特に何も無く舞踏会の日がやってきた。ここで色々交流を深めておくんだね。僕が渡された予定表は会場受付でそれが終わったら中で見学らしい。でも、生徒から要請があれば謹んで受けること、と書かれたメモが渡された。
「ねぇ八潮さん、あっちの生徒の人数ってどのくらいいるの?」
「私たちと同じくらいの人数だと思うけれど、先生のメモには載っていないのかしら?」
「うん、だってこの日休みとか書かれてたし。」
「随分とお粗末な扱いを受けてるのね。」
「まぁ一般家庭育ちだしこの学校の生徒の知り合いでもないからね。」
でも意外と仕事はやらされる。教師って凄い頑張ってるなって思ってたけど家に仕事を持ち帰るのが当たり前になっているのが少し怖い。これ体調崩さないようにしないと....今は奥沢さんの家にいさせてもらってるわけだし音を立てる訳にもいかない。
「では私はこれで。」
「うん、話し相手になってくれてありがとう。」
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その後、会場受付をやっていると、聞いたことのあるお金持ちの名前や、企業の社長さんの名前が結構あった。教育実習とはいえそういった人の名刺受け取るの恐れ多くて震えたよ。
「時間的にこれで最後だから.......中に入るか。」
「ちょっと待った!!!」
「なんですか理事長。というか私服でいいんですか?」
「いや、後で着替えるけど優希くん、足元見てみな。」
「足元..手紙?」
外側からは見られないように手紙が置かれてあった。誰かのだろう......
「えっと......『先生、私と最後に踊ってくれませんか?......広町七深』って。広町さん、こんな渡し方しなくても普通に口で言えばいいのに。」
「恥ずかしいんだよ。優希くんもモテるね〜!!」
「いや、違うと思いますけど。」
「まぁまぁ直々に指名があったからいいじゃん!!これで要請無かったら優希くん中に入れなかった可能性あるからね。」
.....え?マジ?呼んどいて来なくていいよってパターン初めてだよ。まぁいいや。その場合は千聖の写真でも見てゆっくりしとこうと思ってたし。.....さすがに館内じゃやらないよ?いや、見たいんだけどね。
「じゃあ入ろっか!!私と踊る?」
「いや....お互い踊りを知らないでしょ。」
「そうそう!!だから出来ないもの同士で!!」
「理事長に相手がいなければの話ですけどね。」
館内
「あ、ゆーゆー手紙見てくれた?」
「うん、普通に言ってくれれば良かったのに。」
中に入ったら広町さんがうずうずして待っていた。まぁMorfonicaのメンバーもいるから頼みづらいんだろうか。
「じゃ、最後行くから待っててね。」
そう言って走り去っていった。ドレスなのによく走れるな......慣れてるのか。
中に入ると.....
「私と踊ってくださいますか?」
「さぁ、お手をどうぞ。」
よく分からないけどそんじょそこらで同じようなセリフが飛び交っていた。我先にというより予め狙いがあって行ってるみたいだ。でも被らないかといえばそうじゃない。八潮さんとか沢山申し込みされてるし、カリスマさんも人気があるみたいだ。.....でも保護者がこんなに来るとか聞いてないよ!!踊りの基本も知らないのに恥ずかしいわ!!!
「じゃ。踊ろう優希くん!!お姉さんをリードしてよ!!」
「あのね理事長.....ここはふざける場所じゃありませんよ。」
「ふざけはしないよ、優希くんに肩の力抜いてもらわないと困るし。」
「あぁ....分かりましたやります。」
逆にこの人こういう時だけは強情だからな.....千聖や蒼生と少し似てるというか.....
「じゃあ優希くん例のセリフを!!」
「はいはい.....私と踊りませんか?お嬢さん。」
年上にお嬢さんとか言うのすごい気が引けるんだよなぁ.....かといってご婦人とかいうレベルの歳でもないし。
「ふふっ、よく出来ました。じゃあやろうか。」
そうこうあって踊ることになったが.....これ競技ダンスだよね!?ステップが社交ダンスでよく見るやつじゃないんだけど.....この人大丈夫か?
