SAO HR 〜深淵の巫女の日常〜   作:ジャズ

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ハッピーハロウィン!
というわけでハロウィンネタです。


ハロウィンデート

 

ハロウィン。それは10月の末の日に訪れる仮装の祭典。カボチャのランプや悪魔のコスプレなど、特に若者は各々に仮装したりお菓子を交換して楽しんでいる。

そして、最近ではオンラインゲームでもハロウィンの季節になると限定のアイテムや衣装が追加される。

無論、この《SA:O》も例外ではなく、プレイヤー達は普段見ない格好で街を歩き、ハロウィン限定のクエストやアイテムを求めフィールドへ赴く。

 

「はあ〜〜……ったく、世間じゃハロウィンばっかだな」

 

アイングラウンドの始まりの街の一角にあるカフェで、普段見慣れないハロウィンの妖しさ漂う街を見回し、普段通りの黒い装備を身につけた男、ジェネシスは独りごちた。

 

「この世界に来てまで仮装とかなんなんだ一体。つかこのゲームのアバター自体仮装みてぇなもんだろが」

 

全く元も子もない発言である。

すると、彼の元へ一人の男性プレイヤーが駆け寄ってきた。

 

「ちょ、ちょっとあんた!!」

 

「あん?んだよ一体」

 

ぶっきらぼうに答えるジェネシスに対し、男性は焦った顔で答えた。

 

「なあ、あれあんたの連れだろ?!あいつどうにかしてくれよ!!ハロウィンパーティが台無しだ!!」

 

「あいつ……?」

 

嫌な予感がし、ジェネシスは男性が指差す方へ視線を移す。その目に映ったのは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お菓子寄越せコラアァァァァァァァ!!!!!!!」

 

大声で叫びながら、斧を振り回してプレイヤーを追い回すゼロだった。

 

「何やってんだオメェはあああぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

ジェネシスは飛び出し、ゼロを思い切り蹴飛ばした。

 

「アァァァァァーー!!いきなり何するんですか兄貴?!!」

 

ゼロは涙目でジェネシスを睨んだ。

 

「そりゃこっちのセリフだコラ!何でハロウィンでお菓子の恫喝まがいのことしてやがんだテメェ!!」

 

「だってだって!ハロウィンは《お菓子狩り》って言う祭りなんでしょ?!!」

 

「ハロウィンがそんなバイオレンスな祭りな訳ねぇだろうが!!誰がそんな事教えやがったんだ!!」

 

「キリトです!」

 

「…あいつ今度こそしばき倒してやる……!」

 

因みにこれは、キリトが「ハロウィンは仮装してお菓子を交換して楽しむ祭り」と言うのを、どういうわけかゼロがお菓子のことで拡大解釈してしまったのである。

 

その後、ジェネシスがゼロを連れて迷惑をかけたプレイヤーに誤って回り、事なきを得た。

 

「……たく、最悪の日だぜ……」

 

やっとの思いでジェネシスは宿の部屋に戻り、椅子に腰掛けた。

 

「でも、みんないい人で良かったです!ちゃんと許してくれたし、お菓子もいっぱいくれて」

 

ゼロは両手いっぱいに抱えたお菓子にご機嫌である。

ジェネシスとゼロが謝りに回ったときに、プレイヤー達がせっかくのハロウィンだから、という事でお菓子をくれたのだ。

 

「誰のせいでこうなったと思ったんだテメェコラ」

 

「良きに計らえ」

 

「何言ってだコイツ」

 

上機嫌過ぎて会話が成り立たなくなったゼロにジェネシスは困惑する。

すると、部屋のドアが開かれ、一人の女性が入ってきた。

 

ティアだった。

 

頭にはツノの生えたカチューシャをつけ、胸元が網目状にはだけており、背中からは羽が生え、艶のある太ももが露出した黒いミニスカートを履いた、所謂小悪魔コスプレという奴を身につけている。

 

「何だ、ティア?その格好は」

 

「今日はハロウィンですよ?楽しまなければ損、という奴でしょう」

 

ティアはあっけらかんと答える。

 

「ほらゼロ、こう言うのだよこういうの」

 

ジェネシスはティアを指差しながらゼロに言う。

 

「え?どう言うの?」

 

「……だめだコイツは」

 

ゼロはもらったお菓子を口いっぱいに詰め込んでリスみたいな顔になりながらキョトンと首をかしげる。

そんなゼロを見てジェネシスは頭を抱えた。

 

「……あ、あの……マスター」

 

ティアは頬を赤らめモジモジとしながらジェネシスを呼ぶ。

 

「姉ちゃんなにそんなモジモジしてるの?トイレ?」

 

「ゲーム内でトイレなんかあるかバカ」

 

ゼロとジェネシスのそんなやり取りを他所に、ティアは指をツンツンと突きながら普段の毅然とした彼女からは想像もつかないしおらしい態度でジェネシスに問いかけた。

 

「その……私、この格好…………似合って、ますか……?」

 

ティアはもう顔が赤過ぎてりんごみたいな事になっている。

だがジェネシスはそんな事気にせず、普段通りの態度で答えた。

 

「あー……いんじゃね?」

 

その瞬間、ティアの顔がパアッと輝き、

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「お、おう……」

 

はしゃぐティアを見てジェネシスはまた困惑した。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

「マスター、少し街を歩きませんか?」

 

悪魔コスプレから普段の衣装に戻ったティアがジェネシスに尋ねた。

 

「は?街を?何でまた」

 

「今日はハロウィンという事で、街ではハロウィンに合わせた色々なアイテムや料理が出ているらしいですよ」

 

「それなら別に俺じゃなくていいだろ。それこそゼロと一緒に回っていけば良いじゃねえか」

 

