(※致命的なネタバレ注意) Forgotten world(HELLO WORLD二次創作)   作:従弟

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アルタラセンター

・謎の本

 

 

京都府庁舎の敷地内にある施設、京都府歴史記録事業センター。

京都の全情報を記録するクロニクル京都の中枢。

量子記録装置「アルタラ」のある場所。

そこに、三鈴と瑠璃、直実は来ていた。

ナオミも三鈴の隣にいるものの、その姿は三鈴以外に見えていない。

 

「ようは、燃えてしまった本の補填ができればいいわけだ。

 本を提供してくれそうな人間に、心当たりがある。保証はしないがな」

 

あの後、ナオミはそう言って、いくつか三鈴に指示を出した。

それを箇条書きするとこうなる。

 

・堅書直実を連れていくこと。

・一行瑠璃には秘密ににすること。

・京都府歴史記録事業センターに行くこと。

・途中で本屋?によって、堅書直実に指定した漫画を買わせること。

・買った漫画は外から見えないよう封筒に入れること。

・その時、漫画の内容は絶対に見ないこと。

・京都府歴史記録事業センターで、買った漫画を徐依依(シューイーイー)という女性に渡すこと

 

「これでだめなら、俺にはもう当てはない」

 

ナオミはそう言っていたが、指示の内容が意味不明でいまいち信頼ができない。

ただ、ナオミの性格上、手を抜いているとは思えない。

ちなみに、瑠璃に秘密にするという条件は、すぐに破綻してしまった。

直実を連れ出す際に、瑠璃に見つかって、本をもらいに行くことがばれてしまったのだ。

瑠璃は、頑として自分も付いて行くと言って、譲らなかった。

 

「見つかったなら仕方がない。

 失敗した時に落胆させたくなかったんだが」

 

ナオミとしても、そこは、できれば程度の条件だったらしく、簡単に引き下がった。

これで、計画実行は不可能などと言われたら、どうしようと思っていた三鈴は、ほっと胸をなでおろした。

あと、気になるのは、ナオミが本を買うように指定していた本屋だ。

全体的に黄色い店で、瑠璃と三鈴が入ることは厳重に禁止された。

特に、瑠璃を中にいれれば、これ以上の手助けはしないとまで言われてしまった。

作家の名前らしきメモを、直実に渡して店に入ってもらった。

店から出てきた直実が、憔悴しきっていたのも印象的だった。

こっそり、中を見せてもらおうとした所、

 

「絶対だめです!特に、一行さんには絶対見せられません!」

 

と、絶対を二度も使い、あの気弱な直実が強い口調で拒絶したのだ。

ネットでメモに書いた(メモに作家名を書いて直実に渡したのは三鈴だ)作家名をスマホで検索してみようと、三鈴は心に決めた。

 

三鈴が京都府歴史記録事業センターに来るのは、二度目である。

一度目は、ナオミにアルタラのことを詳しく教えてもらうために来た。

その時と同じ、とても立派な施設だ。

一度来た三鈴でも気後れするし、初めてらしい直実は本当に入っていいのか戸惑っているくらいだ。

 

「どうしたんですか、二人とも」

 

一方で瑠璃は全くそういった気後れが見えない。

いつも通り、堂々と、中に入っていく。

いや、いつも以上に気合が入っているようにさえ見える。

瑠璃に続いて、三鈴と直実も中に入る。

受付に行く。

本を持っているのが直実なので、必然的に彼が話をすることになる。

 

「あのすいません。これを、アルタラセンターの徐依依さんに渡してもらいたいんです。大至急で」

 

受付の女性は、少し怪訝な顔をしたものの「少々お待ちください」と言って、奥へと入っていった。

数分後。

 

「ギャー!」

 

という、女性の声が響いた。

次いで、すごい速度で三鈴たちの方へと接近してくる足音が一つ。

奥から現れたのは、白衣を着た、細身の女性だった。

目鼻立ちがはっきりした、美女だ。

その手には、先程直実が渡した封筒が握られている。

顔を真っ赤にし、目尻には、こころなしか涙がたまっているようにも見える。

 

「為何有著這個什麼是目的是在哪裡中知道的對誰說了這個事嗎!!!!」

 

高速でまくし立てる女性が、直実の肩をつかんで、激しく揺さぶる。

一体どういうことなのかと、隣に立つナオミを見る。

 

「うん。変わってないな」

 

懐かしそうに、笑っていた。

姉にびっくり箱を渡して、喜んでいる男のみたいな顔だった。

三鈴は今更ながら、ナオミを信じてもいいのか、疑問になる。

どうしたらよいかわからず、三鈴たちは固まってしまう。

 

「ちょっと~、どうしたのよ。依依ちゃん」

 

奥からもう一人歩いてくる。

頭にチューリップを二本生やした、人懐っこそうな顔をした変なおじさんだった。

格好もラフで、研究員のようには見えないが、前回、三鈴が見学した際には、研究室でドローンを飛ばしていた。

彼も、この施設の研究員の一人なのだろう。

直実をシェイクしていた女性の動きが止まる。

 

