魔法少女リリカル未婚の母(シングルマザー)   作:那智ブラック

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推敲は置いてきた、ハッキリ言ってこの更新にはついてこれそうもない(前回の更新までの間を見ながら


八神さん家の事情・中

「おっ、よう来たなぁタロちゃん。まま、もうすぐ出来るから座り……え? なのはちゃんを好きって、何を今更」

 

「あぁ、タロか。すまんな、我が主が急かしたせいで……高町を? ふむ、何を今更」

 

「タロ君、いらっしゃい。お皿並べるの手伝っ……え、なのはちゃんを? 何を今更」

 

「タロか。明日も朝から子供たちが来るのでな、お前も……あーあー、聞いてたぞ。言ってやろう。何を今更」

 

 全員にバレてーら!

 ていうかタロタロと八神家の人達は俺の名前を略して言いおる……八神さんが俺の事をそう呼ぶからだが。「なんやタロって言うと犬みたいやなぁ」と言われたが、よく分からない。よく分からないので追求しない事にしている。

 

「はぁ……バレバレですか」

 

 全員に聞き終わったのは食卓につき、地球風に「いただきます」を言った後の事であった。呆れたような視線が突き刺さる。

 ほかほかと湯気を立てるシチューにスプーンを突き立てる。どうにもいけない、恨み言が口をついて出てきてしまう。

 っていうか、マジで勘弁してくれよぅ……。

 

「まぁまぁ、本人には言わんから。そっちの方が面白いしなぁ」

 

 八神さんの笑顔が眩しい。むかつく。

 食事は和やかに進んだが、俺だけが心穏やかではない。皆さんに顔をそむけながらとなってしまった。

 さて、とりあえず食事を終えてしばらく。本来の仕事(俺は別に飯を食いにここに来た訳じゃないのだ。八神さんの飯は確かに美味いが、ここまで来るほどの事じゃない)を果たす為に居間に移動する。

 目の前にいるのは八神さん。鞄に入れた書類を確認して見せる。

 

「では、これです八神さん。目を通しておいてください」

 

「なんや、タロちゃん。タメ口でええのに」

 

「いえいえ、八神さんは上司ですから」

 

 呼び捨てにするほど親近感が湧かない、とかいうネタが頭を過ったが流石に言わない。八神さんはステキな上官です。

 実際、彼女に出会ったのは六課設立前なので親近感のない口調が染みついている。六課で出会った人はティアナ繋がりで初めから気安く接しているのだが。

 

「一応確認はしましたけど、もし欠けてたら明日言ってください」

 

「はいよー……」

 

 言っている間にも八神さんは既に書類に目を落としている。

 俺がデータで情報を送らずにここに来た理由はこれだ。直接情報を把握している俺から話を聞く、それが八神さんの目的だ。書類だけでは補完しきれない細かい事柄をも掴もうとしている。

 

「今日はもう寝てくれてええから。いつもの部屋なー」

 

「了解ス」

 

 八神家は広い。家族が多いせいで間取りも小回りが利かなかったのだろう、空き部屋もあるから泊まりは楽だ……その部屋すらも綺麗に掃除されているのは八神家の家事能力の高さを窺わせる。

 これ以上居間に居ては仕事に取り掛かった八神さんはともかく、ヴィータさんなんかはなんてからかってくるか分からない。早々に寝てしまうのが吉だろう。

 

 

 ぐぅ。

 

「え、えっと……いいんですかね?」

 

 ぐぅぐぅ。

 

「あぁ、いいぞ。思う存分だ」

 

 ぐぅぐぅ。

 

「で、でもぉ……」

 

 ぐぅぐぅ。

 

「お前がやらないのなら、ほら、後ろにうずうずしている奴らがいるが?」

 

 ぐぅぐぅ。

 

「も、もう。分かりましたよ――ごめんなさい、タローさん!」

 

 ……。来た。

 目を開けると、そこには小さな身体。俺が仰向けで寝ているのにだ――つまりこの子は俺に向かって飛び上がって来ている事になる。

 高い。魔法を使わずにここまでというのは大したものだと思う。そんな事を考えながらシーツを跳ね除け、そのまま持ち上げる。

 

「わぷぇ!」

 

 それで減速――白い塊になったその子を両腕で捕まえる。小さな、女の子の身体。

 顔を出したその子をぽいと放り投げて(その子はちゃんと受け身を取った、それぐらい出来る事だろうと信頼しての事だ)、ようやっと跳ね起きる。

 

「ザフィーラさん……危ないからやめてくださいよ」

 

「まぁ固い事を言うな。子ども達もお前と『遊ぶ』のを楽しみにしていたからな」

 

