魔法少女リリカル未婚の母(シングルマザー)   作:那智ブラック

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パンツ泥棒の汚名を逃れたタローを待っていたのはまた地獄だった
話が進むたびに増えていくネタと暴力
深夜テンションが生み出した脳髄直結で書いた文章
ネットスラングとその場で考えた変な言葉、プロット通りと逸脱を俺の頭にブチまけたここは管理外世界ヒャッハー
次回こそはちゃんとラブコメしたいです
今回だけはタローと地獄に付き合ってもらう


ハラオウンさん家の事情・中

 土煙が一陣の風と共に空へと去っていった。空き缶がからころと転がる音が、妙に寂寥感をもって響く。

 崩れて補修の目処も立たない建物。剥がれ落ちたポスター。呑み散らかしたままの酒瓶の山。退廃と悪意の坩堝のようなこの管理外世界に降り立つのは俺ともう一人――フェイト・T・ハラオウン。

 いやらしい笑いの群れの中を二人して無表情で進む。行き当たったそこには一際体の大きな男が、木箱の上に乱雑に座っていた。晒された上半身はまさに筋肉の塊。暴力の象徴のような男である。

 

「ぐぇっへっへっへ、お嬢ちゃんとなまっちょろい坊やが、俺達の街に何の用だい?」

 

 見た目に違わぬ、低く強く下劣な声。

 

「しらばってくれる必要はない、ジョージは返してもらう」

 

 その空気を切り裂くように、凛としたフェイトの声が放たれた。

 じり、と距離を詰めはじめる周りの男たち。やれやれ、どうやらタダで通してくれる気はないらしい。

 

「会わせてやるよ……地獄でなぁ! やれ、お前ら!」

 

「ヒャッハー!」

 

 同時に飛びかかる複数人のモヒカンとかそういう奴ら。俺とフェイトは一瞬の目配せの後、それぞれ真反対へと飛びかかる。一か所に固まるよりは、こちらから距離を測る方がいい。

 目の前にいるのは四人。錬度が足りない、二人が突出している。乱雑な拳を避け、腕をとる。それだけで突出している内の一人は怯み――その隙に二人の男をぶつけてから蹴り飛ばす。

 

「てめぇ!」

 

 目の前にいるのは残り二人。だが遅れているという事は他人の動きを見てから動きたいヘタレ野郎か、号令に遅れた雑魚だ。俺を囲もうとしたか、目配せをした瞬間に踏み込む。

 肩口からぶつかってバランスを崩し、そのまま足で蹴倒す。倒れたそいつには遠慮なく腹に足を落としておいて、もう一人だ。四人いたはずが、一対一。明らかに狼狽している。

 

「よう、恐いかよ、三下?」

 

「う、うるせぇ! てめーなんか恐かねぇ! 野郎ぶっ殺してやる!」

 

 抜き掛けていた腰の銃をそのままに、男は素手で殴りかかってきた。男と俺の身長は似たようなもの、腕のリーチは同じではあるが、それの活かし方が違う。振り回したような男の拳と、一点を突くような俺の拳、どちらが遠くまで届くかは自明だ。

 

「はぁっ!」

 

 背後を見れば、丁度フェイトも最後の一人を倒した所だった。大上段の回し蹴り、最後にさぞいい景色が見えた事だろう。

 そうして二人して最後の大男をにらむ。大男は部下がやられたというのに、ただ凄絶に笑っていた。

 

「ほう……中々出来るようじゃねぇか。なら直々に相手をしてやろう。この――」

 

 立ち上がる。

 遠近感の狂いか、俺の本能が理解を拒否していたのか――立ち上がり目の前に立った今、初めて分かった。男は大きいというモノではない。あまりにも大きすぎた。3m――いや、もしかしたらそれ以上。例えるならば鋼の筋肉を鍛え上げたビルのような見上げる巨体。

 その立ち居振る舞いにも先ほどの男たちのような隙は無かった。人を殴る事に特化したような拳、丸太のように太い脚。どこから攻めればいいのか分からない、要塞のような男。

 

「この、ボンバー・ザ・マッドガイ様がなぁ!」

 

 強敵を前にして――ふっと微笑み、俺とフェイトは念話を交わした。

 

『世界観が違う。ミッドチルダに帰りたい』

 

『実は俺も』

 

 諦めの笑みであった。

 

 

 

 数日前、ジョージがさらわれた。ぶっちゃけわざわざ警備体制を抜けて病院まで一般人を攫いに来る時点で凄い労力だと思うのだが、ビデオレターにしてそれを送ってくるとか敵組織の巨大さと執念を否応なく感じさせられる事件だった。正直アホかと思った。

