【自由ノ地平線】Oath of Promise   作:暁月 輝路

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やぁ。
お待たせ致しました。
第20話です。
地道に進みすぎて進展がないのが申し訳ないです。



第20話「炎と花」前編

 暁月が集落出て、エスメラルダと共に街へ向かった日。

 

 

 その日の朝、光や美雪達と朝食を済ませたイアが階段を上がろうとした時、夜冬がちょうど降りてきました。

「───」

イアは階段から後ずさりしながら、キッチンに目を配らせます。

 階段を降り終えた夜冬は目をイアに向けると、

「えっと…………昨日はごめんなさい………怖い思いをさせてしまって……」

酷く落ち込んだ様子で夜冬はイアに謝罪しました。 「いえ………」

流石にまだ恐怖心が残っていた為か、イアは反応に困っている様子でした。

 そこへ美雪が近づいて来ました。

「夜冬くん、おはよう!朝食は机に置いてあるからね」

「─ありがとう、美雪さん」

 2人の横を通って、夜冬は席につき合掌した後、朝食を口に運び始めました。

その様子をイアは静かに眺めていると、美雪が彼女の背中を手で押しながら階段を一緒に上っていきます。

「大丈夫だよ!昨日ルナさんが経緯の説明とお説教したから、怖がらなくても」

 そうして2階のアウロラの部屋で立ち止まります。け

「とりあえず、先にイアちゃんはここで色々診てもらおう!あとは色んな説明を受けながら、ちょっとずつわかって行ってね。私よりは多少詳しく教えてくれるはずだよ!」

「─はい。ありがとうございます」

 イアはアウロラの部屋へと入って行くと、廊下に残った美雪は再度1階のキッチンに戻っていきました。

 

 

 

 

 扉を開けて、部屋に入るとそこには自然がありました。

様々な植物のツルや葉が壁を網羅しており、窓はまるで葉のカーテンが作られたかのように覆われ、天井からは謎の実がぶら下がっており、元の素朴な部屋の事を考えるととても別世界な部屋になっていました。

「いらっしゃい、朝食は済んだかな?」

 その窓際の机の椅子には、眼鏡をかけて座っていたアウロラが腰掛けています。

「はい。お待たせしました」

「じゃあ、ここに座ってくれるかな?」

 アウロラの目の前にはもう1つ椅子があり、その間には簡素な机が置いてありました。

その椅子にイアは腰掛けると、アウロラはじっとイア全体に視線を送ります。

「さてと…イアさん。俺が書いたノートの内容は読んでくれたかな?」

「えっと…はい。属性や魔術の事…ですよね?」

「そうそう。なんでそれをイアさんに教えたか分かるかな?」

「え?───ここでの知識のひとつだからですか…?」

「間違っては無い。けど、ちょっと重要なものだ。最初から少し長い話だけどごめんね」

 イアは静かに頷きます。

そうすると、アウロラは机の上に置いていたロウソクとマッチを手に取り、マッチを点火してロウソクに火を灯しました。

「改めて魔術っていうのは、不可思議な力をつかって神秘的な芸当、業を生み出して為すもの。こんなロウソクの火は吹き消せば一瞬で消えてしまう。消して見てくれるかな」

 イアは"ふーっ"と息を吹きかけるとロウソクの火は揺れた後パッと消え、僅かに煙を残します。

そこにアウロラはロウソクの先端部分を手で覆い離すと、そこには火が灯っていました。

「けど、そこに魔術が関わってくると少し常識が変わる」

 アウロラは再度イアの前にロウソクを差し出します。

「もう一回お願いできるかな?」

 イアは頷くと、先程と同じ勢いで"ふーっ"と息を吹きかけますが、ユラユラと揺れるだけで消えはしません。

次は少し強く吹きかけますが、消えません。

「じゃあ今度は指先で触れてみてくれるかな?」

「えっ?」

「大丈夫、熱くないよ」

 熱くないと言われても、火というのは熱くて当然のもの。

そうそう手を出す気にはなりません。

「………」

「んー……」

 アウロラは少し考えると、引き出しから紙を取り出し、それをロウソクの火の真ん中に通して、様子を見ます。

紙は燃えず、煙も出さず、ただ火を遮り続けています。

「物が燃えるのは、火に『熱』があるから。他にも化学的な反応もあるんだけど、単純明快なのは『熱』がある事。だから今ここに灯ってる火は簡単には消せないし、温度は本来よりもっともっと低い。火でありながら火じゃないものも『魔術』は作り出せる。だからこうして……」

