SAO HR 〜深淵の巫女の日常〜   作:ジャズ

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タイトルで分かる方もいると思いますが、今回、あいつが出ます。


黒との語らい

最近、妙な噂を耳にする。

それは、《黒の剣士》がまた現れた、という話だ。

私の中で、《黒の剣士》を指す人物は少なくとも二人いる。私の師匠である『ジェネシス』と、“あいじん”である『キリト』だ。

勿論、どちらであっても帰ってきてくれたのは喜ばしい事だ。だが、噂の黒の剣士がキリトである可能性は低い。

何故ならば、キリトが帰ってきたのならば間違いなくメッセージか何かをこちらに寄越す筈だ。そしてもう一つ、この世界での黒の剣士は、多くの場合ジェネシスを指す言葉だ。

 

そう考え、私は街を歩き調査を始めた。

様々なプレイヤーに聞いて回るが、どの人も「知らない」や「噂は聞いたが見ていない」の一点張りだった。

やはり、ガセネタだったのか……少し肩を落として歩いていたその時だった。

黒鉄宮が青白く光り、中から数名のプレイヤーが出てきた。

 

「くっそ〜、よりによってまたあいつに出くわすなんてな……」

 

「あいつには前俺たちの獲物を横取りされたからな〜、今日そのお返しをしてやれるかと思ったんだが……」

 

「やはり、《黒の剣士》は伊達じゃねえな……」

 

私はそれを聞いていても立っても居られずものすごい勢いで彼らに詰め寄った。

 

「そのプレイヤーの事、教えてくれないか?!」

 

突然私が現れ少し戸惑ったプレイヤー達だったが、彼らは快く教えてくれた。

 

「いや、俺たちが この間解放されたアインクラッドの新エリアを攻略してたらな、妙に見覚えのある影が見えたんだ」

 

「そんで近づくと、驚いたよ……あの《黒の剣士》だったんだぜ」

 

「放って置こうかとも思ったんだけどよ、俺たちはあいつに色々苦渋を飲まされたからな……今ここでリベンジしてやろうと思って喧嘩売ったら、見ての通りこのザマ。あっさり返り討ちよ」

 

プレイヤー達はがっくりと肩を落としながら話す。

その話で私は確信した。間違いない、ジェネシスだと。

 

最後に、私はそのプレイヤーと最後に会った場所を聞き、その場からフルスピードでアインクラッドに向かった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

アインクラッドの火山地帯、浮遊島地帯、雪原地帯を超え、次にやって来たのは森林が深く生い茂るジャングルの地帯。

そう言えば、私とジェネシスが初めて出会い、剣を教わったのもこんな場所だったなと懐かしく感じつつ、ジェネシスらしき人物がいないか隈なく探す。

すると、遠くで大きな戦闘の音が響き、大急ぎで向かった。

 

ある程度近づいだところで、私の足は自然と止まった。

 

眼前には、総勢5名のオレンジプレイヤー。

 

そしてそれに対峙している、赤い髪に黒基調の装備を纏った長身の男性プレイヤー………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………マスター…!」

 

私の師、ジェネシスがそこに居た。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

side ジェネシス

 

 

俺が『英雄』のキリトに負けた後、意識が戻って目を開けると、俺の部屋には警察が来ていた。

まあ、大方アミュスフィアの違法改造の件で来たんだろうと思い、俺は腹を括った。

案の定、俺はアミュスフィア違法改造の容疑で逮捕、送検された。

 

別に後悔なんざしちゃいねぇ。こうなる事だって覚悟してたし、俺が自分の居場所を保つには、強くあるしか道はねぇ……そう信じてた。

そして俺が負けることもないと、信じ続けてた。

 

 

……だが、俺は負けた。あいつに……かつての『黒の剣士』、キリトに。

警察に捕まって、勾留されてる冷たいコンクリートの部屋で、来る日も来る日も考え続けた。何で俺が負けちまったのか……ってな。

あいつは弱ぇモブを何故かずっと守って、女ばっか連れてて、見た目も女っぽくて、正直コイツの何が強えんだって思ってた。はっきり言って、俺が手に入れた力があれば、あんな奴に負けるはずはねぇって思ってた。

けど……俺が負けてあの世界から消える寸前に、あいつに言われた言葉が未だに頭の中にエコーみてぇに響いてる。

 

