閃空の戦天使と鉄血の闊歩者と三位一体の守護者 作:ガイア・ティアマート
【視点:一夏】
あれから数日が過ぎた。
IS学園への入学の準備作業、そしてその先に見据えた「ISを本来の姿に戻す」という目標のために、俺たちはその後も幾らか話し合いを重ね、結論としてISを扱う新しい会社を立ち上げるという当座の目標を決定し、そのための準備を進めていた。
ルウ「設計はこんなところで・・・オータムさーん!これーどこに運びますー!?」
オータム「あー、それは向こうの端っこに置いといてくれー!」
ルウ「りょうかーい!・・・レスポンスが鈍いな・・・もっと反応を早くしないと役に立たないな・・・。」
ルウさんはPDAで設計の詰めをしながら試作したISのサブアームを使って作業と動作試験を平行して進めている。
鈴「もうすぐ昼ごはんよ!今日はルウさんたちから教えてもらったチーズハンバーグを試してみたわよ!」
鈴とそのお母さんは今は食事の準備をしている。
アンは時折ルウさんに銃器のアイデアを提供しているし、マドカと雨姉さん(スコールさん)と秋姉さん(オータムさん)はISを使って大きな機材を楽々運搬している。
因みに雨姉さんと秋姉さんというのは俺がそう呼んでいるだけだが、二人ともその呼び方が嬉しかったらしい。
そのころ俺は・・・。
一夏「ISコアって結構な数があったんだなぁ・・・段ボール箱一つ分ともなれば結構重い・・・。」
鈴の父「ISが使えればこんなものも楽々何だろうけどな。昔は男が外で働き、女は家を守るっていうのが普通だったが、今や男は立場が無いからなぁ・・・。」
倉庫に置いてあったISコアが入った段ボールを運んでいた。
一夏「あはは・・・、世知辛いですよね・・・。」
トサ「コーン・・・。」
鈴の父「別に女を下に見ているとかそういうのは無かったんだよ。少なくとも私はね。妻が家を守ってくれているからこそ、私達父親は憂いなく仕事に打ち込んで家族を養うことができた。でも、世の女たちはそうは思ってなかったのかもしれないな・・・。」
鈴のお父さんは悲しそうに俯いた。
鈴のお父さんは大人しい性格だが愛妻家でもある。
かつて癌を患ったがために体力が落ちてしまい、ままならない肉体に悪戦苦闘しつつも家族を支え続けていた。チンピラどもが襲撃してきた際も妻をかばっていたし、東方先生たちがいなかったら自分を盾にしてでも妻を逃がす覚悟だったらしい。
そんな彼にとって今の女尊男卑の風潮は「気分が悪い」ことではなく「悲しい」ことなのだ。
・・・と。
カランカラン・・・。
一夏「あれ?」
段ボールを持ち直した時に中からコアが一つ転がり落ちてしまった。
トサ「コン!」
俺が段ボールを置いたところでトサが転がり落ちたコアを拾ってきてくれた。
一夏「ありがとうなトサ。」
トサ「コーン!」
俺がそれを受け取り、箱に戻そうとしたところ・・・。
・・・キィィィン!!!
一夏「え?」
トサ「コン?」
鈴の父「え?一夏君!?」
突然コアが光り輝き、頭の中に何かの情報が流れ込んでくるような感覚に襲われた。
一夏「・・・うぉっとぉ!?」
危うく意識を手放しかけたが、寸でのところで踏みとどまった。
一夏「うー・・・一体何が起きたんだ?」
鈴の父「一夏君、その腕のは?」
一夏「へ?腕?」
そういわれて俺は自分の両腕を見ると、さっきまでは無かった腕輪が自分の左腕についていた。
一夏「これって・・・一体・・・?」
俺たちは荷物を指定の場所に置いた後、束さんにこのことを報告しに行った。すると。
束「おおっ!それは間違いなく、そのISコアがいっくんを主に選んだってことだよ!」
一夏「え?でもISってまだ男性には扱えないんじゃ?」
束「一般にはそうだけど、男性用ISコアの試作品は時間を見つけては作っていたんだよ。で、その段ボールの中に入っていたのがその試作品たち。ちょうど手元にあった男性のデータがいっくんのしかなかったから今一つ成果が上がっていなかったんだけどね・・・。」
そんなデータいつ取ったのだろうと思い返してみると、何年か前に酷い風邪で寝込んだ時に束さんが検査の為に採血をしたことを思い出した。きっとその時のデータを流用したんだろう。
一夏「それにしても、コアに「選ばれた」か・・・。だとすれば、俺を主に選んでくれたこいつに、俺も応えてやらないとだな。」
ルウ「しかし、だとすると少し予定を早める必要が出てくるのでは?一夏さんが事実上世界最初の男性ISライダーとなったことは女尊男卑に汚染されたこの世界を修正する上で非常に大きな意味を持つけど、そのためには全世界に大々的に発表する必要がある。」
束「実はね、記者会見の予定はあったのよね。元々は会社の立ち上げといっくんの生存発表の予定だったけど、そこに入れちゃおうと思うの。」
ルウ「・・・悪くはないと思うけど、人集まるのだろうか?」
束「既に抽選になっちゃってるから大丈夫だと思うよ?」
ルウ「マジか・・・。」
トサ「コーン・・・。」
