死神勇者~生きる意味を探して   作:イオシウム生命体

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13 攻城戦

「ミューゼさんは巨大な剣を操るんですね」A部隊合流後、上層遊撃団のリーダーさんが話しかけてくる「私、リーエルと申します。上層遊撃団のリーダーを任されてますが、アルビオントさんとはマターニ到着以来3年ぐらいの付き合いなんですよ」

 

「3年…それだけあれば、アルビオントさんの事を色々知る事が出来そうだね」

「そうですね。アルビオントさんはとにかく面倒見のいい方で、私の窮地を何度も救ってくれたんです…。おっと、警備隊が交戦開始したようです。行きましょうか」

 

敵は動く鎧…リビングアーマーだ。彼らはアンデッドと言うよりはどちらかと言うと魔法で動くロボットに近い存在で、何処かに司令塔となる個体がおり、その指示で行動する。

 

この個体としては珍しく、中破程度の物理的損傷を受けるとすぐに行動不能になっていた。

 

もともとリビングアーマーという敵はかなり厄介で、物理的な攻撃を受けても鎧を割られても、動く金属塊と化して襲いかかってくるしぶとさが有るのだが…。

 

「…なんでだろ…」倒れてただの壊れた鎧に成り下がったリビングアーマーを調べながらミューゼは首を傾げた。

 

…いや…普通このぐらいの損傷ならまだ動くはずなんだけど…

 

「ミューゼさん!城門を突破するのには、投石機を奪取する必要があります!ご助力頂けませんか!?」

呼び止められ、直ぐにミューゼは立ち上がり剣を構えた。

 

「ごめん、私あまり目が良くないの!どこを片付ければ良いのかな!?」

「投石機は三ヶ所…ですが城門へ射線が通り、尚且つ妨害を受けにくい一番左の投石機を使いましょう!」呼び止めた冒険者は叫んだ「私が案内します!」

 

投石機の周りにいたリビングアーマーを範囲攻撃の一閃で片付けると、仲間の士気が上がったのか、あちらこちらから勝鬨が上がった。

 

「よっしゃあ!回せ回せ!早いとこ城門をぶち抜こうぜ!」

「馬鹿、頭を下げておけ!向こうを見ろ!弓で狙われてるぞ!」

各自がお互いの短所を埋め合って、最強のチームワークで仕事をこなしていた。

ミューゼも何体か目についた鎧を次々と倒しながら、味方と敵の気配を探り、弓矢を避けていく。

 

「城門近くの馬鹿ども!避けろよぉ〜!ぶち抜くぜ…距離よし…発射ぁぁ!」

 

投石機から巨大な爆弾が発射され、見事に城門に当たったようだ。

辺りから歓声があがる。

 

「ハッハァ!今のところ絶好調じゃねぇか!」投石機を操作している冒険者が叫んだ「これなら楽勝だ!Bチームよりも先に下層を制圧してやろうぜ!」

「しかし油断するなよ。…リビングアーマーのリーダーとビボルダー・アイは強敵だぞ…会敵する前にある程度戦力を減らしておく必要がある」

 

ミューゼは上層遊撃団のリーダー、リーエルを探し、共にブローベル内部に侵入した。辺りに漂う魔力が尋常ではない。

体が重くなり…それでいて気分が高揚する、不思議な感覚…。

 

「魔力に当てられて気分が悪くなった者は直ぐに部隊長に報告後、私に伝達してください!」リーエルは叫ぶ「それと魔導士の方はあまりマナを大量に消費する魔法を打たないように!誘爆する危険性があります!…よし、現在の状況報告を!」

 

「警備隊は負傷者ゼロ。これより離脱して周辺警戒にあたります」

「下層突破隊は問題ないよっ!魔力に当てられちゃった人も居ないみたい!」

「中層攻略隊…は、誰も欠けてません!怪我人は出ましたが、いずれもかすり傷程度です…あぁ、早く兄貴に合流したい…」

 

「伝令!チームB!内部の侵入に成功!チームB!内部の侵入に成功!」

「了解!」リーエルは全員を見回す「…では警備隊は離脱してください。他の隊は私を先頭に少しずつ進軍を開始します!伝令、そう伝えるように!」

「はっ!」

 

 

 

 

「今は邪魔だっ!」

アルビオントは東洋のカタナを巧みに操り、鎧を次々と倒していく。その剣撃に距離感は関係なく、ただ視界に入るだけでその体を両断されていった。

 

