閃空の戦天使と鉄血の闊歩者と三位一体の守護者   作:ガイア・ティアマート

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VF-X-28レギルスバルキリー:正式名称は「デリーパー(削除者)」で、レギルスバルキリーは愛称。
外観上の基礎設計はVF-27ルシファーと同じだが、頭部がガンダムレギルスに似たデザインの新規品になっている、背中から多連結式のアームに接続された連装ビーム砲兼ビームクロー「ボーンクラッシャー」が伸びている、テールキャノンが追加装備されている等差異が多い。
元々はVF-27を何度も改造して使っていたが設計限界にたどり着いたので、一から新たに作り直したのがこのVF-X-28である。
攻撃性能と加速力、最高速度に重きを置いている上に重量が増したことで操作性が非常に悪く、ルウと火逐にしか扱えないじゃじゃ馬となってしまっている。
元々が量産性度外視の専用機であるが故に実動機が二機と、予備機が三機の合計五機しか存在しない。

VF-172ナイトメアダブルプラス:VF-171ナイトメアプラスを基本とし、そこにVF-17ナイトメアの強行モード、VF-25メサイアのISCとEXギアシステムを少しずつ形を変えて取り込んだ発展強化機体。
量産機体であるが故に飛びぬけて高性能ということは無いが、高いステルス性能と扱いやすい素直な操作性、そこそこ多彩な武装群と末永く使い込んでいける設計となっている。
別途スーパーパック、アーマードパックが存在するが今回は使用されていない。
なお、ISCは出力が低いため慣性を完全に消すのではなく、一定値を超えた慣性を引き受けることでパイロットの負荷を減らす方向に調整されている。
イメージとしてはPSPゲーム「マクロスエースフロンティア」でその凶悪なレーザーバルカンでバジュラの屍の山をいくつも築き上げたダークホースとしてのVF-171ナイトメアプラスに近い。
余談だが、ナイトメアプラスの方はこの鎮守府では航空部隊の訓練機として運用されており、非常時には戦闘モードでスクランブルさせることも可能になっている。


【16】白き準星 -White Quasar-

*天見島上空*

 

シートに押し付けられるような急加速によるGを全身で感じる。

 

ランディングギアが地面から離れて空中に舞い上がる感覚、旋回することで発生するGの圧迫感、景色が次々にはるか後方へ流れ去っていく高速感。

 

どれをとっても悪い感じがしない。

 

まるでこうして空を飛ぶことを待ち望んでいたかのような不思議な高揚感。

 

例えるなら、「実家のような安心感」といったところだろうか?

 

だが、広がる蒼穹の空の先、ちょうどセイレーンが出現したという海域だけ赤黒く染まっているのを見て、俺は高揚感を心の底に押し込んで気を引き締める。

 

ここから先は命のやり取りになる。気を抜けば自分が死ぬことになる。

 

・・・

 

・・・・・・

 

ルウ『ルシファーより全機に通達!敵艦隊はポーンクラス駆逐艦とナイトクラス軽巡洋艦を中心とした水雷戦隊寄りの艦隊という情報が入った!ただし、旗艦としてスマッシャークラス戦艦が確認されている!迂闊な飛び方だけはしないように!!』

 

敵艦隊の情報が画面に次々と表示される。

 

そのほとんどは量産型の小型艦艇だが、その中に明らかに艦娘寄りの姿があった。

 

識別名は「Smasher Mk.I」と表示されており、これが旗艦の戦艦だとわかった。

 

サイズだけを見れば艦船型の量産艦の方が大きいのだが、見た目に反してそこまで強くなく、寧ろ大きすぎる性で運動性能と被弾面積の面で艦娘に劣る。加えて動作が単純なので仕留めるのは簡単だという。

 

一方艦娘型は小さい分艦船型よりも運動性が高く、狙いをつけるのも難しい。戦艦型は性質上あまり速くは動けないがそれでも艦船型よりは速く動ける。縦横無尽に動き回ることもあって意外と厄介だ。

 

一夏「先にある程度量産艦を沈めないと近づけないな・・・。」

 

俺は暇なときは図書館に入り浸っていろんな本を読み漁っていた。当然艦船に関する本もだ。

 

駆逐艦は勢力や型によって目的は様々だが、一般的に対空、対潜、対小型艦のいずれかの役割、もしくはそれらすべてを受け持つ小型艦艇で、装甲と最大火力こそ低いが高い量産性と速力、そして時には一撃必殺の魚雷で戦艦すら喰うことで艦隊を力強く支援する縁の下の力持ちだという。

 

一般的にどの艦隊にも駆逐艦は相応数所属している。長距離での撃ち合いでは射程と装甲が足りずあまり役に立てないが、かといって全く配備しないと戦線に穴が開いてしまったときにその穴を素早く埋めることができずそこから艦隊が崩壊する恐れがある。

