比那名居天子(♂)の幻想郷生活   作:てへぺろん

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急ピッチで書いたので荒いかもしれない……


それでも見たい方は……


本編どうぞ!




2話 地上組と天人様

 人里より離れた人気もない場所に彼女らは居た。

 

 

 「お~い!もっと注げよ天狗~!河童もどんどん飲めよ~♪」

 

 「い、伊吹様今は異変解決の途中でして……」

 

 「あ~ん?天狗お前……私に逆らうのか?」

 

 「いえいえいえいえいえい!決して!けっっっっしてそのようなことは!!?」

 

 「た、たすけて……」

 

 

 片手に瓢箪(ひょうたん)を持った酔っ払いが羽の生えた娘と緑の帽子を被った娘が絡まれている。周りの娘達もやれやれと言った表情である。

 

 

 【伊吹萃香

 伊吹瓢と呼ばれる瓢箪(ひょうたん)を持ったのんべぇで、茶色のロングヘアーを先っぽのほうで一つにまとめている。真紅の瞳を持ち、頭の左右から長くねじれた角が二本生えている。服装は白のノースリーブに紫のロングスカートで、頭に赤の大きなリボンをつけ、左の角にも青のリボンを巻いている。

 

 

 【河城にとり

 ウェーブのかかった外ハネが特徴的な青髪を、赤い珠が付いたアクセサリーでツーサイドアップにして、緑の帽子を被っている。白いブラウスに、肩の部分にポケットが付いている水色の上着、大量のポケットが付いた青色のスカートを着用している。彼女は河童であるためきゅうりが大好物。人間のことを好んでおり、様々な機械を作るエンジニアである。

 

 

 羽が生えた娘は文であり、緑の帽子の娘がにとりである。それに絡む酔っ払いが萃香である。妖怪の山の支配者であった鬼の一人であり、鬼の中でもトップの【山の四天王】の一人だった。

 幻想郷の地に住んでいた頃は、鬼は妖怪の山に住み、天狗や河童を使役していた。そのため射命丸文や河城にとりを始めとした妖怪は元上司である萃香に対して頭が上がらない。そのために、萃香が二人にアルハラを働いても逆らえないのである。

 

 

 「文、にとり……骨は拾ってあげるわ」

 

 「アリスさんひどくないですか!?私達まだ死にませんよ!?」

 

 「その内死ぬでしょ?胃腸炎とか起こして……」

 

 「それならそこの鬼の方がなりそうじゃない?」

 

 「わたしならぁ大丈夫だ!鬼は酒に強いからな!」

 

 

 魔法使いの二人が酒臭い三人から離れてティータイム中である。

 

 

 【アリス・マーガトロイド

 金髪で、青のワンピースのようなノースリーブに、ロングスカートを着用。肩にはケープのようなものを羽織っており、ヘアバンドのように赤いリボンが巻かれている。魔法の森に住む魔法使いで、魔法使いにして人形師である。

 

 【パチュリー・ノーレッジ

 長い紫髪の先をリボンでまとめ、ゆったりとした服を着用。さらにその上から薄紫の服を着ており、帽子を被っている。服の各所に青と赤と黄のリボンがあり、帽子には三日月の飾りが付いている。彼女も魔法使いで、体が病弱で持病の喘息を持っており、身体能力は高くはない。

 

 

 そんなアリスとパチュリーは本を読みながら地底からの連絡を待っていた。

 

 

 「遅いわね、魔理沙ったら……いつまでかかっているのかしら?」

 

 「このままだと私達、あそこにいる酔っ払いに絡まれてしまうかもしれないわね」

 

 

 パチュリーは水晶玉を覗き込んでいた。異変解決のために地底に送り出した魔理沙と呼ばれた者からの連絡を待っていたが一向に返って来る様子はない。アリスはアリスで、酒に酔いしれる鬼に絡まれないか気が気ではなかった。

 

 

 「ね、ねぇ、こっちから連絡したの……?」

 

 

 にとりが地面に倒れながら聞いた。鬼である萃香に無理やり酒を飲まされて気分が悪いようだった……

 

 

 「連絡しても『気が散るから後にしてくれ!』だってさ。手ごわいようね」

 

 

 パチュリーはヤレヤレと言った感じで口にお茶を運ぶ。鬼である萃香は上機嫌に語る。

 

 