「お美しい.....華麗なステップだ。」
「後で踊りたいものだ.....」
嘘だろ!?大ウケしてるぞ!!普通は非常識だ.....とか言われそうなのに。だが理事長も白金さんと血が繋がってるのか、見た目が結構似ている。髪をまとめてるとはいえ、口さえ閉じていれば白金さんのお姉さんだなぁと分かる。蒼生とは目以外全く似てないけど.....
「あれ優希くん、鈍ってるんじゃないの!?」
「そもそも未経験ですよ!!おかしいですって!!」
「あはは!!蒼生の言う通りやっぱり面白いね!!」
「.....早く終わってくれ.....」
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その後踊らされてやっと休憩が出来た。そして終盤にさしかかり広町さんがやってきた。
「じゃあゆーゆー、お約束通り、私と踊ろう。」
「うん、ちょっとだけ待ってね。」
「さっきは凄かったね〜。キレが良かったよ。」
「あれは紫吹さんのノリに合わせたんだよ.....結構疲れた。」
「私はあそこまでできる自信ないな〜。」
「しなくてもいいよ。普通にやってくれれば。」
どうやらさっきの理事長のやつを見て、僕がそれを先導したと思われていたらしい。さすがに高校生相手にあんな馬鹿なことはしないよ.....あれ?僕大学生だよね?言ってることがおじさんくさい。
「じゃ、行こう。」
そして広町さんとの踊りが始まった。.....ん?
「広町さん.....やりづらくないの?」
「え?これが普通だと思うんだけど.....」
普通.....にしては何かに合わせてる感がすごい。おそらく他の踊った人もわかったと思う。いや、単に僕が初心者だからそう思うだけかな。
「まぁいいや.....それにしても。」
「うん?」
「Morfonicaのメンバーって皆人気なんだね。僕のところに来てくれたけど、結構お誘いされてたよね?」
「あはは.....あの人たちは1回踊った人達だからさ〜、2回目は別にいいかなって。」
その後、特に何もなく踊り終わった。広町さんから裏に来てくれって言われたけど.....何か嫌なことでもされたのかな?
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舞踏会終了後 裏庭
「.....なんだろう。」
広町さんが呼び出した。何かは分からないけどいい話ではないと言うのは勘で分かる。じゃあなんだろう.....
「.....おまたせ〜。」
「お疲れ様。ジュース買ったから飲む?」
「ううん、いいよ。」
「そっか.....それで呼び出した理由は何?」
「うん...ゆーゆーから見た私ってどうなの?」
「どうって.....ちょっと変わってるなって思うけど。」
「やっぱりそうなんだ.....ゆーゆーの言動とか見たらそう思ってるのかなって薄々感じてたんだ。」
.....思い当たることはいくつかある。広町さん自体は普通に憧れているというイメージはある。でも言動にはボロが出ているところがある。その飾っている部分が少し不思議と思って聞いたことは数回。
「.....何か思うところがあるの?」
「はい.....私って色々普通とずれている部分があるんです。普通でいたいんです。皆と色んなことを分かち合いたいし、その同じ気持ちも知りたい。でもそうしたことって同じ事とかそういうことをしないとだめじゃないですか?だから普通に憧れるところがあるんです。」
普通に憧れる、か。千聖も同じようなことを言っていた時があったな.....懐かしい。
「....うん、続けて。」
「はい、それでどうしたらいいんだろうって。しろちゃん達と会ってMorfonicaを結成して.....バンドとして青春を過ごせるのも普通のひとつかなって。勿論皆のことは大好きですし大切な存在ですよ。」
「.....うん。」
「.....でもゆーゆーは気づいてるんだよね?」
「.....飾ろうとしている部分は確かに感じたけど。」
「だから.....どうしたら自然に普通だなって感じてもらえるか聞きたかったんです。」
「....親御さんとかは何か言ってるの?」
「....特に何も言ってませんけど変わってるねとは言われるんです。」
.....良かった。普通じゃないから避けられてたとか、そういう過去が無くて。そういう傷って1回負ったら中々消えないからね.....なるほど、
「.....ううん、どう言ったらいいんだろう。別に普通になろうとする必要はないんじゃないかな。」
「.....はい?」
「そもそも自分が変わっているって考えることもないと思うよ。」
