閃空の戦天使と鉄血の闊歩者と三位一体の守護者 作:ガイア・ティアマート
緑色の光の壁:サブノーティカで登場したエイリアンワープゲートの転移ゲートです。本来はあらかじめ紐付けされたマスターゲートとスレイブゲートの二つの間のみを繋げるのですが、
稀にゲートの不調や時空の乱れなどによって全く関係ない箇所に繋がることがあります。一夏が吸い込まれたゲートは非常に特殊で、ゲートが存在しない二点をごく短時間の間繋げた、ある種の自然発生したゲートです。
一方ガイアの場合は修理中のマスターゲートが突如誤作動し、本来のスレイブゲートとは全く関係ない箇所に繋がった状態でそのゲートに誤って吸い込まれてしまったというものです。
ある程度の解析が完了しており、現在の技術と材料で再現することが可能ですが、どういうわけかこのような事故が稀に発生します。
しかし、発生頻度が非常に低いという理由から原因の特定ができず、解析も進まないため測定器で監視するにとどめられています。
*トラック島離島鎮守府 国見島*
【視点:織斑 一夏】
一夏「・・・ん。」
俺は妙に心地よい微睡みから覚め、目を開いた。
目に映るのは白い天井。
一夏「・・・あれ?あの世ってのは病院みたいな殺風景なところなんだな?」
?????「いいえ。貴方は死んでなどいませんよ?」
一夏「え!?」
唐突に横から死んでいないと宣告されて俺は思わず飛び起き・・・られなかった。
体に力が入らないのだ。
?????「無茶しないで。貴方は1か月も意識不明だったのよ。」
一夏「あ、貴女は?」
ヴェスタル(アズレン)「私の名前はヴェスタル。この医務室の室長をしているの。」
一夏「・・・医務室?」
ヴェスタル「ここはトラック島離島鎮守府がある
ヴェスタルと名乗った女性の言っている言葉の中には聞いたことのない言葉がいくつも含まれていた。どういうことか考えようとしたところ・・・
ぐぅぅぅぅ・・・
一夏「あ、あれ?」
ヴェスタル「ああ、ずっと点滴だけで栄養補給をしていましたからね。カレーを持ってくるので少し待っててください。」
ヴェスタルが部屋を出て行ったあと、ベッドに何かのリモコンが掛けられていたので弱った体を何とか動かして手に取ってみる。
どうやらこのベッドは所謂「介護用ベッド」と同じ設計らしく、このリモコンでベッドの上半身部分を起こすことができるようだ。
それを使ってベッドを起こし、部屋を見回してみた。
壁は清潔感のある白一色かと思いきや、壁の下半分は木造校舎のように木の板で作られていた。床も木の板で作られており、殺風景などとは縁遠い、寧ろどことなく懐かしさと安心感を感じる温かい空間だった。
ヴェスタル「おまたせ。あら、ベッド動かせたのですね。」
一夏「ええ、まぁ。」
ヴェスタル「まあどのみち起こさないと食べられませんからね。はい、どうぞ。」
そういって彼女はベッドに備えつけられた机に皿と食器が乗ったトレイを置いた。
一夏「えっと・・・これ何?」
俺の前に差し出されたのは二種類のおかゆみたいなものだった。しかも量が少ない。
ヴェスタル「はい。こんな見た目ですけどカレーですよ。」
一夏「いや、これどう見てもスープかおかゆだよね?」
??「それに関しては私が説明するわ。」
新しい声と共に新たな女性が入ってきた。
火逐「私の名前は
一夏「あ、はい。初めまして・・・。」
火逐「それで質問の答えだけど、それは「流動食」版のカレーよ。」
一夏「流動食?」
火逐「そう。ご飯は過水加熱しておかゆにしてあるし、そのスープみたいなのはジャガイモやニンジンのような固形物を裏漉ししてお出汁で割って緩くしたカレーよ。1か月も何も食べていなかったんだから消化器官の負担を少なくするための処置よ。・・・因みに量が少ないのにも理由があるの。」
一夏「理由?」
火逐「たくさん食べると死ぬから。胃がびっくりして大変なことになることもあるから、衰弱している今のあなたに普通の量を出したら危ないのよ。とりあえず食べなさい。ただし、ゆっくりとね。がっつくと死ぬわよ。」
俺は進められるがままに流動食版のカレーを食す。
一夏「・・・!」
うまい。
シンプルだが普通にうまい。胃に負荷をかけないようにしなければならないのについがっつきそうになってしまう。
火逐「流石はかの宇宙のカレー屋さん謹製のポン・カレーね。ちょうど昨日がカレーの日で材料が残らなかったから保存食用から抜き出して作ったけど、ハズレなしね。」
そうこうしているうちに俺はカレーを完食していた。
少ない量だが全身にカレーの温かさが広がっていくのを感じた。
しかし、ここはどこなのだろうか。そして、俺は帰れるのだろうか?