 今度はロウソクの火の根元に紙を通し、それをすくい上げるとロウソクの火は紙の上に移動し燃え続けていました。

「これでまた新しい発見が出来た。熱は無く、燃えないロウソクの火は根元から火を取ると火元から離れて燃え続けるけれども、熱は無く、紙は燃えない。矛盾ではあるけど、その矛盾が魔術でもある。面白いでしょ?」

「はい…なんだか、本当に魔法を見てる気分です…」

「──イアさん。手を出して」

 イアは手を出しアウロラは紙を傾けると、上に乗っていた火はまるで水滴のように点々と落ち、イアの手の上で燃え続けます。

アウロラの言った通り、熱くも無く燃える要素がない手の上で同じ大きさの火が保たれています。

「イアさんは今『魔法』と言ったね。実際魔法とも呼べるけど、内容が違う」

「魔術と魔法で何か違うんですか…?」

 イアがそう聞くと、アウロラは手に持っていたものを机の上に置いて、イアの手から火を消しました。

「魔法っていうのは、再現不可能な神秘の領域。どんなに世界が発展して技術を得ても、時間をかけて研究しようと、資金で物を言わせても、再現不可能なもの」

「再現不可能なもの……」

「ある時、原初の人間は火を起こした時、その力と偶然に神秘を見出したんだ。暗闇を照らし、熱を持ち、物を燃やすそれを魔法と言った。けれども、時間をかけて火は摩擦、打撃、圧縮、光学、化学、電気等の色んな方法で簡単に火は起こせて、身近なものになった。奇跡的なもので無くなった火は『魔法』でも無く『魔術』とすら呼べなくなり、特別な人間が有するものではなくなったんだ」

「それじゃあ…火が身近にあるのはそれまでに長く色んな試行錯誤でその神秘を再現しようとして、それが再現出来た後、また色んな方法で再現を試みた…それと同時に『魔法』や『魔術』というのも消えていった……って事ですか…?」

 アウロラは関心したように頷きます。

「そう。元々魔術は詠唱を交えて、それに力を宿して業を為そうとした。発展具合によるけど、数秒~数時間かかって業を為すけれど、一言一句間違えずに言わないといけない。けど、マッチなんかは言葉が無くても少し擦れば火が点くでしょ?それが魔術とかが衰退していく理由。人はどんな時も効率良く楽する方が良いからね」

 アウロラは背を向けて、机の上のものをせっせと片付けて行くと、先程使った紙を等間隔に切り始めました。

そこにイアが1つ問いかけます。

「──魔法と魔術の違いは分かりました…でもその本当に再現不可能な魔法っていうのはどんなものなんですか……?」

「俺が知ってるのは、死者蘇生、並行世界の移動、時間旅行、不老不死ぐらいかな。文字通りといえば文字通りだけど、普通は考えつかない禁忌に等しいもの。死者蘇生は死んだ人間を蘇らせる、並行世界の移動は全てが同じでありながら元いた世界と何かが違う世界を移動する、時間旅行は過去や未来を自由に行き来出来る、不老不死は老いも死にもしない究極の体を得る。それを何か一つ仮に再現出来て行った場合、全てが壊れる危険なものだよ」

「意味は何となく分かりました…けど、何が危険なんですか…?聞く限りは凄く良い事に思えますけど…」

 アウロラは手を止めます。

「───確かに綺麗で夢のような事だよ。けど実際はそうならない。1つ例を話そう。死んだ人間を蘇らせても、肉体と精神は死んだ時からまた進み始める。その後また死んでもまた同じ時間を歩む。永遠とその肉体と精神に縛られ続けて、新たな器にその魂が宿らない。それと同時に人は死んで減って生まれて増える事で世界のバランスを保ってる。これは不老不死にも言えるけれど、人口増加による食糧難、土地不足、そしてそれに陥っても人を減らせないし、土地にも限界がある。初めは良い事だと思っても、後々見るのは地獄のような世界だよ」

