閃空の戦天使と鉄血の闊歩者と三位一体の守護者 作:ガイア・ティアマート
ドールズフロントラインプレイヤーにとって「ウロボロス」というハイエンドモデルにはどういう印象を持っているだろうか?
雑な表現にはなるが、多くの人が「AIの蠱毒から生まれたハイエンドモデル」、「強い事には強いが出自の影響もあって人格に大きな問題がある」と言ったところだろうか。
実際、原作のウロボロスはその性格が災いして鉄血から見限られることとなった。
だが、この世界のウロボロスはどうだろうか?
生まれからして異なるうえに、己を磨くことに余念がないストイックな性格は、少なくとも原作のCUBE作戦で登場したウロボロスとは似ても似つかない。
そんな彼女は現在訓練所の教官として後進育成をしつつ、同時にこの間の平行世界の無人島での負けの経験を糧に今もなお己を磨き続けている。
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・・・・・・
ウロボロス「今日はISを相手にした戦闘訓練を行う。今回は初めてだから全滅する前に儂のIS「ラファール・リヴァイヴ」のシールドエネルギーをゼロに出来れば成功とする。」
今日のウロボロスはオレンジと白のツートンカラーのラファール・リヴァイヴを纏っていた。
ウロボロスは元々ISを扱うことも想定しており、そのためにメモリ領域が他のハイエンドよりもかなり大きめになっている。
前の大規模コラボでも触れたが、このISは訓練所の備品ではない。
AK-47「質問!」
ウロボロス「何じゃ?」
AK-47「そのISって備品じゃないですよね?訓練所で見たことないんだけど?」
ウロボロス「その通り。これは儂が数週間前に自腹を切って購入した物じゃ。つまりは儂の私物じゃな。」
男性訓練兵「えっと・・・それってつまり教官の私物相手に訓練するんですか?」
ウロボロス「そうじゃ。この訓練所にはISライダーがおらんかったから今まで備品としても存在せんかったのでな。せっかくだから訓練にも使えるように私物として購入したんじゃ。」
M1A1「でも、ISなんて私達じゃ・・・。」
ウロボロス「まだ始まってもいないのに泣き言を溢すでない!確かに勝つのは簡単ではない。だが、ISを用いたテロが増え続けている以上、この先実戦で否応なしにISとし合う時が来る。その時に経験があるのとないのとでは大きな違いがある。」
M1919A4「でも、僕たちで勝てるの?ISにはやっぱりISをぶつけた方が・・・。」
ウロボロス「それは一理ある。だが、お主達はISを使えるか?」
訓練兵たち「うっ・・・。」
ウロボロス「ISは現状女性にしか動かせぬ。戦術人形は一応動かせることには動かせるがメモリ領域の関係で実戦ではまるで役に立たん。無理に使おうとしてもまともに動けぬまま嬲殺しにされるのが関の山じゃ。」
嘗てシイムがテロリストのISを奪って使用したことがあるが、メモリ領域が足りず殆どまともに動けないままあっさり沈められるという醜態を晒したことは一般にはあまり知られていないが、グリフィンや軍上層部の間では有名なしくじり談となっている。
元々今の戦術人形が今のISを動かすのは難しいという事は理論上では言われていたが、実際に試されたことは無かった。
シイムのしくじり談から、今の戦術人形では現行のISの操縦はほぼ不可能だという事が図らずも実証されることとなったのだ。
アストラ「じゃあ教官はどうなんですか?」
ウロボロス「儂は最初からISを使うことも想定して作られておるからメモリ領域がかなり大きめにとられておる。あくまで今は儂が特殊なだけじゃ。それを解消する技術も既に開発されておるが、残念ながらまだまだ課題が山積しており試作の域を出ておらん。それまでは別の方法で対応するほかない。出撃したはいいものの、「ISが相手で手も足も出ませんでした」では今の時代よろしくないからのう。」
訓練兵たち「・・・。」
ウロボロス「まぁ、勝つのは簡単ではないが勝てないことは無い。現に、404特務小隊が初陣でIS相手に戦術を駆使して勝利をもぎ取っておる。」
これは結構有名な話だ。
だが、詳しい内容まではあまり知られていないので404特務小隊がどうやってIS相手に勝利を収めたのかまではあまり知られていない。
ウロボロス「ISは兵器としてみるとかなり厄介な存在じゃが、決して無敵の存在ではない。性質上どうしても抜け穴はある。ならば、その抜け穴をついてやればISを使わずとも対処は可能じゃ。・・・決して楽なことではないがな。そのためにも実戦を交えて訓練を行う。」
結局のところ、実戦で学ぶほかないのだ。理屈で説明しても実戦経験が無ければその知識を活かし切れず押し切られるだけだ。