 「そりゃそうだよ!地底にはなんたって勇儀の奴がいるからな。遊びの弾幕でも勝負は勝負だから張り切っていると思うよ」

 

 「あやや!?星熊様もいらっしゃるのですか!?」

 

 

 文は震える。地底には自分の上司である鬼がもう一人いることを知ってしまったのだから……

 

 

 そんなこんな騒ぎが起こる中、突如として空間が割れた。言葉通りに空間がパックリと割れた切れ目の両端はリボンで縛られていて、中は一種の亜空間のようになっており、多数の目が覗いている。そのスキマの中から一人の女性が現れた。幻想郷の賢者と呼ばれる者……

 

 

 【八雲紫

 髪は金髪ロングで、毛先をいくつか束にしてリボンで結んでいる。幻想郷を創った賢者の一人で、幻想郷で古参の妖怪である。幻想郷は幻と実体の境界、博麗大結界の二つの結界により外の世界と遮断されている。どちらも境界の妖怪である紫の提案により行われたことで、幻想郷の成り立ちと関わりがある。彼女は幻想郷を限りなく深く愛している。

 

 

 紫はゆっくりと萃香達に歩み寄る。今回の異変で紫を含むこの場に集まった者達は現在、地底で異変解決を行っている人間のサポート役をしている。そんな関係でお互いに交流を深めることにしていたのだが……

 

 

 「萃香、それぐらいにしたらどう?霊夢から連絡あったの?」

 

 「おおー紫!まだまだ足りないよ、全然酔いしれないもん。それと霊夢なら今、勇儀の奴と戦っているよ」

 

 

 そう言いながら伊吹瓢を口に運ぶ。中から酒が流れて萃香の胃に収まっていく。紫も見慣れた光景ながら呆れた様にため息をつく。

 

 

 「(全く、これじゃ小さな宴会じゃない)」

 

 

 異変を解決すると必ずと言っていいほど宴会をする。どんちゃん騒ぎで酒を飲み、食い、踊りだす。異変解決の定番といったところだろう。紫の目の前ではそんなときの光景に似ていた。萃香だけだったが……

 

 

 「萃香、いい加減にして。ちゃんと霊夢のサポートしてくれないと異変が長続きしてしまうかもしれないんだからね」

 

 「わかってるわかってるよ。あーあ、それにしても待っているのって暇だよ紫~!一発芸でもして」

 

 「嫌よ」

 

 「ケチ!」

 

 「ケチで結構よ」

 

 

 紫と萃香は古い友人同士で、長い付き合いなので天狗や河童のようにへこへこすることもない。気軽に対等の立場で話ができる相手なのである。

 

 

 萃香は暇で仕方なかった。霊夢と呼ばれた者から懐かしい友の声が聞こえた時は暇ではなかった。しかし、戦いが始まった今、地上でサポートをしているが自分自身は何もしない。霊夢に力を貸してやっただけで、こちらが直接操作する必要もない。なのでぶっちゃけ何もしていない。先ほどから酒を飲んでいるだけであって暇で暇で退屈していたのだ。

 

 

 「あーあ……どこか私と対等の奴がいないかなぁ……?」

 

 「伊吹様のような酔っ払いはそういませんと思いますけど……?」

 

 「何か言ったか天狗」

 

 「いえいえいえいえいえいえ!何も言っておりません!!」

 

 

 萃香に睨まれ手をぶんぶん振る文。天狗は鬼に頭が上がらない……はっきりわかんだね。

 

 

 「私が言ったのは飲み比べじゃないよ。お遊びじゃない本気のバトルで戦ってくれる奴がいないかなぁって言ったんだ」

 

 「え”!?それの方がもっと無理じゃね……?」

 

 「そうね」

 

 「私も同感だわ」

 

 

 にとりとパチュリーとアリスですら同意する。鬼の中でも頂点に立つ山の四天王の萃香と戦える者は数えるぐらいしかいない。弾幕ごっこなら対等な勝負だ。だが、ガチンコならそうはいかない。妖怪としてのスペックの差がまず大きいし、鬼はその中でも恐ろしい力を持つ。並みの妖怪とも比較にならないほどだ。

 そんな叶わない願い事を口にしつつも暇を持て余していた。

 

 

 「萃香、あなたはそうやっていつもいつも…………!?」

 

 

