友達は大切にしよう!
そう言うわけでして……
本編どうぞ!
「どちらか選べと言っている!謝ったら楽に地獄に送ってやる」
天子の怒りの発言にスカーレット卿は青筋を立てていた。
「私を地獄に送るだと……ククク……地獄に行くのは貴様の方だ!やれフラン!!」
先ほどまで人形のように固まって動かなかったフランが命令によって天子に狙いを定めて襲い掛かる……
「はっ!」
ガキンッ!
レーヴァテインを受け止めたのはお祓い棒……霊夢が天子を守るように立っていた。霊夢はすかさずフランの腹を蹴り、飛ばされたフランはバランスを立て直して着地する。
「霊夢、すまない」
「いいのよ、でもこれで貸し一つよ」
「ああ、借りができてしまったようだな。この借りは必ず返すよ」
「それは楽しみにしておくわ。それと、フランの相手は私がするわ。天子はあのイカレ吸血鬼をどうにかするんでしょ?」
「ああ……どうにかしてみせる。それに今回は私はとても腹が立っている」
「そう……奇遇ね。私もよ」
霊夢には珍しく声色に重みを感じた。彼女を窺うと視線の先には魔理沙の姿があった。
「(……友達を傷つけられたら怒るよね。霊夢は博麗の巫女だけど、やっぱり一人の人間ってことよね)」
博麗の巫女は代々妖怪退治を専門にしている。まだ霊夢はそれほど歳をとっていない若い娘だ。まだ友達と遊んで青春の真っただ中にいるはずなのに、そんな彼女がここで天子に背中を預けている。妖怪を退治するだけの力を持っているが霊夢も人間……友達を傷つけられて黙っているほどの冷たい子ではないのだ。
「フランを頼むよ。でも、傷つけないでくれ。彼女も操られているだけだから」
「無理なこと言わないでよ。あれの相手は弾幕勝負でもきついんだから」
確かにフランは強い……一度戦ったことのある霊夢にはそれが良く分かっていた。しかし、それも一人ならの話だ。
「霊夢!あたいも戦う!」
「チルノ?あんたも戦う気?」
「当然!フランとは友達だもん!友達が困っていたら助けてあげるのが友達なんだよ!」
「あやや、頼もしい味方が現れたものですね」
「文、あんたもこちら側を手伝う気なの?」
「はい、なんせ先ほどまでフランさんと戦っていたのは私ですから。それに天子さんの方は……」
そう文が言おうとした時にフランが襲い掛かる。
「危ないわね!人が話している時に攻撃してくるなんて礼儀も忘れたのかしら?」
「霊夢!フランは操られているからフランは悪くないよ!」
「そんなことわかっているわよ。もう!ここじゃ、天子の戦いの邪魔になるわ。フランついてきなさい!チルノ、文もよ!」
霊夢はフランを誘導し、ステンドグラスを突き破って外に出た。フランもそれにつられて外に出る。チルノと文も慌てて後を追う。
「チッ!出来損ないめ!博麗の巫女なぞに構いよって!私の命令もろくに聞けないクズが……!」
「スカーレット卿!!」
天子がスカーレット卿を睨んでいる。その鋭い眼光にスカーレット卿は微かだが体が反応してしまった。そのことに苛立ちを覚える。
「貴様……どこまで私の邪魔になる存在になるつもりだ!」
「さぁ……だが、これだけは言える」
天子はスカーレット卿を指さして言った。
「貴様のような心を持たぬ者が幻想郷を……ましてや、レミリアとフランの心まで支配できると思うな!!」
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なんだろう……私は今とても機嫌が悪い。目の前の存在が憎たらしい……この感情は人に対して向けるべきものではないと頭ではわかっている。しかし、どうしても治まらない……自分自身でもわかっている。私は今……とても怒っているのだと!
「天子様、私も協力します!」
「私も衣玖殿と同意見だ。天子殿、手伝わせてくれないか?あの者の欲を聞いているだけで吐き気が覚えてね……お仕置きしてあげないといけないみたいだ」
「衣玖、神子……今回はダメだ。二人は動けない咲夜と魔理沙を守ってくれ」
「しかし……」
衣玖もこいつをぶん殴りたい気持ちはわかる。けれど、こいつは卑怯者だ。何をしてくるかわからない。フランの相手は霊夢達がしてくれる。今のフランは弾幕ごっこが通用する状態ではないから、確実に抑え込めるように文にはフランを足止めしてもらうように先ほど密かに頼んでいた。チルノは友達を助けたいと思っているならフランのことを任せよう。咲夜と魔理沙は動けない状態だ。そんな状態の二人を守ってもらうには衣玖と神子に頼むしかない。それに、こいつだけは許しておけない!同じ女として、心から愛してくれた人を騙して、女にとってお腹を痛めて生んだ子供は宝物以上の存在なんだ。きっと幸せだと感じていたと思う。それを利用される……こんな腹立たしいことなんて感じたことがない!それに体が男であるが故なのか、男としての本能なのかわからないが私に訴えかけてくる。こんなゲス野郎を霊夢達の手にかけさせるなんてことさせたくない。汚れ役は私がやるべきだ……私の闘争本能がこいつをぶちのめしたくて仕方がないと言っている!レミリアとフラン、そして二人の母親を弄んだ罪は重いぞ!
