閃空の戦天使と鉄血の闊歩者と三位一体の守護者 作:ガイア・ティアマート
私は幻創戦艦・大和戦とアームズフォート戦をイメージしてストーリーのプロットを組み上げていたのですが、気が付いたら途中から映画「アンストッパブル」になっていました。
何言っているかわからないかもしれませんが、私も気が付いたらこうなっていました。
【BGM:「PSO2の東京のアークスクエスト「トレイン・ギドラン討伐(昼)」」より「Zero-G - Train Gidran -」】
プァーーーーン!!
疾走するヴィーラを警笛を鳴らしつつ必死に追跡する777号。
軍用の大型列車砲であるヴィーラと大編成の貨物列車を牽引する為とはいえ民間企業向けのディーゼル機関車である777号では、サイズ差もあってヴィーラの方が圧倒的に馬力が強い。
だが、同時に自重が今の777号の全編成よりも圧倒的に重い事による加速性の悪さによってその長所はほぼ相殺されている。
なにより自重が重い分加速も制動も反応が鈍いヴィーラは迂闊に最高速度は出せない。
迂闊に最高速度を出してしまえばカーブで減速が間に合わず遥かにオーバースピードのまま突っ込んでしまい、そのまま脱線転覆してしまうからだ。
さっきの大曲りでは片輪ドリフトで乗り切って見せていたが、その時はまだ速度が乗り切っていなかった。
流石に最高速度で同じことをやるのは普通に考えれば無謀過ぎるし、第一レールが異常な負荷に耐え切れず壊れてしまう。
なのでいくら馬力や最高速度に差があろうとも、重すぎて咄嗟の反応が出来ない性で迂闊に最高速度を出せないヴィーラが相手なら777号でも追い付ける見込みは十二分にあった。
・・・その計算は決して間違ってはいなかった。
だが、それはあくまで三姉妹が常識に照らし合わせた上で導き出した解でしかなかった。
三姉妹はこの時ヴィーラが「制御システムを外部からのアクセスを受け付けない「自閉モード」に設定したうえでテロリストが操縦している」ものとして考えていたのだ。
だが、実際にはヴィーラは制御システムに仕込まれていたテロリストはおろか、正規軍でさえ知る者がいない「裏モード」によって人の手から完全に離れた状態で暴走しているのだ。
この「裏モード」が何故正規軍にも知られていないかと言うと、製造時の制御プログラム設計の際に連続徹夜&相当な酒入りという深夜テンション状態の製作者たちが殆ど思い付きのアドリブで組み込んだものの、当事者達がその深夜テンションの弊害で組み込んだこと自体を忘れてしまっていたためである。
加えて正規接続状態ではこの「裏モード」回路には接続されないので、誰一人としてこんなおふざけプログラムがアルゴノーツに組み込まれているという事に気づくことが出来なかったのだ。
そんな誰にも気づかれることなく、ひっそりと消えていくはずだった製作者たちの悪ふざけの産物が、パニックを起こした一人の
覚醒してしまった「裏モード」の制御によって暴走するヴィーラは物理法則や常識をぶっ飛ばしたような動きを平然と繰り出し、全ての常識を蹴散らしながら線路を突進している。
その片鱗として、三姉妹の目の前で明らかなオーバースピードでカーブに突っ込んだにもかかわらず、片輪ドリフトで乗り切ろうとするだけでなく連装レーザー砲の反動を抑え切れない遠心力をねじ伏せるために転用してみせたのだ。
三姉妹「「「OH!!ジーラフ!!!!」」」
想定外過ぎる常識外の事態に三姉妹はまたしても汚い絶叫をあげた。
フィアーチェ「どんどん引き離されてるよ!!」
シゴ「一体どんな操縦してるのよ!?」
ナイン「なんて滅茶苦茶な・・・。」
あ、今度はジャンプして掟破りのショートカットをした・・・。
フィアーチェ「・・・今、ヴィーラ飛ばなかった?」
ナイン「・・・・・・うん、飛んだね、それも掟破りにも程があるショートカットをしたね。」
シゴ「・・・どういう操縦したらあんな真似出来るの?」
三姉妹「「「OH!!ジーラフ!!!!」」」
三姉妹、追加でもう一回絶叫。
そこにあるのは全ての常識をまるで「頭の固い奴らの言い訳」と言わんばかりに悉く蹂躙し、圧倒的暴威を振りかざして線路を猛進する「
・・・ただ、この乗っている人のことを全く考慮していない変態機動には中のテロリストたちも溜まったものじゃない。
既に数名がリバースしている。合掌。
だが、そんな車両内の惨状に反して状況はどんどん悪い方向に向かっていた。
既にヴィーラと、先行しているカライナの距離は22キロしかないのだ。
シゴ「しくじった・・・!認識が甘かった・・・!こんな滅茶苦茶な相手じゃ、普通の方法じゃとても追い付けないッ!!」
涙を目に浮かべ、悔しそうな表情でシゴは悲鳴に近い声で絶望の叫びをあげた。
フィアーチェ「これは・・・こんな・・・!」
フィアーチェも茫然自失と言う感じで涙を流しながら力なくへたり込んでしまった。
ナイン「なんてインチキ・・・!あっちの方が何倍も怪物じゃない!!」