ウロボロス「まず大前提として、ISのシールドエネルギーは無限ではない。予めチャージしておいたエネルギー分しかシールドエネルギーは保持できず、またISごとに保持できるシールドエネルギーの量はある程度決まっておる。そして、原則ISはシールドエネルギーが尽きてしまえば強制解除されてしまう。つまり、何でもいいからシールドエネルギーを削り切れれば良いのじゃ。」
ISは確かに兵器として見ると強力だ。戦闘ヘリに匹敵する火力とそれを上回る高い運動性、そこに例外こそあれどISライダーへの如何なる攻撃をも無効化する「絶対防御」という鉄壁の守り。だが、この「絶対防御」こそが弱点でもある。
絶対防御は発動する際に無効化した攻撃の威力に応じてシールドエネルギーを消費する。そしてシールドエネルギーが尽きてしまえばISは原則強制解除され、絶対防御を除く機能の大部分もダウンする。即ち、シールドエネルギーさえ削り切れればISが持つ優位性が一気に損なわれるのだ。
ウロボロス「・・・もしかしたらこの前提に当てはまらぬ例外があるかもしれぬが、今はそれに関しては考えんで良い。そこまで考えていては流石にキリがないからな。大体もしそういう手合いが相手では例えISライダーでも勝つのは容易ではない。」
ウロボロスが言った「例外」。奇しくも他の世界線にはそのような例外がいくつか存在する。幸いこの世界には存在しないが。
ウロボロス「次に、ISは結局はISライダーが操縦しているという点じゃ。人が関与している以上、ヒューマンエラーが発生するのは最早宿命じゃ。そして404特務小隊もこの弱点を突いて勝利をもぎ取ったのじゃ。」
M1A1「じゃあ、その弱点を突けば私達でも勝てる可能性はあるってことですか?」
ウロボロス「そのとおり・・・と、言いたいところじゃが、例えテロリストでもISに関する知識はひとしきり持っておるだろうし、戦闘訓練も相応に積んでおろう。余程の新米でない限り、そう簡単に隙を晒してはくれん。大体相手が隙を晒すのを待っていては被害が抑えられん。それでは意味が無い。」
男性訓練兵「ではどうするのですか?」
ウロボロス「こちらから揺さぶりをかけてミスを誘う。」
AK-47「と、いうと?」
ウロボロス「参考までに、404特務小隊がどのようにして勝利を収めたか、簡単に説明する。儂も直接見たわけではないからそこまで詳しく説明は出来んし、何より細かく掘り下げるのはココでは蛇足になる。」
訓練兵たち「・・・。」
ウロボロス「簡単にいえば、中距離での射撃と別方向からの狙撃を絡めて息をつく暇もなく攻め立て、相手に状況をじっくり考える暇を与えなかったのじゃ。前からサブマシンガンで撃たれ、反撃しようとしたら背後から狙撃されて気を散らされ、そちらに対応しようとすれば後ろからサブマシンガンで撃たれる。前から後ろから断続的に攻撃を浴びせられて相手は苛立ち、そしてつまらぬ判断ミスを犯してしまった。日本にかつて居たとされるニンジャが扱うニンジュツという技術の「怒車の術」に近いな。」
「怒車の術」とは、簡単にいえば「相手を怒らせて冷静さを奪い、行動を単調化させることで隙を作る」という技法だ。人の心はその場その場の感情で簡単に思考の方向性が誘導されやすく、そして騙されやすい。
その心理的弱点を突いた忍術であり、他にも喜ばせて警戒心を解く「喜車の術」、同情を誘い泣き落とす「哀車の術」、楽しませることで関係の主導権を握る「楽車の術」、そして恐怖で支配する「恐車の術」が存在し、これらを総称して「五車の術」という。
404特務小隊が初陣で取った戦術は「怒車の術」に近いが、怒らせるというよりは「苛立たせて集中力を奪いミスを誘う」というやり口のため、仮に名付けるならば「苛車の術(かしゃのじゅつ)」とでもなるだろうか。
ウロボロス「無論誰にでも通じるというわけではない。ライダーとISとの間に強い絆があればこの隙もほぼほぼ相互支援によって消えるじゃろう。だが、一般的なテロリストが相手なら大凡通じると考えて良いだろう。まぁこればかりは実戦で試した方が解りやすいじゃろう。」
そう言ってウロボロスは装備の弾倉の中身を確認する。
ウロボロス「今回は演習故に全員演習用の模擬弾を使用するが、それ以外は実戦そのままを想定して行う。儂もまだISに慣れ切ってはおらんが、それなりに本気でやらせてもらう。そうでなければ訓練にならん。」
それを聞いて訓練兵たちの緊張感は一気に高まった。
ウロボロス「最早言うまでもないが、半端な気持ちで挑むことだけは許されんぞ?演習ではしくじっても怪我で済むだろうが、実戦では容易く命が消し飛ぶ。儂を本物のテロリストだと思って全力で来い!」
訓練兵たち「はい!!」
ウロボロス「よろしい!!では10秒後に訓練開始じゃ!見事儂を無力化してみせい!!」
・・・
後にこの模擬戦に参加した訓練兵は、「対IS戦というものを心のどこかで甘く考えていたのかもしれない・・・」と述懐した。