【自由ノ地平線】Oath of Promise 作:暁月 輝路
後編です。
今回は後半の方は挿絵だらけです。
そして案の定、未だに16話の挿絵も完成してません。
ごめんなさい。
あと、前編はタイトルの意味として「範疇を超えた料理」でしたが、後編はなんでしょう。
それを踏まえて見てみてください。
風呂場に向かったイアはのれんのかかった扉を目にしました。
のれんには『風呂』と書かれており、間違いようもなくそこが風呂場だと示していました。
「ここだよね…?」
のれんをくぐって、すぐそこにあるドアノブを握って扉を押しますが、開きません。
「…?」
逆に引いてみますが、開きません。
イアにとって扉は押すか引くのどちらかなので横に滑らせて開く扉に触れるのは初めてです。
そしてイアは少し考えた後、横にドアノブを引こうとしたその時でした。
意識より先に扉が開き、イアの手はドアノブに引っ張られていきました。
「何してるの?イアさん」
「──!?」
そこには裸の暁月が腰にタオルを巻いて立っていました。
まだ風呂から上がったばかりの体からはホカホカと暖かそうな白い湯気がのぼり、水滴は暁月の体を滑って下へと流れていきます。
暁月は濡れた長い髪をタオルで拭き取っていきます。
「あ あかつきくん……」
「お風呂入るように言われたの?」
「う うん……」
イアは男の子の裸という初めて見るものに頭が真っ白になりました。
普通なら目を背けないといけないの場面であるものの、イアは息を呑んで、マジマジと暁月の体を見ていましたが、それは直に真っ白な頭を冷やす程にあらぬものを見てしまいます。
暁月の体は筋肉質な体ではなく、腕やお腹、足はぷよぷよとした柔らかそうな少したるんだ体です。
そして体の部位を見る度に確実にあるのは生々しい傷で、切り傷、打ち傷、刺し傷等の類に浅い傷、深い傷が両方身体中にありました。
顔や首、手や足先には傷はありませんが、風呂上がり故に血の巡りが良くなって、傷になっているところには赤く血が集まっています。
白い肌の体に無数の赤い傷が無数にありました。
「ごめんね、すぐ出るからもう少しだけ待っててくれない?」
「え、うん…」
暁月はニッコリと笑って、扉をゆっくりと閉めるとイアはその場に立ち尽くしていました。
「あの…傷………」
戦っているのだから傷は付き物だとイアは考えていましたが、その傷の数は異常な数でした。
そしてあの痛々しい傷を身体中に持っているのに、暁月はニコニコと笑顔でそれを感じさせない様子で振舞っていました。
それがイアには辛く感じました。
2分後に暁月が扉を開け、のれんをくぐって出てきました。
まだ髪は湿っていて、満足に乾ききっていません。
長袖長ズボンと風呂上がりには暑すぎる格好で出てきていました。
「おまたせ。どうぞ、イアさん!僕はシャワーしか浴びてないから、湯船に浸かりなよ。今日は薔薇の香りがする入浴剤が入ってるよ!」
「─ありがとう、暁月くん。ごめんね、急かして髪乾いてないよね…」
「いいよ別に!髪なんて夜風に当たれば勝手に乾くから!何も考えず、ゆっくりお風呂に入ってスッキリしてきなよ。イアさん」
「うん…ありがとう」
イアは傷の事は聞かないことにしました。
本人にそれがもし嫌な事で、それを語らせては申し訳ないと思ったからです。
何より、暁月の優しいその笑顔が消えた時を想像した時に少し怖く感じたのです。
イアの横を暁月は通り過ぎて行き、二階へ上がっていきました。
イアは暁月が登っていくのを眺めてから、脱衣場に入っていきます。
脱衣場のカゴに私は脱いだ服を畳んで入れて、浴室用と書かれ壁に掛かっていたタオルを1枚手に取る。
前もあまりお風呂は入る事がなくて、ぬるい水のシャワーを浴びるくらいだったから、なんというか他のところでお風呂に入るのは緊張した。
「……お邪魔します」
誰も居ないけれど、声を掛けて浴室へ入っていった。
浴室には湯気が立ちこめていた。
白く薄い霧はほんのり温かく、そして暁月くんが言った通り、湯船の方からは薔薇の香りがして、浴室を満たしていて緊張はすぐに解けた。
私がシャワーの栓を捻ると、最初は少しぬるかったけど、数秒もすれば熱くなってお湯が出てきた。
「──ふふっ」
私は思わず笑みがこぼれた。
何せ、熱いお湯のシャワーなんて初めてで浴室も綺麗、温かそうな湯船からは良い香りは漂ってて、まるでお姫様になった気分だった。
それからイアは少しばかり長風呂を楽しんでいました。
女性用と書かれたシャンプーとリンスで髪を洗い、石鹸を泡立てて体を洗い、熱いシャワーでそれらを洗い流して身を清らかにしてから、その後、全身を湯船に浸からせて身をほぐしていました。
「~♪」
