魔法少女リリカル未婚の母(シングルマザー)   作:那智ブラック

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あんまり八神家関係なかった気もしますがタイトルこういう形式にしちまった俺が悪いという事で。


八神さん家の事情・後

 改めて、八神さんの部屋で彼女と向かい合う。昨日と違うのは、俺が手渡した書類を今度は彼女が俺に手渡した事だ。

 神妙な表情――ここからは、仕事だ。

 

「それじゃあ、まずは聞かせてもらおうか。コンセントレイト……この『麻薬』。最近流行してるってのは現場的にも間違いないんやね?」

 

「はい。その場で軽い尋問ぐらいならやるんですが、友達から聞いたとか……そんなんばっかりですよ」

 

 ヴィータさんに羞恥プレイを強要してしまった昨日、俺が捕まえた売人の男と少年達。彼らはコンセントレイトという違法薬物に手を染めた違法所持者だ。

 コンセントレイト――それは、『魔法を使えるようにする』という夢の薬。服用し続けるとリンカーコアがない者に疑似的にリンカーコアを発生させ、その上特殊な魔力変換資質のようなものまで身に着けてしばらくは魔法を使えるようにする。そう、しばらくはだ。

 その疑似リンカーコアはすぐに失われてしまうし、それと同時身体に影響が滞留し障害を残す。心身ともに破壊されてしまうのだ。勿論売人はそんな事を言わずに「少しだけでも魔法を使えるのは楽しい体験だとは思いませんか」と販売するのだが。

 ミッドチルダでも社会問題となりかけており注意喚起もしているのだが、その実態は中々浸透しない。誰だって現実より夢が好き、それが子どもならば尚更――だ。

 

「で、タロちゃんは街での事件を担当してるから、それによく行き当たると」

 

「対策メンバーは別にいるんですけどね。八神さんはそちらと連携して捜査を進めてもらう事になると思います」

 

 ここには仕事の話をしに来た訳だが、プライベートでもある。俺は彼女に渡るはずの情報を事前に許可を得て持ち出しているだけで、本当は一緒に仕事をするわけじゃない。そこまでする八神さんの熱心さには頭が下がるばかりである。

 だが、今回ばかりは俺も腹が立っている。子どもを狙い撃ちするようなやり方はあまりにも卑怯過ぎるでしょう?

 

「うん……ま、その辺りやけども。いつも通り、タロちゃんには実際に接した感じとか、そういうの聞きたいと思って。素人やから鎮圧が楽だったか、逆に素人だからこそ難しい所があったか」

 

 ふむ、やはりか。

 ならば話すべきはあれだな……そう、俺が初めて出会ったコンセントレイト服用者。あの熱くも物悲しい事件を……

 

「そう……あれは。高町と俺の非番が被った日、ベランダに出てくる高町の顔が見れないかと30分に一度家の前を通りがかっていた日の事だった……」

 

「ちょっと待てや消極的ストーカー」

 

 

 

 その時、俺は胸に淡い期待を忍ばせてその日12度目のなのはちゃん家の前通りすがりを敢行していた所だった。なのはちゃんはタオルの間に隠しておけば大丈夫だろうと下着も外に干してしまうタイプなので、出来るだけ目をそむけながら。ひらってなったら見えるんだよ、履いてない時までチラリズムを追及していくスタイルかよ。

 そう……そこで見つけたのだ。ベランダにある人影に。初めはなのはちゃんかと――思ったのはわずか一瞬、あり得ない横幅に瞠目。次の瞬間に頭に浮かんだのはなのはちゃんの彼氏かもという懸念だが、もしそうならば俺に相談してくれているはずだそうに違いないそうだそうに決まっている。そんな訳で敵だと断じたわけだ。

 

「そこのお前ー! ベランダで何してるんだ!」

 

 びくっと振り向いた恰幅の良い男、その手には純白の布が握りしめられていた。

 ここで大事なのはその男がつまむでもなくぐわしっと鷲掴みにしていた事だ。布の中央を、だ。洗濯物の回収にそんな風に掴む必要はないし、そもそも女性ものの下着をダイナミックに掴むなどと言う真似、変態以外あり得ない。あり得ないッたらあり得ない。

 そしてそれよりも大事なことは、それがなのはちゃんの下着だという事だッ!

