閃空の戦天使と鉄血の闊歩者と三位一体の守護者   作:ガイア・ティアマート

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艦娘:この世界では艦隊これくしょん出身の艦娘とアズールレーン出身のKAN-SENは纏めて艦娘と表記します。
艦これ出身が第一世代、アズレン出身がその技術と研究成果を元に機能拡張された第二世代という扱いですが、第二世代が特段優れているのはあくまで基礎スペックであり、未だに実戦経験という差により第一世代艦娘の方が総合的には強いです。

現身:端的にいうと、原作において過去にコラボで登場したキャラクターと同じ姿を持った艦娘です。
この世界に来た段階のオリジナルの記憶を宿していますが、そこから分化しているためオリジナルとは若干異なる人格を形成しつつあります。
なお、過去に艦これとコラボした霧の艦達の現身は存在しません。
これは、イベント終了時に全員回収された(手元に残らなかった)ためです。

海軍精神注入魚雷:ゴム製の魚雷で本来は懲罰用。だが、正規の目的で使われる機会が無く、どちらかというと今回のように艦娘が別の艦娘に対してお仕置きをする際に使われることが多い。使用方法は所謂ケツバット。また、一部の艦娘が魚雷を使った特殊戦闘の練習に使うことも多い。


【7】蒼穹の空 -虹見島-

*離島鎮守府 国見島*

 

ガイアが鉄血工業で奮闘していたころ、別の世界に流されていた一夏はと言えば・・・。

 

一夏「あーダメだ!!何もしないなんて落ち着かねぇ!!」

 

客人であるが故に別段やることがないのだが、何もせずに日がな一日飯食って風呂入って寝るだけの単調な暮らしははっきり言って精神衛生上非常によろしくない。

 

休日にダラダラして心身を休ませる位ならまだいいが、別に夏休みとかそういう長期休暇でもないにもかかわらず、あまつさえ居候状態でこれはよろしくない。

 

一夏「なんでもいいから何かしないと調子が狂いそうだ!」

 

俺は居てもたってもいられず部屋から飛び出して何かやること、手伝えることがないか探しに行った。

 

・・・

 

火逐「え?なんでもいいから働かせてくれ?」

 

俺の要望に火逐さんは戸惑いの声を上げた。因みにルウさんは今日は本部に召集されているために不在だとのことだ。

 

一夏「もう二十日間もリハビリ以外は殆ど何もせずにダラダラしっぱなしで流石に落ち着かないんだ・・・。」

 

火逐「う~ん、普通だったら2~3ヵ月はリハビリに充てるんですけど・・・。」

 

ヴェスタル「でも、既に体力は大部分が戻っているんですよね。私も驚いているんです。先生(ルウの養父で外科医)も『マジか・・・。』って呻いてましたし・・・。」

 

火逐「う~ん・・・なんだか不死身の分隊長や大空の魔王を想起するような凄まじい回復力ね・・・。まぁ、あの人も手術の時に『こんな重傷でよく生きていたな・・・。』って驚いていたっけ・・・。」

 

ヴェスタル「『スーパーナチュラル』というのか、はたまたかの『異能生存体』というのか・・・。どちらにしても軽い労働でしたらもう大丈夫かと・・・。」

 

火逐「う~ん・・・じゃあ、これはどうかな?」

 

・・・

 

 

 

*離島鎮守府 虹見島野菜農園*

 

一夏「まさか島一つが大規模農園になっているなんて・・・。」

 

台船に乗せてもらって移動したのは国見島の南東にある虹見島。その島は一面が多種多様な野菜や果実、果ては田んぼまで揃った大規模農園だった。

 

ベルちゃん「この鎮守府で消費される食糧の多くがこの農園で賄われているんですよ。」

 

ニューカッスル「といっても、島一つ丸々全部が農園として使われているわけではないんですよね。」

 

一夏「え?」

 

フォルバン「島のおおよそ真ん中あたりに小さい村があるんです。特に名前がついていない人口百名にも満たない小さな農村ですけど、第二次大戦時代にこの島に住んでいた日本人の子孫や、退役した艦娘の一部が今でも住んでいるんです。」

 

ニューカッスル「私たちは便宜上「りんご村」って呼んでいますけどね。小さい神社が村の中にあるんですけど、その神社が住んでいる人から「りんご神社」って呼ばれているんです。その理由がご神木代わりに林檎の木が植えられているからなんです。」

 

