魔法少女リリカル未婚の母(シングルマザー)   作:那智ブラック

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今回は三人称となっております。物凄くどうでもいい事なのですが、俺前にやったギャルゲーでヒロイン視点の一人称が頻繁に挟まれてね! それで結局あまり楽しめなくて投げたんですよね! ギャルゲーって大体あんなもんなんですかね! まぁだからラブコメで主人公の一人称の場合、他の視点の場合は三人称にしたいんですよね読みにくかったらごめんなさい! ほんとどうでもいいな!

また、ヴィヴィオはタロー・メリアーゼのいる世界と言う事で歴史が変わっています。vividの時間軸ではありますが、vividの物語ではないという事で


閑話:少女の心

 ママは強い。

 それが高町ヴィヴィオの抱く、母への一番強い印象だった。でも同時に、それはなのはがそう見せようとしているからだというのも分かっていた。

 聖王としての微かな記憶からか、それとも特殊な生まれと環境のせいか。ヴィヴィオは一般的な同年代の子どもより聡い所があった。だからなのはが無理をしている所があるのも分かった。

 

 魔法を習いたいと言って喧嘩をしたのは早く誰の負担にもならない自分になりたかったからだ。

 そこでタロー・メリアーゼと出会った。彼へ抱く印象は母とは逆に「弱い人」だ。だが、それは決して悪い事ではない。

 タローは自分の弱い事を知っている。自分の弱い所を知って、他人に頼る事を知っている。誰かの痛みに共感する事を知っている。たまにヴィヴィオに言い負かされるほどだけれど、それを呑み込んで生きているのだ。

 ヴィヴィオの周りにいる大人は皆強い人だった。もう一人のママであるフェイトも、その他の誰だって強い信念をもって進んでいる人達。少なくともヴィヴィオが見てきたのはそういう面ばかりだった。

 だからヴィヴィオはタローといると、なんというか他とは違う安心があったのだ。この人は頑張っている、特別な何かが無くても誰かと共に生きていけるって事を教えてくれている。そう考えると、自分だって弱さを見せていいと思えるし、自分だって人並みに頑張っていけばいいと思えるのだ。

 一歩一歩、着実に。少しずつ進んでいたって、それは恥ずかしい事でも何でもないのだ。一足跳びの天才である必要なんて、どこにもない。

 

 仲直りした時から、時々なのはとヴィヴィオの間にタローの話題があがるようになった。

 なんでもない話だった。なんでもない話だったけれど、きっとそれぐらい身近だという事だ。それでもフェイトやはやてら友人について話す時とは違う、ちょっとした距離があった。気安過ぎない距離だ。

 多分なのはについても必要な距離だったのだ。母にはたくさんの大事な親友がいるけれど、親友だからこそ話しにくい事もある。ヴィヴィオだって友人のコロナやリオにむっとする事はあるけれど、そんな些細な事で喧嘩したくはないから飲み込んでしまう。大人ならそういう事がもっと沢山で、もっと大きく存在するのだろう。それを受け止められる、なんというか頼れる人が必要だったのだ。

 

 だからタローが旅立とうとしたあの日、母だって悲しむとヴィヴィオは思っていた。

 だけどなのはは、平気な顔をして、少し悪戯っぽく笑ったのだ。

 

「ヴィヴィオ、お別れは寂しいけどね、また会った時に凄く嬉しくなるんだよ。だからね、またタローさんが帰ってきた時に何を話そうかって考えておくの。どんな顔をしてくれるかな、って。そしたら寂しいのも楽しい時間になるから」

 

 やっぱりママは強い、とヴィヴィオは思った。でもこれもまた強がり半分なんだろうな、とも思った。タローがヴィヴィオの先生になってから、もう彼は生活に食い込むほど近しい友人だったから。

 この日からたまにタローが帰ってきたらどういう話をしようかと、それが親子の話題の一つになった。たまにフェイトや他のなのはの友人達も交えて、魔法を教えてもらいもしながら、そうやって過ごしていた。

 初めはちょっと寂しかったけれど、慣れると本当に楽しみになった。話したい事がたくさん出来た。伝えたい事がたくさんあった。それは切ないネガティブな思いじゃなく、わくわくするポジティブな思いだった。

 

 だからタローが帰ってきたあの日。泣いている母親を見て、ヴィヴィオはどうしていいか分からなくなってしまったのだ。

 

 

 