 

「……逮捕するから、動くな」

 

 その時の俺はまだ冷静だった。身分を明かし降伏を勧める、そんな余裕があった。

 俺がブチ切れたのは男が逃げた事もそうだが、逃げる瞬間さらにブラまで奪っていった事だ……掴みとったパンツと揃いのブラをな!

 男の足元に浮かぶミッド式の魔法陣、そして重力を無視したかのように飛び上がる男。彼を魔導士だと、その時の俺は断定。無許可の飛行はそれだけで犯罪である。捕まえる理由が増えた。

 さて、パルクールだとかフリーランニングだとか言う競技が地球にはある。俺は謂れも何も知らないが、簡単に言えば街なんかで最短距離で移動しその美しさを競うとか、そんな感じのスポーツ。飛行魔法の発達著しい魔法世界では存在しなかったものだが、最近地球からその概念が持ち込まれた。

 まぁはた迷惑でもあるので賛否両論なのだが、過去にグレていた時代に街中でやった事がある訳で。

 

「ご近所の皆さん、申し訳ありません……!」

 

 謝りながら、走る。そして教会の人に脅されて以来持ち歩くようにしていたブーストデバイスを起動、壁に辿り着くまでには魔法を唱え終わっている。

 

『Air step』

 

 この魔法は少しだけ、ほんの少しだけ地面と足を反発させて浮き上がる魔法だ。主に高所での作業中においての落下防止に使われる。飛行制限に抵触しない、ささやかな魔法だ。

 しかし、慣れれば踏み込みと反発を上手く使う事で飛び上がる力を強化出来る。あと靴跡つかない。

 

「待てつってんの!」

 

 民家――その壁を蹴って登り上がり、出窓の縁を掴んでさらに飛び上がる。壁面を歩けるのは精々二歩、それまでに次に掴める場所を探し登っていく。

 学生の頃遊んでいて、今でも街の事は出来るだけ把握するようにしている。クラナガンは俺の庭だ。

 

「ひいい!? ご、ゴキブリィ!?」

 

「犯罪者にゴキブリ呼ばわりされたくねぇっての!」

 

 ぬるぬる近づいてくるのがよほど怖かったのだろう、横幅にでかい男は怯えたような声を出す。

 屋上へと辿り着き、なお追いかける。妙だ、こちらが屋上に上がって追いかけているというのに、高度を上げる気配がない。飛行魔法を使っているのにこれはどういう事だろう。こちらが飛行魔法を使えないのを知らないので、高度を上げるために速度を落とすのを警戒している?

 なんにせよ、チャンスだ。油断しているその足を……掴む!

 

「うおるぅああああああ!」

 

「ぎゃあああああ!」

 

 バランスを崩す相手! 引きずられる俺! 靴を魔法で浮かせていてよかったと思いつつ……離さない。踏ん張りが利かない、浮遊感、風が強い、やばい。

 

「は、は、は離さないと落とすぞ! 脅しじゃないぞ、嘘じゃないぞ、ほんとにやるぞ離せぇ!」

 

 何を言われても、離すつもりはない……大切なものを、取り戻すために!

 屋上の端、踏み切って飛ぶ。正真正銘地に足がついていない状態だ。両手で下着泥棒のそれぞれの足を掴む。

 

「な、何考えてんだお前ぇ!? し、死ぬぞ、死んでいいのかぁ!?」

 

 男は叫ぶ。魔法を使い慣れている人間にしては妙な感じがあるとこの時俺は薄々気付いていたのだが……それよりも、高い所怖ぇが勝っていた。やばい、死ぬかどうかはともかく、空を飛べない俺には足が竦む光景だ。

 深呼吸、息を整えて、出来るだけ穏やかな声を作る。

 

「なぁ……お前も、なのはちゃんが好きなのか?」

 

 ぴく、と足が動く。

 

「お、お前も……なのか?」

 

「あぁ、彼女に片思い中のしがない管理局員さ……なぁ、お前、なのはちゃんに実際会った事があるか?」

 

「い、いや……」

 

 すぅ、と息を吸う。

 伝えなければいけない。彼も女性を想う事の出来る人間ならば、きっと心が伝わるはずだ。歪んでいようが、なんだろうが……俺達は、同じ女性を愛したのだから!

