(※致命的なネタバレ注意) Forgotten world(HELLO WORLD二次創作)   作:従弟

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少女の決意

・直実にマッチ売りの少女をさせる案もあったが、ボツにした

 

 

古本市は、好評のうちに終わった。

千古の持ってきた本は当初言っていた500冊を超え、古本市の規模は過去最大のものとなった。

その量を見た図書委員たちは、各自で少ないながら持ってきていた本を、思わず取り落とし、三鈴たちを称えた。

彼らも瑠璃のやる気を知っていた。

同じ図書委員の仲間として何とかしたいと、各自で本を集めていたのだ。

ボヤが起きたことで、古本市の開催に否定的だった一部の教員も、アルタラセンターのセンター長である千古自らが、本を運んできたとなっては、無碍にすることはできなかった。

結果、古本市は予定以上の規模で開催されることとなった。

三鈴はあかずきんの格好で、客引きをした。

瑠璃は不思議の国のアリスの格好だった。

二人の売り子姿は、特に好評で、千古だけでなく、女性である依依も、興奮した様子で一緒に写真を撮っていた。

直実は裏で力仕事や、つり銭の補充など休みなく働いた。

そして、学術書なども多くあったため、完売。とまではいかなかったものの、古本市は過去最大の利益をたたき出した。

皆が、笑顔で終わった。

控えめに言って、大成功だった。

 

その様子を、ナオミは離れた場所から見ていた。

誰もいない、学校の屋上である。

 

「やっぱり、ここにいたんですね」

 

そこに現れたのは、赤ずきんの格好のままの三鈴である。

 

「ああ、君か」

「せっかくだから、近くで瑠璃のアリス見ればよかったのに。

 すっごくかわいかったですよ」

「知ってるよ。俺の時は、見れなかったからな。新鮮だった」

 

そう言うナオミは、何かを考えているようだった。

 

「どうしたんですか。わたしが、言うこと聞かなかったから、拗ねちゃいました?」

「まさか、子供じゃあるまいし。ただ」

「ただ?」

「俺も、あの時あきらめずに、もう少し頑張れば。

 彼女にあんな思いさせなくてすんだのかと思ってな」

 

彼女というのが、ナオミの世界の一行瑠璃だというのは、すぐにわかった。

だが、それは違うだろう。

今回の結果は、あくまでナオミが千古や依依の人柄を見抜いて、お膳立てしたから勝ち得た結果だ。

三鈴や瑠璃、直実だけでは、アルタナセンターへ行くという発想なんて生まれなかったし、行ったとしても、門前払いだっただろう。

 

「せんせいは、できる限り、精一杯頑張ったと思います」

「君に分かるのか。その時の俺を見てもいないのに」

「分かります。だって、わたしは見てますから。

 今のせんせいと、今の堅書君。両方を見てますから。

 二人は、態度も物腰も全然違うけど、共通してることが一つだけあるんです」

「共通してること?」

「二人とも、人のために一生懸命頑張れる人だってことです」

 

ナオミは一瞬虚を突かれたような顔をした。

そして、苦しそうに、顔をそむける。

 

「買い被りだ。それより」

 

三鈴の言葉を否定したナオミは、三鈴が言い募るのを遮るようにして、話題を変えた。

 

「さっき、直実のやつが彼女に告白した」

「えええええええええええええええええええ!

 そ、それで、結果は。結果は」

「OKだ」

「きゃああああああああああああああああああああああああ」

 

ハイテンションでじたばたと悶える三鈴。

友人の恋愛成就なんて、女子高生にとっては最高の娯楽である。

嫉妬するような人間もいるが、三鈴の心には、一切そんな感情はわかなかった。

その胸の中にあるのは、祝福と歓喜のである。

そんな三鈴を無視して、ナオミは言葉を続ける。

 

「俺の時よりも恋人になるのが早い。

 結果的に君の言う通りにしたのが、吉と出たな。

 後、問題は花火大会だけだ」

 

言われて、三鈴はぴたりと動きを止める。

そうだ。

その問題が残っている。

瑠璃の事故を防げなければ、今までのすべてが無駄に終わる。

 

「とはいっても、できることはそんなにない。

 事前に打ち合わせをしている通り、最後は根性の勝負だ。

 君に全てを背負わせることになってしまうが、よろしく頼む」

 

改めて、ナオミが頭を下げる。

花火大会。

瑠璃の事故が起きる運命の日。

その日を超えれば、結果が成功でも失敗でも、ナオミはいなくなる。

そのことを、三鈴は再認識する。

胸の痛みを、明確に感じる。

明確に感じたことで、胸の痛みの正体に三鈴は気付けた。

目の前から、それ、が居なくなってしまう悲しみ。

今回は、手遅れになってしまう前に気付けたことに、安堵する。

 

「せんせい。事故を防げたら、ご褒美をもらってもいいですか」

「ご褒美?」

「はい。根性勝負なら、少しでもモチベーションを上げる要因が多い方がいいと思うんです」

 

嘘だ。

親友である瑠璃の危機。

友人である直実の未来。

なによりも、ここまで一緒に頑張ってきたナオミからの期待。

それらのおかげで、三鈴のモチベーションは最高潮に高まっている。

だから、これは、嘘だ。

ほんのちょっとだけ、わがままを押し通すための嘘。

 

「なるほど。俺にできることならなんでもしよう。

 物理権限はないから、物を送ったりはできないが、それでも最大限努力はする」

 

堅苦しい言い方をするナオミに三鈴は苦笑する。

そんなすごいことを頼むつもりはない。

簡単な、本当に小さなわがままだ。

 

「なら、事故を阻止することに成功したら、その時は、せんせい。

 私と一日だけ、デートしてください」

 

恋人みたいに。

 

その一言を、最後に付け加える。

胸の痛みは、かつて感じた失恋の痛みだった。

いつの間にか、三鈴は、過去の恋人のために懸命に頑張るナオミのことが好きになっていた。

けれど、ナオミの興味が三鈴へと向くことはないだろう。

瑠璃の事故を防ぐまで、ナオミは瑠璃への恋心に縛られ続けるはずだ。

その恋心から解放されてしまえば、ナオミは、現実世界に帰ってしまう。

そして、現実世界で新たな一歩を踏み出し、新たな恋をすることになる。

記録世界の三鈴の恋が、成就することはあり得ない。

だから、これは、本当に小さなわがままなのだ。

たった、一日だけのわがまま。

それに、直接好きとは言わなくとも、今のセリフを聞けば、よほどの唐変木でもない限り、三鈴の気持ちに気付くはずだ。

だから、さっきの言葉は遠回しな告白だった。

玉砕と分かっていても、三鈴は、その気持ちを隠し、殺すことはしなかった。

きちんと失恋するための小さなわがまま。

計算外があったとすれば、たった一つである。

 

「よし。なら、来週にでも行こう。

 報酬は先払いしておいた方が、モチベーションも上がるからな」

 

カタガキナオミ、交際人数1人は、よほどの唐変木であった。

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