比那名居天子(♂)の幻想郷生活   作:てへぺろん

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連れ去られた天子はある所へやってきていた。一体誰に連れていかれたんでしょうね(棒)


それでは……


本編どうぞ!




32話 地底の天人

 「……ん?もう朝か……」

 

 

 ふわぁ~あ!良く寝た。最近色々なことだらけで疲れていたからね。紅魔館パーティーでは私もテンション上がってしまって、はしゃいじゃったからね。今までため込んでいた仕事の山を終わらせたし気が楽だった。今日はのんびり仕事をしながら体を鍛えるとしますかね。

 

 

 そう思ってベットから起き上がろうとする。

 

 

 ……ん?なんでだろう……起き上がれない。ぐぬぬぬぬぬ!あれ……?どうなってるの?

 

 

 何度体を起こそうとしても起き上がってくれなかった。手も足も何故か動かない……首だけは動くので、天子は不思議に思って体を見て見ると……

 

 

 ……な、なんじゃこりゃぁあああああ!?

 

 

 天子の体がベットに糸のようなものでぐるぐる巻きにされていた。

 

 

 ええ!?なに!?なんで体に……糸か?そんなものが巻き付いているの!?しかも何重にも巻かれている。う、うごけないのはこれのせいか!一体だれが……!?

 

 

 そう思った時に周りの風景が視界に入ってきた。

 

 

 ど、どこ……ここ?私の寝室じゃないんだけれど……和式の建物の内装だということはわかる。けれど本当に私はどこにいるわけなの!?

 

 

 天子には見覚えが全くない所にいた。周りには古風なタンスやちゃぶ台が置いてあった。木製でできた和式の建物の内装にいることはわかるが、自分が何故こんなところにいて、しかも糸でベットにぐるぐる巻きにされている現状が理解できなかった。

 

 

 え?なに?もしかして天界の天人達が反乱でも起こしたの!?私は地上に落とされてどこか知らない妖怪が私を食らうためにここに連れ込んで、逃げないようにベットに括り付けたとか!?それだったらめっちゃ怖いんですけど!!!

 

 

 流石の天子もいきなりすぎて混乱していた。そんな時に奥の襖が開く音が聞こえてきた。恐る恐る襖を開けた人物を確認しようと首をそちらに向けると……

 

 

 「……」

 

 「うわぁ!?」

 

 

 いつの間にか顔の隣にいた桶に入った少女と目が合った。

 

 

 この子は……キスメ!?なんでキスメがここに!!?

 

 

 【キスメ

 桶入った人間のような少女という外見をしている。髪は緑髪のツインテールで、髪留めは水色か白の2個の玉が付いたゴムで止めている。 後、白い着流しを一枚羽織っている。

 種族は釣瓶落とし。狭いところが大好きでいつも桶に入って生活している。

 

 

 キスメがなんてここに……?状況よりも好奇心が勝つってたまにあるけど今まさにそう。キスメの桶の中が気になった。キスメって桶の中どうなっているのかゲームしている時から気になっていたんだよね。キスメの肩から下には見た目に釣り合った細身の体が桶の中にちょこんと入っていると予想する。これでもし下半身が筋肉隆々の体が入っていたら泣く。確かめてみれば早いことだ。ちょっとだけ拝借してみても……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……いいかなぁと思って桶の中を覗こうとしたら滅茶苦茶睨まれた。鬼の形相でこっちを見てくる……滅茶苦茶怖いんですけど!!?キスメってもしかして釣瓶落としじゃなくて鬼だったとか……って私はこんなことしている場合じゃない!キスメがここにいるってことは……まさかここって地底!?なんで天界から地底にいるの!?ちょっとキスメそんなに睨まないで!私が悪かったから!ごめん本当に怖いって!!

