(※致命的なネタバレ注意) Forgotten world(HELLO WORLD二次創作)   作:従弟

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エピローグ、および蛇足

・エピローグ

 

 

もう少しで、リスタートが始まる。

作業があるからと言って、カラスは現実世界へと戻っていった。

論理物理緩衝野に、三鈴とナオミ、二人だけが残される。

二人の格好は、あの宇治川の時と同じだった。

三鈴は制服の上に、赤い特製のポンチョ。

ナオミはいつも通りの、白づくめだ。

 

「もう少しで、世界が終わっちゃうんですね」

「ああ、そうだな」

 

板張りの床に座ったまま、外を見て、三鈴は、ぼんやりとそう呟いた。

横に立っていたナオミが、同じ方向を見ながら、答える。

 

「無事でよかったですね。瑠璃」

「ああ、そうだな」

 

外がどうなっているかというと、隕石は飛んでいるし、銀河はあるし、わけのわからないものもあるし、世界の果てと言う感覚が強い。

 

「忘れちゃうんですよね。全部」

「ああ、そうだな」

「あの、ナオミさん。ちゃんと、聞いてますか」

「聞いてるさ。思いかけず、目標が達成されたんで、感慨にふけってたんだよ」

 

適当にあしらわれて、三鈴が「む~」とほおを膨らませる。

 

「君には、感謝してる」

 

唐突に、ナオミが言った。

 

「それと、悪かった」

 

その謝罪は、何に向けたことだろうか。

騙したことか。

利用したことか。

その両方か。

それとも、もっと、別のことだろうか。

 

「それ、さっきも聞きましたよ。

 それに、言ったじゃないですか。好きな人のために頑張るのは、当然だって」

「俺は……」

「知ってます。けど、これが、わたしの今の本当の気持ちなんです。

 迷惑かもしれないけど。

 世界が終わるまで、この気持ちを抱いたままでいることを、許してください」

 

今回のケースは、かなりのイレギュラーだったらしい。

彼女が言っていた。

次回以降、三鈴とナオミが、こういう形で会うことはないだろう。

実際の記録通り、ナオミは堅書直実の元へ現れることになるだろう。

そして、そうなれば、三鈴とナオミが出会うことはない。

 

「わたし、ナオミさんのことは、見えなくなるかもしれません。

 けど、瑠璃のことは大好きです。

 瑠璃のために堅書君が、何かを頑張ってれば、絶対に、助けます。

 そうすれば、それが、ナオミさんの助けにもなるんですよね」

「ああ。きっと、君は、大きな力になる」

 

そこまで言って、ナオミが、ぼそりと付け加える。

 

「だが、あまり積極的にやりすぎないでくれよ。

 前にも言ったが、男子高校生なんて単純だからな。

 少し女子に優しくされただけで、すぐに、惚れるぞ。

 特に、君は……」

「特に、わたしは、なんですか」

「いや、なんでも」

「いいじゃないですか。どうせ、世界の終りも、もう少しなんですし。

 言っちゃいましょうよ」

 

言い淀むナオミが、珍しくて、三鈴は積極的に絡む。

お気に入りのおもちゃを見つけた猫のようだった。

ナオミはしばらく悩んでいたようだったが、言うことに決めたらしい。

 

「君はかわいいからな」

「え?」

 

急に褒められて、三鈴は目をぱちくりさせる。

 

「高校時代の勘解由小路さんは、キラキラ輝いててアイドルみたいだったからな。

 図書委員の中でも、憧れの的だったし。

 当時は見てるだけで、幸せな気分になったもんだよ」

「え?え?」

「だから、肩書直実とは適当に距離をあけて付き合ってやってくれ。

 勘違いすると、面倒くさい」

「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!」

 

思い人の過去が、実は自分に好意を抱いていたと知って、三鈴は大いに驚いた。

そこまでの高評価だったことも驚きだ。

 

