閃空の戦天使と鉄血の闊歩者と三位一体の守護者 作:ガイア・ティアマート
【視点:一夏】
火逐さんと真耶先生の試合は見ているだけで引き込まれるような物だった。
旧式、そして飛行能力が無いという大きなディスアドバンテージを背負った艤装を使って尚、凄まじい攻めを見せた火逐さんの実力もそうだが、その火逐さんに試験用のISで本気を出させた真耶先生もまた驚くべきものだ。
それこそ国家代表を勤められるほどの・・・。
やはり世界はまだまだ広い・・・。俺はそう実感した。・・・と。
アナウンス『織斑一夏さん、試験の開始準備をしてください。』
どうやら次は俺の番のようだ。
ルウ「貴方の方が先みたいね。バシッと決めてきなさいな。」
一夏「はい。」
・・・
・・・・・・
アリーナに立つと、試験官が現れたのだが・・・。
一夏「まさか千冬姉が俺の試験官をやるなんてな・・・。」
千冬「・・・すまない一夏・・・。」
大方、千冬姉が自ら選んだことだろう・・・。しかし、明らかに俺に対しての罪の意識でいっぱいの様子で、俺の言葉も半分以上耳に入っていない様だった・・・。
千冬「・・・気づかなかったとはいえ、私はお前を見殺しにしてしまった・・・。」
あぁマズい・・・。このままじゃ試験が懺悔で潰れてしまいそうだ・・・。
ぶっちゃけると、俺は千冬姉を恨んでいるとか憎んでいるとか、そういうことは全くない。
元より女性利権団体のやりそうなことは見当がついていたし、試合後に俺の事を聞いた千冬姉が酷く取り乱していた事や、俺がいない間ずっとダメになっていた事もあちこちから見聞きしていたので知っている。
だが、恐らくそれを伝えたとしても千冬姉が納得するとは思えない。
今の千冬姉は、俺を見殺しにしてしまったという罪の意識に憑りつかれているのだ。
兎に角何でもいいからその罪の意識に決着をつけないと、延々罪悪感に苛まれていずれは自家中毒で完全に壊れてしまうだろう。
寧ろ、こんな状態で今まで壊れずに耐えてきただけで充分凄い事であり、そして同時に今の千冬姉が、何時壊れてもおかしくないという非常に危険な状態だという事でもある。
・・・しょうがない。ここはちょっとばかり荒療治だ。
一夏「ふぅ・・・千冬姉!!」
俺は少し怒鳴り気味に叫んだ。
千冬姉はまるで悪事がバレて怒られている子供が怒鳴られて怯えたかの様にビクッと震えた。
一夏「こんなところでこんなこと言いたくないけど、そんなうじうじしている千冬姉、俺は見たくないぜ!というか、そんなに申し訳ないと思っているならこの試験、本気でかかって来いよ!!」
千冬「・・・え?」
一夏「俺も手加減抜きの本気で行くぜ?だから千冬姉も本気で来い!・・・手抜いたりしたら、それこそ恨むからな?」
千冬「あ・・・ああ。」
千冬姉は状況が呑み込めていない様だが、少なくとも罪の意識から意識を逸らすことは出来た。後は・・・。
一夏(・・・今の俺に、千冬姉に届かせるだけの実力があるかどうか・・・。)
離島鎮守府で厄介になっていた時に高尾さん達に鍛えてもらっていたのだが、その時にこういう話を聞いた。
--強者同士が切り結ぶと、自然と互いの思いや考えが伝わるらしい。--
正直言って、自分自身にその経験が無いので何とも言えないが、口で言ったところで恐らく今の千冬姉は納得しないだろう。
ならば、この可能性に賭ける他ない。
俺はホワイトナイトメアを起動し、千冬姉も試験用の打鉄を起動した。
アナウンス『試験開始。』
さぁ・・・俺たち初めての姉弟喧嘩といこうか・・・!