白鷺家のお兄さん   作:面心立方格子

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今回は優希くんが出てきません。まぁ過去の話です。


馬鹿だよな、でもいい

数年前 海辺のとある広場 夕暮れ時

 

最近兄さんがバンドを始めて.....認知度が少し上がった。話を聞くと、都築さんというオーナーさんに頼み込んで、空き時間に演奏を披露するのを許可して貰えたらしい。高校生の無名バンドから、やっと地元の人に知ってもらえるレベルまでは上がったみたい.....でもいい話ばかりでは無かった。

 

「なぁ、お前白鷺の妹なんだろ。あいつについて教えてくれよ。」

 

白金蒼生.....この街に住んでいて知らない人がいないくらいの暴走族を率いている男の名前.....どういう訳か兄さんと同じ高校にいて、兄さんと知り合っている。

 

「なんで私があなたみたいな人に兄さんのことを教えなくちゃいけないのよ。」

 

「.....おい、あんまり俺を怒らせるなよ。」

 

私の受け付けない態度が気に入らないのか、男.....白金さんは近づいて少し威圧してくる。私は反射的に、白金さんの胸ぐらを掴み、一本背負いに近い形で投げ飛ばした。

 

「痛っ.....おい!別に知ったからってあいつをとって食おうって訳じゃねぇんだ!教えてくれたっていいだろ!?」

 

「兄さんみたいな大人しい人がどういう経緯であなたみたいな人と知り合うのよ。」

 

私は当然警戒感を滲ませる。普段から襲われてもいいように護身術は身につけているけれど.....さすがにこの街の暴走族を統べる相手にどれほど通用するかは分からない。

 

「ったく.....あいつから聞いてねぇのかよ。俺もEXTRAってあいつが入ってるバンドにいるんだよ。.....まぁ最初は肩書き隠してたけどよ。」

 

EXTRAが別の意味で知名度が上がったのは、白金さんが加入していたという事実が浮かび上がったから.....ある意味悪い目立ち方ね。

 

「白金蒼生.....私も芸能界にいるからその名前は知っているのよ。昔は神童としてあらゆる才能を持っていたって。でもどういう訳か裏側の人間になったって。」

 

その言葉を聞いて少し機嫌が悪くなったのが顔で分かった。

 

「もう俺は芸能界云々は嫌なんだよ。あの世界みたいな腐ってるところはもうゴメンだ。」

 

「あら、その腐ってる世界にいる私に用があるのにその言い回しは随分と傲慢ね。人に物を聞く態度が、あるでしょ?」

 

「けっ.....そういうところは全然白鷺と似てねぇな。苦手だ。」

 

「どこでも素の自分を通そうとする態度はいいけれど、それは相手を選ぶものよ。」

 

「相手の顔を見るのは面倒なんだよ。だったら最初から素でいて他のやつが勝手に仲良くするか決めりゃいい。それだけだ。」

 

.....少し、共感が湧いたかもしれない。私とは悩みの形は違えど、この人もまた、周りの人によって歪んでしまった.....そんな気配を私は察した。そしてどうして兄さんのことを知りたいかも、少しわかった。

 

「.....まぁいいわ。兄さんのことは教えてあげる。あなたが聞きたい部分は大分分かったわ。」

 

「んじゃ、教えてくれ。」

 

恐らくこの人は....兄さんの優しい面に触れたんだと思う。兄さんはある意味、悩みを抱えた人に対して何かしらの特効性を持っている。

 

「でもその前に、まずはあなたがどうして兄さんについて知りたがってるか、教えてくれないかしら?」

 

「あぁ.....まぁ一昨日の話だ。生徒会の連中に変なデマ巻かれたんだよ。俺たちがライブで資金を稼いで、それを裏で悪用してるってな。」

 

「兄さんからもよく聞くけれど、どうして生徒会と兄さん達は敵対しているの?」

 

兄さんも夜遅くまで、何か原稿用紙に書いたり、資料を作ったりしているのはこっそり見ているから知っている。兄さんが寝た隙に部屋に入って、それを見たら何かのプレゼン資料と原稿......そして聞いてみたら生徒会から執拗なまでに要求されているらしい。

 

「俺たちは白鷺を除けば、全員問題児だ。豪のやつは赤点ばっかの奴だし、翔世のやつはカバンがうさぎのキーホルダー付けすぎで風紀を乱すと怒られても直さねぇし.....俺は知っての通り裏に通じてる。そんな連中が1つのコミュニティに集まれば、どんな問題を起こすか分からない。だから敵対視されてんだよ。」

 

.......話聞いてる限り、全部そっちに原因があるようにしか聞こえない.....生徒会の人達、正論言ってるだけではないかしら。

 

「まぁ俺らが悪い面があるからそこはいいんだ.....だけど俺たちは、クラブ活動に関することは何も問題を起こしてねぇし、ちゃんと書類とかは期日に間に合わせてる。防音装備のあるところでしか練習してねぇし、活動の殆どが校外だ。でもなんでか廃部にしたがるんだよ。」

 

「なるほどね....大体分かったわ。それで、本題に戻るのだけれど、どうして兄さんを知りたいの?」

 

「......俺にも悩みってのがあるんだよ。子供の頃からずっと治らない古傷だ。聞くか?」

 

「えぇ、聞かせてもらうわ。」

 