「じゃあ、なんで、わたし振られたんですか」

「そりゃあ、俺が好きなのは、一行さんだけだから」

「納得!」

 

瑠璃のかわいらしさは、ほかならぬ三鈴が誰よりも知っている。

思い返せば、まだ、あんなこともそんなことも、していなかった。

次回は、そーんなことや、あーんなことにも挑戦してみよう。

なんて、よこしまな考えが溢れかえるほどに、三鈴は瑠璃のかわいらしさを知っている。

同時に、ナオミの瑠璃への思いも知っている。

ナオミのことは、ずっと横で見ていた。

さらに、バタフライエフェクトの修正のため、三鈴は直実が瑠璃に惹かれ、恋人になるまでをずっとナオミと観察していたのだ。

直実がどういう経緯で、どんな心理状態で、瑠璃に恋心を抱き、どうやって、ナオミへと成長したのか。

熟知してしまっている。

アイドルとか憧れなんて言う、フワフワした気持ちが、二人の思いを引き裂くことなどありえないと、三鈴自身が認めざるを得ない。

 

「うう、でも、納得はしたけど、納得できない」

 

三鈴が頭を抱える。

 

「俺を目覚めさせることはできるんだろうか」

 

花火大会の日に、瑠璃を連れ去ってしまえば、その時点で終わりだという。

肩書直実にカタガキナオミは同調できない。

ガイドとして使用することもできない。

しかし、瑠璃を諦めるようなナオミはその時点で直実ではないのではないか。

 

「それなら大丈夫」

「なんで、君にそんなことが分かる」

「だって、彼女がやるって決めたんですから。

 時間はかかるかもしれないですけど。絶対に大丈夫です」

 

自信たっぷりに言われてしまえば、ナオミとしては黙るしかない。

 

「それより、ずっと、君って呼んでるのは、わざとですか?」

「いや、そうじゃないが、なにか問題があるか」

「三鈴って呼んでほしいです。あの時みたいに」

 

まっすぐと、三鈴に見つめられる。

いつも、この目には勝てない。

ナオミはそう思う。

仮に、もしも、仮に、最初に会った時に、全てを正直に三鈴にぶちまけていればどうなっただろう。

瑠璃の脳死のこと。

ナオミが瑠璃を連れて行こうとしていること。

瑠璃を連れていけば、三鈴の世界が壊れてしまう可能性が高いこと。

普通の人なら、絶対に協力なんてしないだろう。

けれど、ナオミは思うのだ。

この目の前の少女なら、協力してくれたかもしれない。

そして、ナオミとは全く違う方法で、瑠璃を助けてくれたかもしれない。

そこまで考えて、ナオミは頭を振って、妄想をかき消す。

一人の女の子に期待をかけすぎだ。

だけど、同時に、二人ならなんだってできたはずだという確信があった。

結局は、ナオミが裏切ったことで、台無しになってしまったけど。

 

「次回は、まともな男にひっかかれよ。三鈴」

 

照れ隠しの様に、頭をかきながらナオミが言う。

そう、今回はもう終わりだ。

リスタートした世界で、三鈴がナオミと会うことはないだろう。

次回恋することがあったとしても、その相手はナオミではない。

そのことが、三鈴には、寂しい。

二人の間に、沈黙が訪れる。

どれくらい、そうしていただろうか。

論理物理緩衝野に、ゆっくりと、オーロラがかかり始める。

ナオミが三鈴の世界へと来た時にかかっていたオーロラと同じものだ。

リスタートが始まった合図だった。

 

「ナオミさん。立つから、手を貸してもらってもいいですか」

 

ナオミは、怪訝な顔をした。

わざわざ立ち上がる必要はないし、立つのに人の手を借りる必要性も感じなかったからだ。

だが、拒否する理由もなかった。

身をかがめ、右手を差し出す。

 