「お願いだ。わがままを聞いてくれ……あいつにはきっちりと罪を償わせてやるから」
「威勢がいいじゃないか天人。よかろう……私自ら相手をしてやる。しかし、いいのかな?レミリアの体に傷がつくぞ?」
それが問題だ。中身はスカーレット卿、外見はレミリアの肉体……ダメージを与えるにはレミリアの肉体に攻撃を加えなくてはいけない。何とかしてレミリアの肉体からスカーレット卿を引きずり出せれば……!
「天子殿、私の仙術ならばレミリア殿の体から引き離すことが可能ですよ!」
「なに!?本当か!?」
神子は仙人だったね!神子が居てくれて本当によかった!私ってラッキーね!レミリアの体からスカーレット卿が離れれば後はなんとでもなる。
だが、そんなことを
「そんなことさせるかー!!!」
スカーレット卿は当然邪魔しにやってくる。天子は要石を出現させてスカーレット卿の行く手を遮る。
「なんだこれは!?石のはずだが、動きが生き物のようじゃないか!?」
スカーレット卿はこれを見て驚いた様子だった。天子が操る要石は長年磨きに磨き上げた腕前でまるで生き物が動き回っているかのように複雑な動きで動き回ることができた。これには流石のスカーレット卿ですら警戒する。
「天子殿、私が術式を組むまで持ちこたえてください!」
神子の周りから気質の変化を感じる。薄っすらと漢字(?)が周りに浮かび上がり、仙人の術を組んでいることがわかる。その間、私はスカーレット卿を神子達に近づかせないことが今回の必須条件のようだ。それまで何としても持ちこたえないといけないわね……結構苦しい戦いになりそう……
術式を練り始めたことを知ると警戒していた要石のことなど無視して神子に走り出した。危機感を覚えたわけではない。例え攻撃されようとも体はレミリアの肉体であり、魂の存在であるスカーレット卿にとっては痛くもかゆくもない。人質をとっていることを計算に入れての特攻だ。天子はどうしても躊躇してしまう。レミリアを傷つけたくないという思いが仇となっている。仕方ないので要石で壁を作り、行く手を遮ろうとするが同じ手段が通じる程馬鹿ではない。吸血鬼の素早さを活かして要石の間をすり抜ける。
「死ね仙人!」
鋭い爪が神子を襲うかに見えた。だが、神子にはその攻撃は届かなかった。天子が駆け寄り羽を掴んで放り投げる。間一髪のところで難を逃れることができた。
「天子殿助かります!」
「チッ!貴様はどこまで私の邪魔をすれば気が済むのだ!!」
スカーレット卿はまず邪魔な天子から始末することにした。
どこまで?ずっと邪魔してやる。それだけでは私の気が済むわけがない……父親を信じ、家族だと思って幸せな日々を送っていたのに、それの全て偽りで挙句の果てに愛してくれた女性を殺し、レミリアとフランを道具のように扱った。吸血鬼だから、欲望があったから、生き物には必ずしも欲がある。欲があるから過ちを犯すし、間違ったりしたりする……神子がそう言っていた。神子だってやり方はあれだったけど人々を救うために行動していた。しかし、私の目の前にいる男はそれに当てはまらなかった。自分以外の何もない、心などどこにもない、温かみも何も存在しないただのバケモノだ。レミリア達が受けた苦しみをこいつは喜んでいた……絶対に私は許さない!
「邪魔しに参った。貴様の野望もここで
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「フラン!目を覚ませー!!」
チルノは必死に呼びかける。しかし声は届かない……フランは声を届かせようとするチルノに向かってレーヴァテインを振り上げる。
「ッ!」
チルノは目を
「文!?」
「あやや、チルノさん無理はしてはいけませんよ」
文……ありがとう。でも、あたい……無理をしてもフランを助けないといけないんだ。あたいはフランを守れなかった……でも、救い出すことができる。咲夜も元に戻ったんだ。フランだって元に戻ってくれる。今もきっとフランは苦しんでいると思う……フランだってこんなことしたくないはずだもん!最強のあたいが助けてやるんだー!!!