 

 

 天子はキスメに睨まれて内心滅茶苦茶ビビっているとそこへ入っているもう一人の人物に気がついた。

 

 

 「おやぁ?目が覚めたんだね。おはようさん」

 

 「……ヤマメ……か?」

 

 「うちのこと知っているの?うちって天界でも有名人なんかいな!これは困ったわぁ……サインとかください言われたらどないしよ」

 

 

 何やら独り言をぶつぶつ言っている……ヤマメがいるならばもう確定じゃない。私はいつの間にか地底にいる。しかもベットに括り付けられて……何なん?この状況……?全く訳がわからないよ?

 

 

 「あっ!ごめんな。危害加えるつもりはないから安心してな」

 

 「そ、そうか……一応名乗っておこう。私は比那名居天子、天界に住む天人くずれだ」

 

 「うちは黒谷ヤマメ、こっちのちっこい子がキスメ」

 

 「……ドモ

 

 

 キスメは小さく首を縦に振ると、ヤマメの後ろに隠れてしまった。相当人見知りのようだが、天子がキスメの桶の中を覗こうとした時とは大違いだった。彼女のプライベートには触れない方がいいということなのだろう。

 天子は先ほどから気になっていたことをヤマメに聞く。

 

 

 「すまないヤマメ、私は天界に居たはずなんだが、朝起きたら何故かここにいた。しかも体はベットに括り付けられている。どうしてこうなったか知らないか?」

 

 「ああ、それ?知ってる。だって天子をベットに括り付けたのうちやもん」

 

 「……はっ?」

 

 

 え?ヤマメがやったの?確かに蜘蛛が出す糸みたいな綺麗な糸だなぁって思ったけど……ヤマメの仕業か!でも、なんでヤマメがこんなことをするの?それも天界までやってきて私をさらってきたってこと?訳がわからないよ。

 

 

 「それはね……うちが説明するより本人に聞いた方がええで?天子の知り合いやし」

 

 「知り合い?」

 

 

 知り合いと言われて天子は首を傾げる。現在地霊殿組には今、目の前にいるヤマメとキスメだけだ。知り合いとは誰のことかと考えているともう一人誰か入ってくる気配を感じた。天子はこの気配に心当たりがあった。喧嘩し合った仲だったから……

 

 

 「まさか……萃香か?」

 

 『やっぱり凄いよ……霧の状態である私の気配に気づくなんて……』

 

 

 聞こえてきた声はどこか嬉しそうだった。霧が一か所に集まり小さな鬼の姿へと変わる。

 

 

 「忘れるわけないだろ?あんなに激しく(喧嘩を)やったんだから」

 

 「あらら!?もう経験済みだったの小鬼さん!?」

 

 「ばっ!ち、ちがうわ!天子も誤解されるような言い方やめろ!!」

 

 

 え?なんなの……?なんで私怒られるの?解せぬ……それにしても萃香がここにいることはおかしくはないと思う。地底には勇儀さんがいるし、友人に会いたくて地底に行くことはわかるけど……もしかして私をここに連れてきたのは萃香か?

 

 

 天子はそのことを聞いてみた。すると萃香からは「そうだ!私が連れてきたんだ!」と胸を張っていった。張る胸はぺったんこなのだが……

 

 

 「……何のためだ?」

 

 「そ、それは……」

 

 

 萃香の挙動がおかしくなる。目をキョロキョロさせて落ち着きがなくなった。鬼は嘘をつくことが嫌いだ。萃香は嘘にならないように何かを言おうとしているが、言葉が見つからないのか完全に挙動不審となっている。この姿を見てヤマメは頭を抱えていた。そして、ヤマメは萃香の代わりに天子に伝える。

 

 

 「天子聞いてえな、小鬼……萃香はね、天子とデートしたかったんやで」

 

 「ちょちょちょちょちょちょちょちょちょ!!?」

 

 

 ヤマメの発言に顔を真っ赤にして慌てふためく萃香。一方の天子はポカーンと口を開けていた。

 

 

 ……私の聞き間違いかな?ヤマメが言ったことに間違いがなければ萃香が私とデートしたいと希望しているってこと?デートって言う名の酒巡りの旅かな?萃香にとってそういう意味なのかぁと一瞬思ったけど、ここまで萃香が狼狽える姿を見せたのは初だ。もしかして……真剣と書いてマジの方?