 紫は萃香に説教しようとしたが、それどころではなくなった。紫は誰かがこちらに向かってきている気配を感じ取った。

 この場所には結界が施していた。少し前に結界を張って来たのだ。誰にも見つからずに他の妖怪が邪魔しに来ないように彼女達をスキマでここに集めたのだ。この場所を知っている者は紫魔法使いのお子ちゃま吸血鬼か妖怪の山の天魔かごく一部である。その内の誰かだと初めは思ったがどうやら違う。感じたことのない気配……知らない人物……向こうは迷わずこちらに向かって来ていた。

 

 

 「(誰!?一体何者なの……!?)」

 

 

 紫はその人物を警戒した。誰かはわからない人物はこちらを目指して近づいていた………

 

 

 ------------------

 

 

 ものすごく微量に残った妖気を感じてその場所を目指していた。なるほど、理解した。私の前に目には見えない結界があった。この結界には誰かいるだろうか?居るなら話だけでも聞いておきたいしね。

 先ほどから出会うのは荒々しい妖怪ばかりだ。結界を張るほどの知性を持っているのだから今度はまともでありますようにと願いながら結界を抜けた。え?結界通り抜けられるのかって?博麗の巫女と戦うことも想定して結界について学んでいたの。天界にも結界に関する本や結界自体もあるからそれらも修行していて本当に助かったと思っている。私だって比那名居天子の名を汚さないためにも強くなろうとしたんだから……

 

 

 結界を上手いこと通り抜けた天子は歩を進める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……初めまして……見知らぬお方……」

 

 

 因縁の相手がそこに居た……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 え”え”え”!!?この結界張ったの紫さんだったの!?びっくりした!いきなり目の前に見たことあるスキマが現れて中からとびっきりの美人が現れたものだから本当にびっくりした。紫さんがここにいるならもしかしたら文もいるのではないか?そうすると必然的に鬼の萃香もいるはず……それにしても、先ほどから心臓の鼓動が高ぶっていらっしゃる。元天子ちゃんが神社ぶっ壊して勝手に神社改造までしてしまったが故に紫さんが普段の口調が消えてしまうほどの怒りをあらわにした。『美しく残酷にこの大地から()ね!』」って言わせたんだから私……おかげで初対面ですけど緊張がやばい……刺激しないようCOOLにいかないと……!

 

 

 「初めましてお嬢さん、私は比那名居天子と申します。天界に住む天人くずれでございます」

 

 「お嬢さんだなんて……変わった天人さんね」

 

 

 初対面の印象はまずまずね。絶世の美男子天子君のイケメンロールで接して紫さんと仲良くなる。仲良くなるので敵対するなど考えるのはやめよう。絶対負ける……修行して強くなったからといってもチートキャラには勝てない。これが現実だ。悲しいな………

 

 

 「私も自己紹介致しますわ。私は八雲紫、幻想郷の賢者……そう言われているわ。それで天子さんに聞きたいことがあるのですけど……」

 

 「天子で構わない。呼び捨てされた方が気が楽だ。それで聞きたいこととは?」

 

 「……ここには結界が張ってあったはずですけど、どうやって入って来たのですか?結界に破られた形跡などありませんし……どうしてかしら?」

 

 

 紫さんからのプレッシャーが凄いな……肉体も精神も鍛えたがやはり幻想郷トップクラスの妖怪は伊達じゃない。私が結界を通り抜けたことで完全に警戒されている……紫さんに敵意がないことを証明しないといけない……私は紫さんと敵対するなんて考えていないよ!ユカリマイフレンド!

 

 

 「私も少々結界のことを勉強しましてね。多少の事ならできるようになりました。それに結界があるのなら中に誰かいるはずですし、この辺りには凶暴な妖怪が多くいるようですし、結界を壊すのは不味いと思い通り抜けることにしました」

 

 「通り抜けるって……結界の中に歩いて入って来たってこと?」

 

 「正確には結界に敵だと認識されないようにしただけです。虫や小動物は結界を通り抜けていましたので、真似ただけですけどね。結界は空気を遮断しないのと一緒の原理ですよ」

 

 「……」

 

 

 今の説明では不味かったかな?だが、私に説明できることなんてこれ以上ない。だって、本当にそうして入ったんだから嘘じゃないし、結界自体高度だったが、複雑な結界ではなかったから容易に入ることができただけだ。紫さんならもっと複雑な結界を作れただろうし、そうなってしまえば私ではどうすることもできなかっただろう。サラッと結界内に入っちゃったのが不味かったのだろうか?紫さんの眉間にシワがよってる……もっと手こずったふりして「紫さんの結界を通り抜けるのには苦労した。流石幻想郷の賢者様だ」とか言ってほしかったのかな?紫さん悩んでますね……

