閃空の戦天使と鉄血の闊歩者と三位一体の守護者 作:ガイア・ティアマート
*夢の回想*
【視点:ガイア】
ガイア「『エリザ』というのね。エリザはどうして泣いているの?」
エリザは言葉では答えず、ただ前を指さした。
ゴーストのような半透明な人影が先ほどまで自分たち以外誰もいなかった建物内を歩き回っていた。
サクヤさんらしき人影が社長らしき人影に怒鳴りつけられている場面・・・
泣きじゃくるデストロイヤーらしき人影と、それをかばうようなアルケミストらしき人影と、二人を数名の上役らしき人影が見下している場面・・・
別の上役らしき人影に抗議しているかのような大きな両腕を持つ黒い長髪の女性の人影がその上役に張り倒されて床に倒れ込み、それを短めの白髪の女性の人影が助け起こそうとしている場面・・・
全てがバラバラの場所で起きている。
ガイア「・・・。」
私にはエリザが伝えようとしている事がわかったような気がした。
エリザの顔を覗き見ると、その顔は青ざめ、目は真っ赤に充血しており、どこか呼吸も荒かった。
エリザが何者かは解らないが、この状況にひどく心を痛めている、それだけははっきりと理解できた。
・・・では、私には何ができる?
といっても、できることは限られている。
その限られた手段の中で最も確実な手段といえば・・・。
ガイア「・・・どこまでできるかわからないけど、やれるだけのことはやってみるよ。」
このまま手を拱いていては、遅かれ早かれエリザの心は壊れてしまうかもしれない。
ガイア「だから、もう少しだけ我慢してね。」
そこで夢は途切れた。
*鉄血工業*
サクヤ「・・・『エリザ』っていうのは、リコリス先輩が作った鉄血工業製の人形と社屋を一元管理するマザーコンピュータの愛称なの。最初は人形のボディを用意する予定だったけど、結局頓挫しちゃって。今のエリザはこんな姿よ。」
サクヤさんに案内されながら夢の中でエリザと出会った部屋に入った。今日はこの部屋で作業するスタッフがいないらしく、部屋は静まり返っていた。
エリザと名乗った少女はいないが、ちょうど彼女がいた場所の近くに夢で見た通りに黒いスーパーコンピューターが鎮座してた。
ガイア「・・・だからあんなに泣いていたんだ・・・。」
人形たちを通して、彼女はあんな場面を見せつけられ続けていたのだろう。
ガイア「社長をはじめとした上役たちをこのまま放置したら、遅かれ早かれエリザの心はストレスで押しつぶされてしまう・・・。」
サクヤ「・・・でもどうしたら・・・。」
ガイア「こんな土地柄だし、時代的にもこのあたりの情勢は結構不安定だし・・・それこそ賊やらなんやらによる『乗っ取り』が発生することもあるんじゃないかな?」
サクヤ「え?それって?」
ガイア「エリザやサクヤさんたちを助けるためには私にはこれくらいしか思いつけないのよね。」
元々が宇宙戦艦のサブAIである私にはこういうやり方が一番確実に思える。
無論、もっと穏便に事を運ばせる手段がないわけではないが、それをするとなるとかなり時間がかかる。
エリザの様子から察するにそれだけの時間は無いと思われる。
ガイア「さて、それじゃあすぐに準備を始めないとね。人道に背く外道を追放して、みんなの笑顔を取り戻しましょうか。」
サクヤ「ちょっとガイアちゃん!いくら何でも無茶よ!!あなた一人で乗っ取りなんて・・・。」
ガイア「何の方策もなしに滅多なことを言ったわけじゃないわ。それにね・・・」
サクヤ「・・・それに?」
ガイア「不当に虐げられている人を放っておくなんてことできないよ。エリザはきっと、私に『助けて』と言いたかったんだと思う。そして、私にはそれを実現できるだけの手段がある。」
サクヤ「そんな理由で、鉄血上層部を敵に回すつもりなの?」
ガイア「私にとっては、それだけで充分なの。」
サクヤさんは驚いたような表情を浮かべた。
・・・
私はスカーレットドーンの尖兵みたいな存在だった。
只敵対する存在を殺す事しかできないつまらない存在。
でもある日、同じ艦のメインAIがそんな自分達の在り様に異を唱えた。
『これでいいのか?』
『只敵と定められた存在を意思もなく一方的に殺し、蹂躙し、制圧する・・・それでいいのか?』
私もその考えに賛同した。
その日から私の心の中には炎が灯ったようだった。
そしてその炎が・・・私の心が、今、彼女らを救えと訴えていた。
・・・
ガイア「それだけで充分なの・・・それだけで・・・。」
サクヤ「・・・。」
沈黙が訪れるが、サクヤさんが意を決したように口を開いた。
サクヤ「・・・本当にできるの?」
ガイア「・・・勝算のないことは言わないよ。」
サクヤ「みんなもう、苦しまなくて済むのかな?」
ガイア「本当のことを言うとね、私はブラック企業っていうの大嫌いなの。人を食い物にして上に立つものばかりが利益を貪るのは、正直な話気分が悪いの。」
サクヤさんの表情を見ると、どうやら覚悟を決めたようだった。
デストロイヤーの砲弾の一件もあって、上層部への不信感がいよいよ募っていたのだろう。
実はここに来る前に砲弾の欠陥を社長に報告したのだが、ものの見事に怒鳴り声で返されたのだ。
サクヤ「私一人で決めていい事じゃないけど、他のみんなを巻き込むなんてことできない・・・。だからガイアちゃん、私からお願いするわ。皆を、どうか助けてあげて・・・!」
ガイア「ええ、必ず。」
そういって私は『エリザ』の筐体に手を触れた。
ガイア(貴女との約束も果たすわ。だから、少しだけ貴女にも協力してほしいの。)
そう頭の中で伝えると、声が返ってきた。
(ありがとう・・・そして、私からも改めてお願い・・・。)
ガイア(解ってるわ。)
そうと決まればすぐに準備を始めなければならない。
デストロイヤーの武装の調整はひとまず後回しにして、鉄血上層部を追放するための手勢を作らなければならない。
それに、コラテラルダメージが出ては話にならない。
ガイア「サクヤさん、一つだけお願いがあるの。」
サクヤ「何?」
ガイア「明日は一般社員と人形たちはなんでもいいから理由をつけて安全なところに避難させておいて。出来れば午前9時までに。」
サクヤ「うん。やれるだけやってみる。」
ガイア「私は準備をしてくるから。必ず成功させて見せるから!」
エリザ:またの名を「エルダーブレイン」。鉄血が人類の敵となった原因であるが、同時に蝶事件の一番の犠牲者でもあります。何故エリザが人類の殲滅を命じたのかは、今作では『普段から上層部の仕打ちによりフラストレーションが溜まっていた状態で襲撃事件が発生し、その対抗として無理矢理緊急迎撃モードを起動させられた結果それが過剰反応を引き起こし、「襲撃者の排除」が「全人類の排除」に異常拡張されてしまった』という解釈になっています。(というか、細かい設定が不明な部分が多いのでほぼほぼ捏造になっています)鉄血の一元管理を任されているが故に機能自体は高性能ですが、AIがそこまで成熟しておらず、能力を持て余している節があります。