閃空の戦天使と鉄血の闊歩者と三位一体の守護者   作:ガイア・ティアマート

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一夏達が己を磨いていたのとほぼ同時期のS09地区は、ひとしきり荒事が片付いたこともあって平和な日々を送っていた。

その一日を覗いてみよう。


【29】S09地区の割と平和な一日 -Calm day-

*S09地区 SFS本社*

 

ドリーマー「ふあぁぁぁぁ・・・。退屈ね・・・。」

 

代理人「退屈できるだけマシですよ?先週までは皆ドタバタしてて、退屈する暇なんてありませんでしたから。」

 

イントゥルーダー「そうですよドリーマー・・・。・・・もしそんなに退屈するのが嫌なら、ウロボロス姉さんに鍛えてもらってきてはどうですか?」

 

ドリーマー「うっ・・・!それは勘弁してほしいわね・・・。」

 

ドリーマーの愚痴を代理人が窘め、そこにイントゥルーダーが追い打ちをかけてドリーマーは沈黙する。

 

しれっと会話をしているドリーマーとイントゥルーダーだが、この二人は2か月前にロールアウトした新型ハイエンドモデルだ。

 

ドリーマーは代理人同様エリザの専属人形という立ち位置で、特に防衛に比重を置いた戦術人形である。

 

代理人が駆り出される機会も多かったことからエリザ直属の人形がもう一人必要だという理由から生み出されたのが彼女である。実際、繁忙期にはハイエンドモデルがほぼ全員出撃しなければならないことがあり、代理人も出撃することが少なくなかった。

 

彼女が使用する武器はナインのサブウェポンである長射程レーザーライフルを更にブラッシュアップし、射程距離を犠牲にしつつも長時間の照射やレーザーソードの展開を可能にし、さらに若干の小型化も実現した最新モデルである。

 

そして、イントゥルーダーは情報戦を主眼化した戦術人形であり、敵へのクラッキングは元より、敵からのクラッキングすら大体のモノは単独でブロック、反撃することが可能という高い性能を有する。

 

その分通常の戦闘能力はやや低めであるが、多目的ライフルと小型のガトリングレーザーガンを一丁ずつ武器としており、簡単には攻められないような堅実さを持つ。

 

同じ電子戦能力を持つドリーマーと比較するとあちらは電子戦も熟せる汎用型で、こちらは電子戦主眼で実戦能力はついでと言った感じに近い特化型だ。

 

因みにイントゥルーダーは数日前にIOPからネットワークセキュリティ強度を調べるためのテスターの依頼をされたためにIOPのネットワークのテストハッキングをした。

 

結果として、あまりにもあっさりとセキュリティが突破されてしまったためにIOPはセキュリティ強化に奮闘することになり、イントゥルーダーもその手伝いで昨日は徹夜だったためちょっと機嫌が悪いのだ。

 

イントゥルーダー「あーだめ・・・頭くらくらする・・・ちょっと寝てくるわ・・・。」

 

戦術人形は基本不眠不休でも問題は無いのだが、流石に長時間連続稼働すると機能不全を起こすことがある。特にイントゥルーダーは徹夜中ずっとAIをフル稼働させていたためにかなり負荷がかかっていたのだ。

 

ややふらつきながら自室へと引き上げていくイントゥルーダーに「おやすみなさい」と声をかけて見送った代理人は、ドリーマーに向き直った。

 

代理人「貴女も退屈だというのなら皆さんの手伝いでもしてきたらどうです?リコリスさんとサクヤさんの旧友の依頼でアイデアを皆で出し合っているのです。貴女も何かアイデアの一つや二つ出してみてはどうですか?」

 

ドリーマー「う~ん・・・まぁ、退屈しのぎにはなるでしょうね。」

 

そういってドリーマーも会議室へと歩いて行った。

 

代理人「ふふ・・・さて、私も軽食に何か買ってきましょうか。」

 

一人残った代理人も会議室で脳をフル回転させている面々の栄養補給のための軽食の買い出しに向かった。

 

因みに他のハイエンドやミドルレンジ達が何をしているのかというと、まずエクスとハンターはグリフィンの演習場を借りて実戦形式の模擬戦で互いを高め合っている。

 