 

 

 紫は目の前にいる天子を観察しながら答えをどう出すか悩んでいると、紫の後ろから友人がフラフラやってきた。

 

 

 「おお?紫がどっか行ったと思ったらこんなところにいたのか……お?誰だお前?」

 

 「……萃香」

 

 

 お?やっぱりここに居た。鬼の萃香、文に支えられているにとり、アリスとパチュリーもいるのか。全員生で見ると美人過ぎない?幻想郷の女子レベル高過ぎじゃない?生前の私がカスに見える……決して私ブサイクじゃありませんでしたよ!本当ですよ!?

 それは今関係ないから置いておくとして……【地霊殿】のサポート組がここに集結していたのか。こうして出会えると思っていなかったから運がいい。目当ての文もいたしね。

 

 

 「どうも皆さん、私は比那名居天子、天人くずれです。今日ここに来たのは射命丸さんに用事があったのです」

 

 「あやや?私にですか?それにどこで私の名を……人里にはあなたはいない気がしましたが……?」

 

 

 天子は事情を説明した。人里での出来事、異変の様子などの情報が欲しいと伝えた。

 

 

 「なるほど……事情はわかりましたわ。安心してください、異変は終息に向かっています。今日中にはかたがつきそうですわ」

 

 「そうですか……」

 

 

 それならばよかった。ゲームのように難易度はルナティックではないのかな?やはりノーマルか?幻想郷に住む人間達にとっては毎日がルナティックの生活だからちょっと気になっただけ。今日中なら何も問題はなさそうだから帰って慧音達に伝えないといけないな。

 

 

 天子は紫達に礼を言い、人里へ向けて足を踏み出そうとした。

 

 

 「ちょっと待ちな天人」

 

 

 天子を呼び止めたのは小柄な鬼、萃香だった。

 

 

 「……何かな?」

 

 

 酔っ払いに絡まれてしまった。かわいい酔っ払いに……でも、目が笑っていない。え?なに?私萃香に嫌なことしたっけ?とりあえず返事してみたけれど……

 

 

 「お前天人なんだろ?私も天人の噂なら少し知っている。昔は冴えない奴らばかりだったけど、お前のような地上の者を見下していない奴は初めて見たよ」

 

 「価値観の違いもあるかもしれないけど、確かにそれはあるよ。けれど、天界は前よりかはマシになったと私は思っているよ」

 

 「へぇ~……なぁ、私と喧嘩しないか!」

 

 

 喧嘩という単語に周りの者達が驚く。

 

 

 喧嘩?萃香は何を言っているんでしょうか?あなたの喧嘩=撲殺じゃないですかねぇ?ああ、鬼は喧嘩好きだから私に挑みたいのか……否、挑んで来いと言っているのか?喧嘩するためにここに来たんじゃないけど……それに私は男、女の子を殴るなんてできない。女同士のキャットファイトでもお断りです。それに、弾幕アクションは格ゲーと同じだからね。当たったら確実に痛いと思うが……ちょっと戦って自分の実力を実戦で味わってみたいと思ってしまっている。元天子ちゃん好戦的だから戦いたいのかも?野菜人みたいだ……

 

 

 「伊吹様!それは不味いですって!」

 

 「そ、そうだよ!天人って言っても伊吹様相手じゃ死んじゃうって!」

 

 

 文とにとりが萃香を止めに入るが萃香は聞く耳を持ちやしない。

 

 

 「うるさいぞお前ら。それにこいつは中々肝が据わっている。紫の威圧に耐えたんだ。少しはできる奴だと思うよ。私は暇で仕方ないんだ。暇つぶし程度に遊べればいいし、対等に戦えるなら望むところだけど……ま、無理だろうけどな!」

 

 

 萃香から喧嘩売ってきて私お前に余裕で勝てますよアピールか……カッチーン!元不良天人の天子である私の闘争心に火をつけたようだ。

 天人は毎日のんびり平和に暮らしているので、元天子ちゃんという好戦的な存在がどれほどイレギュラーだったか実感しました。戦うことを好む天人は元天子ちゃん以外にいないし、萃香は簡単に殺してしまうと思っているのだろう……だが、そんなつもりはない。【緋想天】が実現しなかった分、どこかでどんな強者と戦うかわからないので修行したんだ。死ぬ思いでやったんだから簡単に負けてやるつもりなんて欠片もない。それに、比那名居天子の名をバカにさせないぞ!鬼が何よ!やってやろうじゃないか!

