「…………」
「…………」
現在保健室。第3アリーナの件から少し時間が経っている。ベッドの上では包帯やら湿布やらでぐるぐる巻になっている鈴とオルコットがボーっとしていた。
「別に助けてくれなくても良かったのに」
「あのまま行けば勝ってましたわ」
「イヤ無理だろ」
鈴とオルコットが強がっていたが、一夏がバッサリと切り捨てた。まぁ、鈴は頭に血を上らせず冷静に居れば勝てたかも知れないが、オルコットは機体の性能をフルに稼動できていない。あのまま行っても勝つことは無かっただろう。
「俺と草加が入らなかったら、包帯と湿布の他にギプスも巻くはめになったぞ」
「後は、機体のフルメンテ。最悪オーバーホールしてからパーツを1から組み立てることになってたかもね。2人が割って入ってくれたから通常メンテでなんとかなったって感じかな」
一夏の言葉に、デュノアが付けたし、この言葉に2人はぐうの音も出ない。確かにあの状態で続けていたら、確実にオーバーホール、もっと悪ければ廃棄の可能性も無くはない。
ある意味、今の状況はラッキーと言えるだろう。が、2人にはやっぱり納得出来ない所があるらしく、少し不機嫌そうだった。2人の様子も見たことだし、部屋に戻ろうとしたその時、
ドドドドドドッ……!
「ん?地震?」
イヤ揺れてないだろ。廊下からの地鳴りの様だ。そしてそれはだんだんと近付いている。気のせいだろうと思っているが、ドアに目を向けていると、
ドカーン!!
急にドアが吹っ飛んだ。ジャンプ系のアニメでありがちなシーンだ。修理費いくらだろう?結構高そうなドアだが。
「織斑くん!」
「デュノアくん!」
女子が雪崩れ込んできた。IS学園はその規模故に保健室と言えども普通の学校の3倍以上の広さがあるのだが、それが一気に埋め尽くされた。しかも一夏とデュノアを見つけると、我先に捕まえようと手を伸ばしているため、軽くホラー映像みたいになっている。……ホラー映像より怖いかも知れない。
「お前らここ保健室だぞ!」
「ど、どうしたの、みんな……ちょ、ちょっと落ち着いて!」
「「「これ!!」」」
その言葉を聞くと、女子生徒がバン!と一同に学内の緊急告知文が書かれた申込書を出した。
「あ?何だ?」
「『今月開催する学年別トーナメントでは、より実戦的な模擬戦闘を行うため、2人組での参加を必須とする。締め切りは―』」
「ああそこまでは良いよ。兎に角!」
そして、また手を一斉に差し出した。
「私と組もう!織斑くん!」
「私と組んで!デュノアくん!」
面倒くさい事この上なし。と言う表情をしている。しかし、一夏はこの中の誰かとペアを組むのは不味いと思っていた。自分がではない。デュノアだ。彼女の正体を知るのは、今のところ自分だけ。協力者が居れば、その人とデュノアを組ませ自分は不参加。と言うのは可能だが、生憎そんな便利な協力者なんて居ない。かと言って片足を突っ込んでしまった件を放り投げて、デュノアを見捨てるのは少々心苦しい。そのため、仕方無く一夏はデュノアを指差し、
「悪いな。俺コイツと組むから」
一夏はかなり苦い表情をしている。それを言うと、女子の波が去っていった。何故か滅茶苦茶暗い雰囲気になっていたが、一夏には全く関係がない。
静かになった保健室で、鈴が「一夏も出るなら私も出る!」と張りきり、オルコットと出ようとしたが、2人の機体の状況を伝えに来た山田先生に、ダメージレベルがCを越えていると言うことで、学年別トーナメントへの参加は不可能になった。
学年別トーナメントを2日後に控えた休日。出ると言ってしまった以上、出るしか無い。その為、今日一日は訓練に使いきろうかと思っていたが、大事なことを思い出した。
「またスマートブレイン。今度は何をやらかした?」
「何もやってねーよ。社長と話があるだけだ」
朝から外出届を出していた。
「まぁ、分かった。ついでにスマートブレインに行くならこれを渡してくれ。この前のネックレスのお返しだ」
そう言うと、千冬は一夏に、ワインを渡した。かなり高そうだ。その前に未成年になんてものを持たせてるんだ。
「せめてラッピングしろ。剥き出しで持たせるとかどんな神経してんだ?」
一夏に言われて、それもそうだと思い、綺麗にラッピングしたものを渡した。それでも調べられれば完全にアウトだけどな。置いていこうかと思ったが、後が五月蝿いので持っていくことにした。バッグに入れてだ。
数時間バイクを走らせ、スマートブレイン内に入ると、まず草加を1発ぶん殴ってから、千冬に持たされたワインを渡した。頭に投げ付けてやろうかと思ったが、騒ぎになりそうなので止めておいた。そんなことがありながら、ようやく社長室に入り、村上と話を始めた。
「お待ちしていました。それで話とは?ここでしか言えないような内容みたいですが……」
「ああ。この前来た転校生の片方の事だ」
そう言うと、一夏はデュノアの写真を村上に渡した。
「この子がどうかしましたか?」
「2人目の男性IS操縦者として学園に来たんだが、実はデュノア社からのスパイだったみたいでな。このまま行けば牢屋行きは確実だが、本人は普通に生きたいと言っている。だから……」
「彼女を助けたいと……一夏くん。私は貴方に感謝しています。ファイズギアやデルタギアの使用者として、貴方は今までにこの会社に貢献してくれました。ですので私も貴方の頼みはなるべく聞き入れたいと思っていますが、今回の件には協力出来ません。メリットが無い上に、これから逮捕者が出る可能性のある企業です。そんな企業は潰すにこしたことはありませんが、この会社が不利益を被る事は出来ません」
「メリットなら多少だがある。デュノア社はイグニッションプランからは外されたが、世界3位のIS企業だ。そこを買収すれば、ラファールの設計図が無条件で手に入る。その他にもデュノア社のIS情報や研究用に支給されたISと警備用に配備されているISのコア。そしてスマートブレインが手を加えればイグニッションプランに再び入ることも出来る。これだけメリットがあればこっちの不利益はカバーできる筈だ」
一夏の言うデュノア社買収のメリットに、村上はしばらく黙り込み考えた。
「貴方がこれほどまでに熱くなるのは珍しいですね。まぁ、確かに一夏くんの言うメリットは正しい………分かりました。やってみましょう。明日には全てが片付く筈です」
「分かった。感謝するぜ」
そのまま部屋を出て帰ろうとしたが、
「待ってください。もし私が協力しないと言った場合、貴方はどうするつもりだったんですか?」
「物理的にデュノア社を潰していた。文字通り跡形もなくな。後々面倒にはなるが、1番手っ取り早い方法でもあるからよ」
これを聞いて、今回の話を受けて良かったと心底思う村上だった。翌日のニュースで、デュノア社社長婦人とその他数名の社員が逮捕されたことと、デュノア社がスマートブレインに買収されたことは余談だろう。
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