閃空の戦天使と鉄血の闊歩者と三位一体の守護者 作:ガイア・ティアマート
今回はISとドルフロの世界が混ざり合った一夏が居た世界の過去について特番で解説します。
ただ、普通に説明文を書き連ねるのも味気ないのでラジオドラマ風に仕立ててみました。
なお、あくまで登場人物同士の会話という形式なので、物語の核心に突っ込んだ内容は出てきません。(ネタバレになる恐れがあるので)
必要な部分はあとがきに補足を書いておきます。
カチッ
ルウ「録音開始。さて、それじゃあ、貴方の世界についてもう少し詳しく話してくれるかな?」
一夏「はい。えっと、どこから話せばいいのか・・・。」
ルウ「まずは「IS」について話してくれるかな?」
一夏「はい。ISというのは、正式名称は「インフィニット・ストラトス」で、俺の世界で10年前に自立人形・戦術人形と共に発明された「宇宙空間での活動」を目的にしたパワードスーツの一種なんだ。」
ルウ「宇宙活動用パワードスーツか・・・宇宙服とは違うのかな?」
一夏「実際には宇宙空間で運用するには課題が多くて実用化出来ていないけど、体のあちこちに装甲板みたいなものを纏うとはいえ、宇宙服の様に全身着込む必要はないみたいです。」
ルウ「なるほど。となると宇宙服より遥かに動きやすいか。」
一夏「尤も、最初の実地試験で整備不良が原因で死亡事故が発生して、宇宙活動という本来の目的の片方は事実上無期限凍結状態だけどね・・・。」
ルウ「整備不良はあるある・・・、特に新しい技術をつぎ込んだ新型機とかは最初の内は勝手の違いから事故が多いのは宿命だからね・・・。まぁ、マニュアルという物は「血」で書かれている物だから、その事故もいずれは糧となるだろうね。というか、糧にしなかったらその事故の犠牲者は無駄死にになってしまうよ。」
一夏「そういうことにも詳しいんですか?」
ルウ「詳しいも何も、私は航空機の事故調査委員でもあるからね。そういうことに関しても・・・いや、脱線してしまった。で、ISの本来の目的の片方と言ったけど、もう片方の目的は?」
一夏「はい、もう片方の目的は、「対ELID用の戦闘兵器」というものなんだ。」
ルウ「ELID???それは一体?」
一夏「その説明のためには、まず「崩壊液」という物質について説明しないといけないんだけど、俺もそこまで詳しいわけじゃないから、知っている限りの領域しか喋れないけど。」
ルウ「それでもかまわない。では、その「崩壊液」というのは?」
一夏「別名を「コーラップス」といって、かつて俺の世界の各所で発見された謎の遺跡で保管されていた物質なんだ。「液」といっても、液体というより「素粒子」に近い物質だって束さんは言っていたけど。」
ルウ「遺跡か・・・旧文明の遺産か何かかな・・・?」
一夏「にしては科学技術が異常なまでに高かったらしくて、一説ではかつて地球で活動していた異星人の置き土産じゃないかとも言われているけど、結局のところ解らないらしくて・・・。」
ルウ「はぁ・・・。で、崩壊液とは?」
一夏「なんでも、「他の物体に浸透すると膨大なエネルギーを放出しながらその物体の分子構造をバラバラにする」とか・・・。」
ルウ「ちょっとまて、それってとんでもなく危険な物質じゃないか・・・!「浸透した物体の分子構造を破壊する」なんて恐ろしく危険なことだ。一歩間違えれば人類・・・いや、地球上の全生物滅亡のトリガーにもなりうる特級危険物質だ!はっきり言って、そんな危険すぎる代物、兵器としても使えない!」
一夏「でも、当時の科学者達はその崩壊した原子を何らかの手段で再構築して様々な物質を作り出す技術を確立したとか・・・。」
ルウ「正気の沙汰とは思えない・・・。それとも、当時の科学者達はその崩壊液がどれほど恐ろしいものか解っていなかったのだろうか・・・?もし私がそこに居たら、間違いなく崩壊液を遺跡諸共徹底封印した上で、その周辺を未来永劫立ち入り禁止区域に指定するよ。」