『お前に《黒の剣士》は似合わない』

 

別に俺は、『黒の剣士』の称号が欲しくて戦ったんじゃねえ。けど、その言葉は俺の心に妙に深く突き刺さった。

 

結局、俺は執行猶予付きで釈放され自由の身となったが、答えが見出せず釈然としなかった。

で、その帰り道もずっとキリトに負けた理由を考えてた。

家に帰って、一人暮らしにはちと広え真っ暗な部屋の中で、寝転びながら飽きずに同じ事を何時間も考え続けたが、結局答えは出なかった。

 

そこで俺は、ある本を読んでみることにした。

SAO伝記だ。デスゲーム《ソードアート・オンライン》に閉じ込められた約一万人の記録を出来る限り詰め込んだ本。これを読めば、あいつの事が少しでも分かるかも知んねぇと思い、書店で購入して早速読んでみた。

 

それでやっと分かったんだ、俺が負けた理由が。

 

あいつに有って俺に無かったもの……それは《仲間》だ。

 

あいつは普段から色んな奴(女ばっかだけど)とつるんでた。もちろん、あのモブとも。

キリトがそいつらに向ける視線は、どれも親しみや友情、そう言った感情が込められてた。

だからこそ、あいつはそれらを全部背負って戦い続けてんだ。だから負けねぇ……いや、負けられねえんだ。人ってのは、守るもんがあると強くなるんだ。

……ったく、羨ましいったらありゃしねえぜ。俺は、友達とか仲間とか、そんな奴を持つことは終ぞ叶わなかったんだからな。

何でかしらねぇが、昔っから俺はいじめられっ子でよぉ。毎日が罵倒の連続だった。先公にも言った事があるが、相手にされなかった。

俺に頼れるのは、もう親だけだった。親だけは、俺の存在を肯定してくれて、虐められても親だけは慰めてくれたし、いじめのことで学校に取り合ってくれたりしてくれた。

だが、その親も事故で死んじまったんだ。

そこからはもう、自暴自棄になった。誰も俺の存在を認めてくれねぇ。生きてんのもほんと辛かったぜあの時は。

もう周りの人間は誰も信じられなくなった。俺以外の人間は皆敵に見える程に。

結局、追い詰められた俺が逃げた先は仮想世界だった。

その時俺は、『ジェネシス』という名前を使っていた。

『GENESIS』という単語には、《創世・起源》っつう意味があるんだが、俺は《新たな強い自分をつくる》と言う意味合いを込めてその名で仮想世界に降り立った。

残念ながらSAOのβテストは勿論、正式サービス版を購入する事が出来ずSAOには参加できなかったが、あの後普及したVRMMOに俺はすっかりのめり込んじまった。

あそこは虐めも何もねぇ。ただ自分が強けりゃ周りは皆認めてくれる。自分が強いモンスターやプレイヤーを倒した瞬間の快感と言ったらもう最高だった。

 

歪み出したのも、そこからだったな。

 

そこから俺は、“弱ぇ奴は淘汰される”、“強くなければ生きられない”って言う一種の強迫観念みてぇなものに取り憑かれた。そっからはもう……強くある事に手段を選ばなくなった。

あぁ、チートも使ったよ。寧ろ使いまくったよ。今思うと、ゲーマーとしてそりゃ許し難い事だが、あの頃の俺にはもうそんな事気にしてる余裕も無かった。ただ強くある事にどこまで執着し続けた。まあ、手段に問題ありまくりだったのは、もう言うまでもねぇな?

んで、いつしか付いた俺のあだ名は《ゴッドオブ・チート》……だっっせえなオイ。もうちょっと無かったのかよ。

んまあ、そう言うわけで俺はネット民からしたら《ジェネシス=チート》みてぇな不名誉なイメージが付いちまったんだ。別に、その辺のゲームでチート使おうが運営から叩き出されるだけで大事にはならなかったんだが、あまりに俺がチート使いまくるもんだからいつしか警察にも目をつけられ始めた。

で、とうとう俺はやっちまったわけよ。一番やっちゃいけねぇ、禁忌の手段……アミュスフィアの違法改造をな。

それともう一つ、脳内麻薬を分泌させて強制的に覚醒状態に持っていく電子ドラッグを作ってチートしまくった。あの世界、《SA:O》でな。

あの時も、俺はいわゆる『俺TUEEEEEEE!!!』をやりまくってたんだわ。チートだけど。んで、『これが俺の手に入れた力だあぁぁ!!』とか豪語してた。チートだけど!!