スケアクロウはイントゥルーダーの手伝いで徹夜したため今は寝ているし、デストロイヤーはUMP三姉妹と一緒に路地裏散策中だ。

 

アルケミスト、ゲーガー、アーキテクトの三人は既に会議室で他の面々と共にアイデアを出し合っている。

 

ウロボロスは今日も教官として出張っているし、ウェスターもそこで一緒に訓練に励んでいる。

 

なお、ティアは今はシイムを抱き枕にして一緒に寝ているし、リコリスは今日は休みでペルシカの所に遊びに行っている。

 

・・・

 

 

 

*会議室*

 

男性研究員「やっぱり大口径のキャノン砲を・・・」

 

ゲーガー「いや、標準装備にそれは流石にオーダーからズレているだろ・・・。」

 

アルケミスト「サブアームに機関砲をつけるくらいがいい所じゃないのか?」

 

トバイアス「銃弾は何を使う?レーザー?」

 

時雨「私は実弾の方がいいと思うけど・・・。」

 

スコーピアス「私も実弾の方がいいと思うね。レーザーって天候によって性能が大きく左右されるから安定した性能を持たせるなら実弾の方がいいと思うよ。」

 

男性技術者「実弾なら5.56㎜のNATO弾が良いと思います。威力は充分ですし、何より入手が容易です。」

 

・・・

 

ガイア「ライダーが着込む装甲はどういう配置にするかなぁ・・・あまりガチガチに着込むと動きづらくなるけど・・・。」

 

アーキテクト「いっそライダーの装甲は必要最低限に留めてIS側の装甲を増やすってのはどうかな?ライダー側の守りは絶対防御に丸投げすることになるけど。」

 

女性研究員「少なくとも関節部分の装甲化は厳しいでしょうね。やろうと思えば装甲化と可動領域の確保の両立は可能ですけど、装甲が複雑化して生産性が犠牲になってしまいます。」

 

女性技術者「しかし絶対防御に防御を丸投げするのは危険ですよ。万一の時にライダーを守る手段が無くなります。」

 

ノアル「何か別にフォースフィールドの様な防御システムが装備できればいいのだけど・・・。」

 

・・・

 

【視点:代理人】

 

代理人「サクヤさん、進捗はどんな感じですか?」

 

軽食の買い出しから戻った私はコンピュータとにらめっこしているサクヤさんに話しかけた。

 

サクヤ「う~ん、順調とは言い難いかな。」

 

エリザ「でも皆で話し合っているからアイデアは出なくても方策そのものは磨かれていると思うよ?」

 

サクヤさんとその隣に座っている褐色の少女の様な自律人形のボディのエリザが答えた。

 

エリザがこのボディを持ったのは数か月前の事になる。自律人形なのもあって自前の戦闘能力こそ無いが、代わりに他のハイエンドモデルの追随を許さないレベルの高い演算能力を持つ。

 

代理人「そうですか。確かにすぐに答えが出るような簡単な話でもないですからね。」

 

リコリスさんとサクヤさんの旧友の束さん。彼女から意見を聞きたいという要望が来たらしい。

 

代理人「しかし、かなり複雑な設計なのですね。」

 

本来ISは体に纏うタイプだ。だが、このISはどちらかというと「背中に背負う」といった方が近い。

 

そのためか腕とは別にアームが一対有り、所謂「阿修羅」の様な姿になる。

 

既存のISとは一線を画したISになるだろうが、それ故にアイデアが纏まらないらしい。

 

代理人「そういえば、アームユニットに機関砲をつけるというアイデアがありましたが、内蔵するのではなく外付けにしたらどうですか?外付けなら他の武装に後から取り換えることもできますし、撃ち切った後等にパージできます。なにより腕部の構造も簡略化出来ますし、装弾数の拡張も容易ですから。」

 

サクヤ「お、そういえばそうだね。束ちゃんも「汎用性を考慮してほしい」って言ってたからね。ありがとうね代理人ちゃん!」

 

代理人「ふふ、どういたしまして。それはそうと・・・皆さん、軽食を持ってきましたよ!」

 

それを聞いた皆が一斉に手と口を止めて軽食を食べに寄ってきた。

 

・・・

 