「ほら」

「ナオミさん。覚えてますか。昔二人で見たドラマのこと」

「どれのことだ」

「男の人が、急に女の人にキスする奴です。

 ナオミさんが不誠実だって怒った奴」

「三鈴が、受け入れる気持ちがないと、キスなんて早々されないって言ってたやつか。

 それが、どうし……」

 

ナオミの唇が塞がれた。

三鈴が、ナオミの手を両手で引っ張って、体勢を崩したのだ。

つんのめったナオミの顔は、ちょうど、三鈴の目の前にあった。

だから、三鈴はほんの少しだけ、唇を突き出した。

それだけで、二人の唇は確かな接触を果たした。

彼女の不誠実な恋愛の成就。

 

「やってやりました」

 

三鈴が、にっこりと笑った。

ナオミは、何も言えずに、呆然とその笑顔を見る。

世界が終わる。

そして、また、世界が始まる。

終わりと始まりの狭間の一瞬。

その一瞬だけは、世界は二人だけのものだった。

 

 

 

 

 

 

・蛇足=余計な物

 

 

蛇足=昔、中国で蛇に本来はない足を描いてしまい絵の勝負で負けてしまったという故事

つまり、本来ない余計な物でも、作者がどうしても書きたかった、書いてしまったもの。という意味はない。

 

 

 

 

 

 

三鈴が目を覚ますと、そこは病室だった。

今までの経緯はわかっている。

最初に論理物理緩衝野に来た時と同じように、その映像は、鮮やかに思い出すことができる。

 

天地開闢により、新しい世界が生まれ、現実世界でカタガキナオミが、目を覚ました。

一行瑠璃が、あの時の宣言通り、やって見せたのだ。

横を見ると、いつかの濃い灰色のワイシャツのナオミがいた。

三鈴が眠っているベッドの横で、見舞い客用のパイプ椅子に座っている。

状況が分かっていないらしく、きょろきょろと周りを見ている。

そして、三鈴と目が合った。

二人とも、同時に目をそらす。

三鈴が、論理物理緩衝野で、何故あんな大胆な行動を取れたかと言うと、もう世界が終わりだと思っていたからだ。

ナオミと顔を合わせる機会がなくなると分かっていたからこその行動。

状況はわからないが、こうして、再会すると、照れが出る。

 

「あの、ナオミさん。これって、どういうことなんでしょうか」

「俺にも、分からない。

 とりあえず、一行さんが目的を達成したことは、分かるんだが」

 

困惑する二人。

 

「その疑問には、私が答えます」

 

声の方向にいたのは、いつかの論理物理緩衝野にいたカラスだった。

 

「堅書直実さんの世界を切り離したことで、

 カタガキナオミさんのいた世界が、天地開闢を行った世界として、こちらの世界で観察対象となりました。

 その後の経過を観察するために、勝手ではありますが、あなた方二人のデータを、この世界で失われたカタガキナオミとイチギョウルリの欠損データ部分に書き込ませていただきました。

 お二人には、その世界での状況報告と、世界が壊れないように情報の修正を行っていただきたいのです

 簡単に言うと、バグの処理です」

 

カラスの言葉は唐突で、状況を不鮮明なままだ。

けれど、確信だけはある。

 

「やってやりましょう」

「ああ、やってやろう」

 

二人なら大丈夫だという、確信だけはずっとある。




ということで完結です。
週末で4000字位蛇足の蛇足を書くかも。

蛇足の内容はどいうこと?って思われるかもですけど、
要は、ハッピーエンド至上主義者のエゴです。
三鈴的には、本来の世界から切り離されてるんで、ハッピーか?っていう疑問はあります。
そこらは、書くとすれば蛇足の蛇足で。
とりあえず、ナオミと三鈴がカタガキナオミの世界で復活して現実世界と通信が取れる状態です。

しつこいまでのネタバレ注意と、オリ設定を乗り越えて、読んでいただけたことに感謝します。
ここまで読んでいただいて、ありがとうございました。
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