 

余談だが、トリニティ・ガードの量産艦は全体的に駆逐艦や軽巡洋艦といった小型艦艇が多く、そしてそのいずれも一芸持っている。

 

特に凄まじいのは「ツバキ級」という防空駆逐艦だ。現時点で最新仕様である改十四ともなると大量のミサイルと対空砲火の嵐で寄り付く航空機を打ち砕き、敵からのミサイルや魚雷はデコイや迎撃ミサイル、迎撃魚雷で無力化する徹底ぶりだ。

 

かく言う俺もシミュレーションではツバキ級は一度も攻略できなかった。何回あの凶悪な対空砲火にミンチにされたことか・・・。

 

そんな軽いトラウマもあってか、俺の中では駆逐艦はある意味戦艦よりも厄介な敵という認識になっていた。

 

・・・後で聞いた話だが、何度となく改修を繰り返したツバキ級が異常なだけで、普通の駆逐艦はツバキ級との相対的な比較ではあるがそこまで脅威ではないらしい・・・。

 

閑話休題。

 

ルウ『まずはミサイルでご挨拶と行きましょうか!全機一斉射!』

 

その号令と共に飛行するすべての機体から無数のミサイルがばら撒かれ、セイレーンの艦艇からも対空砲火が放たれる。

 

流石にこちらは6機しかいないためこちらのミサイルはほぼほぼ迎撃され、迎撃から漏れたミサイルも敵艦艇に致命傷を与えるには程遠かった。

 

ルウ『やっぱり数の差が大きいか・・・。全機散開!まずは数を減らす!』

 

ルウさんもミサイルが届くとは最初から考えていなかったようだ。トリニティ・ガードはミサイルの扱いに長けている分、その弱点や対処法にも通じている。

 

いくらセイレーンの対空砲火がツバキ級に遠く及ばないとしても数の暴力でその差をひっくり返せることは解り切っていたようだ。

 

・・・ついでに、敵の対空砲火の濃度と反応を見るための釣り弾としての意味合いもあったのだろうが。

 

俺たちはバラバラに散開し、独自に攻撃を開始した。

 

俺はレーザーガンポッドをスナイパーモードで起動し、ビームキャノンと合わせて敵駆逐艦の艦橋めがけて狙撃を繰り返した。

 

一発では流石に貫けないが数発当たれば貫けるようで、艦橋をつぶされた敵艦は動きが止まり、それによって敵艦隊の隊列が乱れ始めた。更に艦のバイタルめがけて狙撃しながら海面近くを突撃する。

 

艦砲が吹き飛び、弾薬が誘爆し、缶が爆発して敵艦が傾き、そして一際大きな爆発を起こして跡形もなく消滅する。

 

俺はその爆炎を隠れ蓑にしてその先にいる軽巡洋艦に機首を向ける。

 

軽巡洋艦は爆炎に紛れた俺を正確に捕捉できず、散発的に対空砲と主砲で俺を追い払おうとするが、シミュレータールームや図書館に入り浸り、実戦訓練で経験を積み上げていた性かその砲弾の軌道が見えるように思えた。

 

飛んでくる軌道さえ解ってしまえば回避するのはさほど難しくない。俺はバレルロールで砲弾を躱しつつ肉薄し、即座にバトロイド形態に変形してビームサーベルで艦橋を切り裂いた。

 

他の敵艦は同士討ちを警戒したのかこちらにはあまり積極的には攻撃してこない。その隙に俺は機体をバク転の要領でファイター形態に戻しつつ主翼のミサイルを切断された艦橋の断面から艦内部に叩き込む。

 

主要機関が致命傷を受けて爆散する軽巡洋艦。上空に離脱すると判断したのか他の艦から対空砲火が上空に放たれるが、俺は背面飛行で海面スレスレを元来た方向へ戻り、その先にいた別の駆逐艦の横っ腹にビームキャノンを叩き込んだ。

 

当たり所が悪かったのかかなりのダメージを負った駆逐艦は、火を噴き上げながらもこちらに向けて対空砲と主砲を撃とうとするが、時すでに遅しだ。

 

背面飛行のまま機首を下げてやや上昇したのちに再びバトロイド形態に変形し、そのまま逆落としの体勢で回転するように駆逐艦を下から上へと二本のビームサーベルで切り上げた。

 

悲鳴のような金属音を上げて駆逐艦は折れ曲がりながら爆散し、俺は一度上空に戻って敵の数を確認する。

 

30隻はいた敵艦隊は既に6隻しか残っておらず、そのうち2隻も既に大破していた。

 

旗艦のスマッシャーが何とか一機でも道連れにしようと主砲を動かしているがその瞬間スマッシャーの腹部に何かが突き刺さった。

 