 ビデオレターに映っていたのは鎖で縛られ目の前にダイナマイトを置かれたジョージ。凄い光景だった。

 

「……っうん、そうだね! 仕事に戻ろう!」

 

 二人して届いたビデオレターを見終え、立ち上がったフェイトが笑顔で言い放つ。細められたその奥の瞳はどこか遠くを見ていた。

 

「ちょっと待って。これは現実だ……いや、マジで無視したい所なんだけど、これ放っておけばジョージが死ぬ」

 

 二人で見ていたのはまさに『二人で見なければジョージを殺す』と書かれて俺宛てに送られてきたからだった。とりあえず念のためにとフェイトを読んで見てみたのだが、まさになんだこれだった。

 映像の最後にはとある管理外世界に、誰にも伝えずに来いとの旨が。

 

「管理外世界の人間が考える事は一味違うな……」

 

「タローさんも管理外世界出身だよね……」

 

 そんなこんなで俺達は管理外世界へと飛んだのだった。

 

 

 

「こーろーせっ! こーろーせっ!」

 

 石造りのリング、周囲の客席から満場一致の殺せコールを受けて立つのが俺だった。いやぁ、懐かしいなぁ。この殺せコールさえなかったら魔法戦競技を思い出すなぁ。

 あの時は一回戦で負けたけど、今はそういう訳にはいかない。なにせジョージの命がかかっているのだから。かかっているのだから!

 

「くはははは! 小僧、このSTAGE3まで勝ち進んできたようだが貴様の命運もここまでよ! この闇夜叉様の刀の錆としてくれる!」

 

「帰りたぁい……」

 

 思わず弱音が出る。なんだよ……もう、この……なんだよ……っ!

 闇夜叉の容姿について描写する事は容易いが、頭が理解を拒んでいるので正しく把握するのはやめておく。この世界に染まりたくない。

 謎の一本道を進んできたらエレベーターあったり謎の穴があったり壊してくれと言わんばかりに放置された車があったり、なんかもう全ての障害を突破しながらここまで来た。ちなみにフェイトは途中で頭痛がこらえきれなくなったようなので置いてきた。

 

「我が太刀を受けよ、無尽残像十六夜叉斬撃!」

 

 無尽なのか十六なのかはっきりしろよ。とかそういう事を思うのだが実際その太刀は威力を伴っている。避けなきゃ死ぬのに脱力してしまう。マジで勘弁してほしい。少年漫画の主人公は大変だぁ……。

 

「あてみ」

 

「ごふっ」

 

 闇夜叉は沈んだ。二秒で。

 だがしかし、新たな敵がリング上に現れる。

 

「くくく……闇夜叉を倒して程度でいい気になるとは。奴らは我が四天王でも最も小物、私こそ四天王最強の知将――」

 

「あてみ」

 

「ごふっ」

 

 帰りたぁい。

 四天王五人目の男まで倒し、殺せコールも疲れたらしく鳴りやんできた所。とうとう敵も痺れを切らしたか、大量の人員を投入し始めた。

 

「ふふふ、手柄はこの十二魔天がいただきましょう」

 

「裏十字五将軍が最強の将、鉄血のゴフリートが参る!」

 

「暗黒百八星の勇猛なる勇者たちよ、俺に続け!」

 

「精々争うがいい……最後に美味い目を見るのは我らフィフティーンナンバーズよ……」

 

 帰りたぁい!

 だが冗談を言っている場合ではない。数えるのも面倒くさいが、100を超える敵が押し寄せてきているのだ。一人一人は二秒で沈められるとしても、いささか数が多すぎる。ただ突撃するだけで押しつぶされてしまう。

 そんな時――ゆらぁりと、俺の背後から現れたのはフェイトだった。

 

「ふぇ、ふぇい」

 

「ばるでぃっしゅ……」

 

 声をかける間もなくバリアジャケットを展開するフェイト。その手に握られた相棒を大群に向ける。ゆったりとした動き、だがどこか威圧感がある。

 彼女の眼は据わっていた。

 

「ぷらずますまっしゃー……プラズマスマッシャー……プラズマ、プラズマスマッシャープラズマスマッシャープラズマスマッシャアアアァァァ!」

 

「誰かあの女止めろおおおぉぉぉ!」

 

 地獄絵図だった。殺虫剤をかけられた羽虫のように人がごろごろと落ちていく。

 フェイトの眼は据わっていた(二度目)。

 