一夏「確かに・・・。学校ではそういう突っ込んだことは教わらなかったけど、束さんは崩壊液の事に関してはいつも忌々しそうな口ぶりだったなぁ・・・。でも、最初の遺跡が発見されたのは、1905年だって習ったけど・・・。」
ルウ「そんな時代からだったのか・・・、それじゃあ解らないのも致し方ないところもあるけど、解った時点で少なくとも崩壊液に関しては永劫封印するべきだったよ。」
一夏「それがされなかった結果がELIDの発生に繋がったんだろうね・・・、1960年頃に中国・上海のベイラン島で新たな遺跡が発掘されたのが全ての始まりだったんだ。」
ルウ「一体何が起きたの?」
一夏「その遺跡は1970年代には封鎖されて、跡地はほぼ完全に埋め立てられたけど、そのあとそこで都市開発をしたんだ。」
ルウ「何じゃそりゃ!?」
一夏「その工事中に事故が発生して、少量の崩壊液が流出したんじゃないかとも言われていて、現に2020年末頃からベイラン島では時折住民がELID化するという異常事態が発生、当局が組織した武装警察によってベイラン島は完全に隔離封鎖されたんだって。尤も、当時はELIDは奇病として扱われていて、その原因までは解っていなかったらしいんだ。」
ルウ「なんともまぁ・・・、呆れてものも言えない・・・。」
一夏「そう思うだろ?でも、これにはまだ続きがあるんだ・・・。」
ルウ「この上まだ何かあったの!?」
一夏「2034年にベイラン島遺跡内部で崩壊液の流出事故が発生したんだ。しかもその原因が封鎖されていた遺跡に現地の中学生7人が不法侵入したからだってんだから笑えないよ・・・。しかも遺跡内部で崩壊液によって変異したELIDに襲われて、救出に向かった部隊がELIDと戦闘したせいで崩壊液が流出したんだ。」
ルウ「バカとしか言いようがない・・・。」
一夏「おまけに流出した崩壊液は周囲の物質を崩壊させながら膨大なエネルギーを発生させ続けて、最後には破滅的な大爆発を引き起こしたんだ。その爆発によって巻きあげられた崩壊液はジェット気流に乗って全世界に拡散してしまったんだ。」
ルウ「・・・最悪だ。私が一番危惧したことが起きてしまったのか・・・。しかし、だとしたら何故世界大会なんかできるの?そんな大規模災害が起きていたら文明崩壊を起こしていてもおかしくないのに。」
一夏「不幸中の幸いで、流出した崩壊液が極少量だったおかげで全世界が汚染されたとはいえ生物などへの影響は絶無といっても差し支えないレベルに留まったんだ。精々が空が常にどんよりした色合いになっちゃったくらいで。」
ルウ「本当に不幸中の幸いだ・・・。自分の世界には関係ないとはいえ心臓に悪い・・・。」
一夏「まぁ、それ以前から世界のあちこちでELIDが時折発生していたんだけど、この事件以降ELIDの出現数が増えたみたいで、その処理で軍隊の皆は手一杯になっちゃったんだ。転機が来たのは2051年だね。」
ルウ「その時に何があったの?」
一夏「4人の天才科学者の集い、「90Wish」の登場だよ。ELIDとの戦いで消耗していく軍隊の皆さんの負担を少しでも和らげるために集った科学者たちが合同で一つの発明をしたんだ。それが「アーキタイプ・キューブ」。戦術人形とISのコアのベースとなるコアパーツだよ。」
ルウ「「90Wish」・・・?」
一夏「あ、そのうちの一人は束さんなんだ。あとの3人は名前はちょっと忘れちゃったけど、うち一人は日本人なんだ。だからなのかよく束さんの家で話し合いとかしていたんだ。俺の家は束さんの家の近所だったし、家族ぐるみの付きあいだったから皆とも知り合いになったんだ。因みに戦術人形コアとISコアを作れるのはこの90Wishの4人だけなんだ。」