「教授(せんせい)、コレハ、アノ」

 

片言で、何か言おうとする依依だが、確実に頭が回っていない。

 

「俺が言う通りに言え」

 

ナオミが、三鈴の耳元でささやく。

三鈴は、感じるはずのない吐息を感じた気がして、体をこわばらせる。

ここで失敗するわけにはいかない。

緊張を振り払い、三鈴は一歩前へ出た。

 

「初めまして、千古恒久センター長」

「おや、君たちは」

「錦高校で図書委員をしている勘解由小路三鈴といいます。

 今日は突然訪問してしまって申し訳ありません」

 

三鈴に続いて、瑠璃と直実が「一行瑠璃です」「堅書直実です」と自己紹介する。

 

「今日は、徐さんにお願いがあってきたんです」

 

そう前置きしてから、古本市のこと、その古本市が中止になりかけていることの説明をする。

 

「そこで、知り合いに相談したところ、徐さんが大変な読書家であって、

 もしかしたら、古本の提供をしてもらえるかもしれないというお話を聞きまして。

 不躾ながらこうして、訪問させていただいたんです」

 

依依の態度を見れば、ナオミがなにか脅迫したのは、明白だった。

ナオミの言葉を復唱しながら、三鈴は、ナオミを白い目で見ていた。

盗人猛々しいというか。

瑠璃に内緒にしようとした本当の理由が分かった気がした。

 

「それは、災難だったねえ。

 よし、それなら、僕からも何冊か提供しようかな」

「本当ですか」

 

話を聞き終わった千古が、笑顔で告げる。

瑠璃が、思わずといった感じで、前に出る。

 

「勿論だよ。

 そうだ、他の研究員にも古本がないか聞いてあげよう」

「ありがとうございます」

 

三人そろって、頭を下げる。

その様子に、千古は、うんうんと頷く。

 

「よし、それじゃあ、依依ちゃん。

 ちょっと、皆に聞いてきてくれるかな。

 丁度休憩だし、その間、僕はこの子たちに施設の案内をしてあげるよ」

「センター長自らですか」

「いいでしょ。たまには、若い人と交流を持たなきゃ」

「ハア、わかりました」

 

踵を返す前、依依がそっと三鈴の傍に来る。

 

「ちなみに、シリアイって誰ですか」

「じょ、情報提供者については秘密です」

 

ひきつった顔で、三鈴が答える。

そもそも、正直に未来人です。と言ったところで、信じてもらえるとは思えないが。

依依は、納得はしていないようだった。

だが、それ以上の追及をするつもりもないようだった。

 

「ハア、いいでしょう。

 アナタタチはいい子みたいですし。

 私だって、事情を聞けばそのシリアイの人と同じように、アナタタチを助けたいと思います

 ただ、その人に絶対に誰にも言わないように言っておいてください」

 

そう言って、研究所へと戻っていく。

 

「よし、それじゃあ、クロニクル京都、それに、アルタラについて説明していこうか」

 

千古を先頭にして、三鈴たち三人は、歩き始めた。

 

 

・アルタラセンター

 

 

千古による施設見学は、前に三鈴が参加したガイドツアーよりも分かりやすかった。

言葉は少ないのに、要点がまとまっていて、過不足がない。

内容も、平易な言葉を使い、三鈴たちでもわかるようにかみ砕かれている。

所々で、興味を引くような、生活に身近な例が出される。

さらに、ユーモアがあって、飽きることがない。

三鈴だけではない。

瑠璃も、直実も、千古の言葉に引き込まれているのが分かった。

ただ、その中で三鈴は、千古の話し方に既視感を覚えていた。

前回のツアーではない。

もっと、日常的にこういった話し方を聞いた気がする。

 

そうか、せんせいの授業。

 

しばらく考えてから、思い至る。

ナオミが家庭教師として、三鈴に教えるときの話し方。

それに、千古の話し方は似ているのだ。

ナオミの方を見ると、ナオミは千古の話に聞き入っているようだった。

敬愛と尊敬がその瞳からは感じられる。

だが、それだけではない。

いつも、傍にいる三鈴だからこそ、その小さな感情に気付けた。

 

罪悪感?

