比那名居天子(♂)の幻想郷生活   作:てへぺろん

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嫉妬心を拗らせた鬼は一人の天人をどうするつもりなのか……


本編どうぞ!




34話 欲する嫉妬心

 「――ワタシノモノダ!

 

 

 ど、どうしたの萃香?なんでいきなり声を荒げるの?それに……瞳が緑色に変色しているのは気のせいかな?緑色の光が瞳から溢れ出てるって言った方が正解みたい。萃香、もしかして私の答えが気に入らなかったとか?でも、まだ私達は出会って間もないし、萃香は気持ちが整理しきれていないと私は感じた。だから、結果は急がない方がいいし、嬉しかったけれど私は中身女の子です。こっちもそれなりの覚悟は必要だから時間が欲しい。私だって男としての体を持っているわけだし、本気で私も心動かされた時はちゃんと責任取るつもりだけど、今はまだ私の気持ちも整理しきれていないし、こういうことは簡単には決められない。ガールズラブになっちゃう……女の一生を決めるものだし、適当な気持ちで女性の心を弄ぶことはできないの。ごめんね萃香……

 そういうつもりで萃香を傷つけないように言ったつもりだったんだけれど……言い方がもしかしたらまずかったかな?

 

 

 天子はこちらを見つめる瞳の色が緑色に変色した萃香の視線に戸惑っていた。先ほどから萃香は天子を見つめるばかりでそれ以上のアクションはなかった。瞳が緑色に変色するという萃香には見慣れない現象が起きていること自体にも戸惑いを見せていた。

 沈黙した空気の中でアクションを先に見せたのは萃香の方だった。

 

 

 「……天子……」

 

 「萃香……どうし……うわぁ!?」

 

 

 萃香はいきなり天子の指を口に入れ甘噛みし始めた。突如として起こった出来事に天子は更なる戸惑いを見せる。

 

 

 萃香どうしたの!?はわわ……!!萃香の舌の感触が指から伝わってくる……優しい甘噛みに萃香の唇と舌の触感が肌に伝わり気持ちいい♪犬にじゃれつかれているみたいで撫でてかわいがってあげたいよ~!!

 

 

 ペットを飼っている人の気持ちがわかったような気がした天子だった。今の萃香は天子に甘える犬のようになっていた。しかし、犬ではなく鬼である。天子はあまりの気持ちよさに昇天しかかっていたが、女の子に指を舐めさせるとか変態の行動じゃん!そう脳が覚醒し現実に引き戻された。

 

 

 「ダメだ萃香!いきなりこんなことしちゃ!」

 

 

 そうよ!例え愛らしい姿で犬みたいであっても萃香は犬じゃない。それに男が女に指舐めさせるとかただの変態じゃん!私は変態なんかじゃないわよ!萃香よ、いきなりこんなことしてどうしたのさ!?

 

 

 「……天子は……ワタシノのこと……スキナンダヨナ?」

 

 

 萃香?なんだか喋り方に違和感がある。所々に重みが生じるような……それにその表情は卑怯よ。今の萃香の表情凄く……エロいです。

 

 

 萃香の頬が赤色に染まり、瞳がとろりと溶けたように天子を見つめ、唾液で濡れた柔らかい唇が子供姿を思わせないほどの大人の色気を出していた。普通の男ならばこの表情一つで夜が眠れなくなるだろうが天子は違う。外見は男、中身は女であるため萃香の魅力(チャーム)の効果はいまひとつだった。

 

 

 「スキ……ナンダヨナ?」

 

 「あ、ああ……」

 

 「――!スキナラ抱きしめてもイイよな!?スキナラワタシタチ恋人だよナ!!」

 

 「す、すいか落ち着いてくれ!親友(とも)としてだぞ!?」

 

 「スキスキスキ!天子はワタシノことがスキ!ワタシモ天子のこと大スキだ!」

 

 

 天子に抱き着いた。背が低いので腹にしがみつく形となったが離さないようにしっかりと腕に力を込めて体を押し当ててくる。

 

 

 様子が変だ。先ほどまでこんなベッタリしてくることはなかったのに……いたたたたたたた!?萃香抱きしめすぎよ!元々力が強いってわかっていたけど強すぎるわよ!骨が(きし)んじゃうわよ!!!このままじゃ私、萃香にボロボロにされてしまう……な、なんとかしないと……!