一夏「カレーありがとうございます。ところで、俺は何時までベッドの上で寝ていることになるんですか?」
火逐「そうね・・・。ヴェスタル、リハビリは何時くらいから始めた方がいい?」
ヴェスタル「言うほど筋肉は衰えていないみたいだから、早ければ明後日には始められますよ?」
火逐「と、いうわけよ。まずはリハビリに備えて英気を養いなさい。それと、明日ルウがオラクルから帰ってくるからそのときにいろいろと質問させてもらうからね。」
そういって火逐と名乗った女性は部屋を出て行った。
俺はそれを見送った後、のんびりと窓の外を眺めてた。
澄み切った青空・・・。
俺にとっては写真でしか見たことがなかった青空だった。
ベイラン島事件・・・。
2034年に起きたという爆発事件によって地球の空は超低濃度とはいえ崩壊液という放射性物質に汚染され、いつもどこかどんよりした空しか見ることができなかった。
幸い爆発によって吹き上げられた崩壊液は極少量で人体に悪影響が出るような事はなく、地球全土が崩壊液汚染により即座にELIDが蔓延る地獄になるということはなかった。
それでもベイラン島を初めとした地球上にいくつかある旧文明の遺物と思われる遺跡に現存する崩壊液の影響で、地球各所でELIDが時折発生しては人類の生存領域を奪おうとしてる。
そんな自分が生まれるより前に失われてしまったはずの青空が今窓の外に広がっている。
ここは離島のようだが、だからと言って青空が広がっているものなのだろうか?
そうぼんやりと考えているうちに、いつの間にか俺は眠ってしまった。
時は1か月ほどさかのぼり、同じ世界のとある海洋惑星では・・・
*惑星クレイドル 雫工房*
【視点:ガイア】
雫「そっちの方はどう?」
ガイア「ダメ。エネルギーの流れが不自然なことを除けば特に異常はないみたい。」
雫「う~ん・・・隔離執行施設に行って他のゲートのチェックも兼ねてそういう手の記録が残ってないか探してくるしかないか・・・。ちょっと行ってくるからもう少し監視しておいて。」
そういって工房長の雫は工房の中に戻って遠征準備に入る。
ここ最近ゲートの調子が悪く、突然止まってしまうなどのトラブルが頻発していた。半年後には雫はかつて世話になったアルテラ社が行う極点にある大陸の調査にオブザーバーとして参加、同行する。
その前にこの問題を解決しておきたいのだ。
ガイア「やれやれ・・・。一体何が悪さをしてるんだろ・・・?」
私はカートリッジユニットからイオンキューブを取り出し、ゲートを停止させる。
エネルギー源を失ったゲートは音を立てて停止し、緑色の光の壁(テレポートフィールド)は消滅する。
私はフィールドが無くなったひし形のテレポートフィールド発生装置の枠の内側に回り、再びスキャナーでチェックを行う。
・・・特に異常なし。
これ以上のチェックは無意味だと思って一度椅子を取りに工房の中に戻ろうと思ったとき・・・。
急にテレポートゲートが異様な音を上げて起動した。
ガイア「え?ちょっと?いや・・・きゃああああああ!?!?」
突然真っ赤に染まったテレポートフィールドが展開され、私は為す術もなく只悲鳴を上げながらフィールドに飲み込まれた。
・・・
雫「何!?今の悲鳴は!?」
大慌てで雫が工房から飛び出してきたが、既にそこにガイアの姿はなく、そこには停止したゲートが佇んでいるだけだった。
登場人物
ヴェスタル:鎮守府で医務室長を務めるユニオン出身の工作艦。明石が艦これとアズレン両方とも購買部所属なので彼女が医務室長となっている。
ルウの養父:名前は登場しない。第一線こそ退いたが現役の外科医であり、一夏を生かすために何度も何度も手術を繰り返した。本来は一度の大規模手術で終わるはずだったが、衰弱が激しかった一夏の体が大規模手術に耐えられないと判断して複数に分割して行った。
宇宙のカレー屋さん:一応本業は宇宙での採掘屋なのだが、副業としてカレー屋もやっている。独特な言い回しが特徴でやたらと防御に拘りがある。
叢雲 雫(むらくも しずく):ルウから見ると孫にあたる少女で惑星クレイドルに「雫工房」という工房兼拠点を構えている。母親はルウの娘の一人である叢雲 楓(むらくも かえで)だが、その正体は楓のDNAを入手したスカーレットドーンが戦闘用エイリアンのDNAと掛け合わせて生み出した対トリニティ・ガード用のハイエイリアン。だが、人としての自我を持っていたために気づかれないまま脱走し、紆余曲折を経てトリニティ・ガードに参加した。外見は普通の人間と大差ないが、胴体の皮膚が赤く爛れたようになっている。余談だが、クレイドルにはガイア以外に人が来ないため普段は全裸で行動することが多い。