魔法少女リリカル未婚の母(シングルマザー)   作:那智ブラック

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なんか昨日捗った俺「投稿は来年にしてやると約束したな?」

どうせ次の投稿まで長引くんだからストックにしてもよかったんじゃねぇのと思う俺「そ、そうだ大佐。や、やめとk」

クリスマスに特に予定の無かった俺「あれは嘘だ」

まぁどうせノリでやってるからいいかの俺「ウワアアアアアアア」


閑話・少女のたくらみ

「なのはママってさ、結婚とか考えた事ないの?」

 

 友人のタロー・メリアーゼから、「たまたま手に入った映画のチケットがあるんだけど、自分は興味ないからヴィヴィオと一緒に行くといいよ」との連絡を受け。悪いとは思ったのだが、本当に興味がなくてチケットを無駄にするぐらいなら……と、数分の押し問答の末に了承して。

 夕飯をさらに盛り付けながら娘のヴィヴィオに言われた言葉がそれだった。

 

「んー……」

 

 結婚。

 その言葉に夢と希望を抱いていたのは何歳ぐらいまでだっただろうか。多分小学生かそこら、一般的な事だと思う。中学生になると、現実的な恋愛の問題が首をもたげ始めるから。

 しかし、そういえば、その頃も自分は恋愛なんてしていなかった。相手がいなかった訳ではないが、曖昧なままの関係で結局断ったようになってしまったのが数件あって、それからきちんと断るようにしていたのだ。

 それは何故か。考えてみればすぐに答えに辿り着く。

 

「うーんと、ね。ここに、ママのご飯があります」

 

 ヴィヴィオに向き直って、真面目くさった調子を作ってなのはは言う。

 いつも通りの夕飯は、ヴィヴィオの手によりきちんと食卓に並べられていた。喫茶店の娘として料理にはそれなりに自信がある。拘りもまた、ある。そのなのはから見ても満足のいく配膳だ。

 こういう所もきちんと女の子らしくなってきた。こんな話をするのは女の子らしくなって、色気づいてきたからなのか。思いながらも話を続ける。

 

「それから、冷蔵庫にはおやつに買ってきたプリンがあります」

 

「ほんと!?」

 

「ほんとだよ、後で食べよ。……ね、ヴィヴィオはどっちも好きだよね?」

 

 こくこく、頷くヴィヴィオに満足げに頷くなのは。

 

「でも、一緒に並べられて一緒に食べてって言われたら?」

 

「う、ちょっと嫌かも。多分ご飯に合わないよ。ご飯食べた後が良い」

 

「そうだよね。ママもそんな感じかな」

 

 恋愛とか結婚とかは素晴らしいと思う。それで幸せになった人をなのはは捻くれた目で見るつもりはない。

 なのはの歳で結婚をしている人も珍しくはない。周囲にもそんな人はいるし、そういえばなのはだってそういう話を振られない訳ではない。

 でも、まだなのはの人生はメインディッシュなのだ。デザートに移るには少し速すぎる……と、思う。

 まぁ恋愛や結婚がメインディッシュな甘党もいるのだろうが、少なくともなのはにとっては違うのだ。この生活が充実していて、達成感がある。

 

「でも、教導官のお仕事やりながら結婚してる人もいるって聞いたよ」

 

「だ、誰に聞いたの」

 

「ティアナさん! ママのお仕事の事とか、たまに聞くから」

 

 近頃大人びてきて、こういう自分から手が離れた事もよくするようになってきた。喜んでいいやら、寂しがればいいやら、だ。

 でも、確かにヴィヴィオの言う通りだ。なのはもヴィヴィオを育てると決めた時から十代後半の全盛期よりは仕事の少ない所に移してもらったし、これ以上に仕事を減らす事も出来る。主婦と仕事の両立だって無茶な事じゃない。

 なるほど、そういえばなのははメインディッシュを食べ終わる事も出来る位置にいる訳だ。

 

「んー、でもなー……さっきの例えで言えば、まだお腹いっぱいでデザートが入らないというか」

 

「食が細いねー」

 

 ほんとのご飯は人並に食べるのに。口を尖らせながら、ヴィヴィオはいただきますと手を合わせる。

 自分で作った食事は味もいつも通り、だ。自分の料理だけれども誰に謙遜する必要もない素直な感想を言うならば、普通に美味しい。美味しくて、いつもと同じ味がする。レパートリーが増えても、それをいくら駆使しても、違うレシピを作り続けるなんて非現実的だ。出来なくはないが手間はかかるし、美味しく作れるかもわからない。

 うん、そう、安定した味なんだ。納得して、なのはは一人頷いた。

 

 なら、デザートはいつもと違う味? 少なくとも、自分の料理とは違う味だ。

 