 

 

 「す、すいか……!離してくれ!痛い……」

 

 「ヤダヤダ!スキなら肌身離さず一緒に居ようヨ!」

 

 

 更に腕に力を込めて顔を埋める。

 

 

 あだだだだだだだだだ!?や、やめて萃香!!頭がお腹を押さえつけて食べたものが上がってきちゃう!それはダメ!見せられないよ!萃香離れてー!!

 

 

 どうにかして萃香を離そうと試みる。しかし、それが悲劇の引き金であった。

 

 

 「萃香、もうそろそろ地上に帰らないと皆が心配する。無断で出てきたから衣玖が天界中を探し回っているはずだからな。萃香もそろそろ地上に帰らないと紫さんに怒られるぞ?」

 

 「衣玖……帰る……」

 

 「……萃香……?」

 

 

 力を込めるのは止まったが、同時に萃香も動きが止まってしまった。天子は呆然と見守る……すると萃香が顔を上げて天子を見据える瞳は更に緑色の光が強く光っていた。

 

 

 「……ダメだ……」

 

 「――!?」

 

 「ダメだ!ダメだダメだダメだ!ダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだダメだー!!!ワタシタチは恋人なんだ!帰る必要もナイ!紫なんて関係ナイ!ワタシタチは一緒にいることで幸せナンダ!天子もワタシと一緒に地底で二人でクラソウ!」

 

 

 目がこれでもかと見開き天子を凝視する。その強烈な眼差しに天子ですら引いてしまう。

 

 

 「そうだ……天子を取り返そうとヤッテくるにチガイナイ……天子は優しいし、スカレテいる……でも!天子はワタシノことスキだと言ってくれた!ワタシモ大スキだ!お互いにスキなら恋人ダモンナ!ワタシノ天子を奪おうする奴は……ワタシガダマラシテやる……!!!」

 

 「萃香!?一体何を……!?」

 

 

 萃香の周りから煙が爆発した。すると無数の小さな萃香が現れた。10から20程の小さい萃香達も目が緑色の光っていた。

 

 

 「天子!お前はワタシが守ってやる!ダレニモ渡したりなんかシナイ!」

 

 「萃香!おかしいぞ!どうしたんだ!?」

 

 

 天子の叫びも虚しく空に消える。天子は萃香と小さな萃香達に抱きかかえられた。

 

 

 萃香何をするの!?やっぱりおかしいよ!!萃香はこんなことするわけない。だとしたら……誰かに操られているとか!?萃香を操って一体どうしようって言うの!?くそっ!萃香一人だけの力だけなら無理やりにでも引きはがせたけど、小さな萃香達が現れたせいで多勢に無勢だ。

 

 

 「ワタシはおかしくナイ。天子とワタシノ邪魔は誰にもサセナイ!ゼッタイ二!!!」

 

 「萃香やめてくれー!!!」

 

 

 天子は萃香達と共に地底のどこかへと消えていった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あ、あら?なんだか……変なことになっちゃった……」

 

 

 その様子を隠れて見ていた元凶は困惑するのであった。

 

 

 ------------------

 

 

 「(おかしいです。いくらなんでもそろそろ起きて来てもいいはずなのに)」

 

 

 そう思いながら衣玖は足を進めていた。食事の準備もできたし、仕事も片付いてしまった。天子を起こしに行こうとしたが一度は止めた。疲れて眠っているのを無理に起こすなんて悪いと思ったからだ。しかし、いくら待っても起きてこないことに不思議に思った衣玖は天子の寝室に向かっていた。

 

 

 「(既に目が覚めて散歩に出かけたとか?それなら一言声をかけるはずですし、食卓に置いてあった料理が手付かずで置かれていました。まだ起きていないという証拠です。それほどまでお疲れなのでしょうか天子様は?)」

 

 

 寝室にやってきて扉をノックする。

 

 

 「天子様、そろそろ起きてください。いくらなんでも睡眠の取り過ぎは体に毒ですよ」

 

 

 返事がない。静寂だけが辺りに広がっていた。

 

 

 「天子様?失礼しますね」

 

 

 衣玖は何の反応も見せないのを違和感を感じて扉に手をかけて開く。

 

 

 「――こ、これは!?」

 

 

 衣玖はすぐに飛び出した。天子を探して……視界に飛び込んできたのはあるはずのベットが無くなり、そこにいるはずの天子は存在しなかったからだ。

 