フォルバン「だから、私たちも「りんご村」っていう愛称で呼んでいるんです。」

 

一夏「へぇ、可愛らしい名前だな。でも、誰が言い出したんだ?」

 

ベルちゃん「ん~・・・そういえば誰が言い出したのでしょう?」

 

フォルバン「いつの間にか皆そう呼んでいましたね・・・。」

 

ニューカッスル「私が着任したころには既にりんご村の名前が定着した後でしたし・・・。」

 

フォルバン「そもそもなんでご神木が林檎の木なんだろうとも思いますけど・・・。」

 

一夏「まぁ、別に今詮索しなくてもいいか。ちゃっちゃと収穫して帰るか。今日の料理当番はたしか『ロイヤルメイド隊』だったっけ?」

 

ニューカッスル「そうですね。シリアスさんは例外ですが、他のメイド隊は私も含め料理が得意分野ですので。」

 

一夏「あはは・・・シリアスさん南無・・・。」

 

シリアスという艦娘は平均的に見ると料理が下手であるとされている。

 

全てのシリアスがそうだというわけではないらしいが、ここのシリアスはその中でも結構下手・・・というより半分錬金術レベルの酷さだという。

 

なんでもかつてケーキを作ろうとしたら何故か水色のキューブ状の物質になってしまったという。味?見た目が見た目だったために誰も食べられなくて研究室送りになったそうな・・・。

 

しかも原因が解らないとのことだ。ルウさんと火逐さんがせっかくだからと原因究明を図ったことがあったらしいがそれでもわからなかったらしい。

 

結局『シリアスが作ると材料や工程は間違っていないのにどういうわけかこうなってしまう』という一種の法則として処理するしかなかったらしい。シリアスおそるべし・・・。

 

・・・

 

一夏「あー働いた後の麦茶はやっぱり格別だなぁ!」

 

収穫作業が終了した俺たちはりんご村で麦茶を飲みながら一休みしていた。

 

まだ5月になってすぐだが、赤道が近いために既に初夏のような暑さなのだ。

 

フォルバン「にしても、あなた本当に元気ですね。数週間前まで意識不明だったのが未だに信じられません。」

 

ニューカッスル「本当です。加えてこれほどまでに働き者となると、お客様だというのについつい頼りにしてしまいます。」

 

一夏「いやぁ、体動かすのが好きなだけだよ。それに、居候で上げ膳据え膳は流石に申し訳ないし。」

 

????「失礼します・・・貴方がこの世界に流れ着いた殿方ですか?」

 

ふと後ろから声をかけられたので振り返ると和風デザインの洋風ドレスという俺の知識では表現しにくい衣服をまとった少女が二人座っていた。

 

一夏「え?そうだけど。」

 

サラァナ「やはりそうですか。申し遅れました。私は鎖の巫の現身のサラァナ。こちらは姉の・・・。」

 

ウルゥル「ウルゥル・・・。鎖の巫の現身・・・。」

 

一夏「えっと・・・俺は織斑一夏。今は居候兼アルバイターみたいなものかな?ところで、『鎖の巫』って?」

 

ウルゥル「私たちの本体の役職・・・。」

 

サラァナ「・・・という風な物とでも思ってくだされば。少なくとも現身である私達には関係ない話ですので。」

 

一夏「そうなんだ・・・。そういえば、現身とか本体とか言っているけど、どういう意味?」

 

フォルバン「ああ、彼女たちは元々この世界の人じゃないんです。昔別の世界からやってきた人たちの思念がメンタルキューブに影響を与えて本人そっくりの艦娘として新しく生まれた存在なんです。だから本人と区別するために彼女たちは自身を『現身』と定義しているんです。」

 

一夏「へぇ・・・、他にはいないんですか?」

 

サラァナ「沢山いますね。例えばゲーム同好会にはキズナアイさんとネプテューヌさんがいます。」

 

ウルゥル「私たちと同郷のルルティエは図書館・・・。多分ブランもそこにいる・・・。」

 

ベルちゃん「他にも何人かいらっしゃいますね。」

 

一夏「へぇ・・・結構たくさんいるんだな・・・。」

 

ウルゥル「この世界は他の世界と繋がりやすい・・・。」

 

サラァナ「ですので、貴方もきっとこの世界に招かれたのでしょう。いずれ元の世界に帰るのだとしても、それまではどうぞごゆるりとお過ごしください。」

 

一夏「ああ、流石に上げ膳据え膳は礼儀的にも精神衛生的にもよろしくないからできる手伝いなら進んでやらせてもらうけどね。」

 