「たろーさんはばかなの?」

 

「え、いや」

 

「わざわざあいつらにつきあうなんて、ばかなの?」

 

 彼女はあいつらと同じテンションになるより、別方面に壊れる事を選んだらしい。

 逆に冷静になった俺は、とりあえず証拠集めとかそっちの方を頑張る事にしたのだった。戦闘はもうあいつ一人でいいんじゃないかな。

 

 

 

 そんな訳で敵のボスがいるというビルをなんか薄着なバリアジャケットになったフェイトが真ん中からたたっ切って、今回の事件は収束した。強いて言うなら瓦礫の山からジョージを探すのに手間取った。可哀想に気絶してしまっていた。

 管理局に連絡して事後処理を頼み、彼らが来るまでの間の待機中――フェイトはようやくまともに戻った。

 

「た、タローさん……一体何が起きたの?」

 

「そうだね。俺達のチームはある程度個人の判断で動く事が許されているから今回の件も始末書程度で済むと思う。事情もあったしね。あと一応事前に連絡も入れておいたし、うん。フェイトのキャリアに傷がつく事はないと思う」

 

「やめて! そのなのはに話す時みたいな優しい口調やめて! 目を合わせて!」

 

 ふぇいとさんこわい。

 ともあれ、アホながら中々巨大な組織であったらしく、麻薬の流れの一部を担っていたのはここらしい。そんな組織が何故こんな事をしたのかは分からない……ご都合主義としか思えない……。

 他の管理局員の人に詳しく調べてもらえばきっと麻薬流通ルートとその大元も判明するだろう。

 

「うぅ……どうしてこんな所に来ちゃったんだろう……」

 

「俺もこんな所に来たくなかったなぁ……」

 

 二人して愚痴って、瓦礫の山に腰を預けて。

 無言が続いて、しばらく。すぅ、すぅ、と深い息――寝息、だった。見遣れば、フェイトは座りながら寝息を立てている。

 そういえば働き詰めだと言っていた。このような事件を……いや、今回みたいなノリはまずないとしても、色々と飛び回る執務官の仕事はかなりハードなのだろう。

 

「おやすみ、フェイト」

 

 ここで男女逆ならば膝枕でもしてやるのがいいのかもしれないが、男がやると洒落にならない。上着を脱いでそれを枕にして寝かしてやった。瓦礫の上だとしても座りながら寝こけるよりはいいだろう。

 彼女の代わりに自分が頑張ってやれればいいのだが、俺にそんな力はない。今回も結局頼りきりだった。

 

「お前の事さ、本当に尊敬してるんだぜ」

 

 聞こえないのをいいことに、独り言をつぶやく。

 俺は管理外世界出身で、本当の両親という奴はもういない。俺は死んで当然だったし、誰にも文句は言えなかった。それでも手を差し伸べてくれた人が居て、グレても見放さずに家族として扱ってくれて、だから俺は今ここに居る。

 彼女はそれと同じ事をやっているのだ。しかも俺の義両親よりもよっぽど若い歳で親をやっている。なのはちゃんよりもさらに若い……いや、幼いとも言える年齢の頃からだ。実際、ヴィヴィオを育てるにあたってなのはちゃんがフェイトを頼る事は多かったらしい。

 だから俺はフェイトの事を、自分の命の恩人と同じぐらい尊敬している。俺は彼女達のように子供を引き取ってまで面倒を見る甲斐性はないが、そのサポートぐらいはしたいと思っている。

 

「だから、今は寝といてくれよ」

 

 ざ、と足音がした。

 ボスがやられたからといって完全に壊滅させた訳でも、まさか天下の管理局員がトドメを刺している訳でもなく。まだこちらに立ち向かう意思がある奴はいるようだ。

 よっぽど危なくなったら起きてもらうが、まぁ俺一人で大丈夫だろう。二秒で倒せるし。ボンバー・ザ・マッドガイ()はすごい見かけ倒しだったな……。

 

「さ、やるか」

 

 次の日、流石に俺は身体中疲れ果てて有休を取った。有給取れるとかホワイト企業管理局。




最後のフェイトとのいい話だけ覚えとけばいいです。前半部分の「二人で仕事をする」ってシーンを適当なネタで済まそうと思ったら適当過ぎて死んだ。二次でこういう事はやるなっていつも言ってるでしょ、那智ブラックちゃん、めっ! でも書き直すと更新遅くなるのでこのままでいいや。
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