 

 

 …………………………………………

 

 

 ……………………

 

 

 …………

 

 

 ……マジ?

 

 

 萃香が?私と?私は夢でも見ているの?好きと言っても親友(とも)してって思っちゃったりしちゃったり……ってそんなことないか。萃香は鬼だから嘘嫌いだもんね。私だって鈍感野郎じゃないし、萃香の態度を見ればわかるわ。顔真っ赤にして……かわいい♪普段見られない萃香を見れて超ラッキーです!ご馳走になりました!

 

 

 萃香の意外な部分を見れて興奮気味の天子だが、一つ危惧していることがあった。

 

 

 私は外見男だけれど中身女の子なのに……萃香に嘘ついている形になっているのよね。それを知ったら萃香どう思うだろうか……私は真実を伝えるのが怖い。あれだけ散々他人には偉そうな口で言っているのにいざ、自分の番になるとヘタレる奴なのよ。今更萃香に「私は実は女なのよ。だからごめんなさい」なんて言えないわよ……最悪な奴よ私って……

 

 

 自身の心の性別に後ろめたさを感じていた。萃香が本気で好きになってくれることは天子には嬉しいが、それは外見での話だ。中身は女でそれを黙って萃香に嘘ついていることになっている。こんなことなら初めから自身に起こっていることを話しておけばよかったと後悔していた。

 

 

 ……やっぱりダメよね。私だけ自分の都合の良いように話を進めては!萃香に本当のことを話そう。そしてごめんなさいしよう。萃香だってそれならわかってくれるはず、もしもの時はこの首取られることを覚悟しよう。萃香にならいいかなって思えるし……私って本当に戦闘狂になっている気がするわ。

 

 

 天子は意を決して萃香に真実を語ろうと向き直った。

 

 

 「萃香……すまない、実は私の正体……!?」

 

 

 

 天子は見てしまった。萃香では絶対見ないであろうと思っていた表情を……目に雫が溜まり、頬が赤く染まり、天子を見つめる愛らしい瞳を向ける顔……鬼でもなければ、山の四天王でもない、恋する乙女が天子の答えを待っている姿だった。

 

 

 ……ごめん。やっぱ私には無理。

 

 

 「萃香、ありがとう。萃香の気持ちは嬉しいよ」

 

 「ほ、ほんとう……?」

 

 

 くぅふ!かわいいなぁ!もう最高!ギャップ萌えは卑怯だって!!昔の私に戻されそうじゃないか。こんなの絶対勝てないよ。流石萃香だ、山の四天王は伊達じゃない。

 

 

 天子は負けた。萃香の酒に酔っているおっさんくさい姿ではなく、恋する乙女形態に変身した姿に屈服するしかなかった。自分の中身は女であること、転生して比那名居天子として生きている真実を語ろうとしたが、かわいい萃香の姿に天子の覚悟は粉砕されて完全敗北し、今言うことじゃないから別にいいかと心変わりした。幼女の力は恐るべし!!!

 

 

 「デートぐらいなら受けてやってもいいぞ」

 

 「い、いいのか天子!?」

 

 

 はっ!?私は何を気軽に発言してしまっているんだ!?口が勝手にしゃべっていた。嘘じゃないんです!信じてください!こんなんじゃ私、元天子ちゃんにボロカスに言われちゃうよ!!「このクソ女たらし!!」とか言われそうなんですが……!