「.....どういうこと?」
「自分が変わっている、そう思うからこそ普通に憧れると思うんだ。広町さんにとっての普通って大多数がやることとかそういうことだよね?」
「うん、そうだけど.....」
「.....広町さんの素直な気持ちややりたいことをするっていうのは広町さんにとっては普通、じゃないの?」
「それは.....」
「.....言葉にするのが少し難しいけどさ、さっき言ったみたいに普通が羨ましいのは自分が変わっている、特別だと思うからじゃないのかな?広町さんにとって、思うこととかを言ったりやったり心に正直に動くことは変なことってことで合ってる?同じこと聞いてごめんだけど。」
「.....はい。」
「.....集団がある以上、どうしてもそういう基準とかが出来がちだけど普通ってさ、定義が難しいんだ。.....どう言ったらいいんだろう。」
「.....」
「.....ちょっとだけ話を変えるけどさ、僕の妹も広町さんと少し似ているんだ。」
「似ているって....?」
「僕の妹は女優をやっていてさ、学校生活もその女優としてしか見られないことが多かったんだ。1人の個人として見ずに。広町さんほど普通になろうとはしてなかったけどそれでも心のどこかで憧れていたと思うんだ。」
「その妹さんは今はどうなの?」
「今は吹っ切れて生きているよ。妹の友達のおかげでさ。家ではよく悩んでいることを話してくれて.....その時はこう思ったんだ。自分に素直に生きていればそれが普通になるんじゃないかなって。」
「普通になる....」
「大多数とかそういうことは関係ない。自分に素直に生きて、時には誰かと合わない時もあるし合う時もある。でもそういう時に意見をぶつけ合ったり、話し合ったりしてお互いを理解しようとする。同じ気持ちになれなくても、何かの指針がなくても。そうやって生きていけばそれがその人にとっての普通になる。」
「.......」
「普通に憧れるっていうのはさ、心のどこかで自分という、広町七深という自分をさらけ出すのを恐れている.....変だと思われたらどうしようって。」
「.........!!」
「それが合ってるか間違ってるかは広町さんにしか分からないけどね。だから普通に憧れて生きるのもひとつの生き方だから広町さんの好きに生きればいい。でも.....憧れるならさ、自分らしさがあった方が思い出になりやすいかな。」
「....はい。」
「だから自分を変だなんて思う必要はないよ。自分に誇りを持って生きて、他の人が持つ独自性に沢山触れて生きてみたらいい。その中で普通を考えていければいいかな.....あくまでひとつの道としてね。どうするかは広町さんに任せるよ。」
「ゆーゆーはそういう経験したことあるの.....?」
「僕は.....あるかな。ある意味僕達のバンドは個性のぶつかり合いみたいな感じだし。それにさ、理事長って僕のバンドメンバーの姉なんだよ。」
「え!?そうなの?」
「うん。」
「じゃあ先生ってコネで.....?」
「いや、僕はあの人に呼ばれたから来たんだけど.....母校じゃない、しかも女子高に呼ばれて今でも驚いてるよ。ははっ。」
「そうだったんだ....ゆーゆー、」
「ん?」
広町さんは僕の服の袖を掴み、こっちを見てきた。少し恥ずかしそうだけど。
「ゆーゆーは.....私の事、受け入れてくれる?」
「.....勿論だよ。もっと広町さんのことは知りたいからね。(クラブ顧問だし、部員のこと知っておかないとまずいよね.....)」
「.....!!ありがとう。ゆーゆー。」
「.....話してたら結構時間過ぎたね。晩御飯まだ?」
「まだだけど.....」
「じゃあ理事長に奢ってもらおう。あの人今日ダンスに付き合わされたお礼に奢ってくれるらしいからさ。」
「それ私も行って大丈夫?」
「大丈夫だろ。あの人むしろ多人数でだべるの好きだし。静かなのがあんまり好きじゃない人だからね。」
「ふふっ、面白いね。」
その後理事長とご飯に行った。広町さんも楽しそうな顔をしてたな....一瞬花音さんと似てるなぁと思ったけど。千聖もこれくらい弾けた笑顔見せてくれたらな.....
真面目な雰囲気になっても絶対にシリアスにはしないのでご安心ください。教育実習だから多少はこういうのを許してくださいね。
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優希くんと千聖ちゃん
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他の妹との交流