「ありがとう文、でもあたい無理しないとフランを助けられないんだ。無理をしてもフランを救い出す……それが友達って奴なんだよ」
「チルノさん……」
チルノの瞳は本気だった。その瞳から伝わる強い意志を文は受け止めることにした。
「わかりました。フランさんを救い出しましょう」
文……よ~し!絶対にあたいがフランを助けてやるぞ!!
「ちょっとあんた達!そんなところでおしゃべりしてないで手伝いなさいよ!」
フランが次に狙いを定めたのは霊夢だった。レーヴァテインの攻撃をギリギリでグレイズする。しかしフランの戦闘能力はとても高い故に霊夢でも苦戦を強いられていた。もしフランの【ありとあらゆるものを破壊する程度の能力】を発動されればひとたまりもない。注意しながら戦っているので、霊夢の集中力にも体力を使うので厳しい状況だった。
「霊夢さん今行きますよ!チルノさん、私はフランさんを翻弄するので霊夢さんと協力して彼女を無力化してくださいね」
「うん、わかった」
フラン……待ってて!あたいが今行くよ!
紅い霧に包まれた空では激戦が繰り広げられていた。無数の弾幕の数々が四方八方に繰り出される。ごっこ遊びではない美しさを備えていない殺傷力を秘めた弾幕が霊夢達の命を狩り取らんと飛び交う。上空には4つの影が飛び回り衝突していた。
「こっちですよフランさん!」
「コワス……オネエサマ……オネエサマノタメニ……」
文は天狗としてのスピードを活かしてフランを翻弄するつもりだった。しかし、フランはそれに追いついてきた。だが、経験では文が勝っている。急に方向転換することでフランを翻弄する。操られていることで本来の力を出せずにいるフラン、戦闘経験が豊富な文にとっては追い付かれるぐらいでは焦ることなどない。
「(フランさんを傷つけたくないんですが……もしもの時は覚悟を決めるしかないですね。それにしても流石はレミリアさんの妹です。私のスピードに追い付いてくるとは……パワーでは向こうに分がある。スピードまで取られてしまったら私の立場がありませんからね)」
文は急に方向転換し、向かってくるフラン目掛けて葉団扇を振るう。強烈な風が生まれフランを吹き飛ばした。
「コワサナイト……コワサナイト……オコラレル……」
フランは耐えた。吹き飛ばされて文との距離が開いたが、再び文を壊そうと羽を広げるがすぐさま何者かの結界によってフランは結界内に閉じ込められた。
「霊夢さんお見事です」
「世事はいいわよ。捕まえたわよフラン」
霊夢が得意の結界によってフランを封じ込める。しかし、フランの力を侮ってはいけない。結界に封じ込められながらも能力を発動しようと手を前にかざす。その行動を見た霊夢と文は即座にこの場を離れる。
フランの能力は原理的には『全ての物には「目」という最も緊張している部分があり、そこに力を加えるとあっけなく破壊することができる』というものである。フランはその「目」を自分の手の中に移動させることができ、彼女が拳を握りしめることで「目」を通して対象を破壊することができる。
瞬時にフランの能力から逃れる行動を取った二人は「目」を移動させられることはなかったが、代わりに結界の「目」を手の中に移動させ握りしめた。あっけなく霊夢が張った結界を破られフランは霊夢達に再び牙を向く。
「フラーン!!」
チルノは氷を操り身の丈よりも大きい剣を作り出した。フランがレーヴァテインを振るうと同時に氷の大剣とぶつかり合う。
「フラン!あたいが来たぞ!大ちゃんも心配しているから元に戻ろう!」
チルノは必死に呼びかける。咲夜の時と同じように戻ってくれると信じて……
「オマエモ……コワス……」
「チルノさん!」
「あの馬鹿……!」
フランは片手でチルノに向かって手をかざす。チルノの「目」を握りつぶさんと「目」を引き寄せるために出した。例え妖精であって死んでも蘇るにしても目の前で命を散らされることに不快感を抱かずにはいられない。文と霊夢はチルノに駆け寄ろうとするが、フランの手をチルノが優しく掴む。
「あたい平気だよ。フランは本当はそんなことしないってわかっているもん。今のフランは悪い奴に操られているだけなんだから、フランは悪くないよ。あたい妖精だから一回休みになっても何度でもフランの元に戻って来るよ。一緒に遊んでいっぱいおしゃべりしていた笑顔のフランに戻るまでは何度だって挑んでやるんだから……!」
「――!?」
フランの瞳に一瞬動揺が走った。チルノに握っている手は冷たいどころかどこか温かみを感じる程であった。そして、この温もりはどこかで感じたことがあった。
「……チ……ル……ノ……」
「フラン!」
咲夜の時と同じだ!あともうちょっとのはずだ!頑張れフラン!あたいはフランが強いってこと知っているんだぞ。最強のあたいと肩を並べられるフランならあんな悪い奴の支配なんて逃れられるに決まっている!頑張れ!最強のあたいがついているんだ!