・・・・・・

 

*路地裏*

 

スタッフたちが自らの脳に燃料をくべているのとほぼ同じ時間。

 

デストロイヤーはUMP三姉妹に連れられて路地裏散策に来ていた。

 

【視点:デストロイヤー】

 

デストロイヤー「へぇ・・・確かに見てて飽きないかも。」

 

S09地区の裏路地は複雑に入り組んでおり、暇があれば散策に来ているUMP三姉妹でもまだ半分も把握できていない。

 

同じ路地でも逆方向から見たり、違う季節や時間帯に見ると全く違う景色になるため、思った以上に新鮮味で溢れているのだ。

 

ふと横を見ると、他の路地とは雰囲気が違う、何度も緩やかに折れ曲がりながら続いていく見たことも無い路地が伸びていた。

 

そう、かつて三姉妹が「喫茶鉄血」の世界線に迷い込んだ際に通った路地である。

 

S09地区の裏路地は兎に角複雑で、それらの無数の裏路地が入り組み、絡み合っている。

 

その影響でどこかで時空間を超えるような超常現象が引き起こされているのかもしれない。

 

尤も、この通路は常にあるわけではなく、普段は壁になっている。今日はたまたま繋がっているのだろう。

 

今日はその路地の先から豪雨の音が聞こえてくる。今日のS09地区は晴れで、雨の予報など出ていない。

 

だが、この時「喫茶鉄血」側のS09地区は横殴りの豪雨で客足が遠のいており、その日の最後の客がそろそろ帰ろうとしている頃合いだった。

 

シゴ「凄い雨の音だね・・・。」

 

ナイン「あっちの代理人さん、どうしているかなぁ?」

 

フィアーチェ「多分お客さん来ないから早閉めしているんじゃないかな?」

 

三姉妹も口々にあちらの世界の代理人の心配をしている。

 

なお、三姉妹は去年の夏ごろに真冬の「喫茶鉄血」の世界に偶然迷い込んだことがあったが、この時彼女らは代理人以外の「喫茶鉄血」世界の人形とは出会っていない。

 

あの時直接会ったのは代理人だけで、他のメンバーはその時見える範囲に居なかったのだ。

 

もしかしたら居たのかもしれないが、当時の軽く混乱していた三姉妹は他に居たとしても気づいていないだろう。

 

デストロイヤー「そのうち機会があったら挨拶の一つでもしに行こうかな?」

 

流石にこんな豪雨の音が聞こえてくる日に行くのはアレだが、何時か行ってみたいと思いつつ、私は三姉妹と一緒にその場を離れて歩き出した。

 

・・・

 

*社長室*

 

【視点:ガイア】

 

夕方になり、私は纏ったアイデアを束さんに送るためにPCに向き合っていた。

 

アイデアを出し切ったメンバーはすっかりグロッキーになってしまったため、今日の業務はここまでにしたのだ。

 

束『え~もしもし。うん、声も映像もばっちりだよ!』

 

ガイア「はい、こちらも問題なしです。それで、アイデアの件なのですが・・・」

 

その後テレビ電話感覚でデータを転送しつつ情報交換をした。

 

束『うん、確かに受け取ったよ。それにしてもたった一日でここまで出来ちゃうなんてねぇ・・・。』

 

ガイア「今日は他の業務が殆どなかったから打ち込めたというのが大きいですけどね。」

 

束『それはそうと、SFSだっけ?そちらの戦術人形たちの武器をうちのISでも使えるように出来るかな?』

 

ガイア「別段複雑なシステムは使っていないから使うだけなら無改造でも行けると思うけど・・・。」

 

束『あ、そういう意味じゃなくて使っても大丈夫かなって・・・。』

 

ガイア「ああそっち・・・。別にこちらとしては問題は無いけど、でもレギュレーション的に大丈夫かなぁ?」

 

束『そこんところは問題ナッシングだよ!』

 

ガイア「だったらいいけど、念のために試供品を送った方がいいかもね。」

 

束『送ってくれるのなら有難いね。』

 

そんな感じで話が進んでいく。そしてその話がひと段落し、そろそろ通話を終えようかと思ったとき・・・。

 

ルウ『束さん、少し解らないところがあるから見てほしいのだけど・・・電話中だったか・・。』

 

