(壁外調査の真の目的は女型の捕獲、そしてそれの解剖ねぇ……)
俺は目の前で繰り広げられている論争が少し沈静化した後自分の頭の中で情報を整理していた。
今ここは壁の外、巨人の聖地である俗に言う『壁外』だ。
俺たちは壁外調査により今死と生の狭間の空間であるここにいる。
まぁここまで来る途中で100人程度死んだが、これまで大量に殺してきた人間にとっては
『その程度』としか思えない。
(それにしても、あれの目は団長と同じ目だった……これくらいの事分かっていたって
当たり前だったんだがな……)
耄碌してきたかな?なんて思いながら立体駆動の装置をふかして特別班の面々と共にリヴァイ
兵士長と合流するため移動を開始した。
ある程度距離を移動した後緑色の信号弾が上がったのを確認しこちらも応答の信号弾を
打ち上げたが何かアレは違うような気がした。
「んだろーな……この感覚」
「どうしたんだ?エド」
「何でもねぇさ、それよりも前見ろ?木にあたりでもしたらどうする」
そうだな、と言って前を見て前方で繰り広げられているしょんべん談義に混ざっていった。
そろそろ合流地点へ着くと言うときに俺たちから木を一本挟んだところに自由の翼を背負った
兵士が立体駆動で飛んでいた。
何故調査兵団ではなく兵士と表したのか?理由は簡単だ。
「何だヤツは……?リヴァイ兵長じゃない‼」
”俺たちと同じ”と言うには明らかにも違いすぎるほどの殺気をこっちに向けていたからだ。
身を躍らせ凶刃をこちらへ向けた兵士はグンタ・シュルツへと狙いを定めていたが途中で
刃が飛んできたため回避行動に移らざるを得なかった。
特別班の面々は手ごろな木へととまり兵士に敵意を向ける。
「テメェ誰だ‼何で俺たちを攻撃した‼‼」
しかし兵士は声を発することなくこちらへの敵意のみこちらへと向け刃を振るい俺たちを殺しに
かかる。
「オイオイ、目の前の……誰にケンカ売ってやがる?」
しかし俺からすればあんなもの蚊が止まってるようにしか見えない。
殺気は十分だがそれを出しすぎてこっちに狙っているところを教えてやがる。
「チッ……すまない、二度も助けてもらって何だがコイツを抑えてもらえないか?
兵長と合流次第こっちへ向かう」
つまりは『おとり』となってコイツを抑えとけってことだろ?
「りょーかい……一つだけ質問があるんだが?」
なんだ?と問い返されるがこんな時に問うものと言えば相場は決まっている。
「やりすぎてコイツ殺しても文句は言われねぇよな?」
その場に広がる無言の結界、ここで響いているのは硬質ブレードが打ち合って出る死を連想させる
ような冷たい音しかない。
「無言は肯定と取るが、いいな?」
「出来れば……出来れば捕獲を頼む」
流石にエルド・ジンの方はコイツの正体は予想はついているようだ。
「早く来てくれないと分からん……とだけ言っておこう」
さっさと行けと言外に告げるエド……彼らは一つの後悔を残してここをたつ。
男の背中に絶対的な信頼を置くから振り向きはしなかった。
少ない日数だが彼は自分たち以上に素質があると言うのはよくわかっている。
だからこそ振り向くことはしなかった……この時の彼らはエドと言う刃は欠けずに戻ってくると
信じて疑わなかった。
男は目の前の巨人に笑いかけながら逃げていた。
「おめぇは強いなぁ……こんな体とはいえこんなザマだ」
男の体は足が片方欠けており、目も左が潰れている。
しかしそんな軽いケガでは彼は戦闘をやめはしない。
しかしそれでも自分の得物がないのだ。
硬質化した皮膚を何度か斬りつけたがそのせいでブレードが根元からへし折れてしまった。
「まぁでも……コイツが念能力者だったのはラッキーだった」
まぁコイツは理解してねぇだろうがな……と心で嘲りながら逃げるために作ったわけではない
戦闘用の能力を発動させる。
「『”狩人の極域(エレン・イェーガ)”』‼」
彼は一足飛びで戦域を離脱する。
その足取りは初めての敗北を知った獅子の王のようなものだった。
その数日後、身元不明の調査兵団兵士の死骸が発見された。
そのものの体は野犬に食い荒らされたような傷跡があり見るも無残なものだった。
その死体のポケットの中にはキンセンカが潰れたような形で収まっていた。
花言葉は『別れの悲しみ、失望、平和』……死を想起させるような不吉なモノばかりだった。
そして兵団の中で生死が確認できていないものが趣味と称して行っていた花壇には色々な
花が植えられていた。
アネモネ、パンジー、あさがお……全てが恋に関する花言葉がついている。
「テメェは、どこでのうのうと生きてやがる……早く戻ってこい」
人類最強の男は欠けた部下の為に花へと水をささげに行く。
とある場所……壁の中とは別次元の技術を内包した安物の宿の中で男は目覚めた。
隣にはピンク色の長髪の女性が目の周りを赤くして眠っていた。
男は薄く笑うと女性を起こし事情を聴く。
何でも男は3日ほど寝ていたらしい。
男は首をかしげていたが頭を振ってそれを追い出し近くにある愛刀と愛用の黒革のコートを
身にまとい外へ出る。
愛刀の銘は『次元渡―大連』と呼ばれる業物である。
男は何者でどういった体験をしたのか?ソレの犯人は?それは誰にも分らない……
最終話です、続きを期待している方は申し訳ありません