事務所にて
よく兄さんからは自分のことも考えなよって言われるけど....私ってそこまで無理をしているのかしら?
「あれ?どうしたの?千聖ちゃん。」
「.....え?なんでもないわよ。」
「もしかして千聖ちゃん何か悩んでるのー?」
「いえ、特に何も悩んでいないわよ。」
「えーそうなのー、普段よりも周りを気にする仕草が多いよ?」
「そ、そうかしら.....?」
「はい!!チサトさんが普段に比べて少しよそよそしいです!!」
「何かあるなら自分たちが相談にのりますよ?」
「.....なら聞いてくれるかしら?」
「え!?優希さんにきつく言っちゃった!?」
「それっていつもの話じゃないのー?」
「いえ.....今日は違うのよ。その、兄さんから『千聖、最近仕事ばっかりだけど大丈夫?無理したらダメだよ。』って言われて.....」
「それで?その後はどうなったんですか?」
「そこで.....『私ももうそこまで子供じゃないわよ!!』って普段なら普通に返すのについ強めに言っちゃったのよ.....」
「それって疲れてるって遠回しに教えてない.....?」
「そうなのかしら?」
「そうですね.....では私たちからのプレゼントが役に立つ時がきましたね!!」
「プレゼント.....?」
「うん!!私たちってその芸能人としてもアイドルとしてもまだまだ未熟だから千聖ちゃんに色々負担や迷惑をかけてるところもあるんじゃないかなって。」
「別にそんな事思ってないわよ。むしろ私は皆に救われた側だし。」
「まぁそれでも、自分たちを支えてくださった千聖さんの為に自分たちから色々用意しました!!」
「あの....なんで急に?」
「え!?千聖ちゃん今日誕生日だよ!?忘れてる?」
「誕生日....そういえばそうだったかしら?」
「わ、忘れてたの.....」
「あはは.....それはともかくですね、ついてきてください!!準備をしていますので!!」
「え、ちょ、ちょっと!?」
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「なにこの怪しい雰囲気.....?」
私は彩ちゃん達に怪しい雰囲気のところに連れていかれた。でもここ事務所内だしこんなところあったのかしら.....
「ちょっと借りたんです!!」
「そ、そうなの.....それにしてもいい匂いね。少し落ち着くわ。」
「ふっふっふっ.....日菜ちゃん特製のアロマだよ!!」
「あら.....こんなことの為に、ありがとう。」
「むーっ....千聖ちゃん、こんなことじゃないよ。あたし達にとって千聖ちゃんは大事な友達だからね!!」
友達.....私は一人の人間として見られている。前まではそれが怖かったけれど.....今は違う。私も恵まれているわね。
「友達....ええ、そうね。今日はこの厚意をありがたく受けとらせてもらうわ。」
「うんうん、そうこなくっちゃ!!」
「じゃあまずは私とイヴちゃんの番だね.....」
「はい!!修行の成果を見せましょう!!」
「彩ちゃん!?何をするの!?」
急に彩ちゃんが私の服を脱がそうとしてきた。一体何をするつもりなのよ.....
「ああごめん!!今からマッサージするから服脱いでくれた方がやりやすいんだ、あと靴下も!!」
「なら、そう言ってくれればいいのに.....」
彩ちゃんの反射的行動は時々恐怖を感じるわ.....無人島に行った時も小屋の中で一悶着あったし。
「じゃあ行くね.....ちょっと力の方は自信ないけど。」
「あっ.....結構痛いわね。」
「そ、そう?麻弥ちゃんで試した時はそんなこと無かったけど.....」
「そうなの?麻弥ちゃんの方が重い荷物とか沢山持ってるから結構凝りそうなイメージがあるのだけれど.....」
「おそらく台本を熟読する時間が長いからじゃないでしょうか?ジブンは流れと最低限のセリフしか見てませんけど、千聖さんは全部覚えた上でどう立ち回ろうか考えてる感じがします。」
「特に彩ちゃんがとちっちゃう部分とかは的確すぎるくらいフォロー出来てるよねー。」
「日菜ちゃん!?そんなにとちってないよ!!」