「リーダー、順調ですね!」

下層攻略隊のリーダーで、アルビオントをよく知る部下が話しかける。

「あぁ。もうじき向こうに伝令がつくだろ。もし中層で会えなかったら迎えに行くとするさ。ドミル、具合は悪くないか?」

 

「えぇ!魔力酔いは心器を錬成していない者に起きやすい障害ですからね」

にこやかにドミルは言った。

 

「…まさかお前…」しかし、何故かアルビオントの表情は凍りついた。

「えぇ。先月夢の中に【女神】が現れて、この杖を頂いたんですよ!」

「…そうか」アルビオントはつとめて普通に振る舞う「一緒に生きて…帰ろうぜ」

「えぇ!任せて下さい!」

 

「くっ…畜生…俺は…俺はッ…!」

最前列で敵を倒しながら、アルビオントは人知れず、そう呟いていた。

 

 

 

 

「しっかし、流石に城だよな…投石機で楽にぶち抜けたからもっと単純な構造なのかと思ったぜ…なぁ?」投石機を操作していた男が話しかけてくる。

 

「えぇ…お互い気を付けましょう」

ミューゼは頷きながら言う。

「いやぁ、レブフィーズの奴が警備隊だから暇だぜ…もう作戦終了の時にしか会うことが出来ねぇなんてよ…」

 

「…お互い、死体になって顔を付き合わせないようにしなきゃいけないね」

「…死神さんって、意外と恐ろしい事をコロッと言っちゃうのな」

「ふぇっ!?」ミューゼは赤面した「あ…あのえぇと私、何か変な事言った!?」

「(かわいいな…)」

 

「次!バイルアイ2体と交戦開始!」リーエルの声が轟く「一時後退して階段を挟んで魔導士と射手は矢を準備せよ!…構え…射てぇぇぇ!」

 

「なんかさぁ」投石機の男がミューゼに耳打ちする「あまりにも上手く行き過ぎじゃねぇかな?普通は城に外敵が入ったらもっと部隊を派遣する物だろ?…敵を見事に分断して倒せる程の、ましてや俺ら一般の工兵がおしゃべり出来る時間なんて無いはずなんだ…なんか胡散臭いと思わねぇ?」

 

「…確かに。これじゃあ敵の本隊は中層や上層に終結していて、まるで上層まで私達を呼んでるようにしか見えないよね」

 

「罠…か…?上層で戦えるのは遊撃団しか居ないって情報が敵に抜けてんのか…」

「工兵は封鎖された門に爆薬を仕掛けて下さい!」リーエルが叫んだ。

 

「おっと」男はミューゼにウィンクする「ようやく俺の出番って訳だな。じゃあな死神ちゃん、また後で会おうぜ?」

「えぇ。気をつけて!」

ミューゼはそう叫んで見送る。

 

…しかし、私のする事って…

こうやって大量の部隊の中で戦うのは3年ぶりといったところか。

目が悪くて、会話で状況を理解しようとするも…この人数ではなかなか私語も多く、自分が何をすればいいかわからない…

 

「おっと」

「わ、すみません」ミューゼは前を歩く冒険者の一人にぶつかってしまう。

「あぁ、ミューゼさんか」顎髭がかなり長い、ドワーフみたいな見た目の戦士が振り返る「…あぁ、アルビオントさんから聞いたんだが、目が悪いんだっけ?」

 

「あ…はい、まぁ…」

アルビオントにそんな事を話した覚えは無いのだが…。もしかしたら自分の噂の中に入っていたのかもしれない。

 

「眼鏡、備品に余ってたら使うかい?」

「いえ、これは一般的な近視みたいな症状とはちょっと違うんです…ありがとう」

 

「ふむ、そうか…。この先何が起こるか分からん。皆とははぐれないようにな」

「はい」ミューゼは頷いた。

 

 

下層の攻略はやはり順調に進み、すぐにB隊に合流する事が出来た。

「やぁ、お嬢さん」いつもの調子で華麗に挨拶するアルビオント。

 

「無事でよかった。…そっちはどうだった?」

ミューゼの問いに、アルビオントは一瞬眉を曇らせたが、すぐに笑顔で答えた。

 

「全員無事だぜ…合流が先に済んじまったが、この先の階にリビングアーマーリーダーとビボルダー・アイがいる筈だ」

「…決戦だね」ミューゼは剣を構える。

 

「いや、まだまだ…特に俺達は中層と上層を越して動力室まで行くからな。ミューゼはなるべく戦闘に参加しなくていいぜ」

「で…でも…」

「最低限の自衛だけでいい。他の人員は俺が動かす…一人の犠牲も出させねぇ。…俺に任せてくれ」

 