 

 

 天子は慌てて発言を撤回しようとするが、嬉しそうにぴょんぴょんと飛び跳ねる子供のような姿の萃香に何も言えなくなってしまった。

 

 

 「よかったな萃香。天子、しっかりリードしてあげてぇな!」

 

 「……リードしろよ

 

 

 ヤマメとキスメに後押しされて逃げ道が無くなってしまった。

 

 

 ……まぁ、一日ぐらいなら付き合っても罰は当たらないよね。萃香だって喜んでいるし、萃香の気持ちにも応えないと比那名居天子として失格だね。ちゃんと責任取るか。

 

 

 しかしこれが一日で終わらない異変に繋がるなどこの時の天子は何も知らないのであった。

 

 

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 天界にいつもより遅い朝がやってきていた。

 

 

 「天子様、朝でございます」

 

 

 返事が返って来なかった。珍しく天子が起きてこなかった。いつもなら既に起きしている時間帯なのに……衣玖は天子を呼びに寝室にまでやってきていた。

 

 

 「(確かに最近は色々なことが立て続けに起こっていて、まともに休む機会がなかったこともあって疲れているのでしょう。紅魔館で久しぶりの天子様は手料理を披露されました。相当気合が入っていたみたいだったのでそれもあるのでしょうね。久しぶりに味わった天子様の真心こもった手料理はおいしかった♪ミミズクさんが途中で余計なことしなければもっと食べれていたんですが……今度頼んで私だけに作っていただきましょうかね)」

 

 

 衣玖は紅魔館でのパーティーで出された天子の手料理のことを思い出していた。想い人が作った手料理を食べれるなんてこれほどの幸せはない。パーティーの時に色々とハチャメチャがあったこともあって天子は疲れているのだろうと結論付けた。

 

 

 「(ここは私の勝手ながらですが、天子様を起こすのはもう少し後にしましょうか。今のうちに天子様がいつでも起きて来ても食べれるようにご飯の準備と仕事を片づけを済ませておきましょう。きっと私を褒めてくれるに違いないです。「衣玖、私のためにありがとう」なんて……ふふふ♪今からそのことを考えると楽しみです♪)」

 

 

 衣玖は天子の寝室から遠のいていった。その寝室はベットが無くなっておりそこで眠っているはずの天子もいないことに気がつくのは先になりそうだ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「屠自古、天子殿成分が不足しがちなんですが……」

 

 「天子殿とはこの前会ったばかりではないですか……それに天子殿成分ってなんですか?」

 

 「天子殿成分は私を癒してくれる魔法の成分だ。仙術でも決して作り出すこともできない素晴らしい成分なのだ!これは天子殿の傍にいるだけで摂取することができる。天子殿と話せればもっと多くの量を摂取することができる。肌に触れた時なんか……爆発しそうになります」

 

 「太子様って変態ですか?」

 

 「これ屠自古!太子様に向かって変態とは何事じゃ!スケベと言え!」

 

 「お前も大して変わらないじゃないか!」

 

 

 屠自古は頭を悩ませていた。最近の神子は毒気が抜けてしまい、NOカリスマ時の神子はこんな調子で困っていた。もう少し前ならキリっとしていたのにと思っている。特にこの前の紅魔館で開かれたパーティーにみんなで出向いた時に出された天子の手料理が原因で弾幕勝負になるとは夢にも思っていなかった。原因は衣玖と神子なのだが……命蓮寺の聖によって仲裁されたが、神子のあるまじき醜態を晒すことになって屠自古は胃を痛めていた。天子が何も気にしていなかったのが幸いだったけど……

 

 

 「(絶対に天狗に撮られたろ……あの現場……)」

 

 「あらぁ?どうしちゃったのです?屠自古さん?」

 

 「青娥殿……なんでもない。つまらないことだ」

 

 「だいじょ~ぶか~?」

 

 「芳香殿もありがとう心配してくれて」

 

 

 芳香は屠自古に頭を撫でられて満足そうにしていた。そんな姿を神子は羨ましそうに見ていた。そして我慢できなくなったのかいきなり立ち上がった。

 

 

 「足りない!天子殿成分が今の私には不足している!これでは生活に支障をきたしてしまう。これでは人々を救うことにも影響が及んでしまう!?それだけはいけない。今からそちらに向かいますよ天子殿!私にもいい子いい子してほしいですー!!!」

 

 「ああ!?太子様!!我も太子様のお力になりますぞー!」

 

 

 神霊廟を飛び出して行く神子と布都の姿が見えなくなっていく。

 