サラァナ「ふふふ・・・。その姿勢、実に素晴らしいと思います。」

 

一夏「ありがとう。」

 

これが女尊男卑が蔓延したあちらの世界だったらいくら重症で入院していたとしても何かにつけて誹りが飛んできていただろうが、この鎮守府は男女対等だ。

 

艦娘はその名の通り女性型ばかりだ。男性型の艦娘・・・所謂「艦息子」と呼ばれる特殊個体は、全くいないわけではないが極々少数とのことだ。少なくともこの鎮守府にはいない。

 

つまりこの鎮守府・・・というよりこの群島の男女比は女性にかなり偏っている。

 

それでも男女対等の精神が普通にあるのはそれだけ互いが互いを尊重しているのだろう。

 

自分の世界では見ることなどないだろうと思われていた鮮やかな蒼穹の空も合わせて、まるで二つの世界の空の色合いの違いはそのまま人々の精神を反映しているのではないかと思えてしまう。

 

この世界では自分も男だからと見下されることはなく、皆分け隔てなく自分を認め受け入れてくれる。

 

この世界の心地よさを噛み締めつつも、俺はなんで自分の世界がああなってしまったのかを考えた。

 

・・・回想・・・

 

束『どうして・・・私たちはこんな世界を作りたくて、ISを作ったんじゃないのに・・・。』

 

9年ほど前、ちょうどISが完成して1年ほど経過したころに束さんが一人自室で涙を流していた時の記憶が蘇る。

 

束『私たちはただ、人類が宇宙に進出する日を夢見て・・・そしてELIDとの戦いで兵士の皆さんが少しでも傷つかないようになることを願って・・・なのにどうして・・・。』

 

-ISは女性しか起動できない。-

 

束さんと、名前がはっきりとは思い出せないが後三人の合計四人が生み出した二つの発明品の片割れであるISに発覚した四人の願いにとっては致命的すぎる欠陥。

 

何とか修正しようとしたが、女性利権団体の圧力によって修正のための研究は一向に進まず、残りの三人も状況の変化で合同研究が続けられなくなってしまったという。

 

束『どうしてこんな世界に・・・?それとも、これは私達への罰だとでもいうの・・・?』

 

当時の束さんは子供心でも見ていられないくらいに憔悴しきっていた。

 

だから俺は事あるごとに篠ノ之家に妹のマドカと共によく遊びに行っていた。

 

放っておいたら、束さんがどこか遠くに行ってしまう。そういう直感があったのだ。

 

今思えば、自ら命を絶ちかねない、それほどの危うさが当時の束さんにはあったように思えた。

 

ある程度落ち着いてからは不思議の国のアリスをモチーフにしたコスプレをするようになった束さんだが、周りの大人は彼女を変人と見たが俺達には自分たちを安心させようとしていたように見えた。

 

尤も、今思えばあれも相当無理をしていたように思える。きっとああでもして自分自身を騙し続けないと意図せずとはいえ世界を狂わせてしまった罪の意識に耐えられなかったのだろう。

 

きっと必死で取り繕った笑顔や振る舞いの裏では身も心もボロボロになり涙を流し続けていたのだろう。

 

・・・回想終了・・・

 

一夏(そういえば俺がこっちに来ていること束さんは知らないだろうな・・・下手したら死んだと思っているかも・・・。)

 

下手したらトラウマがフラッシュバックして今度こそ心身が生きることを諦めてしまっているかもしれない。

 

何とか連絡だけでも取りたいが、なかなか俺がいた世界の座標が見つからないらしい。

 

元々他の業務もあり、それ以外にも事情があってなかなか纏った時間が取れないらしい。二日前にも惑星ネザーで無人巡行中だった駆逐艦二隻が消息を絶ち、のちにバラバラの状態で発見されたという。

 

なんでも壊され方が異常で、単純な砲火を受けて轟沈したのではなく、巨大な力で無理やり引きちぎられたかのような、そんな常識を疑うような壊され方だったらしく、そちらの調査にも人員が割かれてしまったらしい。

 

惑星クレイドルで前々から予定されていたらしい極点調査の準備もあり、兎に角色々と起き過ぎていた。

 

一夏(悩んだところでどうにもならないか・・・。)

 

今はどうあがこうとどうすることもできない。なら待つしかない。

 

?????「何辛気臭い顔しているんですか?」

 

一夏「え?」

 