「ん....お前が言った通り、俺は子供の頃から神童として、色んな業界から注目されていた。皆が俺を褒めてくれたし、姉さんも、燐子も.....俺のことをちゃんと見てくれて、いつも楽しかった。」

 

そこで一区切りし、白金さんは体を堤防の柵に預けた。

 

「自分で言うのもなんだが....俺は天才に当てはまる部類の人間だった。大抵のことは少しやるだけで上達したし、場合によってはプロより評価される事だってあった。だけどそれが原因でな.....周りのヤツも、大人も誰も俺に近づかなくなった。競ってた奴らだって皆諦めて逃げやがった。.......気づけば1人だ。」

 

天才ゆえの悩み.....かしら。私からすれば大層羨ましい悩みだった。上手くいくなら、それでいいじゃない.....努力しても評価されないよりかは。

 

「才能があるってのはそれだけで周りから浮くんだ.....何をやっても結局は皆諦めて消えていって.....気づけば俺が何かをやる事を、周りは止め始めた。若い芽を詰むような、挫折させるようなことをするなってな。姉さんはそんな俺を庇ってくれた。けどな.....孤独ってのは怖いもんで、俺は無気力になって、何かを真面目にやることが馬鹿らしく思えてきた。」

 

「そう.....大変ね。」

 

「そして次に俺の周りに来たのは、いわゆる金ヅルだ。俺を利用して儲けようってやつらがウジャウジャ湧いてきやがった。口ではどれだけ繕っても、魂胆は見え見えだった。そして俺はそうやって荒んでいく様子を.....燐子に見せてしまった。」

 

「妹さんは.....それでどうなったの?」

 

「燐子には、芸術に関する分野には才能があった.....けど、それを披露する機会は殆ど無かった。ピアノのコンクールくらいは出たんだが.....それ以外はって感じだ。燐子は覚えてないだろうが、本能的にそういうのを学んだのかもしれねぇ.....才能が人を遠ざけてしまうことを。ある意味燐子は内向的になったな。昔はもう少し積極的だったんだが.....」

 

白金さんのフェンスを掴む力が少し強くなるのが音で分かった。というかこの人、妹さん大好きなのね.....

 

「燐子にそんな大人の汚い部分を見せてしまった責任感と、才能のせいで孤立化した心があって.....俺は暴走族になった。日々、街の裏側に出ては拳の殴り合いを続けて.....気づけば族のトップになってた。殴り合いの間は何のしがらみもなくて、最高だった.....んで、評判が広まってそしたらどうだ、今まで寄ってきた金ヅル共は来なくなった。最高にその時は気持ちが良かった.....けど、名前が上がっちまったことで俺は家に帰れなくなった。俺の事を尊敬してくれてた燐子も、それを知って以来俺との交流が殆どなくなった。これが俺の歪んだ人生だ。」

 

「えぇ.....あなたのことはよく分かったわ。けれども、私は兄さんのことを聞いているのだけれど.....」

 

「話は最後まで聞け。それでだ.....俺は高校に入ってバンドに加わって、その後白鷺を勧誘した。あいつも何かを感じたのか入ってくれてな。.....んで、あいつに、俺が荒んでる所を見られたって訳さ。」

 

.....兄さん、そんな危ないところに行ってるのかしら。後で聞いておこう。

 

「最初は軽めにあしらったんだがな....しつこいんだよ。挙句の果てには、俺らの拠点にまで真夜中に乗り込んでくる始末だ。力もねぇ、喧嘩慣れもしてねぇひ弱な奴がこんな場所にやってくるなんて相当の度胸がなきゃ出来ねぇだろうよ。族の奴らも皆驚いてた。バカにしてる奴もいたがまぁそれはそれだ。」

 

「兄さんに何か酷いことしてないでしょうね?」

 

「何もしてねぇよ。......んでま、俺の昔話したんだよ、そしたら諦めるかと思ってな.....そしたらあいつ、『僕達は諦めないよ?』とかくそ真面目な顔で言いやがったんだよ。」

 

そう言って白金さんは笑い出す。別に兄さんはなんらおかしいことは言ってないのに、何がおかしいのかしら。

 

「あそこまで直球の言葉は久々だった.....それであいつに興味が湧いたんだ。どんな人生歩んでりゃこうなるんだってな。」

 

「なるほど、それが私を呼んだ訳ね。」

 

色々前置きが長かったが、やっと意図が分かった。この人もこの人で大変な人生を歩んでいるのだけれど.....兄さんの、どこから話せばいいのかしら。

 

「.....どうした?何黙ってんだ?」

 

「もういいわ.....いい区切りが見つからないから、生まれてから今まで全部話すわ。」

 

「え?え、それはちょっと.....」

 

相当の長話を覚悟したのか、白金さんの眉が動く。そんなにビビる必要あるかしら。

 

「大丈夫よ。今からなら.....少なくても7時間あれば終わる話だし。」

 

「な、長すぎるだろ.....」

 

そして私は白金さんに兄さんの来歴と兄さんの性格について、時間を気にせず語り始めた。途中で『カンベンシテクレ.....』なんて言っていたけれど、なんの事かしら。




なんやかんやで暫くは千聖さん来ないだろうからスター貯められる.....良かった。フェス限が次来たらやばいけど.....

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