そんな世界を生き抜いた彼等は平和を噛み締める。
ここには、平和を実感する一つの物語があった。
「ミスミス隊長、あっちにかき氷売ってましたよー」
常夏のリゾート、独立国家アルサミラに一人の少年の声がした。砂漠の中にあるここアルサミラの気温は40度ほど。彼の手に空のペットボトルが2本あったのも道理だろう。彼は水着の上に空色のラッシュガードを羽織るというプール姿だったが、観光客で年中賑わっているここ、アルサミラでは良く見かける服装だ。
「本当っ!?かき氷!わーい!冷たいものが食べたかったんだー!!よしっ!イスカ君いくよー!」
少年の言葉を聞いて即座に走り出す少女。小柄な身体に不釣り合いな豊かな胸を前面に押し出し、その元気さだけなら小学生と見間違うほどであった。
「あ、隊長、そっちは反対方向ーーっていっちゃった。」
残されたイスカと呼ばれた少年は呆然と立ち尽くすーーことはなく、普通に追いかけていった。彼が一歩一歩と踏み締めた大地に灼熱の砂が宙を舞う。
そんなやり取りを見つつもその場に残ったのは、ミスミス隊長と呼ばれていた少女の近くにさっきまで居た2人の少年少女。
濃青色のラッシュガードを羽織ったプール姿の少年の名前をジン、扇情的なフリル付きのホルターネック水着の上から明るい桃色のラッシュガードを羽織っている少女の名前を音々と言った。
「ねぇジン兄。追いかけるー?」
「必要ない。どうせイスカが拾う。先に予約したビーチに向かうぞ。」
普段から仲間に対しても寡黙なジン。淡々と質問に答える。
「そっちの方が効率良さそうだしね~!よしっ!レッツゴー!」
そう言って右腕を高く空に突きだした音々。ポニーテールを派手に揺らす。腕の動きに連動して音々の身体が跳ねた。その周りに居た男たちが一瞬彼女の身体に釘付けになったのは、気のせいではないだろう。
そんな15歳を横目に見ながらジンは言った。
「‥‥‥仕草がばかっぽい。」
「ジン兄ひどいっ!?」
4人で1チーム。"元"天帝国の"旧"防衛機構Ⅲ師・第907部隊は、"退職金"を使って灼熱のリゾート地アルサミラにてバカンスを楽しんでいた。
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ミスミス隊長が走り去ったのと全く同じ頃、灼熱の砂漠に足をつける4人の少女の姿があった。
「やっぱり熱いわね。」
そう言った少女は金髪の髪をたなびかせる。だだっ広い砂漠に咲いた花のような可憐さを、その少女は持ち合わせていた。
「アリス様。やはり傘をお持ちしましょうか?」
「いえ、いいわ、燐。ここはそういう所なんだから。プールに砂浜にビーチサイド。夜は星が良く見えるらしいし、王都にはヤシの木なんてないでしょう?楽しみね!」
「ビーチサイドと砂浜は一緒な気がするんですが?」
「う、うるさいわね!気分よ気分!」
明るい茶髪を左右に分けて結んだ少女は、金髪の少女に声をかけた。
少女の名前は燐・ヴィズポーズ。"元"ネビュリス王家の世話人であった。
普段から身に付けているメイド服に身を包むその少女は、金髪の少女をアリス様と呼んだ。
燐の仕えていた相手、そしてこれからも仕えるであろう少女の名前を、アリスリーゼ・ルゥ・ネビュリスと言った。
その三歩ほど後ろに、アリスと良く似た風貌をもつストロベリーブロンドの金髪の少女がいた。
彼女の名前をシスベル・ルゥ・ネビュリスと言った。
そんな少女は声をかける。
「アリスお姉さま、お母様とイリーティアお姉さまをお誘いしなくてよろしかったのですか?」
その問いに、アリスは答える。
「今は誘えないわよシスベル。お母様と一緒に天帝国でダンスパーティーですって。お母様は"戦争中は大変だったけど戦争が終わった後の方がもっと大変だっ"てぼやいてたわ。」
そう言ってアリスはクスクスと口に手を当てて笑う。
その仕草からはしつけの良さが感じられるほど美しかった。