 

 

 この勝負乗った!

 

 

 「ならば、喧嘩しますか?」

 

 「お?乗ってくれるのか?私暇で暇で仕方なかったんだ。暇つぶし程度でいいんだけどやろうよ!」

 

 「ああ、こちらも実戦を経験しておきたかったので丁度いい」

 

 「ん?お前もしかして実戦は初めてか?」

 

 

 首をかしげて萃香が天子に問いかける。

 

 

 「ああ、天界で修行は何回もしたが、それは一人か協力者に弾幕を撃ってもらうかそんな程度だ。一度も実戦はない。ここに来る途中に妖怪を軽くあしらっただけだし実戦ともいえないしな。それでも勝ってみせる!」

 

 

 そう言うと萃香は噴出した。余程面白かったのか腹を抱えて笑い出した。

 

 

 「あはははは!お前面白いこと言うな!私から喧嘩を売っておいてなんだけどごめんよ。確かに嘘ついていないみたいだし、お前の器量は認める。だけど、私は暇つぶし程度って言ったんだ。私に勝てるわけないよ。力も経験も違いすぎる。勝つなんて言わない方がいいよ恥かくから」

 

 

 萃香の方は勝って当然って顔しているな。まぁ、実戦の経験がないのは大きいよね。私も絶対勝てる自信はないが、勝たないと今までやってきた努力が無駄になる。それは嫌だ。それに比那名居天子が弱いなんて思われたくないし、思わせない。それに、男である以上勝ちたい!男には引けないプライドってものがあるからね!中身は女ですけど転生した私は男という獣なんだからね!

 

 

 「いいや、折角の機会なんだ。勝たなくちゃいけない、小鬼さんの萃香に負けるなんて男として情けないからな。私と戦ってほしい!」

 

 

 萃香は驚いた様子だった。他の者達もそうだった。萃香が暇つぶし程度で喧嘩を売ったら頭を下げてまで受けてくれた。萃香の表情に笑みがこぼれる。

 

 

 「~♪いいねぇ!天人の中にもお前みたいな奴がいるなんて……まだまだ世の中捨てたもんじゃないね。よし!とことんやろう喧嘩!ついてきてくれ!」

 

 

 萃香は移動し始めた。その後について行こうとしたらアリスとパチュリーが天子を引き留めた。

 

 

 「あなた本気?鬼と戦うのよ?」

 

 「本気だ。鬼と戦えるなんて滅多にないこと……いい経験になる」

 

 「実戦がこれが初めてなんでしょ?あなた弾幕撃てるの?」

 

 「撃てないわけじゃないが、どちらかというと肉弾戦の方が好みだ」

 

 

 元天子ちゃんは格ゲー出身ですから当然肉弾戦の方がいいに決まっている。この天人の肉体を試す時が来たようだ。

 

 

 「肉弾戦で鬼の伊吹様と戦うなんて自殺行為だよ!」

 

 「いい特ダネだと思いますが、無茶ですよ?伊吹様はああ見えて山の四天王と呼ばれた一人です。ただのそこらの鬼とは違うのですよ」

 

 「知っているさ。心配してくれてありがとう文、にとり。それにアリスとパチュリーも」

 

 

 満面の笑顔でお礼を言う。その美しく凛々しい素顔に4人は密かに鼓動が高鳴るのを感じた。

 

 

 「お~い!早く来いよ!」

 

 「ああ、今行くよ」

 

 

 いざ、決闘へ……

 

 

 ------------------

 

 

 「(しまったわ。少しだけのはずがこんなに時間が経ってしまっていたなんて……すみません天子様、今からそちらに行きますから!)」

 

 

 衣玖はようやく書類等の面倒ごとを片づけて解放されたところだった。天人は基本的にのんびりでゆっくりしているのだが、最近では天子にいいところを見せようとする女性達が多い。衣玖もその中の一人だった。自分はできる女をアピールしている。

 

 

 

 

 