 

「なのはちゃんはな……凄い努力家で、泣きたい時も涙を堪えて誰かの為に戦える人なんだよ! 辛い事があったって、抱え込んじゃうような子なんだよ!」

 

 なお熱い叫びしている俺であるが、この時ぶらぶらぶら下がり中である。後で思い返すと、あまりにもあれである。

 

「そんな彼女が、こんな仕打ちを受けてみろ! 娘や友人に心配かけまいと、自分の中に抱え込んじまう! 好きな人にそんな重みを味あわせるつもりかお前は!」

 

 高度が落ちて……それと共に、滴が降り注ぐ。男の涙であった。

 

「う、うぅ……お、俺、俺ぇ……」

 

「いいんだ、お前は過ちに気付けた。それでいいんだ……」

 

 男と男の魂をぶつけ合い、俺と下着泥棒は通じ合う。一件落着だ。

 にこりと微笑みかけてやるが……がくんと高度が下がる。て、おい。まさか。

 

「……下着泥?」

 

「す、すいません……俺、慣れてなくて……落ちます」

 

 浮遊感が落下感に変わるのに、そう時間はかからなかった。落ちる、そう確信した瞬間に男の足から手を離す。

 手近な壁に蹴りを入れる、運動の方向を変えて……それから、しっかりと足を地面の方へ。落下防止用の魔法はその本来の効果を発揮してくれるはずだ。

 と、そこでひらと視界を横切る布……白、そう認識すると共に手が勝手に動いてそれを遠慮がちに握る。

 

「――ッ!」

 

 落下、ではなく着地。大きな衝撃もなく住宅街の路地へと降りる。

 安心したまま、俺は無意識に手の中にあるそれで汗をぬぐった、ぬぐってしまった。そう、その――なのはちゃんのブラジャーで。

 

「た、タローさん……」

 

 時が止まる。

 降り立ったその地点、丁度俺の真後ろに居たのはなのはちゃんだった。彼女の服装は物凄いラフで、ちょっと出掛けていたんだなと言うのは分かる。

 やべぇ、やべぇ、やべぇ。頭の中がその一色で埋まった。空に居る時より遥かに焦っている。今でこそ冷静に回想できているが、この時はオーバーヒートしそうだった。

 

「い、いやぁ……奇遇だな、たたた高町!」

 

 ブラを後ろ手に隠し、なんとか笑顔を形作る。大丈夫、バレてない。なのはちゃんは少し首を傾げただけでまだ笑顔だ。

 

「タローさんはどうしてこんな所に?」

 

「い、いやぁ、この先の図書館に用があってね」

 

 さっきベランダの所で出会った時の為に考えていた台詞をここで言う。こんな所で使いたくなかった。

 と、そこで頭に何かが舞い降りる。

 

「あ……ぅ」

 

 なのはちゃんの顔が真っ赤に染まる。パンツであった。

 

 

 

「と言う訳なんですよ……」

 

「ツッコミ無視されたまま回想終わりまで突っ走られた……」

 

 ふぅ、熱い戦いだった。決して現実逃避ではなく。決して現実逃避ではなく!

 八神さんが凄い微妙な顔をしている。俺の傷を抉るのはやめてほしい。

 

「それで、……どうなん?」

 

「あぁ、下着泥棒のジョージは四肢の痺れとして症状が現れ今もリハビリ中です……クソッ、一体だれがあんな薬を……!」

 

「いや、そっちもやけど。なのはちゃんとタロちゃんの方な」

 

 あの後は大変だった。真っ赤になって黙り込んでしまうなのはちゃんの、『疑いたくないけど……信じてるよ? 信じてるけど……』みたいな瞳にハートを二重にブレイクさせられながら通報。パンツとってくださいと頭を差し出す所までは良かったのだが、握り締めたブラを渡す時の緊張感。

 しかも、渡す所をヴィヴィオちゃんに見られた。しにたい。

 

「まぁ、なんや、タロちゃん……麻薬(コンセントレイト)は私らがなんとかするから、しばらくゆっくりしぃな……」

 

 あの薬を作ってこの世界に持ち込んだ奴、絶対に許さねぇ……!




ギャグですが、薬がエグいものだって事はマジです。ここからタロー・メリアーゼの長い戦いが始まる……!(前振り)

今日は友人とネタ出し合いながら書いてたからこんな遅くの投下となりました。こんな事になったのも文系ナントカって奴のせいだ……!
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