 

ああ、そうか。もう一つわかったわ、俺がキリトに負けた要因が。

そりゃ偽物の力が本物の力に勝てるわけねぇってんだ。

ってか、チート使ってて勝てねぇとかマジで笑えねえよ。

 

けどなぁ……俺の人生鑑みりゃ、俺がそんな風に歪んじまうのも仕方ねえだろ?

しかももっと悪かったのが、俺がそんな愚行に走ってるのに止めてくれる奴が誰もいなかったんだ。信頼できる仲間も、俺を信頼してくれたり大事にしてくれる奴もいなかっったし、「そのやり方は間違ってる」って、言ってくれる奴がいなかった。だから、「俺は間違ってねえ」とどんどん歪んでいったんだ。

でもまあ、そういう奴がいないのは、俺が周りの人間との間に壁を作っちまってた事も原因なんだろうが、さっきも言ったが、あの頃の俺にとっては周りの人間は全部敵だったんだ。仲間や友人が欲しいなんて、思った事も無かった。

 

だが、だからこそなんだろうな……俺が偶然目にしちまったあのモブが、昔の俺と重なって見えたんだ。

 

容姿は普段キリトが連れてるよくわからんモブと全く同じ。最初は“どうせあいつの仲間ならだれか助けにくんだろ”と思い、無視して行こうとしたんだが……何故か足が動かなかった。いや違うな。無視出来なかった、と言えば正しいな。

四、五人のプレイヤーから罵声を浴びせられながら殴るわ蹴るわ剣で斬りつけるわ散々やられてんのに、そいつ一向に反撃しねえんだよ。

要するに、力が無えから……弱えから何も出来ずにただやられるだけなんだ。そのモブの姿がな……昔虐められてた頃の俺と重なって見えて……同時にイライラしてきたんだ。

ただそれは虐めてる奴らにじゃ無え……何も反撃出来ずにやられ放題のモブにだ。

 

気がつくと、無意識に足が、手が動いてた。

手に大剣を握って、そのモブをボコってた奴らを滅多斬りにしてた。

 

プレイヤー達を片付けると、そのモブは涙目でこちらを見て来た。

それを見て、俺は余計にイライラして来た。

 

泣いてんじゃねえよ。泣いたら負けなんだよ!泣いてる暇あったら……もっと強くなろうとしろ!!

 

それで俺は決めた。

俺がこいつを強くする。この世界ではモブ……NPCは死んだら二度と復活できねえ。

だが、だからこそそんな環境でも生き残れるように……もう俺みてえな目に遭わねえように。

 

それが《ティア》だ。スペルは《Tia》だが、涙っつう意味のtearから取ってる。

初めて見たこいつの顔に、涙があったのが印象に残っててな。もうこいつが泣く事が無え様に、……負けて悔し涙を流す様な事がねえように……そんな願い、なんてものでもねえが、まあそんな意味合いで付けた。

そこから、ティアの特訓は始まったんだ。

確かに結構厳しかったかも知れねえ。けど、そうする事がこいつを強くすると俺は信じてた。

現に、ティアは学習スピードだけは異様に速くてよ。みるみる内にステータスが上がって、そんじょそこらのモンスターやプレイヤーにも負けねえくらい強くなってた。

褒めることは無かったが、内心は結構嬉しかった。照れ隠しの為に強く当たったこともあったが、それでもティアは文句を言わずただ黙々と努力し続けてた。

 

俺の親も、俺を育てる時はこんな感じだったのかねぇ……とふと思った事もある。同時に、そういえば俺を育ててくれた親には、結局何も恩返しがしてやれなんだなとも思い、少し切なくなった……。

 

だからこそ、自己満足ではあるが……こいつを誰よりも強くする事が俺のもう一つの楽しみとなった。

 

そんな時に舞い込んできたのが、《アインクラッド創世》の話だ。

俺はこのクエストを進めることにした。まあ、楽しそうというのも大きな理由だが、ティアはこのグランドクエストのNPCって言うじゃねえか。その時俺は思ったんだよ、

『俺が自分のエゴで色々教えるより、こいつの本来の役目を果たさせてやる方がいいんじゃね?』ってな。

だから俺は意地でもこのクエストを進めることにした。

なんかキリト達は『この世界のNPC達が死ぬ』だとか言って俺達の邪魔して来たから時に強引に進めてやったりもした。

 

