本編どうぞ!
いやぁ~昨日は楽しかった。椛とも会えたし、はたても健在してたし、沢山のロボットを見ることも触ることもできたし満足だ。文が放ったらかしになるところだったけど、それは私が許せなかったのでロボットの良さを知ってもらおうとした。途中で早苗が暴走してロボットと合体した時は流石の私もまるで意味が分からんぞ!?状態だった。私も女の子だけどロボット系大好きだが、合体は予想外過ぎた。流石早苗……あなたは奇跡を起こしたんだ。結局ロボットが誤作動で工場が爆発するオチになったけど、文も楽しめたみたいで何よりだった。にとりは工場が木っ端みじんになって途方に暮れていたけど……
そして私は今日も地上へ降り立った。どうしても会っておきたい人物がいたから……
「こんにちわ」
「あっ!こんにちわー!!!」
天子は小さい子に挨拶するとその子は大声で返事をした。その声が天子の耳に直接響いているように感じた。
【幽谷響子】
髪はウェーブのかかったショートボブで色は緑色をしている。茶色に薄く模様の入った大きな垂れ耳と小さな尻尾を生やしている。長袖ワンピースの下からは白いスカートが覗いている。聞こえてきた声に対し、同じ言葉を大声で返事する山彦であり、山で暮らしていたが命蓮寺に入門した。
凄い大きな声だ……耳がキーンとなった。山彦の響子ちゃんが居てくれてよかった!出会わなかったから響子ちゃんの存在そのものが消えているのかと思って、はたての時みたいに心配していたの。
最近命蓮寺……この前、霊夢達が解決した異変の宝船(宝船ではなく元々は穀倉だった)が人里の外れの空き地に不時着し、改装され寺へと姿を変えたのが命蓮寺よ。そこには私が会っておきたい人物が住職をやっているの。そのために私はここを訪れたのだ。
「どちら様ですか?」
「私は比那名居天子、天人くずれだ。すまないが聖白蓮に会いたいのですが……」
【聖白蓮】
金髪に紫のグラデーションが入ったロングウェーブに白黒のゴスロリ風のドレス姿の元人間である魔法使い。とある僧侶の姉であり、弟である彼から法力を学んだ。弟の死をきっかけに彼女は死を極端に恐れるようになり、法術ではなく妖力、魔力の類の術によって若返りと不老長寿の力を手に入れた。人間も妖怪も平等であるという考えを持ち、人間も妖怪も分け隔てなく助ける心優しい人物だ。
私は彼女に会いたかった。彼女は神子とは深い関りが生まれ、お互いに必要とする存在になるからだ。私がいつも神子の傍にいるとは限らない。それに彼女なら神子の気持ちを理解し力になってくれると思っていたからだ。神子の力になってもらうべく私はここにいる。
「聖様ですか?ちょっと待ってくださいね」
響子はパタパタと走っていき寺の中へと消えた。天子は響子が帰って来るまで暇なのでのんびり命蓮寺を見回していた。
門の前には多くの地蔵が置かれ、門を越えた敷地内には灯篭が並んでいる。本堂や鐘などが置かれており、墓場も存在している。そんな命蓮寺を見回していた時に誰かに声をかけられた。
「おや?お前さんここに何か用でもあるのかぇ?」
「あなたは……」
【二ッ岩マミゾウ】
茶髪に丸眼鏡、狸耳を生やして薄い桃色の肩掛けに、黄土色の無地のノースリーブと足元は素足に
マミゾウは本来ならば幻想郷のパワーバランスが崩れるのを恐れた一匹の妖怪に「人間勢力の増大化に対抗するための妖怪側の勢力強化」のために呼び寄せられるのだが、命蓮寺となってまだそれほど日にちが経っていないにも関わらずにいることは一体どういうことなのだろうか?