ルウ『ホワイトクェーサー!まさか初陣で軽巡1、駆逐2を無傷で撃破するとは思ってなかったですよ!』

 

ルウさんからの通信と同時に突き刺さった何かが赤いビームを吐き出しスマッシャーを内部から破壊し、耐え切れなくなったスマッシャーは爆散した。

 

後で聞いたところ、あれはルウさんのレギルスバルキリーの手持ち武器「ルガーランスⅣ」という物らしい。

 

旗艦を失った敵艦隊は統率を失い、尚も抵抗を続けるが最早烏合の衆だった。

 

あっけなく掃討され、救援作戦は終了した。

 

結果を言うと、救助対象の艦隊は輸送艦が中心の輸送艦隊で、護衛は駆逐艦しかいなかったらしい。6隻いたフレッチャー級は中破よりの小破の損害を受け、6隻の輸送艦のうち2隻が大破轟沈したが人的被害はなかった。

 

一方セイレーンはといえば旗艦スマッシャーをはじめ、軽巡6、駆逐23が海の藻屑となった。要するに敵艦隊は殲滅されたのだ。

 

因みに俺の戦果は最終的には駆逐3、軽巡1となった。一方でルウさんは軽巡2、駆逐4、そしてスマッシャーと堂々のトップだ。

 

・・・

 

帰還後、俺は今回の出撃メンバーに誘われて食堂に来ていた。

 

ルウ「まさか初陣で4隻沈めるとは、貴方パイロットの才能あるんじゃないかな?」

 

男性パイロットA「本当にな。俺は初陣じゃ駆逐艦1隻仕留めるのでさえ苦労したからなぁ・・・。」

 

女性パイロットA「私なんか初陣ではイの一番に被弾してとんぼ返りよ?あの時は恥ずかしくって穴掘って入りたいと思ったわよ。」

 

一夏「いや、今回は正直運が良かっただけだと思うけど・・・。」

 

男性パイロットB「謙遜すんなって!お前の動き見てたけどよ、あれそうそうマネできるようなマニューバじゃねえぞ。」

 

女性パイロットB「私達じゃあれを真似しようとしたら何回海面にキスする羽目になることか・・・。」

 

ルウ「咄嗟に思いついたコールサインだと思うけど、ホワイトクェーサー(白き準星)とは言い得て妙になったわね。貴方が別世界からの客人じゃなかったら航空隊に引き入れたいくらいよ。」

 

一夏「う~、そういわれるとこそばゆいなぁ・・・。」

 

ルウ「そうそう。それで思い出したけど、貴方のいた世界の座標がついに掴めたわよ。」

 

一夏「え、本当ですか!?」

 

ルウ「ゲートの接続にはまだ時間がかかるけど、早ければ11月の終わりごろには向こうに帰れるはずだよ。」

 

男性パイロットB「良かったじゃねぇか!」

 

女性パイロットA「遂に故郷に帰れるのね!」

 

一夏「あはは・・・それは有難いんですけど、一つだけ我儘言ってもいいですか?」

 

ルウ「ん?」

 

一夏「今年中はこっちで過ごしたいんです。向こうに帰ったらもう一度こっちに来れるかどうかわからないし、皆との思い出作りに、ね。」

 

ルウ「別にそれくらいなら問題ないし、皆も多分思い出づくりをしたいだろうからね。それじゃあ帰還予定日は1月の10日あたりを予定しておこうか。」

 

一夏「ありがとうございます!」

 

そのあとはチーズハンバーグ定食を食べながら会話に花を咲かせた。

 

10月も半分ほど過ぎ去った秋の夜、俺が向こうに帰るまであと3ヵ月弱・・・。

 




ツバキ級防空戦列駆逐艦


【挿絵表示】


トリニティガードが長く運用する防空戦列駆逐艦で、吹雪型駆逐艦を魔改造したもの。
片舷10基、計20基の機関砲による凶悪な対空砲火は多くの戦闘機を屠る圧倒的な制圧力を有し、防御面でもデコイや迎撃装置もさることながら、側舷に取り付けられたシュルツェン兼補助推進装置「シールドスクリューポッド」によって魚雷に対して高い防御性能を有する。また、内部の補助推進装置によってこの重装備でありながら高い速力を有する。因みにこの画像は改十三の物であり、改十四は二番煙突根元後ろに横方向に発射する迎撃ミサイルランチャーが追加装備されたのだが、この後FtDの仕様に次々と変更が加えられてしまい、FtDで実用する機会に恵まれることなく次の改装を加えられることとなった。(改十四の画像はニコニコ動画で行われたユーザーイベント「ズビアン祭」のために艦を真ん中で切断したものしかなかったため改十三の画像で代用)

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