 思わずイアは口を抑えます。

込み上げてくるような吐き気と想像した時のおぞましい恐怖が自然と襲ってきました。

「この『星』は綺麗な事だらけじゃないんだよ。こんなにも残酷なんだ。まだ来たばっかりで悪いけれど、これが真実でもある」

 アウロラは振り返って水の入った瓶からコップに水を注ぎ、イアに手渡します。

それを受け取り一気に飲み干すと、イアは1枚の紙切れを渡されます。

「けど、そんなシナリオに至らせない為に俺たちは戦って世界を救う。そんな行為にこれから君も貢献する。大きな話かもしれないけど、実際意味はあるからね」

「──頑張ります…」

 落ち着いたイアは手渡された紙を眺めます。

紙は厚紙のように少し厚くしっかりとした紙でした。

「それは些細な魔力にも反応する特別な紙でね、それで魔術適正や魔力反応を見るんだ。『地』『水』『火』『風』『空』が基本的な五大元素なのはノートに書いた通り。その紙がどんな風になるかで、結果が分かる」

 

『地』なら固くなる。『水』なら濡れる。

『火』なら燃える。『風』なら揺れる。

『空』なら浮く。

珍しい属性なら、『光』なら輝く。『音』なら振動する。

属性ごとに色んな反応がある。

属性を複数持っていた場合、それが同時に起こる。

難しい事はせず、ただ手の上の紙に意識を向けて、30秒ほど待つ。

反応がなければ魔術適正と魔力反応がないという事。

 

 

 

 イアはこのような説明をアウロラから受け、そして実行しようとしていました。

「仮に無かったとしても、大丈夫。全ての人に必ずしも適性があるわけじゃない。世代とかにもよるからね。さぁ──始めよう」

「はい……!」

 イアは静かに目の前の手のひらにある紙に集中します。

10秒。反応はありません。

チラリとイアはアウロラを見ますが、アウロラも集中して見ています。

そこでアウロラは何かに気付きます。

20秒。アウロラが口を開きます。

「イアさん。目を閉じてみて」

 言われた通り、イアは目を閉じて、再度集中します。

イアの頭の中で何かが通った気がしました。

それと同時に、紙からガサッガサッと複数回音を出していました。

「──凄いな…魔力量と適性が並以上か…」

 イアはその言葉に目を開きます。

そこには先程まで一枚の紙だったものが綺麗な花のように折られていました。

「花……?」

「あぁ、見た目の通り、イアさんの魔術属性は『花』。それもとてつもなく適性が高く、魔力量が多い。ここまで綺麗な形なのは中々見ないね。魔力量の証拠は形を成そうとして折れ続け、適性はその形に至ったのが証拠になる」

「ノートには『花』って書いてませんでしたよね…どんな属性なんですか?」

 手のひらに乗った花の折り紙をアウロラは指先で摘んで、再度背を向けます。

「『花』は攻撃に転じるものは無く、無害であり有益に働く優しい属性だよ。植物や生き物の生命力や体液を変換して魔力にしたり、形を成した魔術を花にして無害にしたり、魔力を吸い取る。だから力を変換して自分の魔力とするというのがこの属性かな」

「力を変換して…自分の魔力に…」

「俺もあまり花の属性を持つ人は見かけない。本当に希少な属性だからね。どれほどまで無害に出来て、変換出来るのかは知らないけれど、生命力を変換するのには限界があったはずだよ。奪われた生命は少し気だるくなるくらいだったはずだ」

「じゃあ…本当に自分にとって良い方に働いて、相手を傷付けることはない属性なんですね…」

「うん。君のように大人しい娘が持つに相応しい属性だよ」

 また振り返ってアウロラはイアに向き直ると、手には小さなガラスケースがあり、その中には先程の花の折り紙が入っていました。

「記念に持っておきなよ。君の秘めた力で生まれた花だ」

「わぁ……ありがとうございます」

 イアはそれを大切に両手で持ち、嬉しそうにそれを眺めます。

それを見たアウロラも微笑むと、眼鏡を外します。

「さぁ、イアさん。ちゃんとした魔術はまた今度教えるよ。次は『罪の炎』についてだ。これについて色々教えるし、絶対使えて欲しいんだ」

 その言葉を聞いて、イアは深呼吸してガラスケースを膝辺りに下ろして、アウロラを見ます。

「はい、教えてください…!イグニスさん」

「ははっ、いい目だね。あと、俺はアウロラの方でいいよ」

「───アウロラさん…?」

「そう。そう呼んでくれていい」

 アウロラは席を立ち、空間のある扉の前に移動すると、左眼から朱色の炎を現しました。

 




お疲れ様でした。
文としてみれば分かりにくい内容でしたが、読み解けば容易に想像がつくものでもあります。
次もよろしくお願いいたします。
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