死神勇者~生きる意味を探して   作:イオシウム生命体

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イオです!
色々な方の小説とか読みながら
推敲してみてるんですが、
なかなか難しいものですね。


6 落日と連鎖

「【エリミネイトシザーズ】!」

回避不能の全方向攻撃を、巨大な盾を構えたリザードマンに叩き込む。

 

「はぁ…はぁ…」

ここまで基地を抜けてくる最中に、槍が背中に多少深めの傷を残し、左手に数本ほど矢を受けている。

 

しかしミューゼは血だらけだ。

実際のダメージの三倍は酷い怪我を負っている…が、本人はまだ動けている。

実はミューゼはこれぐらいの無茶など、毎回やっている為、身体はとてつもなく痛いがまだまだ戦う事が出来るのである。

 

「まぁまぁどっから出てくるんだか…こんなに数が居たなんて…ね」

しかし相手の物量も凄まじかった。

盾を構えた重突撃部隊がやられると、今度はいよいよ攻城兵器の登場である。

 

どこからともなく飛んでくる爆弾。

それを剣のオーラを伸ばして安全な位置で空中爆発させ、巨大な槍のようなボルトを発射する弩…設置式のバリスタの攻撃をすんでの所で回避していく。

 

こうなってしまえば突破口を探さなければ先には進めなくなる。

そして力を使い続けると言うことは即ち、それはミューゼの【終わり】を意味する。

 

「まずい…」

ミューゼは歯を噛み締めた。

移動式の攻城兵器の数が予想よりもかなり多く配置されている…。

完全に身動きが取れない状況に陥った。

 

ミューゼは必死に突破口を探す。

テントの影、リザードマンの死体、

遠くにある投石機、櫓の上のバリスタ…

 

「……ははっ」

乾いた笑いが漏れた。

とんでもない考えが浮かんだのだ。

ここには助けなんてものは来ない。

だから、どれだけキテレツで、正気を疑うような真似をしても咎められないのだ。

 

爆弾が飛んでくる。

ミューゼはそれを斬るのではなく…

オーラを使い【引き寄せた】。

更にそのエネルギーを使い逆に自分は空に飛翔する。

無茶な体勢で空に投げ出されたミューゼの身体は当然空気抵抗で軋み、

ミューゼは激痛を感じているのだが、本番はここからである。

 

「…っく!」

慌てて空中にいるミューゼに向けてバリスタが発射される。

こちらに向けて飛んでくる槍。

もはや点だ。点のようにしか見えない。

ミューゼはそれに【飛び乗った】。

…否、【足を滑らせた】の方が正しい。

 

足に赤いオーラを集中させ、

バリスタのボルトが持つ運動エネルギーは歯車の如く足のオーラに伝導する…

そして…

 

「…うわぁぁああ!?」

それによりミューゼが【飛んでくる】。

回転しながらとんでもない速さで。

リザードマン達はつぶらな目を見開き、訳が分からないと言わんばかりに叫ぶ。

 

「グシャラハァァァ!?

『な…なんじゃそりゃああああ!?』」

 

「っ…喰らえぇぇ!!【ブラックエッジ・エクスキューション】!!」

空気抵抗などなんのその。

ミューゼは空中で剣を構え、身体を縦に回転させながら黒い剣を振り抜いた。

バリスタを設置していた櫓が真っ二つになり…瓦礫が左右に吹き飛んでいく。

 

「ギャア!?」「ギュウァァ!?」

それらが他の櫓の柱を飛ばし、いくつかの櫓が傾き、倒壊していく。

そしてその下にあるのは…

爆弾の乗った投石機。

 

耳をつんざくような音と共に、

基地で大爆発が発生した。

焼き蜥蜴がいくつ出来ただろうか。

兵器も八割は使えなくなった。

まさに一石二鳥である。

 

ミューゼは爆風を剣を盾にして防ぎ、眼前に迫る壁に大剣を突き刺す。

そのままガリガリと壁を引っ掻いて速度を殺すと、後は真下に着地した。

倒れそうな身体を何とか起こし、基地の中心部…そこへ向けて猛進する。

 

 

「…もう、ただの基地のくせに…一週間で作ったにしては広すぎだよ…!」

 

ようやく辿り着いたそこは、少し開けている広い場所。その最深部に廃材で出来た大きめの小屋が建っていた。

その小屋の前にいる巨大なリザードマン。恐らくこいつが司令官なのだろう。

 

「お前がド・グオル様を殺した小娘だな…俺はグ・ラバル。この基地の司令官にして、魔王グラヴィード様より心器を授かりし者…貴様は捨て置けば魔王様の脅威となる。ここで骨も残さず消え失せよ!!」

 

漆黒の皮膚を輝かせ、リングメイルを身に纏うそのリザードマンは、巨大な両手斧を振り上げた。

 

「戦う前に、ひとつ聞いていい?」

「…闘士に言葉など不用!おいお前たち、奴を仕留めろ!!」

 

なんでリザードマンは言葉が通じない脳筋ばかりしかいないんだよ!!