「フラン!負けるな!大ちゃんも待っているんだ。元に戻ってみんなで遊ぼう。そうだ!レミリアや咲夜、美鈴にパチュリーに小悪魔、妖精メイド達も一緒に誘ってピクニックに行こうよ!絶対に楽しいよ。だからこんなこともうやめよう……フランなら大丈夫だと信じているよ。だって、あたい達の
「……タイセツナ……トモダチ……!?」
フランの瞳に何かが映った……
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「やい!お前誰だ?名を名乗れー!」
あなたは誰……?私は何をしているの……?
「大ちゃんをいじめようとする奴め!最強のあたいが成敗してくれる!」
どこかで会ったことあるような……誰だっけ……?
「フラン……霧の湖に言って来たのね。どうだった?」
お姉さま……それに咲夜も……美鈴にパチュリーと小悪魔まで……そうだ。これは私が初めて友達が欲しいって言ってみんなが応援してくれていた。でも、初めは上手いこと行かずに落ち込んで帰って来たっけ……
「その様子じゃ失敗だったようね……でも、諦めちゃダメよフラン。失敗は誰にでもあるんだから、その失敗を次の成功のための教訓にするのよ」
「その通りでございます。妹様、咲夜はいつも応援しています」
「頑張ってくださいよフラン様!」
「まぁ、私だって毎日読書ばかりじゃ気も滅入るから……助言ぐらいなら手伝ってあげてもいいわよ」
「ぷぷ♪ツンデレ乙ですよ♪」
「小悪魔あんたねぇ……!」
お姉様……みんな……!あの時は嬉しかったなぁ……あの後、パチュリーと小悪魔の喧嘩を見て驚いちゃったけど、みんなから勇気をもらったんだっけ……
「やい!また来たのか!今度も大ちゃんをいじめに来たのか!?」
またこの子だ。そして、隣にいる子は……名前は……
『あたい達の
フランの頭の中に響いた言葉……目の前にいる妖精の声で伝わってくる。温かい優しい言葉……フランの心が軽くなっていく。
「ダメだよチルノちゃん!私を守ってくれるのは嬉しいけど困らせたらダメだよ!この子困っているじゃない」
そうだチルノだ!それに大ちゃん!忘れていた……私の初めての友達……!
私は異変後、外に興味を持った。苦手な太陽に照らされている大地がとても綺麗だった。なんだか初めて見た気がしない……昔もこんな光景を見ていた気がするけど思い出せない。私は何で地下に居たんだっけ?それすら憶えていなかった……そのことも別に気にならなかった。だって、新しいものに興味を持ったから。それに、異変解決しに来たあの二人のように仲がいい友達が欲しかった。お姉さま達がいたけど、それとは違う友達に憧れた。
私は能力を上手く使えなかった。そのせいできっとお姉様に迷惑かけたと思う……だから私は地下に居たんだと思う。それでも私は羨ましかった。霊夢と魔理沙が仲良くいる姿に……こんな私に友達なんてできるのか?そう思うことが多かった。もしかしたら壊してしまうんじゃないかとも不安だった。でも、お姉さまも咲夜達も全力で応援してくれていた。だから私は頑張れた。諦めなかった……お姉様達の期待を裏切りたくなかったから!
フランの頭の中に今までの記憶が蘇る。
チルノと大妖精と初めて会った時は警戒されて友達になれずに落ち込んで帰った記憶
今度はパンの作り方を咲夜から教えてもらい、頑張ってようやく作ったパンをバスケットに入れ、再び二人に会いに行った記憶
パンのおかげで仲良くなることができ、チルノと大妖精と友達になって嬉しくて泣いた記憶
報告するとレミリア達も喜んでお祝いしてくれた記憶
様々な記憶が蘇ってくる。チルノ達を紅魔館に招待した記憶や宴会に初めて参加した時の記憶などの楽しかった記憶がフランを温かく包み込む。
楽しいなぁ……でも、私は何でこんな記憶を見ているのだろう?