 

千古を見るナオミの瞳には、ほんの少しの罪悪感が見て取れた。

どういうことだろうかと、三鈴は疑問に思う。

 

「えっ、それじゃあ、アルタラの中から、将来的には過去の京都のデータを好きに引き出せるようになるんですか」

「うん。将来的には、そうなるね。

 アルタラは、地面の砂の動き一つ一つすら記録してるからね。

 さらに、その動いた砂がどんな形状かまで、解析できるようになるよ」

 

言ってから、千古が続ける。

 

「ただ、今はまだ、そこまで詳細な情報を引き出せる技術は、確立していないんだ。

 記録自体はされているんだけどね。

 それをするには、それこそ、実際にアルタラの中に入って探せるような技術を開発しないと」

「します!」

 

唐突に、直実が言った。

普段物静かで控えめな彼からは見ることができない決意に満ちた、強い意思を持った言葉だった。

三鈴の目に、直実とナオミが少しだけ被って見えた。

 

「僕が、アルタラの中に入れる技術を作って見せます。

 それで、燃えちゃった一行さんの本を」

 

そこまで言って、周りの様子に気づいたらしく、直実は恥ずかしそうに顔を伏せた。

データだけでも引き出せれば、実際に本を取り出せなくても、アルバムの写真を眺めるようにあの燃えた本たちを、瑠璃に再会させることができる。

千古も、瑠璃も、三鈴も、そして、ナオミも目を丸くして、直実のことを見ている。

最初に、沈黙を破ったのは、千古だった。

 

「ハッハッハ!それはいい。

 なら、ナオミは、僕の研究室に来るといい。

 みっちり鍛えてあげるよ」

「え、でも、僕なんかが」

「いいよ。好きな女の子のために頑張る。素敵なことじゃないか」

「ええ!いや、好きなって、そういうことじゃ」

 

言い淀む直実。

瑠璃はというと、いつもと同じ表情だ。と思うだろう。

一行瑠璃素人がみればそうだ。

だが、るーりーますたあの三鈴が見れば、瑠璃の頬が少し赤く染まり、口元が緩んでいることが分かる。

つまり、瑠璃もまんざらでない様子だ。

瑠璃と直実の仲は、順調に進展しているらしい。

 

「二人、いい感じですね。せんせい」

 

こっそり、横にいるナオミに告げる。

瑠璃と直実を恋人同士にすることは、ナオミの計画の一つだ。

喜んでいるだろうと思って、ナオミを見ると、顔をしかめていた。

不機嫌と言うわけではなく、どこか納得いってない様子の顔だ。

 

「どうしたんです。せんせい」

「ああ、いや、問題ない。ただ」

「ただ?」

「うまくやりやがって、と思ってな」

 

過去の自分に対して、しかも、自分でお膳立てまでしておいてそんなことを言うナオミに、三鈴は小さく噴き出す。

それを見て、ナオミはさらに顔をしかめた。

 

「教授(せんせい)」

 

向こうから、依依がやってくる。

 

「やあ、依依ちゃん。どれくらい集まった」

「はい。事情を話したら、皆協力的で、500冊クライ集まりそうなので。

 明日の早朝に、まとめて車で高校に運ぶことになりました」

「え」

 

三鈴たち3人が驚きの声を上げる。

元々、40冊で上々、瑠璃の持ってきた本を含めても300冊いかないくらいだったのだ。

一気に500冊と言うのは、予定外だった。

逆に、ナオミは想定の範囲内だったらしく、「そんなもんか」などと、つぶやいている。

 

「でも、悪いです。車まで出してもらうなんて」

「問題ナイです。今晩、ミンナの家を回って本を集めて、そのまま錦高校に行きます」

「おお!いいねえ。依依ちゃん。

 途中で屋台のラーメンを食べていこう」

 

盛り上がる千古。

だが、三鈴や瑠璃、直実にしてみれば、本を提供してもらう上に、持ってきてもらうなど、恐縮の極みである。

 

「いえ、僕たちリアカーを持ってくるので」

「気にしない気にしない。

 リアカーで持ってくなんて重いでしょ。

 車で集めて、そのまま学校まで持ってった方が全然楽だよ」

「でも、そんな、何から何まで」

「その代わり。古本市。僕らも参加していいんだよね」

 

いたずらっぽく、ウィンクする千古。

 

「どうぞ、お待ちしております!」

「はっはっは!結構結構」

 

90度でお辞儀をする三人に、千古が笑って答えるのだった。

 




古本市の開催のため、依依さんには腐っていただきました。
一応、彼女がそういう本を自費出版していて、それを脅しに使ったという設定です。
原作にはそんな描写一切ないです。
掃除してくれたり、チャーハン作ってくれたり、普通の面倒見がいいお姉さんです。
本編と言うかナオミ三部作の方ですけど。

千古の登場は、ナオミ的にも賭けの要素が多くありました。
千古が現れなかった場合、依依から大量に本を脅し取る予定でした。
ただ、多少脅し取ったくらいでは依依のコレクションに損害は与えられず、理由を聞き、口実さえあれば彼女が本の提供を拒まないことをナオミは知っていました。
ですから、脅しと言うよりも、依依が本を提供しやすくするための材料が、あの本でした。というオリ設定。

あと、本の数は、割と異論あるかなと思います。
映像的には1000冊くらいありそうですけど、さすがにその量を一人で提供するのは、学校行事的になしかなと思ったり。
個人的に300冊くらいならギリギリありかな。位です。
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