鼻歌を歌いながら、イアは浴室から出ていきました。
脱衣場のカゴからは着ていた服が消えて、別の服が畳んで入っています。
ホカホカとあたたかな湯気を体から出しながら、濡れた髪や体を丁寧に拭いていきます。
そして、畳まれた服の下にはシンプルなデザインの下着が隠れて置いてあり、下着と服をイアは身につけていきます。
下着のサイズはピッタリで、半袖の服と四分丈のズボンはゆとりのある大きさで軽く通気性も良さそうで風呂上がりには丁度いい物でした。
鏡を見て軽く身なりを整えた後、脱衣場を後にしました。
キッチンでは光と美雪が食器洗いに追われています。
「長風呂だったね、イアちゃん。スッキリした?」
「はい。とても気持ち良かったです」
「服とか下着は大丈夫?」
「ピッタリですし、服の大きさも楽で良いです」
「良かった。イアちゃんはもう2階に上がって部屋で休みなよ、掃除は終わってるから大丈夫」
「はい、何から何までありがとうございます…」
「大丈夫大丈夫!少しの間は分からないことだらけだろうし、これくらい気にする事じゃないよ。ね?光くん」
「え?あぁ…そうだな。──イアさん」
光は食器を洗っていた手を止めて、イアの方へ向き直しました。
「君は何も知らないし、沢山のことを見て知ってしまう。君が前どんな生活をして過ごしてたかは分からない。仮に分かったとしても前の生活には戻れない。だから少しでもここの生活を楽しんでくれ…」
光は深々と頭を下げます。
「──はい、これからよろしくお願いします」
イアも返すように深く頭を下げました。
その長いようで一瞬の時間を美雪は吹き飛びしました。
「ほら!まだあるんだから、手止めないの!」
下がっていた光の頭を押し上げて、顔も強制的に横へ向くように曲げられた為、"グギッ"っとヤバそうな音がしました。
「いッ──────!」
「あっ…ごめん。光くん」
「────!」
首がガクガクと壊れたおもちゃのように震えていて、ゆっくりとゆっくりと元の位置に戻ろうとしています。
「大丈夫ですか…?」
イアが声を掛けると、光が手で『大丈夫』だと答えた。
「あちゃ~…まぁ少しずつ戻り始めてるし、頑張って光くん!」
そう言って茶化す美雪の頭に光はチョップをくらわせてから、その手は洗い物の皿に伸びていきました。
「あたた…とりあえずイアちゃんはもう上がって休みなよ。明日からはちょっと色々することあるからね。おやすみ」
「はい、おやすみなさい」
皿洗いに戻った2人の横を通り過ぎて、イアは2階へ上がり、自身の部屋になった一番奥の部屋へと向かいます。
「これが私の部屋…」
電気を付けると部屋は暁月の部屋を見た時と変わりない家具の配置と見た目でした。
普段から使われているような部屋の綺麗さですが、先程まではここは埃まみれで、美雪の手によってここまで施されました。
しかしそんな部屋で雰囲気が違うといえば、ベッドのシーツと毛布は新品のようで、木製の机の上に一際目立つ白いスタンドのライトがあるのと、一冊のノートがあるくらいです。
本棚には何も入っていませんし、机にはライトとノートだけで、寂しく見える部屋の内装ですが、イアにとってはこれくらいが馴染みやすそうな部屋でした。
その部屋を軽く歩いて、机の上のノートにイアは手を伸ばします。
「…あれ、美雪さんのノート」
昼間に話している時に美雪が書いていたノートでした。
そこにはここにいるメンバーのプロフィールが書かれています。
イアは椅子に座って、ノートを広げました。
アウロラ・イグニス
十六夜 夜冬
沙慈 ユウト
逆浪 光
日向 美雪
暁月 夜桜
ルナ・ラクリマ
属性や加護について byアウロラ
これらを見て、私はここにいる人間の強さを知った…
それは訓練を受けた集落の衛兵の人たちが束になってかかっても、勝てないのが容易に想像出来るほどに。
けれど、疑問もあった。
暁月のことに関するページには7割は無傷で帰ってくると書いているのに、あの身体中の傷はその三割で受けたものなのか。
だとしたらなぜ、顔や手に傷は無いのだろう。
あの傷の正体が分からなかった………
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時間は少し戻り、イアが風呂に入っている間の話です。
机の上のものを全て食べ終わったルナにアウロラが語りかけていました。
その後、ルナは部屋に消え、その場から消えました。
お疲れ様です。
最後の挿絵が多くて、コピーしては貼るの作業が苦でした。
実は今回、ある一つの伏線が回収されました。
ヒントとして第3話を読んでいただければ、分かります。
次は幕間を挟みます。
16話にまとめると今回のようにつめつめになるので。