学戦都市ッッッ   作:有楽 悠

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降魔は弐か参で終わると思います。
というか弐で終わろうと思ってたけどこの調子では参ですかね



降魔 壱

「今日の稽古はこれで終わりだ」

「「「押忍ッッッ」」」

 

学園都市に招かれてから数週間

愚地独歩はまだ自分が呼ばれた理由について理解できていなかった。

 

(上層部…)

 

独歩が呼ばれた理由は『分からない』

わざわざ交渉役として呼ばれた少年すらもその真意を知らないままに来ていた。

ここに来ればきっと依頼主が話してくれるだろう。

本能が底知れぬ戦いを見出したからここに来た。

だが…

 

「まだ、何もねェ……」

「どうしたんだ? 親父」

 

数週間経っても何もない

交渉役が連絡を忘れたなんてことはないはずだ。

あの少年は『知ってる』

そんなヘマをするわけがない。

 

「ちょっと外に出る」

 

_________________________________________

 

学園都市第七学区

中高生がその人口の殆どを占める学園都市の中心に神心会学園都市支部は場所を用意されていた。

待遇に不満なんてない。

生徒に問題があるわけでもない。

ただ

 

「分からねェ…」

「や…やめてくださいっ」

「…何だァ?」

 

考え事をしながら路地を歩く最中、何やら声が聞こえた

不穏な路地裏

 

(あん)ちゃんたち…嬢ちゃんが嫌がってんだからやめてやりな…」

「あぁ? オッサン何様のつもり?」

「何様かじゃねェと人助けする権利すらねェのかい?」

 

どうやら少女が不良グループに絡まれているようだ

異能力がどうこうと聞いていたが、なんというかこの辺の事情に関しては能力のない都市と変わりないようだ

なんて思いながら独歩が一歩前に出ると、対抗するように不良たちのリーダーと思しき男が睨みつけてくる

 

「おっさん警備員(アンチスキル)なのか知らないけどさ…武器無しどころか素手で俺らなんとかできると思ってるの? 俺レベル3だよ?」

(あん)ちゃんがどんな能力持ってるかどうかは知らねェが…」

「あぁ?」

 

不良のリーダーが一歩

いやまだ半歩にも満たないが前に進み出した

次の瞬間

 

(おい)らァ武器持たねェ主義なんだ…」

「ひ、ひぃ…」

「もう半歩前に出てたら鼻持ってかれてたなァ…」

「な、嘗めるなよ…俺は元々発火能力(パイロキネシス)の神童って言われて…‼︎」

「危ないっ!」

 

仲間の静止を振り切って少女が叫ぶとほぼ同時

レベル3による至近距離からの能力行使

怒りに任せてのそれはその1秒後にリーダーに後悔を抱かせた

『感情に任せて無駄に重い罪を犯してしまった』と

それほど確実に死を予測できる程の渾身の一撃だった

一般人相手であれば

 

「おいおい…こっちは手加減したってのに危ないじゃねェか…」

「え…⁉︎」

「な、なんで…」

「廻し受け…って言われても知らねェか」

 

「…さて」

「お、おいお前ら…」

 

気付けば取り巻きは皆消えていた。

単なる暴力によって纏め上げられた組織などあまりに脆弱

愚地独歩はただ一言呟いた

 

「まだ、()るかい?」

 

その質問を言い切るまでもなく目の前から走り去っていった。

 

「って…もうちょっと根性はねェのかァ?」

「あ、あの…」

「嬢ちゃん怪我はないかい?」

 

少女に手を伸ばそうとした

その時に気づく

 

「その『愚地独歩様へ』ってヤツ…」

「え? これですか? 実はさっき…」

「いや、悪いな」

 

背後から男の声と、機械の軋む音がする。

一度も会ったことのない不審な男

だが、独歩にはそれが只者ではないと分かった。

更に言えば、きっと彼こそがこの間の話の中に出てきた『上層部の人間』なのであろうという野生の勘も

 

「お使い頼んだところ悪いね初春ちゃん、その手紙もう捨てちゃっていいよ」

「わ、分かりましたが貴方は…」

「その手紙の送り主、木原電脳。それ以上は何も言えないし聞こうとすればきっと君は後悔する」

「は、はい…‼︎」

 

不良に絡まれていた少女

初春飾利はそれでも手紙を木原電脳に律儀に手渡し、愚地独歩の方に深々と頭を下げると、急いで路地裏から逃げ出した。

 

「それで…(おい)らァここに連れてきたのは」

「そう、私が君をここに呼ぶように頼んだ。ある程度代償だって払ったんだよ?」

 

先程までは明らかに分かる危険さだった。

不良たちがいて、少女が襲われていて、それを止めに来た大人に対して明らかに敵対的な態度をとっていた。

誰が見ようと確実に不良と少女は仲良しというわけではないだろうし、大人とも良好な関係が気付けていないと分かるだろう。

だが今はそうではない。

ただ二人の大人が向き合っているだけである。

それを見るだけではただ何か駄弁っているだけだと思われるだろう。

あるいは、路地裏で何か『良くない事』をしていると思われるかもしれないが、あからさまに不穏な空気などは流れていない。

だが、戦士の勘だけが告げていた。

お互いがお互いを危険であると信号を全力で発していた。

 

「なに、今すぐここで()ろうって言ってるわけじゃないんだよ。ただ一言挨拶をしておこうと思ってね」

「何のために呼んだんだ? 代償を払ってまでそうする必要があるような言い方だったが…」

 

独歩は警戒を緩めない。

そうして『スポーツ気分』でいればすぐ負ける相手であろうことは一眼見れば分かる。

彼はアライjr.なんかとは比べ物にならない程恐ろしい

 

「いやぁ…言い方悪いけど君だけでもないんだ。今、私は世界中から格闘者を集めていてね、後々にはオーガだって呼ぶつもりだ」

「‼︎」

「ただ確かめようと思ってるだけだよ…」

 

「私が『地上最強』だってことをね」

 

高らかなる武術の冒涜の宣言を行う

目の前の男はかつて地下格闘技場では見たことのない不吉なオーラを放っていた。




すごく久しぶりの投稿だと思いますが、これからも歩みがどれだけ遅くとも完結させるつもりだけはあります。

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