「わかった」アルビオントの真剣な目に、ミューゼは頷いた「じゃあ私は貴方を護る。だから貴方は指揮に集中して」

「…!」アルビオントは目を見開いた「…あぁ。背中は預けたぜ!」

 

 

 

 

一際大きな広間に入ると、人の身長の三倍はあろうか…巨大な両手剣を持った鎧が行く手を塞いでいた。

その隣には、巨大な目玉のような構造物が特徴的な浮遊する魔法兵器…ビボルダー・アイが浮いている。

 

「二匹同時か…」

誰かが言った。

「こちらの戦力も揃ってる。リーダーの指示に従って動けば大丈夫だ」

 

…信頼されてるんだな…。

ミューゼは改めてアルビオントのカリスマ性の高さに驚いた。

 

「行くぜ…」アルビオントは剣を掲げる「作戦通りに散開!分隊が揃い次第戦闘を開始しろ!」

 

その声と共に冒険者たちは散開していく。それぞれが5人、または6人程度の集団に分かれているようだった。

 

「訓練通りに動け!俺はリビングアーマーリーダーの部隊を指揮する!…リーエル、ビボルダー・アイの部隊はお前に預けたぜ。一人も失うなよ」

「えぇ。お任せください!」

 

ミューゼはアルビオントについていき、周辺を警戒しながら戦況を見守る。

 

「側面隊B!側面隊Cと交代!ボサッとすんな!」アルビオントは的確に指示を出し、冒険者たちはその通りに動く。

 

「リナス、前に出過ぎだ!強打が来るぞ!ミレクは撃ちすぎるな!お前じゃアイツの飛び込みは避けられない!」

 

時には一人一人に指示を出す。

これには当然一人一人を良く知らなければ不可能な事である。

 

…すごい…本当に…。

 

「…ッ!」アルビオントの表情が歪んだ「クソがぁぁ!」

「…!」ミューゼは息を飲んだ。

 

敵が怒濤の連撃を始めたのだ。

アルビオントや他の仲間たちははこれを予測出来なかったらしい。

正面で攻撃を捌いていた盾を持った老人が体勢を崩し尻餅をついてしまった。

返す刃が老人に向かい振り降ろされる。

 

…まずい。このままじゃ!

 

ガキィン!

ミューゼは目を疑った。

つい先程まで自分の隣にいたアルビオントが…いつの間にか敵の前に立ち、その剣を止めていたのだ。

 

「あ…アルビオント殿…」

老人がしわがれた声を上げた。

 

「出発前はあれだけ年の功を見せてやるとか吠えてたじゃねーか、ライゼスのじいさんよ…!腰でもやったのか?」

 

「すまん、油断したわい」ライゼスと呼ばれた老人は立ち上がり、盾を構えると駆け出した「守備隊!ワシに続けぇぇ!」

 

攻撃を止めているアルビオントの隣を通り抜け、相手の片足に体当たりを仕掛ける。それに続き、声をあげながら敵の片足に攻撃を仕掛けていく仲間たち。

 

「…っ!」アルビオントはこのタイミングで相手の武器をかちあげた「うぉらああぁぁ!」

 

ギシギシと音を立てて巨大な鎧が体勢を崩し、地面に倒れた。

アルビオントは叫ぶ。

 

「待たせたな!魔導士と射手隊の皆!パーティーの時間だ…一番派手だった奴は奢ってやるぜ…撃て撃て撃てぇ!」

「「おぉーッ!!」」

 

その一言と同時に四方八方に散っていた魔導士や射手達が一斉に攻撃を始める。

氷や炎、雷の呪文、それに爆薬が装填された矢や槍までもが飛び交い、もはや色とりどりの花火大会と化していた。

 

この状態の一番の犠牲者であるリビングアーマーリーダーはその身体をものの見事にバラバラにされ、地面を転がり…そして動かなくなった。

 

「ビボルダー・アイの方はどうだ!」肩で息をしながらアルビオントはリーエルの方へ走った「…やったか?」

 

「…えぇ」リーエルはアルビオントを振り返る「伊達に数年間、貴方のやり方を見ていた訳じゃないですよ。…怪我人が3人、いずれも軽傷です」

 

リーエルの背後には、煙を上げて地面に墜落した巨大な円い物体があった。

 

「そうか…よくやった!」アルビオントは勝ちどきをあげて喜ぶ仲間たちを見回して叫ぶ「受かれるのはまだ早いぞ!まだ俺達はこの城に一歩足を踏み入れたに過ぎない。ここからが本番なんだからな!」

 

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