「なんじゃお主?儂の顔をジッと見て?」
「ああ、すまない。私は比那名居天子だ」
「これはご丁寧に、儂は二ッ岩マミゾウじゃ。して、天子よ……ここには何用じゃ?」
ううむ……マミゾウさんは私が怪しい人物かどうか判断しているような気がする。こう見えてもマミゾウさんEXボスなんですよね……マミゾウさんは化け狸の中でも三本指に入る化け力を持ち、外の世界でも国の3分の1の狸を統べる頭領だった実績があるなど、非常に高い実力を持っている。そのため、マミゾウさんの思考を読むのは難しい……流石ですよ。でも心配ないわ。だって私は今日は聖に用があって何も悪い事なんて考えてないのだから。元々悪い事なんて考えないけどね。
私はマミゾウさんなら事の詳細を話しても問題ないと思った。マミゾウさんなら聖のように力を貸してくれるのではないかと思ったから。
「そのようなことがあったのか……」
「そうなんです。それでマミゾウさんはいつ頃こちらに?」
「つい先日じゃ。ぬえの奴が心配でな……おっと!ぬえと言うのは儂の知り合いでのぉ……」
マミゾウさんはやんちゃな知り合いの妖怪のことが心配になってこちらにやってきたみたいだった。理由は違えど幻想郷にやってきてそのままこっちでのんびり過ごすようだ。何とか原作通りにメンバーが揃っていて安心した。そしてマミゾウさんは考え事をしていたが、丁度そこに会いたかった人物……聖がやってきた。
「おお、聖殿お主にお客様だぞ」
「すみません遅くなって……あらあなたは!」
天子の顔を見るなり驚く聖。聖は幻想郷に蘇って初めて新聞を読んだ時、天子という存在を知った。そして会いたいと思っていた。新聞に載っていたことが本当であれば、一度お話したいと思っていたのだ。
「どうしたんだ?」
「いえ、一度あなたにお会いしたいと思っておりました。天子さんどうぞこちらへご案内します」
聖は天子を連れて寺の中へと戻っていった。
「あの人と何話していたの?」
「ん?一人の悲しい人生を歩んだ聖人の話じゃよ」
「?どういうことなの?」
「ふぉふぉふぉ!響子にはまだ早かったかのぉ?まぁ、話を聞いていると助けたくなってくるわい」
マミゾウは寺の中へと連れていかれた天子に視線を向けながら……
「随分とお人好しな天人がこの幻想郷にはいるようじゃな……」
「なんて悲しい出来事なのでしょうか……」
天子の話に心を痛める聖の瞳に薄っすらと光り輝く涙が浮かんでいた。天子は神子の過去を話した。新聞にはその部分はぼかされていたため詳細までは聖は知らなかった。改めてその話を聞くと心が締め付けられるような思いを天子も感じていた。
「すまない、気分を悪くしたか?」
「いえ、大丈夫です。ただ豊聡耳神子さんがとてもかわいそうで……そしてその気持ちがよくわかるのです。私も人々には裏切られた経験がありますから……」
聖は最初は自分の魔力を維持するために妖怪を助けていたのだが、人間からの不当な迫害を受ける妖怪達を目にするうち、次第に本心から妖怪を守らねばならないと思うようになった。その人柄ゆえに人間からの人望も非常に厚かった。そんな時に妖怪との共存を望み加担していたことが人々に露見すると態度を変えて一転、悪魔扱いされ魔界に封印されたと語っていた。原作と同じ過去を持つ聖だが、神子と通じるものがある。そのためとても悲しんでいた。
やっぱり聖は優しい人だ。これなら神子と手を取り合えるだろう。まぁ、宗教的問題は数多く存在するが、そのいざこざも含めてより良い関係が結ばれることだろうね。私はそう願っている。
涙を拭い、気持ちを落ち着かせるように深呼吸をする聖を待つ。
「すみません……はしたない姿を見せてしまいまして……」
「いや、私の方こそあなたに辛い過去を思い出させてしまって……」
「ふふ、天子さんってとても優しい方なんですね?」
「優しくないと相手に寄り添えないからね。でも、優しさだけでは人は救えないし、妖怪だってそうだ。時には厳しく残酷に生きなければならないのが現実だからね」
「あなたを信頼した神子さんの気持ちがわかるような気がします」