ナインに至っては、眼前で起きた理不尽に対する怒りのままに壁を殴り、涙目で叫んだ。
普通の人だったらここで眼前の理不尽と、それにテイコウする術を持たない自らの無力を呪いながら諦めてしまうだろう。だが・・・。
シゴ「・・・でも、このまま「はいそうですか」と諦めるつもりもないよ・・・!」
フィアーチェ「シゴ・・・うん、そうだよね。ここで諦めたら、街が大変なことになるからね!」
ナイン「・・・向こうがそう来るんなら、こっちも同じことで返してやろうじゃない!」
シゴの言葉に折れ欠けていた闘志を再び蘇らせ、三姉妹は最早列車砲のガワを纏ったクリーチャーと化したヴィーラのやったことを再現するために動いた。
フィアーチェはマスター車から出て最後尾の緩急車までシュライクで飛んでいき、そのまま緩急車の中に入り単独ブレーキの制御台に座った。
ナインは767号の後方に移動し、レーザーライフルを767号の発電装置に有線接続したうえで反動を抑えるために設けられていたリミッターを外し、更に脱ぐ暇が無く普段着の上から着続けていたV.O.B.用の防護スーツを脱いでライフルと車体の間に緩衝材として挟み込んだ。
シゴ「ナイン!」
ナイン「しっかり捕まってて!!」
それだけ言ってナインは後方斜め上空へ向けて767号の発電装置から汲み上げたエネルギーをレーザーライフルから解き放った。
威力や収束率を全く考慮せず、ただただ反動を最大化する事だけに重きを置いた設定にしたレーザーライフルが生み出した反動は車両全体を力強く押し、更なる加速を成功させた。
シゴ「もう少し行ったら長い右カーブがあるよ!ナインは左側に移動!フィアーチェは単独ブレーキの準備を!」
視界の端を線路脇に設置された速度制限の標識が通り過ぎていく。
[制限速度:時速60Km]
速度制限は実際にはある程度の余裕を持った設定になっており、この場合時速80Kmでも曲がり切ることは不可能ではない。
だが、今の777号の速度は先の加速によって時速160Kmを超えていた。
制限速度の2.5倍以上の速度で突っ込めば本来であれば脱線転覆の末に爆発・炎上は避けられないが、こうでもしなければあのクリーチャーに追いつけない。
複線ドリフトでヴィーラがカーブを駆け抜けていく中、777号も遥かにオーバースピードでカーブに突入した。
シゴ「ナイン、カウンター開始!!フィアーチェ、単独ブレーキを目いっぱいかけて!!」
シゴの指示に応えるようにナインは左側にレーザーライフルのエネルギーを吐き出させ左側へ傾く車両を押し戻そうとし、同時にフィアーチェが最後尾の緩急車の単独ブレーキで同様に編成全体をカーブの内側である右側に向けて引っ張る。
ガンガン!!
連結器が強く引っ張り合う音が響くが、それでも編成全体が左側に傾き始めた。
フィアーチェ「ひっくり返っちゃうよ!?」
シゴ「祈るしかないよ!!」
ギャリイイイイイィィィィィィィィィィ
UWOOOOOOOONN!!!!
車輪とレールが激しく擦れ合う金属音、そして777号の咆哮が響く中、777号のサイドミラーからは遠心力に引かれる様に大物車が外側にひっくり返りそうになるのが見えていた。
シゴ「二人とも!!踏ん張って!!」
ナイン「うわあああああああ!!!」
シゴの叫びに応えるようにナインもライフルの放出出力を引き上げる。
ガンッ!!バキン!!ゴンッ!!
線路の左側に残っていた信号機やその制御装置等を大きく左側に傾いた777号が弾き飛ばしながら、それでもギリギリ脱線せずに片輪ドリフト状態でカーブを突っ切っていく。
シゴ「フィアーチェ!!もう一度ブレーキ!!今だよッ!!!」
その通信を聞いたフィアーチェは一度単独ブレーキを解除し、即座にかけ直した。
ガン!!
再び連結器が強く引っ張り合う音が響き、左側にひっくり返りそうになっていた車両を右側に引き戻そうとする。
ガキン!!
未だ左側に傾いている777号が線路脇に残っていた送電線の支柱を跳ね飛ばしながらも片輪走行でカーブを乗り切ろうとする。
制御台から編成全体と線路の先を見ていたフィアーチェは自分の判断でもう一度単独ブレーキをかけ直した。
ガンガン!!ガシャン!!ガシャン!!!
三度連結器が強く引っ張り合う音が響いたその直後、大きく左側に傾いていた編成全体が右側に引き戻され、両輪がレールを踏みしめた。
シゴ「やったよ!!曲がり切った!!」
ここから先はしばらくは直線と減速の必要が無い緩やかなカーブばかりが続く。街までに残された時間を考えるなら、乗り移るならココしかない。
シゴ「フィアーチェ!乗り移り準備!」
フィアーチェ「了解!!」
フィアーチェは緩急車の単独ブレーキを解除して制御台を離れ、777号の天板へ移動を開始した。
後はこの勝負に勝てるかどうか。
三姉妹は暴走するヴィーラの息の根を止めるべく、この場で実現出来得る最大の一撃の最後の詰めに入った。