 衣玖はきちんとした女……のように見えるが箱を開けてみると全くもってだらしがない女であった。家に居る時は下着姿のままで、服は脱ぎっぱなし、ゴミ箱はパンパンでそこら中にゴミが散乱し、酒の缶も放りっぱなし、休日は家でゴロゴロしている日々を送っていた。

 そんなある日、天子が衣玖の家に突然やってきた時は衣玖は恥ずかしさのあまりに死のうと決意したほどだった。失望された……そう思ったが、天子は何食わぬ顔で掃除し始めた。「誰にだって欠点の一つや二つあるから気にしないさ」そう天子は言った。衣玖も一緒に片づけして綺麗な部屋になった。また何日かで元通りになるが……

 

 

 衣玖は片づけられないだらしない女はどう思うかと天子に聞いたことがあった。すると天子は「完璧な存在なんて存在しない。私はそう思っている。だから欠点なんてあるのが普通だよ。それに衣玖は衣玖さ」そう言ってくれた。衣玖は素晴らしいお方だと思った。それ故にこのお方の傍にいたい……いいところを見せたい。衣玖はできる女だと知ってほしいために頑張っていたのだ。時間はかかったが、これでようやく天子の元へ行ける……

 

 

 「天子様!お待たせいたしました……あら?」

 

 

 誰もいなかった。衣玖は時間が時間なだけに、ずっとこの場にいるはずもないと考えた。もしかしたら自宅に帰っているかもしれないし、食事をとっているのかもしれない。衣玖は天子を探すことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「(いない!?天子様一体どこに行ったんでしょうか!?)」

 

 

 天界の街中の至る所を探しても天子は見つからなかった。衣玖は天子が居そうなところをくまなく探してもどこにもいなかった。誰も見ていない……衣玖は焦っていた。

 

 

 「(天子様が行きそうな場所は探したし、自宅にも戻られていない……考えるのよ私!天子様ならこういう時どうするか!)」

 

 

 頭をフル回転させて天子の居場所を探す……すると衣玖に電流が流れる。

 

 

 「(もしかしたら……天子様は!)」

 

 

 衣玖は雲の上から地上を見下ろしていた。

 

 

 ------------------

 

 

 天子は萃香に連れられて広場にやってきていた。そこには周りには木々にごつごつした大きい岩ばかりの場所だった。戦うには丁度いい広さで被害になりそうな建物は存在しない。思う存分に喧嘩できる場所だ。

 鬼の萃香と天人の天子がお互いに向かい合い、距離は十分離れている。これから天人と鬼との喧嘩が始まろうとしていたのだ。

 そんな中で紫は品定めしていた。結界を抜けて自分の元までやってきた天人を……

 

 

 「(比那名居天子……侮れない存在ね……)」

 

 

 紫は天人の事は知っていた。天人達の性格は知っていたし、天人が地上をよく思っていないことも承知済みだ。しかし、目の前の天子はこれまでの天人と大きく異なっていた。人里の人間達と協力し、子供を助け、しまいには情報を得るために妖怪が闊歩(かっぽ)する森の奥地までやってきたのだ。変わり者と言えば変わり者だ。そして何より紫は天子に興味を持っていた。

 

 

 「(萃香、悪いけどあなたを利用させてもらうわ。天子の実力を見定めるために……)」

 

 

 紫は手を抜いたわけではなかった。結界は妖怪を退けるためだけの性能しかなかったわけだったが、紫が創った結界を難なく通り抜けた天子の実力が気になっていたのだ。そんな時に萃香の申し出が紫にチャンスを与えた。吉と出た提案を天子も受諾した。友人の萃香を利用する形になるが、鬼である萃香にとっては気にしないことだろう。紫にとっても天子という存在を知る機会をみすみす見逃すわけにはいかなかった。

 

 

 「(見せてもらうわよ……あなたの力を……)」

 

 

 扇で隠した口元がニヤリと笑みを浮かべていた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「よ~し!じゃ、喧嘩しようか!」

 

 「ああ、お願いいたします」

 

 「堅苦しいのは嫌じゃなかったかい?気楽にいこうよ気楽に!」

 

 「そうだな……じゃあ……手加減しないぞ」

 

 

 始まりの合図を待つ……

 

 

 「伊吹様と比那名居天子さんの決闘を始めます」

 

 

 文が手を挙げて始まりの合図を出す。

 

 

 「試合……初め!」

 

 

 文の手が振り下ろされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ぐはぁ!?」

 

 

 萃香の腹に拳がめり込んでいた。

 

 

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