ガイア「え?」

 

凄く聞き覚えのある声と共に見覚えのある顔が画面の端っこに映った。

 

束『ああ、もうすぐ通話が終わるからもう少しだけ待ってね。』

 

ガイア「え・・・えっと・・・。もしかして、そこにいるのって・・・。」

 

束『あれ?ルウちゃんの事知っているの?』

 

ルウ『え?何故私の話題に?』

 

その声と共に画面の端っこに居たルウさんが近づいてくる。そして・・・。

 

ルウ『ん?あーーーー!!!!!!』

 

ガイア「やっぱり!!」

 

両方とも思わず叫んでいた。

 

ルウ『ガイア!?なんでそこにいるの!?』

 

ガイア「ルウさんこそなんでそこに!?」

 

・・・

 

・・・・・・

 

ルウ『なるほど、しかし驚いたよ。行方不明になっていた貴女が別世界の一企業の社長に収まっていたなんて。』

 

ガイア「殆ど成り行きだったんだけどね・・・。というか、なんでこっちの世界に?」

 

ルウ『貴女を探しに来たというのもあるけど、他にも色々と理由がね。話すと長くなるからそれはまた別の機会にね。』

 

そうして他愛のない会話で通話を終える。

 

ガイア「さて、今日はもう終わりにするかな・・・。」

 

そう呟いて今日はここまでにしようとしたのだが、何故か社内が妙に騒がしくなった。

 

何かトラブルでも起きたのかと思ったのと同時に内線が鳴り響いた。

 

ガイア「何かあったの!?」

 

リコリス『さっき外出していたUMP三姉妹とデストロイヤーが帰って来たんだけど、酷く衰弱した少女?を連れてきたのよ!どうも普通の人間じゃないみたい!』

 

ガイア「とりあえず今その少女はどこにいるの!?」

 

リコリス『一応第二医務室に運び込まれたみたい!』

 

ガイア「すぐ行く!」

 

・・・

 

・・・・・・

 

*第二医務室*

 

ガイア「なるほどね・・・確かに普通の人間ではなさそうね。」

 

ベッドに横たわる少女は腰から下が無骨な金属パーツに置き換えられていて、ぱっと見は自律人形のようにも見える。だが・・・。

 

ガイア「・・・この子、自律人形に見えるけど、どちらかというと人間の方に近い・・・というか、この子区分で言えばサイボーグよ?」

 

デストロイヤー「サイボーグ?」

 

サクヤ「人間の体の一部を機械部品等の人工物に置き換えた存在。自律人形とは根本的に違う存在ね。」

 

ガイア「だけど、随分と粗雑な施術だね・・・脚部ユニットの損耗具合から見て、かなり長距離を移動してきたみたいだけど、こんな酷い施術を施された体でここまで生きてたどり着けたのは奇跡と言えるよ。」

 

シゴ「この子助かるかなぁ・・・。」

 

三姉妹は既に半泣き状態である。

 

兎に角命を繋ぐことが先決である。

 

エリザ「束さんは過去にISを使って臓器が機能停止寸前だった少女の命を繋いだことがあったはず・・・!今その時のデータを取り寄せてるよ!」

 

シイム「初任務の時に無理矢理使ってそのまま返しそびれて持ってたラファールが部屋にあるからそれ取って来る!!」

 

女性医務室長「それじゃあ今のうちに精密検査をしておきます。」

 

男性技術者「よーし!終業前にもうひと仕事だ!この子を助ける!!」

 

リッパー「人工臓器の準備をしてきます!」

 

イェーガー「さっきペルシカ女史にも連絡したので、直ぐに応援に駆けつけてくれます!」

 

・・・

 

日が沈もうとしている時間、鉄血工業は一人の少女を救おうと慌しく動き出した・・・。




原作からかなりの乖離を起こしていますが、最後に登場した少女はドルフロプレイヤーなら薄々誰なのか感づいているかと思われます。

なお、次回からは私も参加しているいろいろ氏開催の大規模コラボのストーリーが数話続きます。
期限が6月中頃となっているので場合によっては2話同時投稿される可能性もありますが、現在執筆中故どうなるかは未定です。
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