ルウ「その結果生み出されたのが「IS」と「戦術人形」という存在か。」
一夏「でも、ISに関してはちょっと問題があってね・・・。女性しか起動できないという致命的な欠陥が残ってしまったんだ。」
ルウ「女性だけ・・・か。」
一夏「その結果、世界中で女尊男卑の風潮が広がってね・・・。大半は一過性だったけど、アメリカや日本など、一部の国では結構根強く残っていて、政府にも深く食い込んでいる国もあるんだ。」
ルウ「何と愚かな・・・出過ぎた真似をすればそれは天秤を自らの手で破壊することに他ならない。後の時代に碌でもない瑕疵を残すことになる・・・。」
一夏「束さんもこれに関してはずっと悔やんでたよ。放っておいたら、自殺してしまうんじゃないかってくらいに憔悴していたし・・・。」
ルウ「その気持ちはわかる・・・。望んでもいなかったとはいえ結果的に自分たちの発明が世界を歪めてしまったとなればね・・・。」
一夏「・・・。」
ルウ「それで、戦術人形というのは何なのかな?」
一夏「・・・それに関しては俺もほとんど知らないけど、元々は自律人形という労働力みたいなロボットだったんだけど、それをベースに戦場で兵士の代わりに戦えるようにしたもので、主にELIDとの戦いに投入されているんだ。一部は治安部隊なんかにも所属しているらしいけど。ELIDの件もあるけど、ISが広まって女尊男卑の風潮が広まるとそれに呼応するようにテロリズムも増えてね・・・。」
ルウ「世界が変わってもどこも似たり寄ったりの悩みを抱えているということか・・・。」
一夏「え?この世界も?」
ルウ「20年ほど前かな。中東地方でその土地の宗教を履き違えた過激派集団が発生してね・・・、自ら国を名乗って好き放題やってたんだよ・・・。その横暴が目に余った結果様々な国やPMCがそのテロ組織の撃滅に動いた。私たちもその撃滅作戦に参加したんだ。」
一夏「うへぇ・・・。」
ルウ「そもそもの宗教自体も履き違えていた性で同じ中東のPMCからも「我らの信仰する宗教の名を騙る不届きもの」認定されたくらいだよ。あっという間に叩き潰されたね。」
一夏「うわぉ・・・。」
ルウ「おっと、また脱線してしまった・・・。そういえば、貴方を誘拐したのもテロリストだったっけ?」
一夏「さぁ・・・多分そうだろうけど、今になって考えてみるとあの人たちも誰かに頼まれてやっただけって感じがするような・・・。」
ルウ「なにやらややこしい事柄みたいね・・・。そういえば、いつぞや「女性利権団体」って言葉を言ってたけど・・・。」
一夏「それが何か?」
ルウ「これは論拠も根拠も無い話だけど、その実行犯の依頼主って女性利権団体じゃないの?」
一夏「え!?まさか・・・いや、ありうる・・・。」
ルウ「まさか・・・もし本当にそうだったら世も末だ・・・。曲がりなりにも人権団体がテロ行為を働いたとなればとんでもないスキャンダルだ。」
一夏「俺を面汚しだとか言っていた連中って、女尊男卑に染まった連中か女性利権団体のメンバーだったし・・・、可能性としては充分あり得る・・・。」
ルウ「なんと・・・言葉も出ないぞ・・・。」
一夏「俺も。考えてみれば動機充分なんだよなぁ・・・。」
ルウ「救えないなぁ・・・。えっと、後は何があったかな・・・。そうだ、90Wishはそのあとどうなったのかな?」
一夏「女性利権団体の圧力もあってISの欠陥を修正する研究は頓挫。束さん以外の三人も企業に招聘されて事実上解散しちゃったな。確か、二人は鉄血工業、もう一人がIOPという企業に招聘されたっけ。」
ルウ「そうか・・・いつか4人が再度集結し、今度こそ研究を完成させてくれることを強く願うよ。」
一夏「俺もそう思うよ。」
ルウ「さて、今日はこれくらいでいいだろう。あんまり長々話しても疲れるからね。」
一夏「あ、はい。俺はまだ大丈夫だけど。」