アリスの言った終戦。それはこの大陸で最も新しく話題性のある出来事だ。
今から1年ほど前までアリスの住んでいるネビュリス皇国と、天帝国は戦争状態にあった。その年月、ざっと100年。
星霊という超常の力を持っている人間が造り上げた国ネビュリスは、星霊を保持しない人間にとって脅威でしかなかったのだ。天帝国は科学の力でネビュリスに戦争を行った。
ネビュリスは天帝国を
天帝国はネビュリスを
100年という時を得ているのに戦禍は混沌へと突き進んでいた。
だが、いつの時代も平和を欲する人間はどの国にもいる。
そんな彼らはお互いの国に対して密かに連絡を取り合うこと100年。何世代にも及ぶ壮大なプロジェクトだった。それはとても困難なものであっただろう。
そして1年前に戦争は終わり、遂に和平はなされたのであった。
正式な文書をお互いの国家元首が合意する形で署名し、その映像はマスメディアによって全世界へと流れた。
ネビュリスはこれまでの王制度を廃止して、民主制へと大きく舵を変えた。
現女王のネビュリス8世はこの代でネビュリスを廃止。
彼女は天帝国との舵取りに成功したら廃位するそうだ。
天帝国も変わった。
国民の大半は星霊使いを知らないし、そんなことより目先の戦争の方が怖かったようだ。和平は賛成派が9割を占め、さらに追い討ちのように軍部の独立によって、戦争賛成派の占める天帝国トップは折れたそうだ。
軍部縮小と共に帝国議会は解散したのだった。
そんな大事が起きて早一年。"元"王女のアリスとシスベルは無事王宮での務めを終えて、"とある人"に貰った好意によって、ここアルサミラに燐と、そしてもう一人の王女と一緒にバカンスに来ていた。
「まずは水着に着替えましょう!この服は熱いわ」
「アリスお姉さま、水着持ってきてないです。」
水着を持ってきてないことに申し訳なさを感じたシスベルだったが、そんな些細なことはバカンスモードに入ったアリスには全く関係なかった。
「じゃあ買いに行きましょう!」
どこまでもテンションの高いアリスだった。
「キッシング、様。楽しみですね!」
燐は後ろにいる同年代の女の子に声をかけた。
「‥‥うん‥‥‥‥たのし‥‥み?」
「なぜ疑問形?」
「‥‥‥‥きにしない」
燐に声をかけられた少女は14歳程だろうか。小柄で凹凸の乏しい体躯をしていた。
彼女の名をキッシング・ゾア・ネビュリスという。
ネビュリスの名の通り、王族だったが、此度の終戦によって王宮を追い出された一人でもある。
この灼熱の砂漠に不似合いなほど透き通った白い肌は、彼女の長い黒髪とも完全に似合っていた。
その姿はまるで人形。動かなければ息をしているのかさえ分からないだろう。
そんなキッシングは、遊ぶことを第一に考えている王女達(主にアリス)に向かってボソッと呟いた。
「‥楽しみ‥‥まず‥‥ホテルいく‥‥‥‥‥‥
‥‥‥‥‥寝‥る‥‥楽しい‥‥よ」
と。
「‥‥‥‥‥‥‥‥キッシング?」
「‥‥‥キッシングさん」ハア
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥やっぱり」
三者三様であった。
アリスは眉を寄せ、シスベルはため息を付き、燐は予想通りという顔をしていた。
どうやらキッシングの楽しみは人とは違ったらしい。
空気を読まないのは彼女が人と接する機会が少なかったからなのだろうか。
それでも?自分の意思だけはきちんと表せるみたいだった。
「キッシングも行くわよ!」
アリスも大概だった。
嫌がるキッシングはアリスに引き摺られるように水着屋へ連れていかれたのだった。
多くて20話位の予定。
ちょっと遅いですが
アニメ化決定おめでとうございます
(*^▽^)/★*☆♪(*^▽^)/★*☆♪
細音啓先生の作品大好きです!
・・・・・名前だしていいのか。それが謎である。
では。また。