フランは何故自分がこのような記憶を思い出しているのかわからなかった。そして気がついた……自分は今まで何をしていたのかを……
そうだ!確かお姉様がおかしくなって……魔理沙がいたような……あっ!
フランの思い出の記憶は遂に忘れ去ってしまっていた
変わり果てた母
母を殺した父の姿
真実を知ってしまった姉の絶望した表情
自分が父を殺してしまったこと
全部思い出した。あの思い出したくもない苦しい記憶までも……
――嫌!嫌嫌嫌嫌嫌!!思い出させないで!!あんなの見たくないよ!!思い出したくないよ!!!
フランは目と耳を塞ぐが意味などない。自分が目を逸らしていた現実をまだ受け入れられないでいる。彼女の心がまた壊れてしまう……
『フラン負けるな!あたいがついている!』
チルノの声が聞こえてきた。フランを励ますかのようにフランの脳に直接響いてくるようだった。
『大ちゃんも待っているんだ。フランは負けたりしない!』
『フランは最強のあたいと肩を並べられるんだぞ!だから支配なんかに負けたりしないのだ!』
『フランは一人じゃない。あたいも大ちゃんもレミリアも咲夜も美鈴もパチュリーも小悪魔も……ええっとそれから……とにかくいっぱいフランには味方がついているんだ!だから一人なんかじゃない!困ったことがあればあたい達が力を貸してあげる!あたいと大ちゃんは特にだ!』
何度も聞こえてくる声に勇気が湧いてくる。この残酷な現実を受け止める勇気が自然とフランの心から湧き上がってくる気がした。
『あたい達の……大切な友達を舐めるなよ!』
友達……一瞬でもチルノと大妖精のことを忘れてしまっていたことにフランは申し訳ないという気持ちが溢れた。でも、同時に嬉しかった。ここまで思われているなんて思っていなかったから……フランの心は温かった。父親に裏切られて絶望した。悲しかった……記憶を消してまで忘れていたかった。でも、思い出してまた絶望するかと思ったがそうはならなかった。今度は支えてくれる者がこんなにいたから……フランは成長していた。身も心も……決して出来損ないではない立派な一人の吸血鬼として育っていた。もうフランは絶望などに負けたりしない!
ありがとう……みんな!
「……チルノ……?」
「フラン!大丈夫か!?」
フランの目に飛び込んできたのは心配そうに見つめるチルノの姿だった。フランの動きが止まってしまい、何度も呼びかけていた。そして、フランが目を覚ましたのだ。チルノの傍には霊夢と文の姿もあった。
「霊夢……それに文も……」
「元に戻ったみたいですねフランさん」
「全く、手間かけさせるんじゃないわよ」
「……ごめんなさい……」
申し訳ない気持ちでいっぱいだった。咲夜と同じように操られていた時の記憶も憶えていた。霊夢と文と戦っていて何度傷をつけそうになったか……
「フランはやりたくてやったんじゃないぞ!」
チルノがフランは悪くないと庇う。霊夢もそんなことわかっているが、霊夢の性格上ああ言った言い方になってしまいチルノを刺激してしまうことになった。頭をかきながらめんどくさそうに霊夢はフランに謝った。
「言い方が悪かったわ。別にフランを責めてるわけじゃないから」
「そうですよチルノさん。悪いのはフランさんではありません。悪いのは……」
紅魔館を見つめる。文と霊夢はあそこで戦っている吸血鬼を……今回の異変の黒幕を睨んでいた。
「そうだ!お姉様の元へ行かないと!」
「フラン……父ちゃんに会いに行くのか?」
チルノ……心配してくれるの?ありがとう……でも、私は行かないといけないの。きっとお姉様は一人で抱え込んでいたと思う。そして、お姉さまは今も心の中で戦っている……それにこれは家族の問題でもあるから……例え裏切られてもお父様だったんだから……
フランは悲しい顔を隠した。チルノにこれ以上心配させたくなかったから……
「うん、お姉様も戦っているんだし……最後まで見届けないといけない。それがスカーレット家に生まれた私の
霊夢達は背中を向けて紅魔館を見つめるフランの姿が大きく見えた。彼女が一歩成長したことを物語っているようだった。
「そうね。あの黒幕を倒せばこの異変は終わりよ。さっさと帰って一服したからさっさと行くわよ」
「あっ!待ってください霊夢さん!」
「フラン、行こ」
「……うん!」
チルノの手を握り、事の結末を見届けるため飛び立った。