 

 「「はぁ……」」

 

 

 屠自古と青娥は今までよりも苦労しているようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「妖夢……そろそろ部屋から出てこない?」

 

 「……すみません幽々子様……まだ立ち直れそうにないです……」

 

 

 白玉楼ではプチ異変が起きていた。妖夢は部屋にこもりっきりで出てこない。幽々子がご飯を作って妖夢に持っていくという立場が逆転していた。何故このようなことが起きているのか……事の出来事は、天子達が異変を解決している時に妖夢は早苗と一緒に一日中ゲームで楽しんでいた。ようやくゲームを楽し終えて満足した時には異変は既に解決されており、異変自体起きていたことに気づいていなかった。それだけならまだよかったのだが、天子がボロボロになって戦っている時に遊んでいたのだ。真面目な妖夢にはショックだった。更に妖夢に止めを刺したのは紅魔館パーティーで自分は呼ばれなかったことだ。異変に関わった者だけなのだから当然なのだが、みんなが必死に異変に立ち向かっていたのに妖夢は遊んでいたことで役に立てなかったのと幻想郷の危機に何しているんだと自分に失望してしまった。天子の弟子である自分がこんな醜態を晒してしまい、恥ずかしくて部屋に引きこもりになってしまっていた。

 ちなみに早苗はちゃっかりとパーティーに紛れ込んでいた。神奈子と諏訪子の分の料理もちゃんと持って帰って存分にパーティーを楽しんでいた。なんでいるのか?早苗に常識など通用しないからだ。彼女が居ても「常識に囚われてはうんたらかんたら……」で済んでしまうことが恐ろしい。

 

 

 そんなわけで現在、妖夢は引きこもり剣士となっていた。

 

 

 「妖夢……天子さんは気にしないわよ。きっと謝ったら許してくれるわよ」

 

 「私の気持ちは嫌なのです!そんな簡単に済んでしまっては天子さんの弟子を名乗るだなんて……天子さんに失礼です!それに幽々子様なら……幽々子様が命がけで異変解決している時に私が遊んでいたらどう思いますか?」

 

 「……こっちは大変な事件に巻き込まれているのにそっちは遊んでいたのかコノヤロー……って思っちゃうかな?」

 

 「うわぁあああああん!!!切腹してやるー!!!」

 

 「ちょ!?妖夢冗談だから!冗談だから……って本当に切腹しようとしないで!!?」

 

 

 部屋に入った幽々子が慌てて妖夢を止める。刀を奪われて気力を失う妖夢は情けない姿で転がった。

 

 

 「もう私……魂魄妖夢止めます……これから緑の勇者リ〇クになります」

 

 「何言っているの妖夢!?訳がわからないわよ!?」

 

 「ブーメランとボムと盾を探してきます……」

 

 「盾はわかるけど……ブーメランとボムってなんで!?ちょっと妖夢どこかに行こうとしないで!!」

 

 

 何とか落ち着かせた後、幽々子の数時間にも及ぶ説得によって正気を取り戻した妖夢は天子に謝るため白玉楼を出発するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「それじゃ、二人共行ってらっしゃい」

 

 「……行ってこい

 

 「ああ、行ってきます」

 

 「い、いってくにゅぞ……!」

 

 

 天子は旧都に足を向けた。ヤマメとキスメに見送られて、緊張している萃香と二人だけのデートを楽しもうとしていた。

 

 

 「ほら萃香、リラックスしろ」

 

 「そ、そうだにゃ!りにゃっくすりにゃくす……!」

 

 「……鬼じゃなく猫だったのか……?」

 

 「そ、そんなことにゃい!!」

 

 「プッ!」

 

 「わ、わらうにゃよ!!!」

 

 

 地上の状態も知らない天子は萃香とデートを楽しんでそれが終われば地上に帰ろうと思っていた。だが、そう簡単に終わらないのが幻想郷……何が起こるかわからないのが人生だ。

 

 

 地底を巻き込む異変はすぐ傍まで近づいていた。

 

 


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