束「そういえばいっくん、その青い狐ちゃんどうしたの?」
一夏「ああ、そういえば説明してなかったっけ。この狐は『トサ』って名前なんだ。向こうの世界で見つけて、なんか懐かれたから連れてきたんだ。」
束「へぇ、そうなんだ。遅くなったけどよろしくねトサちゃん。」
トサ「コーン♪」
と、そこへ・・・。
鈴音、アン「「束(姉)さん!一夏がISに選ばれたって本当!?」」
鈴とアンが部屋に駆け込んできた。大方、鈴のお父さんから聞いたのだろう。
一夏「ああ、どうやらそうらしい。」
俺が左腕の腕輪を見せると二人も納得がいったようだ。
アン「そうか、一夏もISライダーになったか。」
鈴音「束姉さんの夢の実現への第一歩ね!でも、その第一歩が一夏っていうのはなんというか・・・えっと・・・何て言えばいいのか解らないけど・・・ありきたりな表現だけど・・・そう、運命を感じちゃうね。」
運命・・・確かにそうかもしれない。
束さんがずっと苦しみ続けていたことは篠ノ之家の皆を除けば俺たちが一番よく知っていると言ってもいい。その中で唯一の男性である俺が束さんの夢の実現の最初の一歩になるというのはなんだか運命のようなものを感じる。
ずっとどうにかしたいと思っていたが、今までは精々が手伝い程度しかできなかった。
だが、今は違う。
自分という存在は束さんの夢を現実のものにする、そして望まぬままに世界に広まってしまった女尊男卑という歪みを清算するための第一歩だ。
束「いずれは他の男性のデータも必要になって来るけど、とりあえずはいっくんの運用データの積み重ねから始めないとね。多分今のままだとデータが足りなくていっくん以外の男性では扱えないだろうからね。」
そして、そのためにも俺はISライダーとして多くを学ばなければならない。
一夏「よし!そうとなったらまずは訓練・・・と行きたいところだけど、流石に今は忙しすぎるから無理か・・・。」
ルウ「とりあえず今はISを使って今ある作業を時短しつつ基礎の訓練を並行して行うところから始めようか。テストしててわかったけど、これ本来自分の体でやる作業をISを噛ませて行うだけでもかなりの訓練になるから。」
ルウさんが背中の簡易ISに接続された試作サブアームで作業を続けながらそう言った。
束「とりあえず間に合わせで量産機のISフレームにこのコアを組み込んでおくね。専用機は直ぐには用意できないから。」
ルウ「大凡設計は終わったけど、まだいくつかのユニットのアイデアが纏まらなくてね。もうちょっと時間が欲しいかな。」
とりあえずは今積みあがっているプロセスを片付ける所から始めなければならない。時間は待ってはくれないのだ。
一夏「じゃあ、ISフレームですけど、高速型のを貰えますか?」
束「高速型というと『テンペスター』になるかな?明日までには仮接続を終わらせておくから、それまでは待っててね。」
一夏「了解!」
世界はこれから加速していくだろう。恐らく一筋縄ではいかないが、それでも俺たちは戦う。その覚悟は既にできているのだから・・・。
・・・一方そのころ・・・
???「香苗姉さん!IS学園の入学試験の会場案内が来たよ!」
香苗「あらら篠生、はしゃいじゃって。」
篠生「だってIS学園よ!?昔からのあこがれだったんだから!」
香苗「ふふふ、綾香さんや零さんもIS学園に進学するって言ってたし、楽しい事になりそうね。」
篠生「でも残念。ISって男の人は扱えないのよね・・・どうしてなのかしら?」
香苗「よくわからないけど、篠ノ之博士も何とかしようとしていたみたい。・・・女性利権団体に邪魔されて上手くいかなかったみたいだけど・・・。」
篠生「私ISは好きだけど女性利権団体は嫌い。たまたま男の人がISを使えないってだけなのに、女ってだけで威張っちゃって・・・。」
香苗「お父さんもアレの性で風当たりが辛いって言ってたからね・・・何時かあんな差別、無くなってくれればいいけど・・・。」
篠生「そういえば、香菜麻はどうするのかしら?」
香苗「香菜麻が高校に上がるのはもう1年後だから、その時になるまでは解らないわね。」
篠生「でも、IS学園に通うとなると寮生活になるから香菜麻には休日くらいしかあえなくなっちゃうのよね・・・。」
香苗「さみしい?」
篠生「そ、そうじゃなくてね、香菜麻がさみしがるから・・・!」
私と姉さんがIS学園に進学したら1つ下の香菜麻はたまにしか私たちに会えなくなる。両親や同級生も居るからそこまで寂しくならないとは思うけど・・・。
香苗「ふふ、別に何年も会えなくなるわけじゃないから、きっと大丈夫よ。」
篠生「そ、そうよね・・・。」
数年前からやけに私達と一緒に居たがるようになった妹の事に若干後ろ髪を引かれる気もあったが、多分大丈夫だろう。
我妻君や嘴平君に不死川君、それに竈門兄妹もいるのだから・・・。
・・・でも、この名前は何故かとても懐かしいと感じる・・・。
まるでずっと前から・・・生まれる前から知っていたかのような・・・。