「んー……」

 

「難しい顔してるね、ママ」

 

「そうさせたのはヴィヴィオだよ、もう」

 

 お腹いっぱいでデザートが入らない――自分の言葉を反芻する。例えの通り、なのはのエネルギーは全部仕事とヴィヴィオに向いている。そりゃそれ以外にも息抜きや趣味はあるが、恋愛はそれと同じようにはやれない。

 恋愛にはきっと沢山のエネルギーが必要だ。幸せかもしれないが、気を抜いてふにゃっとやれる事じゃない。相手とちゃんと向き合って、相手の為に何かをして、相手に何かをしてもらって……それはきっと、とてつもなくエネルギーが必要な事だ。

 

「気になるなら、試しにやってみようよ。なのはママ、綺麗だから男の人もすぐ好きになるよ!」

 

「うーん……簡単に言うけど、ねぇ」

 

 出会いの場はある。管理局内で合コンがあったりするし、男性の知り合いもいるし、なんだったらお見合いでもいい。

 だがそういう事を管理局の若きエースオブエースがやるとなると、ちょっとどころではない波風が立つ。がっついてると思われるのはなんとなく嫌だし、それ以前にそういう話が広がってその気もないのにそういう空気になってしまったら最悪だ。仕事は気持ちよくやっていたい。

 

 それに、その。恋愛をするという事は、その先もあるという訳で。その先という事は、つまり。

 桃色の空想が浮かぶ前になんとか頭の中に浮かべたそれをかき消す。ちょっとそれは、自分には想像もつかない所だ。

 

「色々あるのっ、大人には」

 

「顔が赤いよ~。ちゅーするの怖いんだ、ママ!」

 

「っ、いや、えっと、ママだって、ちゅーした事ぐらいあります!」

 

 嘘だ。思いっきり嘘だ。

 唐突に口を突いて出てしまった言葉。あぁ、私って結構そういう所見得張りたいタイプだったのかな……なんて自分の新たな一面を発見しながら、脳内はフルスロットルで空回る。えっと、どういう嘘だろこれ、どう繋げればいいんだろう、いやでも今更「した事ない」とも言えないよね、えっとえっと――

 そんな混乱したなのはに、ヴィヴィオの言葉が突きつけられる。

 

「じゃあさ、ママは男の人とデートした事あるの?」

 

「あ、あるよ! 結婚してないだけで、ママだってヴィヴィオより沢山生きてるんだから」

 

 こんな事を言いながらも脳の片隅では「どこからがデートなんだろう。男の人と二人で出掛けたらデートだよね。思い出そう、学生時代には一度ぐらいそういう事があったはず、あったはず……」とか考えているが、動揺は顔に出さないように努める。思いっきり出ているが。

 ヴィヴィオがほくそ笑んでいる事に、混乱しているなのはは気付かない。こういう所はヴィヴィオの方が強かであった。

 

「じゃあさ、映画、タローさんと行って来たらいいんじゃないかな?」

 

「ふぇっ!?」

 

 予想外の所。混乱した頭を殴り飛ばされるような衝撃だ、戦闘の際の不意打ちと同じぐらい驚く。

 完全に手玉に取られていた。

 

「な、なんでタローさんなの? この流れで……」

 

「だってママ、色々あるって言ったけど、タローさんともそうなの?」

 

 言われて考える。

 自分が恋愛を考える事もしない理由は「恋愛にはエネルギーがいる事」「恋愛をする気だと広まれば人間関係が面倒臭くなるかもしれない事」、そして「その先にあるものが想像もつかないから」。我ながら、並べてみるとちょっと臆病な理由が多い。

 

 本当に恋愛をするのではなく、あくまでもお試し。恋愛をする気になれるかとか、そういう試金石だとするならば。

 彼が相手ならばそれほど普段とは変わらないし一つ目の理由はクリアだ。君の味方だからいつでも頼ってくれていいと彼は言った――些細な事だが、こういうのも頼らせてもらっているという事になるのかもしれない。

 二つ目も、タローとならばそこまで気にもされないのではないだろうか。二人きりという事はあまりないが、友人としてよくプライベートでも話す仲だ。

 となると、最後の理由だが。

 

「……ならない、よね」

 

 そういう事にはならない。なるはずがない。だってお試しなのだから。うん。

 男は狼だ、なんて言ったのは姉だったろうか、母だったろうか、もしかしたら知ったかぶりのはやてだったかもしれない。彼だってまぁ、そういう一面はあるのだろう……なのはから見る限り誠実で優しい人にしか見えないが。

 味方だ、と言った彼の事を信じたい。たとえ狼であろうとその牙は上手く隠してくれるはずだ。なのはが嫌がれば、無理やりにそういう事にはならないはず。

 