「まぁ....彩ちゃんがミスをするのはひとつの売りだからあれだけれど....大事な部分でミスをするのは避けたいからどいしても見てしまうのよね。」
「そ、そうなんだ.....なんかごめんね。」
「気にする必要はないわ。私が個人的にやっているもの。お客さんの中には『彩ちゃんのとちって焦るところが見たいからフォローいらないよ!!』なんて直接言ってくる人がいるくらいだもの。」
「ファンの人がいてくれるのは嬉しいけど.....なんか複雑。」
「どうですか?チサトさん。」
「イヴちゃんのマッサージも凄いわ。整体院にはあまり行かない方だけど.....慣れた手付きね。」
「はい!!実際にお店の人に教えてもらいました!!」
「そ、そこまでしたの....?」
驚いた。まさかそこまでしていたなんて.....私はそれに見合うお返しをしないといけないわね。イヴちゃんの誕生日に。
「ふぅ....ありがとう。疲れも取れたみたいだわ。」
「それなら良かった!!ね、イヴちゃん?」
「はい!!これぞ恩返しというやつですね!!」
「ふふっ、なら私も今日沢山恩を貰ったからみんなの誕生日でも頑張らないとね。」
どんなことをしようかしら....まだ先なのに考えてしまうわね。
「じゃあ最後はジブンからですね。ジブンはあまりいいプレゼントが思いつかなかったのでこれにしました。」
「これは.....エフェクター?」
「はい!!普段の千聖さんの音はパスパレの方向性を考慮して繊細な音を出すことが多いんですよ。だからこのエフェクターを使って、歪んでいる過激な音を味わって欲しいんです!!」
「これでそれが出来るのね?」
「はい!!ジブン元々スタジオミュージシャンでしたから、その性が残っているのか千聖さんもベースそのものを楽しんで欲しいんです!!」
「なるほど.....私が知らない道ということかしら?」
「まぁ砕けばそういうことですね。機材には自信はあるんですけど、喜んでもらえるかの自信はあまりないんですけどね.....」
「いいえ、そうやって私のことを考えてくれてプレゼントを用意してくれたその気持ちだけでも嬉しいのよ。気にすることないわ。麻弥ちゃんなりに私を考えてくれたもの.....大事に使わせてもらうわ。ほとんど家で使うことになるでしょうけど.....」
「ホントですか!?良かったです.....また何か機材のことで知りたかったらなんでも聞いてくださいね!!」
麻弥ちゃんも一緒にそういうことを語る仲間が欲しいのね.....素直で可愛いわよ。
「千聖ちゃん、リラックス出来た?」
「ええ....心も体もどっちもね。ここまでやってくれたこと、本当に感謝するわ。」
「えへへ.....また明日からも一緒に頑張ろうね!!千聖ちゃん!!」
「ええ.....なら彩ちゃん、明日は噛まずに成功させてもらいたいわね♪」
「え....それは少し厳しいところが。」
「ふふっ、大丈夫よ。今のは冗談だから。」
「良かったぁ.....」
「ふふっ、そこで『言われなくても噛まないよ!!』って言ってくれるまではまだまだね。」
「うん....そこは努力します。」
今日が誕生日だって忘れてたけど....こんなにもしてもらえて内心本当に満足しているのね。体が軽いわ。
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夕方 白鷺家
「ただいま.....」
す、少し気まずいわね.....朝ちょっと大きい声を上げちゃったし。
パァン!!!
「.....え?」
「千聖、お誕生日おめでとう!!」
「に、兄さん....」
「ん?どうしたの?千聖。」
「朝のことはもう気にしてないの?」
「朝.....あぁあれか。あれはごめんなさいとしか言いようがないよ。千聖が疲れているのに無駄なお節介やいちゃったから。」
「べ、別に兄さんが悪い訳じゃないのよ.....ただ、疲れてることを理由に雑に扱ってしまった私にも非があるし.....」
まさか私が兄さんをお粗末に扱うなんて.....屈辱的だわ。いくら疲れているとはいえ大好きな兄にあたった.....
