死神勇者~生きる意味を探して   作:イオシウム生命体

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イオです!

すごい…100UA行ってりゅ!?
お気に入りも4件と、
とても嬉しいです!

書き溜めた物のデータが
数話ロストしてたのがあるので、
書き直しに時間を要するかもです。

あまりお待たせするような事には
ならないと思いたいですが、
今後とも宜しくお願いします。


8 慈悲と憤怒

ペルゼはある程度古代文字を解読することも出来、この地下遺跡の罠や仕掛けにも熟知していた。

 

「そこは踏むな。スピアトラップだ」

「うっわぁ!?」

反射的にミューゼは足を引っ込める。

「そのタイルだけ踏まないように…ここと、このタイルだけ大丈夫だから」

ペルゼは小柄な体を滑り込ませるようにすいすい進んでいくが、ミューゼは重装備のうえ両手剣を持っている。

非常に足取りは危なっかしかった。

…まぁ、ペルゼがいなければ確実にトラップのひとつやふたつに引っ掛かっていた可能性はかなり高いだろうと思われる。

 

「ペルゼが居なかったら私、あちこち引っ掛かってたかも…」

「利用してるのはこっちの方だから、協力してるだけ」ペルゼは素っ気なく言う「魔王がどうとかって、別にそこまで気にしてる訳じゃないし…」

「え?」ミューゼは首を傾げた「でも、勢力を拡大してる魔王軍がいなくなれば、もう世界に脅威は無くなるんじゃ」

「そう思う?」ペルゼは振り返ったミューゼを見つめる「私はまだ、今の時代の方が遥かに安定していると思っているけど」

 

 

道中、何度かサンドアンターの襲撃を受けたものの、あまり脅威は感じなかった。

ペルゼは植物の蔦に覆われた猟銃を操り敵を射抜いていくが、何者なのだろうか。

遺跡探掘家というのは皆、どことなく達観したような物言いをするのだろうか。しばらく探索した後、ペルゼが休憩を提案し、軽く焚き火を炊いて休むことにした。

 

「そういえばミューゼとは、3日以上行動したらいけないんだったっけ?」

「うん」ミューゼは頷いた「3日持たない人も結構居るんだけど…でも確実に、3日目に私を見ると、皆死んでしまうの」

「ふぅん…」火の調子を確かめながら、ペルゼは相槌をうつ。

 

「…ごめんなさい」

「何故謝るの?」ペルゼは顔を上げた。

「私のせいで…私と居るから貴方にも危険が及んでいるかも知れない。本当は逃げ出したいの…もう、人と一緒にいるのは嫌なの…だから…」

 

ペルゼはそれ以上何も言わなかった。

ミューゼはペルゼに背を向けて体を抱える。…涙が自然と零れてくる。

今まで一緒にいた人達の記憶が蘇ってくる…皆死んでしまった。私のせいで。

 

 

「…それって、人以外には効果有るのかしらね…?」

ポツリとペルゼが言った一言は、ミューゼには聞こえなかった。

 

 

交代で見張りをしながら、十分に休憩を取り、二人は再び調査に乗り出した。

やがて、少し狭い部屋に女神のような像が安置されている場所にたどり着く。

 

「これに…祈りを捧げれば良いのかな」

「そうよ…」ペルゼは像を睨んだ「しかしダサい女神像だわ…もう少し上手く作りなさいよね…」

「?」ミューゼは疑問に思ったが、とりあえず屈んでお祈りの姿勢をとる。

 

すると女神像の部屋の壁に書いてあった紋様が白く光り始める。

「よしよし…【生け贄よ。光差す道へ進め】って文字が出てきたわね」

ミューゼはガバッと体を起こした。

「ちょっ!?何で祈りを捧げたら生け贄になってるの私!?」

 

「私もあの門の先に行きたいの。多分【怒りの女神】は生け贄を欲している。現にさっきそう書いてあったし」

「なな、何で先に言わないのっ!?」

「言ったら嫌がるでしょ?それに調査に【何でも】協力しますって条件でこの遺跡の探索許可を依頼したのは誰かしらね?」

「そ…そんなぁ…」

「文句言わずさっさと歩きなさい死刑囚…死神なんだから死なないでしょ」

おっ…横暴だ!訴えてやる!

