魔法少女リリカル未婚の母(シングルマザー)   作:那智ブラック

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割と遅くから書きはじめたら興が乗って夜更かししてます。何やってんでしょう
そんな訳で短めです


ヴィヴィオと再会。それから……

 そうしてなのはちゃんの家に辿り着いた俺。彼女は幼い頃からエース・オブ・エースとして働いているので、結構なものだ。年上の俺の方がただのアパートに住んでいるなんてちょっと恥ずかしい。

 甲斐性無しの男なのだ。俺は。

 

「それじゃ、ここまで送ってくれてありがと」

 

 ここまで車で送ってくれた境界捜査の元同僚に手を上げて挨拶する。帰りまでは悪いと言っているのだけれど、待っていてくれるらしい。ならあまり時間をかけずに終わらそうと思う。

 胸に抱いた花束は、買った時よりも少しだけボリュームダウンしていた。折角おばちゃんが見繕ってくれたのに申し訳ない。買い直す余裕もないから仕方ないが。

 甲斐性無しでもやりたい事はある。だから俺は今日の内にここに来たのだ。

 

 

 

「ヴィヴィオ、入学おめでとー!」

 

「わぁっ」

 

 と言う訳で。

 チャイムを鳴らした時、駆けてくる足音の小ささでヴィヴィオだと察して、ドアを開けたら顔いっぱいに花束が広がるようにしていた。まぁ、サプライズだ。

 しかし。俺の記憶にあるヴィヴィオよりも背が伸びていて、丁度彼女の胸辺りに差し出す形になっていた。これはこれでいいんだけど、ほんと、大きくなったなぁ。身体つきも随分と頼りない所が消えた気がする。鍛錬の成果かも知れないが。

 高町ヴィヴィオは、元気いっぱいに健やかに育っているようだ。

 

「あ、あの、タローさんですか?」

 

「うん、そう、俺タローさん」

 

 少し驚いたように、目を丸くして。反射的に花束を受け取ってヴィヴィオは一歩下がった。まだ状況が呑み込めていないようだ。

 それからようやく状況が呑み込めたヴィヴィオが最初にした事は、顔を赤らめてドアを閉める事だった。

 それから数十秒。まったく変わっていないように見えるが、肩で息をして何かをやり遂げたらしいヴィヴィオが再びドアを開ける。

 

「く、来るなら来るって言ってください! 久々なのにだらしない恰好で……」

 

「いや、そんなに今とも……」

 

「髪が乱れてたし! 今、私、部屋着だし! あ、う、もう……もう!」

 

 顔を赤くして叫ぶヴィヴィオを見て、まず納得がいった。ちょっと違うが、自分が子供の時と似てる。

 数年会っていない親しい大人に対して、自分がどれだけ『凄く』なったか見せたいのだ。自分の弱い所をみせずに強い所を見せて認められたいのだ。そういう子どもらしい感情。

 俺の場合は、というか男ならかっこよさとか強さだった。それが女の子だと身だしなみとかになるのだろう。少女が色気づく瞬間を見てしまった。なんかこう、目を細めて昔を懐かしみたい気分だ。

 

「ほんとごめん、ヴィヴィオ」

 

「電話してから来てくれたらもっとちゃんとした格好してたのにー!」

 

「サプライズしたくて」

 

「失敗です!」

 

 びしぃ、と指を突きつけられた。九歳児とはいえ女性への対応を誤ったのだ、落ち込む。

 やっぱり俺は甲斐性無しだ。

 

「……でも」

 

 俺はよほど情けない顔をしていたのか。ヴィヴィオがむっつりとした顔のままだが、花束を差し出して身を屈めたままの俺の頭を撫でた。

 

「気持ちは嬉しかったです。ありがとうございます、せんせー」

 

 そんな訳で、二年前に一年足らずの師弟関係だった俺達は、ようやく微笑みあったのだった。

 

 

 

「ヴィヴィオ、何して……っる?」

 

 そして、ヴィヴィオが中々戻ってない事にしびれを切らしたのだろう、なのはちゃんが現れた。

 久しぶりに会う彼女は、なんというか、落ち着きが増したように思う。歳を重ねた、なんて言うと失礼かもしれないけど。少女らしい格好もまだまだ似合うんだろうけども、こう、今着ているような地味な部屋着だって着こなせてる感じもするし。なんというか、本当に、うん、そうだ。

 綺麗になった。この言葉だけで事足りる。

 

「タローさん、久しぶり!」

 

「久しぶり、高町」

 

 伸びきってしまいそうになった鼻の下を引き締める。戒める。いかんいかん、気持ち悪い男になってはいけない。あくまで俺は、ヴィヴィオの先生でなのはちゃんの単なる同僚、せめてヴィヴィオの前ではそれを貫かないと。

 当のヴィヴィオはと言えば、自分の頭越しに会話が広がっているのが気に食わないようで飛ぶようになのはちゃんの傍に寄った。ほほえましい。

 