 

グ・ラバルは黒い両手斧を掲げる。

同時に周りのキャンプから大量の矢が放たれ、ミューゼの元に殺到する。

「!」

 

ミューゼは剣を盾にしてグ・ラバルから目を離さない。…グ・ラバルは気合いを入れて両手斧を更に高く掲げていた。

 

「ファランクス達よ、取り囲め!」

グ・ラバルの号令で、巨大な盾を構えたリザードマンがミューゼを囲む。

 

全長3メートルほどの壁が迫る。

ちなみに矢は終始降り続けており、盾にした大剣を離すことも出来ない。

…どうしたものか。

 

しかし、何か行動をしようとする度に少し違和感を感じる。

グ・ラバルは何をしているのだと。

彼は巨大な黒い両手斧を掲げているだけだ。しかし何なんだ、この胸騒ぎは。

 

グ・ラバルの口元がニヤッと笑った。

「吹き飛べ、小娘!」

 

両手斧が振り下ろされる。

ミューゼは瞬時に何が起きたか気づく。

実は…盾を構えたリザードマンは、一定距離を保ったまま【今は動いてない】。

 

ミューゼはオーラを使った中距離戦を得意とする剣士であるが…

完全に複数体に肉薄されると辛いのだ。

だと言うのに、何故彼らは距離をこれだけ空けているのだろうか?

 

…つまり、こちらからの攻撃を警戒しているのでは無く、【別の要因】から仲間を守るために配置されていたのだ。

 

「…まずい!?」

直後。

広場が大爆発を起こした。

地面に均等に振動を与えられるような、そんな心器の力を利用したのか。

地面に大量に仕掛けられていた爆弾の信管を発動させ、ミューゼだけを攻撃する。

そんな戦術を…

司令官といえリザードマンがするとは。

 

「…言っただろ?骨も残さんと!」

勝ち誇った様子でグ・ラバルが叫ぶ。

広場の中央は白煙がたちこめ、何が起きているのかがさっぱり分からないが…

 

間違いなくミューゼは木っ端微塵に吹き飛んだであろう。

この爆発の規模はそのぐらいはあった。

しかし、次の瞬間…

 

「…おらぁぁああ!!!」

「ごっ!?…ぐわぁぁぁああ!?」

 

グ・ラバルは吹き飛んだ。

彼を吹き飛ばしている物…それは、【赤い球体】に見えた。

吹き飛び、テントの壁をぶち破り、

グ・ラバルは腹の上に乗ったその赤い球体を睨み付けた。

 

「ありえん!まさか…」

「やってみるもんでしょ?」ミューゼは【球体】から姿を現す「剣のオーラを身に纏い…爆風を【斬った】のよ」

 

まさに規格外の使い方。

攻撃のために存在する概念を無理矢理防御面に生かしてしまう…そんな使い方だ。

 

「クソッ…グバアアァァア!?」

グ・ラバルは口を開きブレスを吹こうとしたが…瞬時に大剣を口にぶちこまれる。

 

「【ストローク・エンド】!」

口のなかで大剣の形がオーラを纏った鎌の形に変化…グ・ラバルの脳を貫いた。

ついでに大剣を引き抜き、心器と思われる両手斧を大剣を叩きつけて粉砕。

 

「…ワァァァ!?」

状況をようやく飲み込めたリザードマン達が逃走しようと踵を返した。

盾を構えたリザードマンすら振り向いて逃走を開始する。

…そう。

頭を潰されたリザードマンはこんなふうに潔く逃げるのである。

何匹かは尻尾をその場に残していた。

 

だが勿論そこで逃がすほど甘くはない。

「…逃がすかぁぁぁぁ!!【カースボルト・ブランディッシュ】っ!!」

赤い稲妻が煌めいた。

瞬時に耳をつんざく阿鼻叫喚が聞こえ、

そして…静かになる。

 

もし一匹でも、ちゃんと大盾をミューゼに向けて構えて置けば、生き残ったのかも知れない。

弓兵もグ・ラバルが吹き飛んだ瞬間、援護をしようと寄ってきた所だった。

 

