葬儀者の配達人   作:ねこねこさん

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第2話 緊急配達の依頼その1

私は以前、エッジノットシティを拠点として死体処理と死体配達の仕事をしていた。

しかし、分離過激派ヒッグス率いるテロリストによって占拠されてしまい、ポートノットシティを活動拠点に余儀なくされた。

 

ブリッジスに所属しているわけではなくフリーのポーターとして働いている。

今ではサムの繋いだカイラル通信によって都市間の死亡状況がリアルタイムに簡単に分かるようになったが、

 

通信が繋がる前は、フラジャイルエクスプレスと契約を結んでいた。

フラジャイルは瞬間移動が行えるので、都市間の死亡者の状況を把握するのが目的だった。

  

昔のことを思い出していると、

唐突にプライベートルームにメールの着信音が鳴り響いた。

カイラル通信によって広範囲になったメール通信だ。

沢山の人と話せるようになって皆テンションが高いのだろう。

多くの人々がメールに顔文字や絵文字を多用する。

それが緊急性の高いものでもシリアスな話でも使うのだから、いつも拍子抜けしてしまう。

 

メールを確認しよう。

まあ、他者とあまり繋がろうとしない私に来るメールの内容は決まって仕事なのだけれど。

 

 

差出人

マウンテン・ノットシティ[K7]

アーロン・ヒル

件名

死体の緊急配達の依頼

 

このマウンテン・ノットシティもサムのお陰でUCAに加盟できて皆喜んでいた矢先に、悲しい出来事が起きた(;_:)

山へ水分の備蓄の為に出ていた住民の1人が、山から落ちてきた岩石に当たって死んでしまったんだ。

即死で蘇生は不可能だった・・・_| ̄|○

岩石が重く、地面の起伏が激しいせいで救出用の設備を持って行くのにも時間がかかってしまった。何とか拠点まで死体を持ち帰る事は出来たが、既に10時間を経過しているんだ。

以前、スーパーセルが発生してカイラル濃度が高上昇した。

あれがまた起きる可能性もある。

ネクローシスまではあと30時間以上はあるが、今すぐなってもおかしくない状況だ。

おまけにカイラル火葬場はテロリストに占拠されていて使えなくなっている・・・

すまないが、至急マウンテン・ノットシティに来て、配送端末で依頼を受注してほしい。

m(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)mm(_ _)m

 

 

 

予報通り、

メールの内容は緊急の死体配送依頼。

 

マウンテンノットシティ周辺のカイラル火葬場は、テロリストに占拠されている為、使えない。そうなると、BT座礁地帯か高い山の上へ配達ということになる・・・

 

マウンテンノットシティは起伏が激しい。

座礁地帯か高い山の上となると、雪山に行くことになる。

雪山はあまり好きではない。

体力も普段より更に奪われる。

時雪だけで無く、不定期的に起こるホワイトアウトによってマップをしっかり見ていないとすぐに方向を見失ってしまう。

 

しかし、どんなに困難な配送であろうとも私は行こう。

歩むのを止めるのは進化をやめる事。絶滅から遠ざから為に歩かなければならない。

 

「フラジャイル、来てくれないかな?」

こういうと、フラジャイルすぐさま現れる。電話を取るよりも早く現れるから、どこからか監視しているのかと疑うくらいだ。

 

「元気そうね。フェネラル。」

案の定、一呼吸置く前にフラジャイルが現れた。

「いつも思うけど、現れるのが早すぎると思う」

やっぱり手錠端末で逐一見られてるのだろうか?

「偶々よ。こっちにも緊急配達のメールが来たし、呼ばれるだろうと思ってたのよ。」

フラジャイルはいつも黒い服で頭から下を覆っている。

とある事件でフラジャイルは首から下が壊れものになってしまった。それを隠している事も、知る者も少ない。彼女の父が死んだ時、彼女は泣きもせず、父の亡骸を自ら配達した。彼女はとても強い人間だと私は思っている。

 

「早速で悪いけど、マウンテンノットシティまでお願いできる?」

 

「話したい事もあったけど、緊急配達ならしょうがないわね。私と手を繋いで。行きたい場所を強く願って。」

フラジャイルはそう言いながら両手をこちらに差し出す。

 

「あのさ・・いつも言ってるけど、その肩のトゲトゲは何とかならないの?集中したいけど、それがブワってなるのに笑っちゃうんだけど」

 

トゲトゲ

 

 

かつてデススト ランディングが発生する前はテレビというものがあり、その中では、コミカルな人々によって番組というものが作られ、娯楽の1つとして存在していた。

 

ブリッジスのメンバーがオドラデグを付けるように、フラジャイルエクスプレスの人間は、肩にBTやカイラル濃度によって反応してトゲトゲする変な服を着ている。それが、私が昔見ていたテレビ番組に出てくる’’ボール’’に似ており、かつ、ブワっとなるのがシュールで笑いが堪えられないのだ。

 

「そんなこと言ったってしょうがないじゃない。テレビですっけ?そんなの見た事ないから分からないけど、そんなに似ているの?」

フラジャイルは困り顔でそう聞いてきた。

「私たちみたいにオドラデグを付けたりはできないの?」

そうだ、彼女達もオドラデグを使えばいいと思う。それで解決だろう。

「邪魔すぎてイヤ。そんなことより、雑念が入ったら、もしかしたら時空の狭間に落ちて一生無限ループする事になるかも知れないから集中してね」

 

なんとも恐ろしいことを言う・・・

気を取り直し、私はマウンテン・ノットシティを強く思いながらフラジャイルの手を握った。

 

 

 

 


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