「それほど疲れてたってことだよ。だったら僕がすべきことは千聖の心配もそうだけど、千聖が安らげる場所を作ることしかないよ。それくらいしか出来ることがないからね。兄としては。さっ、とりあえず手洗いうがいしてからリビングにきて。」
.....大人ね。私の方が色々見えてると思ったけどやっぱり兄さんは兄さんね。
「じゃーん!!!」
「このケーキ、どこで買ったの?」
そこには.....イチゴの配置もかなり凝っているホールのケーキがあった。でも私用にしてくれたのか、大きさ自体はあまり大きくない。
「買った?違うよ、僕が作ったんだよ。」
「.....え!?兄さんが!?」
「うん.....少し手伝ってもらったところもあったけど殆ど自分でやったよ。クリームを作るところから焼くところまで.....結構苦労したけど上手くいって良かったよ。味見はちゃんとしてるから味に関しては安心して。」
「ええ.....じゃあ頂くわ。」
.....悪くない。美味しい部類に入るわね。店のケーキとは違ってクリームの味自体もお店とさして変わらない。ただ分かるのは.....何回か試行錯誤を繰り返したような味がするということ。兄さんは1発で出来ることもあれば何回かやることもある。おそらく味見して何回かやりなおしてるわね。
「ねぇ兄さん、これ作るまで何回くらいやり直した?」
「やり直し.....10回くらいかな。EXTRAのメンバーとかリサさんとか上原さんに試食してもらってこれでOKが降りたんだ。危なかったよ.....昨日試したやつでやっとおりたからね。」
「つぐみちゃんには頼まなかったの?」
「最初お願いしにいったら『ひまりちゃんの方が味もちゃんと評価出来るし、アドバイスもくれますよ!!』って言ってくれたんだ。最後に出来たやつだけ味見してもらったらOK貰えて。」
今回のMVPは兄さんとひまりちゃんなのね.....
「まぁ上原さんが持っていく度に『私太っちゃいますよ〜!!』って言いながら食べてたけどね。」
「それはまた申し訳ないわね.....」
というかひまりちゃんはいいわね.....食べてもあんまり太ったって感じがしなくて。まぁ兄さんがほかの女の子といちゃいちゃしているところは.....今日は見逃してあげようかしら。私のために頑張ってくれたから、特別よ。
「さて最後に.....プレゼント。気に入ってくれたらいいけど。」
「どれかしら.....」
そこに入っていたのは.....指輪だった。
「に、ににに兄さん!?」
「ん?どうしたの?千聖。」
これってつまりあれよね....その、生涯を誓い合うあれよね。え、ちょっと待って興奮してきた。で、でも兄妹でなんて.....背徳感が凄いけど悪い感じは全くしないわね。
「これってつまりその.....そういう意味よね?初めてを貰ったってことでいいわよね?」
「そういう意味って?」
「そ、それを言わせるの.....その、生涯の愛を.....」
「.....あ、そういう意味じゃないよ。」
「ふん。」グシッ
「あいたたた!!つま先踏まないでお願いだから!!」
もう.....勘違いするようなことをするんだから.....これが善意だから尚更タチが悪いのよね.....しかも私もそれを素直に受け取っちゃって喜んでしまうもの。
「この指輪は、千聖に手のことを気にして欲しいって意味で渡したんだ。」
「手?どういうことかしら?」
「ベーシストとしてケアは怠ってないと思うけど、朝みたいに千聖って忙しいでしょ?だから指にこういうアクセサリーとかを付けてたら少しは手の方にも意識がいってくれるかなぁって.....」
そう言って兄さんは私の左手の薬指につけた.....え?
「兄さん.....その。」
「ん?どうしたの?」
「どうして.....薬指に付けたの?しかも左手.....」
「え?女性の指輪って左手の薬指につけるものって聞いたんだけど.....違うの?」
「それ結婚指輪の話よ。」
「.....あいつら、」
「兄さんは簡単に流されすぎよ。」
「そうだね.....まぁいっか。千聖が大好きだって想いは変わらないし、こっちの方がより意識してくれそうだしね。」
恥ずかしくてそっちにしか意識がいかないわよ!!.....でも、これを無下にするのもいけないわね。
その後私たちはケーキも含め、食事をした。こうやって兄さんと面と向かって食べるのは.....久しぶりかしら。いつも隣で食べてるから。
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千聖の部屋
「えへへ.....」
どうしよう、この指輪を見ると嬉しい気持ちが顔に出てしまうわ.....外さないと。
「でも外すのは.....少し寂しいわね。ふふっ.....」
私はその夜、ずっと私の左手の薬指にはめられた指輪を眺めていた。最高のプレゼントを.....勘違いとはいえ貰っちゃったわ♪そしてまた夜更かしをしてしまったわ.......
アプリとは違うプレゼントですけど.....この前の日菜ちゃんのイベントを見た時にこういう方向もいいなぁと思い書きました。
不定期更新リクエスト
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優希くんと千聖ちゃん
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EXTRAと千聖ちゃん、友希那ちゃん
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他の妹との交流