……で、その先はもうお前らはしってんだろ。

 

するとだ、ここまで思い出して俺はある事が気になった。

 

あいつは……ティアはどうしてんのかなと。

 

俺の目に狂いがなきゃ、俺が最後に見たあいつの実力ならもう並大抵のプレイヤーやモンスターじゃティアを殺すなんざ出来ねえと思ってる。

まあ、多分キリト辺りがあいつを助けんだろ。実際戦ったからよく分かる。あいつらはそういう奴らだ。幾ら敵である俺に付き従っていたとはいえ、流石に放ったらかしにするたあ思えねえ。

けど、やっぱ心配になるじゃねえか。俺が手塩かけて育て上げた………何だろうな、弟子?っつうのか?それが俺の知らねえ間に殺されてました、なんて許せねえじゃねえか。

 

それで、俺はもう一度あの世界に行く事にしたんだ。

もしキリトとかに会ったら……まあ、詫びの一言くれえは言うつもりだ。それに、キリトがいんなら寧ろ好都合だ。あいつならティアの事を知ってそうだしな。

 

で、いざログインしてみるとだ。

 

……いねえじゃねえか。すると何だオイ、あいつらティアすっぽかしてどっか行っちまったってか?!

まあ、別に良いんだけどよ。いや寧ろ俺も何を期待してたんだよ。あいつらにティア助ける義理なんてねえしな。

 

とはいえこいつは参った。

この広い世界で、何の手がかりも無しにティアを探すのは至難の技だ。下手したらもうとっくに死んじまってる可能性もあるんだしな。

 

そこで俺は思いついた。

 

俺はこの世界では(悪い意味で)結構名が通ってる。

そいつを逆に利用しちまおうってな。

もしティアが生きてんなら、《黒の剣士》っつう名前を聞けば黙っちゃいねぇはずだ。

 

と言うわけで早速行動に移そうとして、とある事に気づく………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(無いよぉ?!剣無いよおぉ?!!!)」

 

え?ちょっと待って、俺の剣は?あの赤黒い……何だっけ?ああそう《アインツレーヴェ》だ。あれどこ行った?!メニュー欄のどこ探しても見つかんねぇんだけど?!

 

 

おかしくねぇ?しばらくログインしてないから無くなったとか?!いやそんな事あるわけねぇよな……

まあ無いもんはしゃあねえ。幸い他の剣は残ってたからとりあえずはそれを使っとくか。くっそ〜、気に入ってたのにあれ……

 

するとだ、とあるもんが俺の目に止まった。

空に浮かぶ、大きな島。多少ばらけてはいるが、 それは俺も知ってる奴だった。

 

「アインクラッド……」

 

それがこの世界にあるって事は、どうやらティアは祈りを捧げちまったみてぇだな。見たところ不完全だが、多分それは俺が負けてやけっぱちになったティアが、本来はもう1人の双子と揃って祈らなきゃいけねえとこを一人でやっちまったからなんだろうな。

となると……ティアは死んじまったのか?可能性としてはそっちが高えな。アインクラッド創世をやっといてティアが無事とは思えねえ。

 

はあ、それならしゃあねえな。残念ではあるが、あいつが選んだ道だ。いや、ティアにその選択をさせたのは俺の責任か。

 

となると、どうするかな……ティアがいねえんならもうこの世界に用はねえが……まあ、ティアが最期に必死に頑張った成果を見てやるのも師匠である俺の務めだわな。

せっかくだ、アインクラッド見に行ってみるか。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

しっかし、何とまあグッチャグチャなアインクラッドだ。

足場も不安定だし、モンスターのレベルもガバガバだし、中途半端だ。こんなとこに攻略にくるやつは相当な物好きか生粋のゲーマーくれえだろ。

 

途中何人か俺の顔見て斬りかかってくる奴がいたが、全員蹴散らして黒鉄宮送りにしてやったぜ。多分あれだ、前に俺がモンスター横取りした連中だ。

全く小せえ連中だなオイ。何だよ雑魚モンスター一匹横取りしたくれえで恨み買うとか。

 