 

そしてランタンが無くても綺麗な白い光に照らされた文字の明かりで照らされた道を再び二人は戻る。

魔導門は閉まっていたが、ミューゼが目の前に立つと、重い岩が動くような音と共にゆっくりと開いていった。

 

「よし、開いたわね」

ミューゼの横をすり抜けるようにペルゼは先に進んだ。魔導門の先には小さな小部屋いっぱいに何かの魔方陣が描かれていた。ミューゼが恐る恐る足をのせると、魔方陣は青く輝き出す。

 

「私…どうなるの?」

「転移魔方陣だわ」ペルゼはもたつくミューゼの手を引いて中央に立たせる「目を閉じてないと、気を失うわよ」

ミューゼはキュッと目をつぶる。

一緒身体が浮いた感覚。

……

………。

 

「えっと…」

「何してるの?早く行くわよ?」

「も、もう目を開けていい?」

「…もしかして、転移魔方陣は初めて?」ペルゼはため息をついた「やれやれ…目を開けていいわよ?」

ミューゼは目を開けた。

 

…眼下に広がる大砂漠。

視力のせいで細かくは見えないが、恐らくここは…浮遊している要塞!?

 

「どあああっ!?」自分は一本の木の幹のようなような危うい足場に立っていた「すみませんペルゼさん!怖い!?怖いよここ!?マトモに安心して立ってられる足場に足場に足場にぃ!」

「…ほら」「ひっやぁぁぁ…えぅ」

 

ぐいっと手を引かれてミューゼは叫びながら後ろに倒れ込んだ。比較的ちゃんとした平原のような安定した地面に背中から落ちる。辺りを見回すと、さながら空中庭園と言ったところだろうか?船のような城のような形に、植物が空中に生い茂っている。ゆっくりと立ち上がると、少し離れた位置にペルゼの背中が見えた。

 

「まっ…待って!」ミューゼは足場を確認しながら進んでいく。

 

「ミューゼ。あなた高いところが苦手なのかしら?」嘲笑うようにペルゼが言う「随分と可愛らしい死神さんなのね」

「いや…特に高所恐怖症でもないんだけど…転移直後に宙に浮かんだ丸太の上にいたら、誰でもあぁなるんじゃないかな」

 

「んー、そう?…少なくとも私は全然なんとも無いのだけど?」

「うー…」ミューゼはペルゼの後を追い巨大な大樹の虚に足を踏み入れた「でも、ここにペオースがいるんだ…」

「そうね。【怒りの女神】はきっとこの先にいるわ…」

 

薄暗い森のような道を進んでいく。

「まぁ…本人が現れるかどうかは分からないけど…」ふとペルゼは足を止める「…なるほど…生け贄ってこういうことか」

「……っ!!」

 

ミューゼは目の前の光景に息を飲む。

この場所一帯を支えているのか、巨大な樹が生えていた。そしてその樹にはまるで…まるで実がなっているかのように大量の人のようなものが枝にぶら下がっていた。

 

「酷いものね…ここでこの城を浮かすための浮遊樹のエネルギーを…」

「た…助けないと…!」ミューゼは走り出すが、ペルゼに手を引かれる「なっ!ペルゼ、何で止めるのっ…」

「無駄よ。完全に接続されてる…木から離せば死ぬわ…それに」ペルゼはゆっくりと銃を抜く「貴方もあそこのお仲間になるつもりなのかしら?」

 

辺りを見回すといくつかの枝がまるで生きているかのようにミューゼに襲い掛かってくる…!

 

「くっ…冗談じゃない!」ミューゼは剣を構えた「こんな場所で足止めされる訳にはいかない…引き裂け稲妻!【カースボルト・ブランディッシュ】!」

 

ミューゼが横凪ぎに振った奇跡に赤い稲妻が走る。

ミューゼを捕らえようと伸ばしていた枝は引きちぎられ、ドサドサと地面に転がっていった。

 

「ぅ…ぅぁ…」「ぁぁぁぁ…」

樹に囚われている人々が呻いている。

…まるでこの樹に栄養を取られて苦しんでいるような悲鳴だった…

 

「ひ…ッ!」ミューゼの動きが止まる。

「動いて!!」ペルゼがミューゼに襲いかかろうとしていた枝を撃ち落とす「あれはあの樹が寄生体に声を上げさせてるの!騙されないで!とっくのとうにあの人達は死んでるのよ!」

 

「分かったっ…!」

頭を振り悲鳴を振り払いながら、ミューゼは樹に向けて地面を蹴った。

樹の幹にひときわ大きな、脈動しているコブがある…あれを壊せば、この人食い樹木の息の根を止める事が出来るはず…!

 

…しかし、ミューゼの目の前に大量の寄生された人が道を塞ぐように立ちはだかる。

…あれは死んでる…私はアンデッドなら何匹だって切り殺してきた…私はやれる…奴らは…アンデッドだッ…!