「私は今お菓子を食べてるので遠慮しときまーす」

 

ゼロはお菓子を頬張りながら答えた。

 

「あっそ……しょうがねえなぁ。さっさと行くぞ」

 

「はい」

 

そう言って、ジェネシスとティアは並んで歩き出した。

 

「ごゆっくり〜」

 

能天気なゼロの声が部屋から響いた。

 

 

街はもう夜になっており、ハロウィンに合わせた電灯や建物の飾りの雰囲気も相まって普段以上の幻想的な雰囲気を醸し出していた。

 

「……綺麗ですね」

 

「ん〜?まあ、そうだな」

 

他愛もない会話を交わしながら、二人はゆっくりと足を進める。

途中、奇抜なハロウィンの格好をしたプレイヤーとすれ違い苦笑したり戸惑ったりしながら、普段は見られない景色を堪能した。

 

「そういやお前、会話が結構……何つうか、自然というか、上手くなったな」

 

「そうですか?……まあ、あれから様々な事を学びましたからね。セブン……七色博士の計らいで現実世界の書物を読んだり、キリト達からも教わりましたから」

 

「あっちの本なんか読んでんのか……どんな本読んでんだ?」

 

「最近ハマっているのが、ミステリー系の小説ですね。複数存在する犯人候補が、徐々に絞られて特定されるまでの経緯が、予測不能で面白いです」

 

「随分とまあ渋いの読んでんな……それならいっそ、七色博士だっけ?そいつに頼んでYouTubeとか現実のテレビが見れるようにしてもらえよ。書物もいいが、映像を見るのもまた勉強になることが多いぜ。

特に、ミステリーが好きなら刑事ドラマとかオススメだ。本読んでイメージするより、実際の人の表情とか動きを見る方がより迫力あるし、面白い」

 

「そうなんですか。では、今度博士に頼んでみます」

 

そんなやり取りをしていると、ティアがいつも通っている喫茶店にたどり着いた。

その店はハロウィン限定のドリンクとしてイチゴミルクのスムージーが売っていた。

 

「おっ、イチゴミルクか。俺結構好きなんだよな」

 

意外にも、イチゴミルクに食いついたのはジェネシスだった。

 

「イチゴミルクが好物なのですか?可愛いものを飲んでいますね」

 

ティアが揶揄うように笑いながらいう。

 

「うっせ。俺は甘党なんだよ」

 

「へえ、そうなのですか。それはまた、貴重な情報ですね」

 

そして二人は早速イチゴミルクのスムージーを購入し、早速それを口に流し込む。

 

「〜〜っ!やっぱこの甘さがいいんだよイチゴミルクは!」

 

「ふふっ、そうですね。この甘さはクセになりそうです」

 

好物のイチゴミルクを飲んで一気にテンションが上がったジェネシスに、ティアは優しく微笑んで返す。

二人はイチゴミルクをゆっくりと味わいながら再びオレンジの街灯が灯る煉瓦造りの道を歩いて行く。

 

「……不思議です」

 

「んあ?何がだよ」

 

不意にティアが切り出す。

 

「貴方とこうして街を並んで歩いているのが、とても不思議に思えたんです」

 

「…別に初めてじゃねえだろう?ほんの一ヶ月ちょい前は一緒にフィールドを歩き回ってたじゃねえか」

 

「そうですね……あの時間は私にとってかけがえのない大切な時間です。今も昔も、そしてこれからも……だから貴方がこの世界から消えて、もうその時間は返ってこないんだと思っていました」

 

ティアがしんみりとした雰囲気で語る。

ジェネシスは気まずい顔になって何も言わなくなった。

 

「だからこそ、こうして貴方と歩いているのが、まるで夢のように思えるんです。貴方が……ジェネシスがまた、私の隣で歩いてくれているということが……」

 

そしてティアは立ち止まる。ジェネシスもそれに合わせて止まり、ティアの方を振り向く。

 

「だから、ありがとう…ジェネシス。帰ってきてくれて……私の元に、戻ってきてくれて」

 

満面の笑みで、ティアはジェネシスの目をまっすぐに見つめながらそう告げた。

 

「………//」

 

ティアの言葉で若干頬が赤くなるジェネシス。

彼にとってティアは、弟子であり、娘のような存在であって決して恋愛対象ではない。

これがもし、ティアの姿が昔のまま、つまりプレミアやゼロと同じ姿だったなら、ジェネシスは普段通りでいられただろう。しかし、今のティアの姿は言わずもがな、さながら二十代の大人の女性。しかもその美貌は、あの美少女に囲まれハーレム状態のキリトですら見とれてしまうほどであり、そんな美女に満面の笑顔でそのような情熱的な事を言われたら誰だって心が揺れ動くだろう。

 

自身の照れを隠すように、ジェネシスはさっと前を向き、

 

「〜〜〜っ!あーーーもう調子狂うわ!とりあえず行くぞ!好きなの奢ってやるから!」

 

「おや、照れ隠しですか?」

 

「うっっせ!!」

 

どんどん歩き出すジェネシスに寄り添うように、ティアはついて行く。

街の街灯は、彼等の再開と新たな出発を祝うように、ジェネシスとティアの二人を煌々と照らした。

 

ジェネシスにとって今日は、一生記憶に残るハロウィンになりそうだ。

 

 

 

 




お読みいただきありがとうございます。
ハロウィンという事で甘いものを、と思いこの話を書きました。
ティアは一応キリトに惚れていることになりますが、ジェネシスとまた会ったらきっとそっちに気が移るはずだと思いこのような展開にしてみました。
ジェネシスとティアの師弟カップル……本当に尊いです。どうか本当に結ばれてくれないかな。
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