 俺が初めから起きている事なんて知っているのだろう、近くの子どもを集めて道場を開いているザフィーラさんは、その子供たちを従えながら俺の部屋に突撃してきたのだ。

 彼は俺が泊まると見るや、こうやって子ども達を俺にけしかける。自分だけでは限界があるからだそうだが、流石に不意打ちだ。

 まぁ、彼の事は嫌いじゃない。

 

「さぁタロー、手合せだ。子ども達に見せてやらねばならないからな」

 

 そして、彼との殴り合いはもっと好きだ。

 

 砂浜である。

 足場は悪いがそれはお互い様。主に俺への配慮として魔法は一切使わないと決めたこの場では、ザフィーラさんも魔法で踏ん張る事は出来ない。それでも十分に戦える辺り、魔導士としてだけでなく格闘家としてもハイレベルという事だ。

 

「さて、勝負が決まったと思えば拳を止める。それでいいな?」

 

「いつも通りスね」

 

 審判がいないと危ない気はするんだが、いつもこんなんだ。でも『引き際を弁えている』と信頼されるのは嫌な気分じゃない。

 審判が居ないので始まりの合図もまた、なかった。代わりとばかりにザフィーラさんが動くと共に子ども達の息を呑む声が聞こえる。

 彼我の距離はおよそ2m。彼の長身ならばなんてことはない距離だ。一歩、一歩とその度にぐんと近づいてくる。速く、そして確かな足取り。隙があるように見えるが、下手に手を出すとこちらが跳ね飛ばされてしまう。

 しかしただ臆している訳にもいかない。狙うならばカウンターだ。両足に体重をかけどこへでも回避できるよう構える。

 

「――ふっ!」

 

 呼気と共に放たれたのは回し蹴り。胴部を狙うそれはモロに貰えばそれだけで倒されてしまうだろう。そう、距離を詰めるあの動作を隙と見て突っ込めば、小さな動きで最大限の威力を持つこれを食らってしまう。そして彼に合わせて走った場合、こちらには『心構え』の時間が短くなる。距離を測れていない軟弱な技は受けるまでもなく耐えきられてしまっていただろう。

 しかし――そんな事を考えるのも一瞬の内――『心構え』は出来ている。前へと一歩踏み出す事で打点をずらし、膝で受けた。骨の髄まで痺れるが、距離を詰める方が大切だ。俺も背が低くはないが、巨漢であるザフィーラさんとのリーチの差は圧倒的である。

 体勢を崩している内にと身体全体でぶつかる。――と、それも読まれていた。蹴り上げた足を踏ん張ると共に向こうも前に突っ込んでくる。威力が乗らない、肩口からぶつかった俺の右肩とザフィーラさんの胸が密着している状況だ。

 視線をかわすも一瞬、力で敵わない俺はここで締め等に移行されれば振り解けない。一旦距離を空け

 

「わっ、と」

 

 ようとした所で足を払われた。体勢が崩れる。

 さて、ここからの選択肢は――うん、ないな。無理をすればいくらでも方法はあるが、『勝負が決まったと思えば拳を止める』のは敗者も同じだ。ストリートでの喧嘩ならともかく、試合ならこんなもんだろう。

 いつもより短いのが不満ではあるが、仕方ない。砂浜に受け身を取りながら倒れ込む。

 

「降参、降参でーす」

 

「ふむ、存外物分かりがいいな」

 

「ま、怪我したら両方負けみたいなもんですし」

 

 ザフィーラさんの手を借りて立ち上がる。こうして手を貸されているだけでもわかる、がっしりとした筋肉にゆるぎない体幹。痛いのは嫌だが、いつかもっとちゃんと戦ってみたいとも思う。

 試合が終われば子ども達への稽古だ。とは言っても、俺は基本的に横で見るだけで、たまに遊びのように手伝うだけ。

 元々、俺の格闘技術は魔法が使えない事で舐められ過ぎないように始めて、実戦で即座に使えるかという事ばかり考えて型なんかまともに分かっていない。他人に教えられるような身分じゃないのだ、俺は。

 

「だから教えるというのに」

 

「一から習ったら今のが崩れそうで怖いんですよ」

 

 子どもの型を矯正しながらもザフィーラさんは俺に話しかけてくる。冗談めかしてはいるが、何度も勧めてくるところを見ると本気なのだろう。恐らく、俺の戦い方は彼から見て危なっかしくてしょうがないのだ。

 それでも魔法の代わりに得たこの力、非力な分だけ始末書が減るステキな拳を手放すつもりはない。これが仕事の領分を越えて振り回される原因の一つだとしても、だ。

 

 