結果、この基地にいたほぼ全てのリザードマンは、ミューゼが単身で滅ぼした。

…だが、当然彼女もただでは済まない。

 

「いっ…た…!?」ミューゼは飛び上がる「痛い…痛い痛い痛いぁぁぁぁ!?」

 

瞬く間に血の染みが地面に広がる。

ミューゼはだんだんと朦朧としてくる意識をなんとか持ち直しながら、鞄の中からポーション…ある薬草を煎じて瓶詰めした物体を取り出して飲み干した。

 

「…っぐ、ふっ…あぁ、うう…」

痛みに呻きながらミューゼは思う。

今回はかなり無茶をやった。

特に代償以外に体の関節が不味い。

あばら骨は何本か折れた可能性があり、こいつは最低でも三日は寝て過ごさないといけないだろうなぁとミューゼは思った。

 

「もう二度とするか…ばーか…」

誰に言うでもない悪態をつき、

近くに建ったテントの壁にもたれかかり、そのままズルズルと座り込む。

 

日がもうすぐで落ちる。

予定なら村に日が落ちるまでに戻っておきたかったのだが、さぁ困った。

同行者がいないのが恨めしいが、ミューゼと行動すると言うことは棺桶に片足を突っ込むのと同じことである。

ミューゼ自体は人と連続3日以上過ごす事など無いため、誰か都合のいい人でも現れないかなぁ程度にしか思っていないが。

 

…。

 

「まぁ…戻るしかないよね…自力で」よろよろと立ち上がりミューゼは自嘲ぎみに呟いた「ポーション飲んだし、痛みも引いてきた…はやく、お肉食べたい」

 

まぁニジモの村に肉などあるかどうか…あっても鶏肉が関の山ではないだろうか。

疲れた笑みを浮かべながら、ミューゼはニジモの村に向けて歩き出した。

 

 

 

 

「…は?」

 

ミューゼは呟いた。

思考が停止する。

パチパチと音が聞こえる。

何かが焦げた臭いがたちこめる。

 

…ニジモの村が、燃えていた。

ミューゼは村に入る。

民家という民家に火が放たれ、

そこらに人が転がっている。

 

「リザードマンの仕業じゃない…」

村人は…刀傷で殺されている。

そしてその時…怒号が聞こえた。

 

『お前ら、よくも俺の村を…!』

「!」

ミューゼは村長の家に急いだ。

怪我なんてもう痛くなかった。

今は一刻も早く、村を救わないと!

 

 

「こいつで最後だな」

 

ミューゼが来た頃には、十数人の鎧を着た集団に村長が斬り殺される所だった。

 

「…なにをしてる」

ミューゼの声が低くなった。

 

「あん?」男の一人がミューゼに気づいた「何だよ…冒険者か?」

 

「なにを、してるぅぅッ!!」ミューゼは男達に襲い掛かった「【エリミネイトシザーズ】!【ストローク・エンド】!【カースボルト・ブランディッシュ】!」

 

「ぐあっ」「し、死神!?」

「ぎゃああああ!?」「グホッ!」

 

「死ねっ…しねしねしねしねぅぇぇ!殺す殺す殺す殺す殺すころ…す…」

 

もう動くものなんて何も居なかった。

全員が死んだのを確認した。

奴等も、村人も。

…ミューゼは地面に崩れ落ちる。

「あ…あぁ…あ…」

 

彼らはノーザンプリスの自警団だった。

町から命からがら逃げ出したものの、恐らく備蓄が尽きたのかもしれない。

ニジモの村は大きな町との交流が

ほとんど全く無いような寒村である。

…それこそ、

【襲うにはちょうどいい村だった】。

 

「………ふざけるなよ」

ミューゼは絞り出すように言う。

ここの自警団の死体が無い。

つまり…そういうことなんだろう。

 

「どうして…私が関わると…こうなるんだよ!何で皆死ぬんだよ!ふざけるなよ!ふざけんな!うああああああッ!!」

 

大剣を地面に何度も叩きつける。

「こんなの望んでない!私は何のために、何のために苦しんだ!?目的を曲げてまで何のために戦った!?」

 

狂剣士は慟哭する。

「全部人間の為だろうがよ!!…ふざけんな…ふざけるなぁぁぁ!!!」

 

焼け落ちる村で、

それを聞いている者など誰もいない。

ミューゼはもう一度地面に大剣を叩きつけると、ふらふらと立ち上がった。

 

「…行かないと」

自分の生きる意味は何なのか。

それを探すために歩き出す。

それこそ亡霊のように。

重く、だがしっかりと。

 

【つづく】

 

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