そんで暫く歩いてたら目の前に五人くらいの連中が俺を囲んで来やがった。よく見たらそのカーソルは揃って皆オレンジ。

んで、顔を見て思い出した。俺結構人の顔覚えるの得意でな、印象に残った奴とかムカついた奴の顔はぜってえに忘れねえの。まあそれも、イジメとか受けてた時に、俺をいじめた奴全員覚えてやるってやってたら身についた術なんだがな。

そんでこいつらは、モンスターに襲われて死にかけてた所を俺が親切に通りかかってモンスターを代わりに蹴散らしてやったんだ。なのにこいつら、礼を言うどころか「俺たちの獲物を横取りするな!」とか言い出して俺に喧嘩降ってきたんだわ。

ふざけんな。何だそれは。てめぇらが死にかけてた所を助けてやったんだぞ?恨みを買われる筋合いはねぇっつうの。

にしても、一対五か……人数差が多いな。幸いステータスは下がってねえからここまでやってこれたが、少々ブランクがあるからな…ちとこれは厳しいかもしれねえ。

 

え、なに?俺この世界でもイジメられんの?

…泣くよ?俺そろそろ本当になくよお?!!

 

あーあ、せっかく戻ってきたけど、この世界ほんとロクなことねえわ。こいつら片付けたらさっさと帰ろ。

 

そう思って剣を抜き、戦闘態勢に入った時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その人に手を出すな!!」

 

何処からか女の声が響き、直後目の前のオレンジどもが斬り捨てられた。

 

オレンジプレイヤーの5人が消えて、次に現れたのはボンキュッボンの美女だった。

銀髪に白いマントを羽織り、だいたい身長は俺より十センチくらい小せえかな?

それで手に持ってるのは………え?アインツレーヴェ?!

ちょっとオオォォォォ!!!それ俺の剣んんん!!!

 

何でコイツが俺の剣を……と思ってよく見ると、カーソルの色見たらどうもコイツNPCじゃねえか。

何でこんな美人のNPCが俺を助けてくれたんですかねぇ?俺コイツになんかしたっけな…と、そこまで思ってふと何故かティアの顔が頭に浮かんだ。

 

いや、俺の知ってるティアと目の前の美人は似ても似つかな……いや、少しは似てるかな?

でもそもそも身長違うし、目の前の女はボンキュッボンだがティアは少なくともキュッキュッキュだったし、髪は黒だったはずだし……

 

ああ、そうだよ。そんなわけねえんだよ。ねぇんだけど……なんでかなぁ?その時俺の口が、勝手にこう漏らしやがった。

 

 

「お前……ティア、か?」

 

言った後に『しまった!』と思って慌てて口を抑えようとしたが、

 

「………っ!」

 

 

目の前の女の顔見て口を抑えようとしてた手が止まった。

いや、何だよその顔は?まさか本当にティアだってのか?

 

すると突如、目の前の女が光に包まれ、一瞬の閃光ののちにまた姿を現した。

いや、出てきたのは全くの別人で………それで、相変わらず髪は銀髪だが……俺のよく知る奴だった。

 

「…お久しぶりです、マスター」

 

やっぱティアだった。

いやいや、一体どう言うことだってばよ。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

ティアside

 

漸く出会えた、私の恩人。

しかも、姿が変わったにもかかわらず、私だと気付いてくれた。体の内から強烈な喜びが熱となって湧きあがり、体温が急上昇するのを感じる。

 

私とジェネシスは、そこから少し離れたところに森林の中で開けた場所があったのでそこへ身を移し、ジェネシスは木の株、私は向かい側にあった倒れていた木の幹に腰を下ろした。(因みに姿は大人の方に戻っている)

 

座ったはいいものの、一体なにを話せばいいのかもわからず、ただ静寂が辺りを包み、風の通り抜ける音が響くのみだった。

 

「あー、その…なんだ……」

 

先に口を開いたのは、ジェネシスの方だった。

 

「とりあえず、話してくれるか?お前の身に一体何があったのか……そんで今まで、何をして過ごしてたのか」

 

 

私は頷くと、今まで起こったことを全て洗いざらい話した。

 