また後ろから違う声がしたので振り返ってみれば、そこには白い服を着た少女がぐでーっとしていた。たしか、アイリス・ヴィシアの「ル・マラン」だったか。

 

一夏「・・・こんなところで何してるんですか?」

 

ル・マラン「見ての通り、暑いからぐでーってしているんです。」

 

一夏「ふぅん・・・。」(端末操作)

 

ル・マラン「ちょっと待ってください。今なにしたんですか?」

 

一夏「別に何も。」

 

当然嘘である。収穫作業が終わった直後に彼女の妹の「ル・トリオンファン」からル・マランを見つけたら連絡してほしいという連絡を受けていたのである。

 

・・・そして・・・。

 

ル・トリオンファン「ね・え・さ・ん?」

 

ゴゴゴゴゴ・・・

 

ル・マラン「ひぃ!?!?」

 

いつの間にかル・マランの背後にはもの凄い怒気を纏ったル・ファンタスク級の末娘「ル・トリオンファン」が立っていた。

 

ル・トリオンファン「今日は姉さんも哨戒任務がありましたよね?皆待っているんですよ?」

 

なお、彼女の手にはゴム製の魚雷が握られており、その魚雷には「海軍精神注入魚雷」と書かれていた。

 

ル・トリオンファン「と、言うわけです。セッカン!セッカン!」

 

ル・マラン「ひいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぇぇえ!?だ、誰か助けてください!?!?」

 

ル・マランが涙目でこちらに助けを求めてくるが・・・。

 

フォルバン「自業自得ですよ?」

 

一夏「頑張ってください。」

 

ベルちゃん「サボりはダメですよね?」

 

ニューカッスル「ダメですね。(無慈悲)」

 

四人そろって見捨てる。そして・・・。

 

ウルゥル&サラァナ「「おさぼりはいけません。」」

 

ウルゥルさんたちも口をそろえてル・マランを突き放す。慈悲は無い。

 

ル・マラン「チクショーメー!!!」

 

ずるずると引きずられる形で妹に連行されていく威厳もへったくれもありゃしない姉。シュール過ぎである。

 

「わーちょっと待って!!一本足打法は勘弁しt(スパーン!!!)ギャーッ!?!?」

 

合掌・・・。

 

ちょうどタイミングよく風が吹いて軒下の風鈴がチリンと一回鳴ったが、これではまるで「おりん」である。

 

フォルバン「・・・じゃあ、そろそろ私たちも戻りましょうか。」

 

一夏「賛成。」

 

サラァナ「またいつでもお越しになってくださいね。」

 

ウルゥル「・・・待ってる・・・。」

 

一夏「ああ、じゃあまた。」

 

俺たちは残った麦茶を飲み干して空になったコップを返してから収穫した農作物を持って国見島に戻るために台船へと向かった。

 

途中でル・マランを引きずっているル・トリオンファンに追いついたのでせっかくだからと台船に同乗してもらった。

 

尚、ル・マランは隙を見つけては逃げようとしたがそのたびに取り押さえられ、そのたびに海軍精神注入魚雷でお尻をシバかれたのは言うまでもない。




ベルちゃん:ベルファストの幼児化個体で幼児化個体第一号。ベルファストと比較すると子供っぽいところがある。

ニューカッスル:先代メイド長。所用で別行動をとっていたが過去の演習の折にクイーン・エリザベスに呼び戻された。

フォルバン:アイリス・ヴィシア所属の少女騎士。この世界ではある理由からアイリスとヴィシアが分離しなかったので所属が「アイリス・ヴィシア」となっている。

シリアス:ロイヤルメイド隊所属だが戦闘以外は全体的にダメ。特にこの鎮守府のシリアスは料理の腕前が下手を通り越して錬金術クラスであり、指示通りに作っても違うものが出来上がってしまうこともしばしば・・・。

ウルゥルとサラァナ:「うたわれるもの」とのコラボによって生まれた現身。現在はりんご神社の巫女を兼任している。

キズナアイ、ネプテューヌ、ルルティエ、ブラン:今回は名前だけ登場。過去のコラボイベントで登場した人物たちの現身で本人ではない。

ル・マラン:アイリス・ヴィシアのグータラ少女騎士。根っからのサボり魔で末妹のル・トリオンファンにシバかれることが多い。

ル・トリオンファン:アイリス・ヴィシアの少女騎士姫。生真面目な性格だが、それ故にグータラな姉に頭を抱えることが多い。
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