 やっぱりママは強い、とヴィヴィオは思う。長い間離れていた友達と喧嘩したまま離れ離れになって、それでもいつも通り振舞っているのだ。

 でも、それでも。時折表情が暗くなったり、ちょっと気がぬけていたりする。ヴィヴィオにだって分かる、空元気なだけで落ち込んでいるのだ。

 それは朝食時でも同じだった。パンを片手に、テレビを見ているようにしながらぼうっと宙を眺めるだけのなのはを見て、とうとうヴィヴィオは堪え切れなくなった。

 

「ねぇ、なのはママ」

 

「えっ、あっ、ご、ごめん。何?」

 

 明らかに焦っている。パンを取りこぼしかけて慌てる母親を見て、ヴィヴィオは思わず溜め息を吐いた。

 

「仲直り、したら? 多分タローさん、ママにそこまで怒らないよ」

 

「仲直りって……でも、タローさんもう私に会いたくないかもだし……」

 

 ママらしくない!

 そう叫びたくなるのを何とか飲み込む。明らかに、そう、なのははおかしくなっていた。おかし過ぎて逆にヴィヴィオの方が冷静になってしまう。

 

「見てたよ、タローさんから連絡あったの」

 

「う゛」

 

「会いたくないって事はないんじゃないかなぁ」

 

 食事を続けながら何とはなしに言葉を続ける。ヴィヴィオにとってはこうして食事をしながらでも出来る軽い話題のつもりだ。

 それでもなのははらしくもなく唸って悩む。

 多分本人だって理屈では分かっている、あのタロー・メリアーゼが一回のいざこざで自分を見捨てるはずはない。それに、向こうから連絡まであったのだ。きっと大丈夫。

 だが心がそれについてきていない。自分を否定してしまう気持ちがあるのだ。

 ヴィヴィオはそう言う事をきちんと理解した訳ではないが、なんとなくは分かった。謝るのは勇気のいる事だから。

 踏み出すのは、勇気のいる事だから。

 

「あのね、ママ。私、『覇王』の人と会ってみようと思うの」

 

 なのはが向き直る。ヴィヴィオは柔らかく笑い返した。

 『覇王』イングヴァルトの血統と記憶を持つ少女――彼女に会ってみないかと言う話が来たのは昨日だった。どうして昨日いきなりそんな事になったのか、彼女がどういう人なのか、ヴィヴィオは知らない。

 ただ、彼女と会わないかとナカジマ家から言われたのだ。

 

「多分ね、その人は私に会いたいんだと思う。そう思ってくれる人となら、私も会ってみたい」

 

「ヴィヴィオ……」

 

 怖いという気持ちはある。ヴィヴィオにとって『聖王』は母や色んな人を傷つけた忌まわしい記憶で、それでも自分と切り離せない因縁だから。

 それでも、それは自分の一部だから。逃げてばかりいたら、本当の自分に出会えなくなってしまう。なんとなくそんな気がするのだ。

 ビシ、とヴィヴィオはなのはを指さす。

 

「私は勇気を出します!」

 

「う、うん」

 

「だから、なのはママも勇気を出してください! ……一緒にがんばろ、ママ?」

 

 ぽかんとして。それからなのはは、気が抜けたように笑った。

 

 

 

 それから、ヴィヴィオとなのはは同じ日に出掛けた。なのははタローと会うために、そしてヴィヴィオはアインハルト・ストラトスという少女と会うために。

 ナカジマ家はナンバーズを受け入れている。その元ナンバーズの人達に連れられて、ヴィヴィオはとあるオープンカフェに訪れていた。ナンバーズの人達がいる、ナカジマ家の姉であるスバルがいる。そして、そこにその人がいた。

 

「あ、あの。こんにちは」

 

 綺麗な人だ、と。まず初めにそう思った。

 理知的な光彩異色の瞳。隙が無く、美しい佇まい。自分より少しだけ背の高い均整の取れた身体。

 圧倒されていると、彼女――アインハルトは軽く頭を下げる。

 

「はい、こんにちは。ヴィヴィオさん。アインハルト・ストラトスです」

 

 そう言われて、急いで頭を下げる。ぼうっとしてしまっていた。

 ナカジマ家の人達は何も言わない。ただ優しく、成り行きを見守っている。

 目の前のアインハルトはと言うと、頭からつま先までじっとヴィヴィオを見ていた。

 なんだか恥ずかしくなってくる。

 

「あっ、あの、私なんかそんなに見ても」

 

「あなたは」

 

 言葉を遮るように。アインハルトは呟きと共にヴィヴィオの手を取った。

 繊細に見えたその手は、硬く節が目立つ。人を殴る手だ。物を殴る手だ。自分とは違う手だ。

 

「あなたは、オリヴィエとは違うのですね」

 

