へ牽制の弓を撃ち、そして倒れたところを大金物で砕くよう襲撃。
ひどくわかりやすいスリーマンセル型を学べる「教材」として、ハイラル軍はイワロックを使ってる。
ちなみに倒れると、もとになった鉱石を大量に排出するのも魅力的だ。生まれた地域によって鉱石の種類が違ったりして、希少鉱石だったりと武器の材料やら資金源になりそうなものを吐いてくれるので、中々重宝されている。
もっとも軍全体が潤う程のレベルで湧いて出来るわけじゃないので、だから教導の際に使われることが多いらしい。
わざわざ始まりの台地を指定したのは、このイワロックが分かりやすい位置にいるのを彼らが知ってるだろうからだ。
「ちゃんとスリーマンセルで倒そうってことにはなってるみたいだね……。まぁハンマーは持ってきてないみたいだけど」
兵士の剣だけでどうこうしようとしているらしい彼ら。いや、たぶんリンリンにイワロック狙いだということを悟られないようにしていたというのが大きいのだろうけど、とはいえそれでもちょっと甘い。
制限時間3時間というのは伊達ではない。さすがにハンマーなしで戦おうとすれば、アタッカーを2人くらい用意しないと厳しいと思う。
ましてや、両手剣じゃなくて、片手剣装備だというのなら。
作戦は悪くないんだけどなー。実際、イワロックを刈れば400ルピーは固い。そして3人のうち誰かしら1人だけを勝たせる作戦でいけば、まず間違いなくリンリンを出し抜ける。
仮にこれを三等分でもしたら、まずリンリンには勝てまい。
「そのあたり分かってるのかな? 三人とも」
イワロックの両腕をぎりぎりで躱して、ちょうど倒れこみを狙って矢で狙撃。基本的に「倒しやすい」とはいっても「一撃が軽い」わけじゃないので、当たり所が悪ければ普通に死ぬ。だからこそ、このあたりはどうしても慎重にやらざるを得ない。途中途中でボロボロと零れる琥珀には目もくれず、本体をまず仕留めようという意気込みは威勢が良くてよろしいのだけど。
ただ、基本的に倒すのは結構大変なんだってことを、彼らは理解してるのだろうか。
3時間なんて「あっという間に過ぎる」のだ。
そして、予想通りの結果といえば結果というか。
3人に時間切れをインパに知らせてもらいに行かせて、私はリンリンの方へと向かう。
「にっちゅ~」
「――――、……」
リンリンがどこにいるか、何をやっていたかを想起して、嗚呼こりゃ彼らダメだと私は嘆息した。
結果発表といきましょう。
リンリン、520ルピー。
彼ら三人、合計して150ルピー。
「はいほ~い。残念だったね、リンリンの勝ちだよ~」
「な――――、なぜ兵士リンク! 貴様は薬品を持っているのだ!」
彼らの作戦も悪くはなかったのだ。そう、実際彼らの実力で言えば、武装さえちゃんとしてればイワロックくらい刈れたと思う。今回、作戦が失敗してイワロックを倒しきれなくても、150ルピー分コハクを落とせたのがその証拠だ。
しいて足りないものがあったとすれば、経験値だろう。
私が設けたもう一つのルールの穴は「魔物を倒す」ことに言及はしたけど「調理、加工する」ことに言及はしなかったことだ。
「君たち、薬とかって作れる? ちゃんと」
「それは……」
「一応説明しておくけど、リンリンはアレ、ボコブリン数体と薬草、リンゴとか、あとイノシシとかを刈ってお肉をとったりしてたのよね。で、それを加工したわけ。このあたり、君たちも条件はおんなじだったけど、発想として出てきた?」
「それは……」「バクモンさん料理下手だから……」「しっ、後で殴られるだろっ」
つまるところ、野外でのサバイバル経験というか、外回りの経験値だ。訓練兵といえど、期間が長ければその分しっかりと基礎を学ぶことになる。下手に挑戦して薬の作成に失敗するより、経験勘だけでレシピがなくともそれっぽい薬を作れるのだ。
ちなみに私が迎えに行った時点で、リンリンはお鍋の前でお肉焼いたり、薬作ったりしていた。
そりゃ、勝ち目ないわなーと思いはする。
「――――3時間、退魔の剣なしだと厳しいと思ったから」
リンリンに聞けば、まぁこの通り。武器の威力について、騎士の剣ではモンスターとかを大量に刈って加工した方が量が稼げると判断したってことだ。
「………………学ぶべきところ、とはこういうことですか」
「いくら一年開けていたからって、リンリンに追い付くにはまだまだだってことだよ? この子、一応天才剣士とか言われてるけど、それと同じ年数は訓練兵やってるんだから。
自信持つのは悪いことじゃないけど、まぁ自分の実力は正確に推し量れるようになった方がいいと思うよ?」
首肯しながらもうなだれる三人。とりわけバクモンくんが一番落ち込んでるかな? 三人の中で一番、リンリン目の敵にしてたものね~。あえてツッコミはしないけど。
そして、特に謝る様子がなくともリンリンは気にしている風でもなく、自分が焼いたお肉をがつがつ噛り付いていた。
と、すっとお肉を彼らに差し向ける。
「……、何の真似だ、兵士リンク」
「――――、お昼を過ぎてるので」
「情けをかけるかっ」
「――――、量が多いので」
「いらん! 施しなど受けぬ!」「ちっ」「反省会しましょう、バクモンさん」
無表情のままのリンリンに反発するように、彼らはその場を後にする。鍋の周りに向かってるので、そのまま彼らも狩りとかして食事、あと今言ってた通りに反省会するつもりなんだろう。つるんでるだけあって仲は良いみたいだ。
それを、お肉を手に持ったまま無表情に眺めるリンリン。
相変わらず何考えてるかわからないなー……。
「…………傷口に塩を塗ることになるから、今は無理だ」
そして、そんなことを言いながらリンリンのお肉を手に取る我が妹。
……あら? 心無し表情がちょっと優し気な感じがするのはなんでだろう。
「――――、…………」
「今は止めておいてやれ。そうだな……。『仲良くなりたい』のなら、いずれ気持ちは伝わるだろう」
「――――、……」
手を払うと、リンリンは両手を重ねて笛みたいにして、何かの曲を吹いた。
曲調になんとなく時の勇者時代の名残のようなものを感じる、気がする。
そして、それをインパはどこか物悲しそうにみている。
「――――♪」
なんだかその光景が妙にしっくり来すぎてる気がして、私は、景品にしていたデートの話を持ち出すタイミングを逸してしまった。
ちなみに。
後日このゲームのとき、リンリンの方を見ていたインパから「ボコブリンに盾サーフィンを仕掛けて空中に舞い上がった」なるリンリンの謎挙動を聞くことになるのだけど、それはまた別な話。
【独自設定補完】
「ポーチについて」
・本作において、ポーチは一部のキャラクターのみが所持、継承しているものとする
・またポーチの取り扱いについては、原作ゲームに準じるものとする
【解釈元ネタ】
・ど う 考 え て も 物 理 的 に お か し い た め。きっと古代シーカー族驚異のメカニズムがそこにある
・またポーチを全登場人物が所持しているとすると、作中の流通とかパワーバランスがおかしなことになるので、リンクのポーチのようなものは特殊な取り扱いと考える