聖はまだ見ぬ神子の気持ちがわかるような気がした。とても温かく見つめる瞳は優しさが宿っているように見えた。神子は天子に救われてきっと嬉しかったんだろうと、この方なら信頼できると心の底から思うのだった。
「天子さん、神子さんのことは私も力になります。ご安心してください」
「きっと神子が迷惑をかけると思うけれど……その時はすまないと先に謝っておこう」
「いえいえ、人には何かと相容れないものがありますから気にしないでください。私の方こそ神子さんに受け入れてもらえるように頑張ります」
「聖……ありがとう」
そこからいろいろ話をした。天界の酒や果実と言ったものからどんな天人がいるのか、修行はどんなことをやっていたのかを話した。聖の方も今まで助け、逆に助けられた思い出を語った。それがいつの間にか夜遅くなるまで話していて天子が帰る頃には真夜中になっていた。
「すみません、あまりにもためになるお話でしたのでついお喋りをしてしまって……」
門前で頭を下げる聖はとても申し訳なさそうな顔をしていた。話はとてもためになることばかりだったので熱心に聞き入ってしまって、聖の方も語ってしまった。人間と妖怪が共に仲良く共存するためには天子のような優しい方が必要になると感じていたため、天子の話を求めてしまった。結果はご覧の通り引き止めすぎてしまった。
「気にしないでくれ。私も話し込んでしまったんだ。お互い様だ」
「天子さん……あなたは優しすぎますよ」
「そんなことはないさ。あなたには負ける」
「お世辞がうまいですね」
お世辞なんかじゃないんだけどね。本当に聖……マジ
「それじゃ聖、そろそろ帰るとするよ」
「はい、またお待ちしております」
天子は要石に乗って天界へと帰っていった。
「聖殿、天子はどうじゃった?」
命蓮寺の扉に隠れていたマミゾウが姿を現した。聖の横に寄り添うと天子が帰っていった空を聖と共に見上げる。
「とても素晴らしい方でした。天子さんのような方ばかりなら世の中平和なのにと思いました。ですが、世の中はそう簡単なものではありません。理不尽な理由で人生を狂わせられ、野望に燃えた一人の聖人を私は知ってしまったのですから……」
「豊聡耳神子のことじゃな?」
「天子さんから事の詳細を聞きました。とても悲しい話でした……神子さんも心優しい方なのです。でも、彼女はその理不尽に巻き込まれてしまった。それ故に歪んでしまったのだと……」
聖の表情は辛そうだった。神子は暴走して幻想郷を滅茶苦茶にしてしまうところだった。聖も下手をすれば神子と同じようになっていたんじゃないかと思ってしまった。
「じゃが、豊聡耳神子はそうはならなかった。あの者に救われたからのぅ」
「ええ、神子さんはとてもいい方に巡り合えたと私は思っています……」
「(天子さんという素晴らしいお方に……)」
「お帰りなさい天子様。遅かったですね?もう少し遅ければお説教でしたのに」
「ただいま衣玖。それは危なかったな。すまない、つい話し込んでいて……」
危なかった……もう少し遅ければお説教だったのね。衣玖のお説教は心に釘を打たれる感じだからね……
「いいんですよ。ちゃんと帰って来てくれましたし、お風呂の準備はできていますよ」
「ああ、ありがとう衣玖」
衣玖に感謝します。今日は中々ためになる話だったし、今日も昨日も満喫した日々だったな♪気分が楽な日もたまにはいいね。
天子は脱衣所で服を脱ぎ、温かい風呂に浸かる。
「ふぅ~!生き返るなぁ♪」
湯船につかり満足するため息を吐く。天子は休息を満喫し、身も心も安らいでいた。
しかしそれはまるでこれから起こる事件のために
「……はぁ……はぁ……はぁ……!」
誰かが森の中を走っている。いや、何かから逃げていると言った方が正解だ。
真夜中の真っ暗な森を灯も照らさずに走っていた。違う……照らせなかった。照らせばあの者に見つかってしまうから……
「……はぁ……はぁ……げほぉ!げほぉ!」
その誰かは咳をして膝をついてしまった。それでも逃げようと必死になって立ち上がろうとした。誰でもいいから誰かに出会うよう願いながら……