 その顔は、どこか寂しそうで。こんなに周りに人がいるのに、世界にたった一人取り残されたようで。

 オリヴィエとは違う、と言われた。『聖王』ではないと。それはそうだ、ヴィヴィオはそうなろうと生きてきた訳じゃない。魔法は練習しているが、戦う事ばかり覚えてはいない。

 なら逆に、この子は『覇王』であろうと生きてきたのだろうかとヴィヴィオは思った。その失望はそのせいなのかと。

 

「アインハルトさん!」

 

 思わずその手を握り返した。驚く彼女に詰め寄る。

 

「私は、多分アインハルトさんの思う人じゃなかったのかもしれないけど、私らしく生きてて、だから、その、えっと……えっと」

 

 何を言いたいのか、纏まらない。

 でも、このすれ違いは気分が良くないと思った。何とかしなければいけないと、それだけが先行して舌が回らない。

 

「分かっています。あなたは、あなた。聖王ではありません」

 

 それでも、とアインハルトは続ける。

 

「私の中の記憶が彼女を求めているのです。彼女との決着を」

 

 記憶は、微かにだがヴィヴィオの中にもあった。本当に感覚的なもので、彼女の想いを全て理解できているとは思えないけれど。

 理屈ではないのだ。

 

「叶わないのは……分かっていました。分かっていたはずなんです。なのに……っ」

 

 言葉に嗚咽が混じり始める。そんな彼女をナンバーズの一人、ノーヴェが後ろから抱き締める。

 拳で戦う人同士、ヴィヴィオには分からないものがあるのだろう。武芸者の共感。昔の聖王にはあったかもしれないが、今のヴィヴィオにはないもの。

 それでも、目の前の少女が泣くのはいやだと思った。聖王と覇王じゃない、初めて会った同士として。

 友達になりたいと、そう思った。

 

「アインハルトさん、もう何か頼みました?」

 

「え……」

 

「ここのチーズケーキ、美味しいんですよ」

 

 座る。それでようやく皆の視線がヴィヴィオから離れた。思い思いに、ナカジマ家の人達は注文を開始する。

 目を白黒させるアインハルトもノーヴェによって椅子に座らせられる。

 

「アインハルトさんの話、聞かせてください。聖王と覇王の事でもいいし、格闘技の事でもいいし……本当に、なんでも」

 

 自分の中にある微かな記憶なのか、直感なのか。分からないが、友達になりたいという思いは止まらない。

 理由なんていらない。その思いがあれば十分なのだ。

 

「……私は、あなたの事を狙っていました」

 

「でも、違うって分かってくれた」

 

「今でも、あなたに聖王がダブっていて、きちんとあなたの事を見れている気がしません」

 

「じゃあそのお話でも。何があったって、変わりませんから」

 

 笑顔が心の底から浮かぶ。この人は、なんだか不器用だ。可愛らしい。

 

「友達になってください、アインハルトさん」

 

「……えと、考えさせて、ください」

 

 どうやらすぐにとはいかないようだけれど、一つ楽しい事が増えた。

 二人分のチーズケーキを注文して、ヴィヴィオはまた微笑んだ。

 

 

 

 それから。

 アインハルトと連絡先を交換したヴィヴィオは家路に着いた。

 

 なのははいつも通りの明るさを取り戻していた。どうやら上手くいったようだ。自宅の前で、二人は笑顔を交わした。

 

「ありがとうヴィヴィオ。なんか、もう私よりずっとちゃんとしてるね。あはは」

 

「ううん、そんな事ないよ。私もなのはママと一緒だから勇気が出たんだし」

 

 今日はいい日だ。

 多分もうなのはにとってタローは必要な存在なのだ。もしいなければ他の人に頼りもしただろうが、もうずっと頼ってしまっている。だからいなくなってしまうとちょっと寄りかかる相手がいなくなる。強い自分でいるために、余計なものを捨てるための場所がなくなってしまう。

 ヴィヴィオはそう思った。なのはママは強いけれど、人間は強いだけじゃどこかおかしくなってしまうから。どんな強い人でも、支える人がいないといけないのだ。

 

 ヴィヴィオはにやっと笑う。ちょっとだけ意地の悪い笑み。それから、食事の準備をするなのはの背に向かって言葉を投げかけた。

 

「ねぇママ。私、タローさんがパパでもいいと思うよ」

 

「えっ、えぇ!?」




スポーツ格闘魔法少女ジャナイ少女ヴィヴィオ。この物語ではタローに師事した後は手の空いたナンバーズの人達に教えてもらったりして特定の何かに寄ってはいません。ノーヴェの元でストライクアーツを磨いてるとかないです。
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