ジェネシスがいなくなって、ヤケになってアインクラッドを1人で作ったこと。

それをアイングラウンドに落として世界を滅ぼそうとしたのをキリト達に止められたこと。

1人で彷徨っていた時に特異点に触れてしまい、姿が変わってしまったこと。

それによって出来てしまった未来の意識の干渉と頭痛に苛まれていたこと。

それをキリト達に助けられ、人との繋がりの大切さと、私には様々な可能性がある事を教えられたこと。

 

「……これが、私に起こった事です」

 

私の長い話に、ジェネシスは目を閉じて黙って聞いていた。

私が話し終えると、ジェネシスは少し息を吐き、

 

「……やっぱり、お前はあいつらといたんだな」

 

 

と口にする。

それを聞いて私は少し申し訳なくなった。

かつてこの人とキリトは敵同士で、しかも世界の命運を賭けて一騎打ちまでやったのだ。

弟子が敵と一緒にいるなど、許せない事だろう。

 

「…ごめんなさい。でも、彼らは……!」

 

「ああいや、いいんだ。別にお前があいつらといようが構わねえよ」

 

てっきり怒られると思っていた私はあっけにとられた。

 

「え?」

 

「……何だ?俺が怒ると思ったのか?

そりゃ見当違いだぜ。俺はあいつらがお前を助けてるんだろうって事は予想してた。あいつはそう言う奴だしな。

それよか当のあいつら今どこにいんだよ?」

 

「…彼らは今、《ガンゲイル・オンライン》という世界に」

 

「は?あんな玄人向けのゲームに何だってあいつらが……ってか、お前は行かなかったのかよ?」

 

私は頷いた。

 

「私も最初は、彼らと行くことも考えました。

でも……私には、まだこの世界でやる事がありましたから……」

 

「……お前のやる事?」

 

「はい」

 

そして私は、一つずつ語った。

 

アインクラッド創世で犠牲になったNPC達への贖罪のため、この世界の美味しい料理を堪能するため、そしてこの世界で不当な扱いを受けているNPC達を守るために、この世界に残った事を。

 

「……つまりお前は、NPCを殺した罪滅ぼしも兼ねて、お前と同じような奴を救ってやってると……そう言うわけか……」

 

「はい。それが、私の使命だと信じていますから」

 

私はきっぱりと答えた。

 

「ふーーん、なるほどねぇ…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

烏滸がましいんじゃねえの?それは」

 

「……え?」

 

私は、ジェネシスから発せられた言動に言葉を失った。

 

「お前1人で世界中のNPCを救う?そりゃ立派なことだ。お前に殺されたNPC達も喜んでるだろうよ。

けどよ、この世界に存在する何百何千のNPCを全部お前が1人で救うつもりか?そりゃ無理だろ。寧ろ、お前が救えんのは精々氷山の一角程度だ。それ以外は絶対に助けられねえ。

それに、この世界にくる人間どもはお前らの事をただのモブとしか捉えてねえ。キリトみたいな連中もいるって?あんな奴らはほんの稀だ、十人に一人いればいいくらいだぜ。

 

つまり何が言いてえかというとだな……お前の行為には絶対に終わりはねえ。誰からも感謝されねえし、寧ろお前は敵を増やしてるだけだ、現実世界からくるプレイヤーっていうな。

 

決して無駄だとは言わねえよ。それでも救えてる奴もいるみてえだしな。だがそれ以上に…………お前が損してるぜ」

 

私は何も言えなくなった。

確かにそうだ。NPCを襲うプレイヤーを倒しても、奴らはまた復活するし、私が今まで以上に目をつけられて狙われるリスクも増える。

 

「いいか、お前は神じゃねえんだ。全部を救おうなんざ百年かかっても無理だ…………

お前はそれでも、助けるつもりなのか?」

 

ジェネシスはかつての様に、鋭い目つきで私に問いかける。懐かしくもあるその威圧感に少し押されそうになるが、それでも私はジェネシスを見据えて答えた。

 

「……私は、それでも助けたい」

 

「それは何故だ?」

 

「確かに貴方の言う通り、私に救えるのはほんの一握りかもしれない。でも、それでも……それでも助けられる者がいるなら、私は迷わず手を伸ばしたい!私の様に、人から不当な扱いを受けるNPCを一人でも減らしたいんです!