 じゃあ、もし。自分もそういう気になって、そういう雰囲気で、そういう場所だったら――

 

「ママ、なんか顔赤いよ?」

 

「なんでもない……」

 

 ぐだー、と空の食器だけが並ぶ食卓に突っ伏す。

 考えているだけなのにどっと疲れてしまった。エネルギーを使うという自説が間違っていない事が証明されてしまった訳だ。

 

「ねぇー……ヴィヴィオ……やっぱりママ、結婚なんていいよー……まだ早いよ……」

 

「だめっ! そんな事言ってたら、すぐおばさんになって、結婚してればよかった……って、思うんだよ!」

 

 それは誰から聞いたの、なんて言い返す元気もなくて。

 食器を片付ける元気もなく魂が抜けたように呻くだけだ。

 

「でもー……今更、一緒に行きたいだなんて」

 

「じゃあ、私から言っておくから!」

 

 てきぱきと、ヴィヴィオは食器を片付けながらそんな事を言う。言ったからには本当にやってしまうのだろう。

 そういえば、タローと気まずくなった時に背中を押してくれたのもヴィヴィオだった。これもタローに聞いた話だが、昔は「はやく誰にも迷惑を掛けないようになりたい」と思っていたらしいヴィヴィオも、立派に育っているように思える。

 自分が九歳の頃は、ユーノと出会ってあの波乱万丈の冒険を繰り広げていた時だ。そんな自分と、どちらがしっかりしているのかは分からないけれど。

 とりあえずこういう所はなのはよりもしっかりしている気がする。もしくは、当時の自分に似て頑固。

 

「……老いては子に従え? そんな歳でもないと思うんだけどなぁ」

 

「もー、ママどいてよー。テーブル拭けないよー」

 

「わ、待って待って! 私も手伝うから!」

 

 高町家の夜は騒々しく更けていく。

 

 

 

 高町ヴィヴィオは、何も思いつきで『結婚』なんて口に出したわけじゃない。ずっとずっと考えていた事だ。

 「私がいるだけ迷惑をかけている、ママの重荷にはなりたくない」なんて事はもう考えてはいないけれど、「だからどれだけでもママに頼るし全てを任せよう」なんて事も思ってはいない。世間一般の子どもならばそれでもいいのかもしれないが、自分は複雑な家庭なのだ。

 母子家庭で、管理局員のエースオブエースの母に聖王の娘。そしてもう一人のフェイトママ。複雑で特別である事は悪い事じゃない、でも全部が他と一緒という訳にはいかない。その他とは違う所を、ヴィヴィオはなのはに任せるだけでなく自分でも考えていきたいと思っている。

 

 迷惑になるからとママから離れるのでもなく、ママだからって全部任せきりにするのでもなく、二人で幸せになるために何が必要か考えるのだ。それがまだ子どもである自分にとって大事な事だと、ヴィヴィオは思っている。

 

 そこでヴィヴィオは考えた。母子家庭でも暮らしていけるけれど、「お父さん」を迎えるのは一つの選択肢だと。家族が増えるのは嬉しい事だし、何よりママ一人で負担している事を分け合えるようになる。

 勿論誰でもいいという訳ではない。聖王である自分を受け入れてくれて、頑張り過ぎなママを認めてくれて、そういう全部を打ち明けても一緒に居てくれるような人。

 

 そして何より、ヴィヴィオ自身が好きになれる人で、ママを愛してくれるような人。

 

――やっぱり、タローさんじゃないかなぁ?

 

 高町ヴィヴィオはほくそ笑む。何かを企む、ちょっとだけ悪い微笑み。

 父親というのはどういうものかは分からないけれど、タローがそうなるのは悪い事ではないと思う。もし悪い事ならば見込み違いだったという事で、それはそれでタローなら上手くやってくれるんじゃないかと思う。リコンとかしたってきっとタローさんはタローさんだ、と。

 

 女の子は、計算高くてずるいのだ。さっき食べたプリンの甘さを思い出しながら、ヴィヴィオはすやすやと眠りに落ちた。




女の子は、計算高くてずるいのだ(七割方ティアナ直伝)

そう言えば前回久しぶりに更新するモチベーションになったきっかけに、友人と合作したはいいが途中で上手く進まなくなって「途中だけど投げるかぁ!」てなった奴を宣伝しようと思ったというのがあります。
ちょっと作風違うし、なのはじゃなくてISだけど、まぁ駄目元でも露出増やした方が読んでくれる人は増えるかなって奴なんで、興味ない人は気にしないでくださいね!

野郎共はIS学園で「シブさ」を追い求めるようです
http://novel.syosetu.org/69164/

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