「げほぉ!……まだ……ここで捕まってしまえば……みんなを……助けることが……できなくなってしまう……」
立ち止まるわけにはいかなかった。その誰かは助けを求めて一人、真っ暗な森の中をひたすら走っていたのだ。
「……ミツケタ……」
闇夜から聞こえてきた声……その声を聞くと背筋が寒くなり血の気が引いた。ゆっくりと後ろを振り返るとそこには見知った顔があった。
「咲夜!?」
咲夜と呼ばれた娘は一点だけ見つめてこう言った。
「パチュリー……ノーレッジ……オジョウサマノ……ゴメイレイ……ソノタメ……」
「……シンデクダサイ……」
冷たく感情も存在しない瞳はただ一点……パチュリーを見つめているだけだった。
天界で朝を迎える一人の天人がいた。
「おはよう衣玖」
「天子様おはようございます」
清々しい朝を迎えて気分快適な私は比那名居天子です。異変を解決して神子が笑顔を取り戻すまで心配事がいっぱいだったからこうやって朝起きれるのはいいことだ。それに衣玖が笑顔で迎えてくれることは何よりの楽しみだ。毎日の日常な行為だが、これがいいのだ。だから私は今日も頑張れるのよ。
「衣玖、今日も散歩するのだが付いてくるか?」
「当然です。いつもの日課なんですから私も共にお供します」
争いごともない、何も変わらない天界を散歩するのが私の日常だ。重症だった時は他の天人達に傷のことを隠して振舞っていた。もし知れたら天人達が豹変して地上を焼け野原にしてしまうんじゃないかとびくびくしていた。そんなこともあって、怪我をしている間だけ朝の日課の散歩は取り止めになった。仕方ないことだったけど、天人達に不審がられないか気が気ではなかったけれどね。何事もなく傷は回復して日常に戻ることが出来ました!
「食べ終わったら行こうか」
「はい♪」
とても楽しそうな衣玖を連れて散歩に出た。娯楽施設は天人達の遊び場になっており、今度は温泉施設を作ろうかと思っているところだ。地底にも温泉はあるけど、天界にはないからね。地底の温泉に行ってみたいな……良ければ地霊殿メンバーと顔合わせしたいけど、地上の妖怪が地底に行くことは許可されていない。これは地上と地底の取り決めがあるからだ。私は天人だから問題ないけど、衣玖や萃香に妖夢達も一緒に……萃香は密かに霧になって行ってそう……温泉なら皆で行きたいし、私一人で行っても寂しいからね……
いろいろと想像していると地上が見えるところまでやってきた二人。
「地上も平和ですね」
「そうだな。今日はのんびり暮らせそうだ」
「……とか言いつつ仕事するつもりじゃないですか?」
「ああ、そのつもりだが?何日も開けていたんだし、久しぶりに溜まっているものを片づけないといけないからね。衣玖ばかりに迷惑かけていられないからな」
天人は基本のんびりに生きている。仕事も自分のペースでやり、それを咎めることはしない。それが天人であり、天界というところだ。天子はそれでも衣玖ばかり仕事をさせられないと思っていた。自分も最近は地上に関わりっぱなしだったために仕事をしていない。このままでは衣玖が過労で倒れてしまうんじゃないかとも心配していた。
「天子様……天子様の優しさは伝わっています。その優しさがあれば衣玖は更に頑張れます♪」
頑張ってくれるのはいいんだけど……働き過ぎは体に毒だよ?私が重症だった時は全部衣玖が仕事やっていてくれていた。とても申し訳ない気持ちでいっぱいだったわよ……だから今日は地上に下りる予定はないから衣玖を手伝おうと思ったんだけどなぁ……
そう思っていた時に衣玖が何かに気づく。
「!?天子様、あれを見てください!」
「ん?どうした衣玖……!?」
衣玖が指さしたのは地上だった。太陽に照らされている大地が段々と
「こ、これは……!?」
これって……まさか……そんな!?どうして今頃になって……!!?
天子は驚いていた。それもそのはずである。天子の目の前で見ている
……紅い……霧……!?
既に解決されている異変が再び始まろうとしていた。