 子ども達が帰るのは丁度日も沈む頃だ。いつもはシグナムさんがやっているらしい送り迎えの分担を今日は俺が手伝って(おっぱいでかいシグナムさんがいい~とかいうクソガキがいたので女の価値は胸だけにあらずという事を力説しておいた)、帰る頃にはまた夕飯より少し前。夜には八神さんとのミーティングがあるので早くシャワーでも済ませなければいけない。流石に汗臭い身体でいるのは失礼だろう。

 シャワー室でいや~んというお約束な事になったら気まずいので確認確認……シャマルさんは本を読んでるし、シグナムさんとヴィータさんは何やら話しながらテレビを見ている。八神さんはまだ書類を纏めている最中のはずだ。それはそれでキッツいザフィーラさんも今は犬に変身してヴィータさんの下敷きになっている。

 

「お風呂借りまーす」

 

 一声かけたのでこれで乱入もない、完璧。知り合いの裸とか見てもリスクとリターンが釣り合ってないからな……そんな事を思うあたり、俺も随分と大人になっちまったもんだぜ。

 服を脱いで風呂場に入

 

「うわわわああああ!? ま、前隠せ前えええぇぇ!」

 

 お約束キター!

 開けたその手で風呂場の戸を閉める……そこに居たのは、どうせちっちゃいからなんか隅っこにいるんだろと思ってた八神家最後の二人、ユニゾンデバイスのリィンフォースⅡとアギトである。デバイスって……風呂入るんだ……!

 そーっと扉を開き、首だけ突っ込む。風呂桶に湯を張って浸かっている二人の態度は対照的、リィンフォースは縁に両手をかけたまま俺の存在など気にせずくつろいでいて、アギトは胸元を手で隠してわなわなしている。

 

「ごめん。でも寒いから入っていい?」

 

「ダメに決まってんだろうが! 誰に断って入ってきてるんだよ!」

 

「八神家の皆さん」

 

「あ~も~あいつらはー!」

 

 八神家の皆さんも「浴槽は空いてるし大丈夫じゃね?」と思っていたんだろう。俺も別にこんなちっさいの、ヴィータさん以上にエロい目で見られない。ちなみにヴィータさんのエロい目で見られないランクは下手をするとザフィーラさん以下だ。俺はホモではないが、筋肉かっこいいしね。

 とか考えている内にもアギトがわんわん喚いている。まぁ、こちらがどう思っていようが向こうの気持ちも大事だ。今からまた汗臭い服を着るのも嫌なのだが、大人しく退散しなければ。

 

「アギトはどうしてタローさんが入るのが嫌なのですか? 浴槽も違うので狭くならないですよ!」

 

 と、そこでぽやーんとしていたリィンフォースが口を挟む。この子は逆に見られるのが恥ずかしいとかそういう気持ちはないのだろう。マジデバイスの鑑。

 

「そんな問題じゃないだろ! 見られるんだぞ、見られてるんだぞ! 分かるだろ!?」

 

「……?」

 

「あ、分かってない顔だこれ! えーっと、女の裸は男に見られちゃいけないものなんだ!」

 

「リィンはデバイスですし、ザフィーラさんとは一緒に入ったりするじゃないですか」

 

「ざ、ザフィーラは犬で、その……」

 

 すごく困ってるようだから今の内に風呂に入った。大丈夫、俺が裸に興味ない事はすぐに分かってもらえるはずだ。

 そのまま言い争っていたというか一方的に怒鳴っていたアギトは、ようやく浴槽でふぃーっとしている俺に気付く。

 

「もう……好きにしてくれ……」

 

 納得してくれたようだ。良い湯加減ですなぁ。

 そんな訳で、和やかにユニゾンデバイス達と風呂に入る俺である。

 

「ザフィーラさんの方が大きかったですよ」

 

「そっか……だがあの人に負けるのならば不思議と敗北感はないぜ」

 

「だ・か・ら! 妙な話題はやめろよー!」

 

 この後は気の滅入る話が待っているのだ。今は穏やかな時間を過ごしたい。

 とかかっこつけてると先にユニゾンデバイス達にあがられ、その着替えを待っている内にのぼせた俺である。なんで女の支度ってあんなに長いの?




 濃厚なホモ回

 オリ主のタローは割と無意味に強いです。この物語が不良漫画なら主人公の先輩になれるぐらい強いです。でも魔法使うのが「ちょいタンマ!」って言わなきゃいけないほど遅いので、魔法使われるとワンパンKOされます。
 彼の部署は場合によっては管理外世界に派遣されたりしんどい所なのですが、魔法NGな平和な街での捕り物が得意な事もあり、常に中央勤務で書類仕事が多い子です。「バインド!(相手の肩を外す」とかやります。
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