(※致命的なネタバレ注意) Forgotten world(HELLO WORLD二次創作) 作:従弟
・糸口
その後も、瑠璃と直実は順調に友好関係を進めているようだった。
本の交換をしたり、機械音痴の瑠璃のために、直実がスマホの操作を教えたり。
そういった小さな積み重ねが、二人の関係を少しずつ進めていた。
先の件の様に、ナオミから指示が出ることもあるが、むしろ、三鈴は積極的に二人に関わっていった。
むしろ、関わりすぎてナオミに止められるくらいだ。
二人が不器用ながらに近づいている様子は、三鈴にとっても喜ばしいものだった。
そして、二人の幸せを守るためのグッドデザインの訓練にも、自然と力が入る。
落雷を防ぐための目途が立ったのは、そんな矢先だった。
きっかけは、何気ない会話だった。
ある夜のことである。
三鈴とナオミは、家で恋愛ドラマを見ていた時のことだった。
普段、直実や瑠璃の監視をしているナオミだったが、たまに暇を見てやってきたりする。
場面はクライマックス。
男役の俳優が、ヒロインの女優の唇を奪った。
おおっ、盛り上がる三鈴。
対するナオミは、不満そうに言った。
「この男最低だな」
どこかで、ゴングが鳴った気がした。
「なんですか、せんせい。途中からしか見てないのに、彼の何が分かるっていうんですか」
「女性の了承もとらずにキスするなんて、不誠実だろ。
強姦罪に問われても文句は言えないぞ」
「分かってないですね。恋愛には、ムードっていうものがあるんです」
「ムードねえ」
「そうです。女性の方だって、本当に嫌なら、あんなに簡単に唇を許したりしません。
強引な体に見せて、唇を許している時点で、女性の方も男性を受け入れているんですよ」
ヒートアップする三鈴を、ナオミが鼻で笑った。
「所詮は、ドラマ。作り物か」
「そこまで、言うなら、せんせいは瑠璃と初めてキスした時、どうやったんですか」
勢い込んで言う三鈴に、ナオミがちょっと、引いた。
「俺のことは、今は関係」
「あります。現実ってやつを、是非とも教えてください」
さあ、さあ、と押し迫る三鈴に、ナオミはきまり悪そうに言う。
「したことない」
「え?」
「キスしたこともないし、手をつないだこともない。
笑顔を見たのだって、あの、花火の日に一度だけ……」
落ち込んでしまったナオミに、三鈴はどう声をかければいいかわからない。
慰めるような言葉はない。
シチュエーション的に茶化すわけにもいかない。
かといって、放置しておくのもちょっとかわいそうな気がする。
「あ~、純粋だったんですね。せんせいと瑠璃」
「じゅんすい」
ぱっと、ナオミが顔を上げた。
先程までのキノコが生えそうなジメっとした様子はもうない。
「そうか。そうかそうか。もっと、単純でよかったんだ。この方法ならなんとか」
一人で興奮してまくし立てるナオミの瞳は、どこか虚空を見ているようだった。
「あの、せんせい」
「一行さんを助ける方策が決まったぞ!」
その日から、特訓の場所が宇治川の周辺へと変更された。