 

「邪魔だぁぁぁぁ!【カースボルト・ブランディッシュ】!!」

耳をつんざく沢山の悲鳴。

ミューゼはその中を走り抜け、脈動するコブには…あと少しで辿り着く。

しかし、背後からおびただしい量の枝がミューゼを捕らえようと集まってきた。

 

「…くっそ…!あと少しなのに…ッ!」

しかし枝が近づけたのはそこまでだった。何故か枝同士が絡み付き、行き先を失い地面に落ちていく…。

 

「走れぇぇぇぇぇッ!」

ペルゼの声が聞こえた。

「これで…」ミューゼは振り返らずにコブに辿り着き、両手剣を振り上げる「終わりだぁぁ!!【ストローク・エンド】!」

 

ミューゼの遺志を感じ取ったかのように、剣は巨大な鎌の形のオーラを纏わせ、コブごと巨大な樹木を一刀両断した。

 

「やった…」ミューゼは樹木が動かなくなったことを確認すると、振り返って興奮気味に叫ぶ「ペルゼすごいよ!あそこで止めてくれなかったら今頃…ペルゼ?」

 

ペルゼがうつ伏せで倒れていた。

「ペルゼ…!」

慌てて駆け寄り抱き起こす。

外傷は見当たらない。しかし息づかいは苦しそうで、額には汗を浮かべていた。

 

「全く…」ペルゼはミューゼの顔を見てニヤリと笑う「本当はここの調査が目的だったんだから、貴方があそこで死のうが、助ける義理なんて無かったんだけど…」

「ペルゼ、どこか痛むところは?一体何があったの…」

「最後の一撃のとき、貴方を襲おうとしていた枝を自分の制動下にしたの」

 

…そうか。

通常は動かない植物という物を操る自然魔法は植物と【同調】し、そう動くように働きかけることで操ることが出来る。

植物を操る魔導士は、そうやって制動下に置いた植物に何かしらの被害があった場合に同調によるフィードバックを受けてしまうのだ。つまり…

 

「わ、私…ペルゼを…斬ったの…?」

「いいえ、これは私の意志よ」ペルゼはため息をついた「お話ではあるじゃない?私ごと斬れーって奴。だからそんな顔しないで…それに」

突然地響きと共に樹が立っていた場所に木製の階段が現れた。

 

「…さぁ、偽の女神が現れたわよ」ペルゼはそう言うと、ミューゼを見つめた「私はここに置いて、さっさと行きなさい」

「でも…」

「この程度でくたばるようなら、ここまで来ないわよ…いいから行って!」

 

「…わかった…気をつけて!」

ミューゼは剣を掴むと現れた階段へ向けて駆け出した。

 

「…さて、死神様のお手並み拝見、といった所かしらね…?」

 

 

木製の階段を登っていくと、突然視界が白く塗りつぶされた。

…まるで世界が真っ青になったようだ。

浮遊しているこの場所の、天井に当たる場所なのだろうか。

そして穴だらけの地面の先には…緑ではなく、赤いワンピースを着た…

 

「ペルゼ!?」

どこをどうみてもペルゼだ。服と髪と瞳の色が赤いことを除けば。

「人間よ。なぜ抗う」ペルゼ…いや、赤いペルゼは口を開いた「我はこの地の再生の女神…しかし人々は信仰を失い、今はこの地を捨てて逃げるという愚かな選択をした。その怒りを沈める為に一月に一人生け贄を要求した…そして今日、貴様が名誉ある生け贄に選ばれたのだ!」

 

「…貴方が地上を切り離したせいで下は砂漠になってるよ…人っ子一人いやしない」ミューゼは赤いペルゼを睨む「もうこんな意味の無いことをする必要は無いんじゃないかな?」

「意味がないかどうかは、貴様が決める話ではない」赤いペルゼが手を上げると、ミューゼの足元の植物が動き出す。

 

「…っ!今日は貴方に話をするために来た!私はミューゼ、貴方が【緑光神】ペオースなら知っているはず…魔王が今どこにいるのかを!」

「何?」赤いペルゼはミューゼを睨んだ「貴様…まさか貴様がド・グオルを…?」

「…っ!でも仕方無かったんだよ!マトモに話をするどころか、私は殺され…」

 

地面が揺れる。

「…許さん」赤いペルゼは赤いオーラを纏った「許さんぞぉぉぉ!」

やはり、戦うしか無いのかっ…!

【続く】

 


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