ルウ「いや、取り立てて今すぐ聞く必要がある話は今のところはもうないからね。それに、夏もあと数週間で終わる。そしたら気温が急激に変化することもあるから無理をしちゃいけない。」
一夏「それもそうかな・・・。それじゃあ失礼します。」
ルウ「ああ、お疲れさま。ゆっくりやすんでね。・・・録音終了。」
ガチャ
補足一覧
・ISの開発理由について
原作では宇宙活動用パワードスーツという目的だけでしたが、今作では対ELID用の兵器という目的も含まれています。
・崩壊液について
ドルフロ世界の根幹部分に関与する謎の多い物質。原作では人類の技術をはるかに上回る可能性を秘めていたために争奪戦になることもあったそうだが、今作ではそこまでの事態にはならなかった。
・ベイラン島事件について
ドルフロ世界で発生した大事件。
原作ではこれによって地球全土が崩壊液に汚染され、人類の生活圏の大半が失われてしまった。
それに伴い各国は自国の利益第一の政策を推進せざるを得なくなり、その結果利害関係の対立により外交摩擦が激化。ついには2045年の第三次世界大戦が勃発した。
この大戦では初戦から核兵器が乱発されたためEMPが頻発し、コンピュータに依存する空軍、海軍戦力が早々に役に立たなくなり、地上部隊の銃器による白兵戦が実戦のウェイトの大半を占めたとされている。
結局2051年に終結するも核兵器によって地上は更に汚染され、それに伴い国家は国土を統治するだけの余力さえ失うほどに衰退。
失われた労働力を補うために自律人形が登場し、衰退した国家の代わりにPMCが統治をおこなうようになった。
だが、今作ではベイラン島事件による地上汚染は極々軽微で済んだため第三次世界大戦などには繋がらず、自律人形の登場も更に後になっている。
・90Wishについて
ドルフロの用語で、IOPのペルシカリア女史と鉄血工業のリコリス女史も90Wish所属だった。
原作では「ロシア内務省系の技術チーム」という設定だったが、今作では束、リコリス、サクヤ、ペルシカの4人が独自に立ち上げた研究チームという設定になっている。2049年に結成され、2054年に事実上の解散となった。
・サクヤさんについて
原作には登場しないこのキャラクターは、犬もどき氏の作品「METAL GEAR DOLLS」の追憶編で登場したキャラクターの平行世界の同一人物のひとりです。
詳しい事は該当作品の第80話(追憶編:かけがえのない日々)から第83話(追憶編:灰色の世界の中で…)までをご覧ください。
但し、かなりの鬱ストーリーなのでご注意ください。
苦手な人は彼女のその後を描いたいろいろ氏の作品「喫茶鉄血」の第30話(第二十二話:これまでの私、これからの私)の方をご覧ください。
なお、この世界のサクヤさんは「METAL GEAR DOLLS」のサクヤさんとは直接的な繋がりは無く、あくまで「平行世界の同一人物」です。(犬もどき氏曰く、「あちこちで見かける」ほどには多くの人々に使われているようです)
また、出身地に関する設定が無かったので今作では日本人という設定を後付けしています。
・アーキタイプ・キューブについて
戦術人形のコアとISのコアの共通の原材料といった重要具材。
今作のオリジナルの具材であり、90Wishの4人のみが製作可能。
そのため、この4人だけが戦術人形コアとISコアを作り出すことができる。
・ISの欠陥(女性しか起動できない)について
原作では束が意図的に設定した欠陥だったが、今作では意図せず発生してしまった偶発的な欠陥という設定。
この欠陥が原因で女尊男卑という風潮が広まってしまった。
・ルウ達の世界について
今回は触れられていませんが、今作品の【17】である程度の説明が行われます。
まだまだ先になりますが、それまでお待ちください。