私のような人間は、私一人で十分だ……これ以上悲しい思いをするNPCを増やしたくない!」

 

私は毅然とした態度で答えた。

ジェネシスは黙って私を見つめながら聞いていた。

 

「……はっ」

 

突如ジェネシスは軽く笑った。

 

「……随分と言うようになったじゃねえかティア。右も左もわからなかったあの頃とは見違える様だぜ。

けど、お前一人じゃ結局無理だ。それはあいつらに学んだはずだろ?」

 

「そ、それは……」

 

「第一、お前も死んだら終わりのNPC何だ。NPCの守護者たるお前が死んじまえば本末転倒だろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺も手伝ってやるよ」

 

「……え?」

 

思わぬ言葉に私は耳を疑った。

 

「だから、俺も手伝ってやるってんだよ。お前だけじゃ危なっかしくて仕方ねえ。大体こう言うのは俺たち現実の人間がやらなきゃ意味ねえだろ?それに、弟子の頑張りを応援しねえなんて師匠失格だろうが」

 

「……っ、マスター!!」

 

私はもう思わず抱きついてしまった。

ジェネシスは困った様な顔をしながら

 

「バカ!抱きつくんじゃねえ!お前もう小さくねえんだからよ!!」

 

そう叫びながら私を引き剥がそうとする。

だが私には分かる。この時のジェネシスの顔からは嬉しさの感情もあると。

内心喜んでるのに外面では突き放す態度をとる……なるほど、これが所謂《ツンデレ》と言うやつか。

 

なにはともあれ、ジェネシスがいてくれるならこれ以上嬉しい事はない。ようやく、またこの人と一緒に過ごせる事はこれ以上ない幸せだ。

 

 

 

〜おまけ〜

 

「帰ったぞ、ゼロ」

 

始まりの街の宿に、私はジェネシスを連れて戻った。

 

「あ、お帰り姉ちゃん!」

 

ゼロはトテトテと歩いてこちらに向かってくる。

 

「オイオイ、何でこんなトコにお前の片割れがいやがんだ?GGOに行ってるんじゃなかったのかよ」

 

ジェネシスはゼロの姿を見て私に尋ねる。

 

「マスター、違いますよ。コイツはゼロ。私の妹です」

 

「はぇ〜〜、てめえらは三つ子だったのか?

まあ、今のお前見たら誰もあの片割れと双子だなんて信じねえだろうけどな」

 

「姉ちゃん、この人は?」

 

ゼロはジェネシスの方を見て疑問符を浮かべている。

 

「ああ、お前は知らないんだったな。

この人はジェネシス。私の恩人だ」

 

ジェネシスはしゃがんでゼロと視線を合わせ、

 

「よぉ〜、俺の弟子が変な教え方とかしてねえか?」

 

「…マスター、それはどう言う事でしょうか?」

 

ゼロはじっとジェネシスを見つめていたが、ふと「スゥ〜」と息を吸い込み、叫んだ。

 

「おまわりさああぁぁぁぁん!!!!!」

 

「オイイイイィィィィィ!!ティア、コイツ今すぐ摘み出せええぇぇぇぇぇ!!」

 

 

 

 

 




お読みいただきありがとうございます。
この話は、自分が一番書きたかった話です。
ホロリアのDLCでティアの救済がされましたが、自分としてはまだ不完全燃焼だったんです。
なぜかと言うと、ティアの本当の救済はジェネシスとの再会、若しくはジェネシスがキリトの仲間に加入する事で叶えられると思うからです。
ジェネシスはpohやゲ須郷みたいな根っからの悪じゃないんですよ、絶対に。SAOの雑誌では、ジェネシスの事をこんな風に書いてました。《英雄になれなかった男》だと。
つまり、ジェネシスは仲間さえいればキリトの様な英雄になり得たプレイヤーであり、逆に言えばキリトにもしアスナやその他の仲間がいなければキリトもジェネシスの様になり得たのであって、キリトとジェネシスはお互いがお互いの一つの可能性なんですよね。
その点をホロリアで描いてくれれば、ジェネシスはキリトの噛ませだとか言われることもなかったと思うと、凄く残念です。
なので、私はティアの本当の救いを目指し、この話、ひいてはこの小説を始めました。そして私は雑誌や媒体で得たジェネシスの情報を元に自身の妄想を付け足しながらこの話を描き進めました。

みなさんのジェネシスに対するイメージが少しでも変わっていただけたのなら、私はこの話は大きな成功を得たと言えます。
因みに、この小説はまだ続く予定ですので、引き続き宜しくお願いします。
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