「連絡してくれれば多めにご飯作ったのに」

 

「そりゃ惜しい事しちゃった」

 

 まじでええええ手料理食えたのおおおおサプライズとか余計な事投げ捨てていれば最高だったじゃんんんん。

 なんて内心は隠す。いけないけない、久々に会ったせいで感情が暴走しがちだ。なのはちゃんにもじっと見られている気がするし。この本性暴かれたら生きていける気がしないぞ、俺。

 

「タローさん、なんかたくましくなってるね」

 

 うわああああ笑顔がまぶしいいいいい台詞にときめくうううううやめて顔がゆるんじゃうやめてえええええ。

 ふぅ、ふぅ。やばい、こいつは難敵だ。ジャングルの奥地に眠る秘法を守るガーディアンと一騎打ちした時よりも、なのはちゃんの前で平静を保つ方が難しいときた。男って馬鹿ねって言う悪女の気持ち、今なら分かる。

 息を整える。またまじまじとなのはちゃんに見られている気がする。やばい。

 

「い、いやさ、ちょっとトラブルがあって遅れちゃって。ホントはご飯前に来てさっと帰るつもりだったんだよ」

 

「でも、久しぶりに会ったんだからゆっくりしていっても……」

 

「色々あるからさ、手続きとか」

 

「そっか」

 

 ふぅ。普通に話す事が出来たぞ。

 だが、しかし。折角普通に会話出来たというのになのはちゃんの視線は俺から離れる事はない。

 

「ねぇヴィヴィオ、ちょっとタローさんと仕事の話があるの。中で待っててくれないかな」

 

 おかしい。仕事の話なんて、きまぐれに来ただけの俺とはあるはずがないのに。

 少し真剣な表情。ヴィヴィオはこちらを少し見てから、しかし何も言わずに廊下の向こう側へと消えていった。

 そしてそれを見送ってから、なのはちゃんは俺に向き直る。表情が険しい。

 

「あの、高町。仕事の話なんて」

 

「タローさん、見くびらないで」

 

 一歩。硬い声でなのはちゃんは俺へと距離を詰める。

 やばい。凄く真剣な場面なのに良い匂いがしてそれどころじゃない自分がいる。

 

「私だって戦場に出た事はあるんだよ。怪我した人がどういう身体の庇い方するか、分かるよ」

 

 す、と。彼女の、ただ綺麗なだけじゃない、意外としっかりした指が胸に振れる。避けようなんて思わないゆっくりとした動作で。

 瞬間、桃色の妄想をすべて吹き飛ばすような痛み。戦うと分かっての痛みと違って、こういういきなのには弱い。

 

「っ……」

 

「折れてはないけど、ヒビぐらい入ってるんじゃないの?」

 

「……まだ病院いってないから分からないな」

 

 観念する。

 ハイディ・E・S・イングヴァルトという少女から受けた傷は思ったよりも深かった。きっと彼女も感情の高ぶりと、魔力強化を得手としない相手に慣れていない事で手元が狂ったのだろう。それでも骨ぐらいなら魔法に頼れば結構すぐに治るんだけど。

 それでもすぐに病院に言った方が良かった事は間違いない訳で。真っ直ぐに見つめてくるなのはちゃんに対し、目を合わせる事が出来ない。

 

「どうして病院に行ってないの」

 

「……今日来ないと、意味がないと思って」

 

 ヴィヴィオが進級したのが今日だから。折角買った花が役目を果たせないのはかわいそうだから。

 そういうのは多分言い訳で、きっとヴィヴィオだけなら明日でもよくて。

 今日ここに来たのは多分、戻ってきて初めて自分から会いに行くのをなのはちゃんにしたかったから。言いたい事があるって約束を果たしに来るのは初日でありたかったから。そういう身勝手な思いが大半なのだ。

 なのはちゃんの目はいやに冷たい。それは俺の錯覚なのか、本当に彼女はそこまで怒っているのか。血の気が引く思いだ。

 

「病院行って」

 

「でも、俺、言いたい事……」

 

「行って!」

 

 多分押しのけなかったのは俺が怪我をしていたから。そうじゃなければ彼女はきっと、物理的に俺を拒絶していたんだろう。

 一歩下がったその瞬間に、なのはちゃんは扉をしめてしまう。

 

「今は絶対に話、聞かないから」

 

 扉越しの言葉は硬かった。彼女は今、どんな顔をしているんだろう。

 どんな顔をさせてしまったんだろう。

 

 

 

 元同僚に車で病院まで送ってもらった。怪我は結局、数日程度で完治するものだった。

 「男の意地ってのは女には分からんもんです。貫き通してかっこつけれなきゃ、そりゃただの男の恥ですよ」という彼の言葉が胸に突き刺さった。

 

「俺、カッコ悪ぃ……」




タローの同僚とは恋愛経験豊富の百戦錬磨、人妻から幼女まで惚れさせてみせらぁでおなじみのケヴィン・マクファーレンさん二十五歳です。誰だよ。
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