 

 「天子様!天子様ー!!?」

 

 

 衣玖は天界中を駆け巡るのであった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「太子様!して、天子殿はどこにおるのでしょうか?」

 

 「布都、天子殿は普段天界におられる。そして天界は天人達の楽園だと聞く」

 

 「そのようなところに天子殿が!」

 

 「しかし布都よ、勘違いしていけないことがあります。天界を楽園にしたのは天子殿なのです!」

 

 「な、なんと!?」

 

 

 神子は自信満々に布都に言い放った。神子自身は天界に行ったことがないが、話に聞いた限りでは天界は元々天人達にも不満があるところが多かった。遊んで暮らせることに代わりはないのだが、何か物足りなさを感じていたのだ。そんな時に天子が改革案を出して、娯楽施設などの遊び場や仕事を与えることで天人達の物足りなさを満たしていった。そのおかげで天人達にとって増々楽園と呼ばれるようになった。これは全ては愛する天子の行いであったため、神子はそれが誇らしく「流石は()()天子殿だ」と自慢しているようだった。

 

 

 「なるほど!流石は太子様がお認めになった天子殿ですね!それで天子殿にどういったご用件ですか?」

 

 「それはですね、私は天子殿にいい子いい子……ゴホン!天子殿と今後の活動について話し合いたいと思いましてね」

 

 「太子様、いい子いい子してほしいとか言ってませんでしたか?それと天子殿成分がどうとか……」

 

 「布都!私がそのようなみっともないことを言う訳ないじゃないですかやだなハハハハハ!布都よ、私は毎日人々のために己を磨いているのです。天子殿成分を摂取しに行くため……じゃなくて、天子殿に会いに行くのはもっと己を磨くためです。私は天子殿に救われました。天子殿ならば人々を救い出すいい案を持っているのではないかと思うのです」

 

 「おお!流石は太子様です!太子様がそこまでお考えだったとは……最近腑抜けた様子でダメな太子様になっているのではないかと思っておりましたがそのようなことはなかったのですね!ただ天子殿に会いたいだけが理由ではなかったのですね!」

 

 

 ギクッ!という声が漏れた気がしたが目を輝かせる布都には届かなかった。

 

 

 「そ、その通りですよ!私が腑抜けているわけないじゃないですか!布都は勘違いし過ぎですよハハハハハ!」

 

 

 いきなり嫌な汗が流れ出る。布都にまさか見抜かれていたなんて予想外であったり、痛い所を付かれて顔が引きつる。

 

 

 「と、とにかく!私は天子殿に会ってくるので布都は帰って屠自古と青娥の手伝いをしておいてください」

 

 「了解しましたぞ!我にお任せを!」

 

 「で、ではよろしく……!」

 

 

 神子はそそくさと飛んで天界を目指すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……」

 

 

 空を飛ぶ一人の引きこもり剣士だった妖夢は各地を回っていた。

 

 

 「天子さん、人里にもいませんでした……なら、居るとしたら天界でしょうか?」

 

 

 妖夢は探していた。幻想郷の危機に遊んでいた醜態を晒していたことを謝ろうかと天子を探していたのだが、地上で天子が居そうな場所を伺ったが今日はどこにも立ち寄っていなかった。すると残る場所は一ヶ所しかない。

 天子が住む天界だけだ。わざわざ天界にお邪魔するのは失礼かと思ったが、妖夢は早く己の失態を全力で謝りたいと思っていた。弟子になっておきながら師である天子を放ってまさかゲームをしているなんて知ったら天子はどんな顔するか……ちょっと怖かった。失望されたくなかった。天子は優しいしそれで妖夢を見限るなんてことはないのだが、妖夢にとっては気が気ではない。真面目であるが故に様々な妄想が妖夢を押しつぶそうとする。

 

 

 『妖夢、私の弟子を名乗っておきながらゲームで我を忘れるなんて……私は失望したよ』

 

 『妖夢がそんな子だとは思わなかった……さようなら……』

 

 『妖夢……そんなんだから胸も成長しないんだ』

 

 

 「うわぁあああああ!!!ごめんなさいぃいいいいい!!!」

 

 

 妖夢は頭の中の妄想の天子が自分を見限る姿に恐怖する。そうならないためにもすぐに謝りに行きたいと思っていた。

 

 

 「(天子さんお願いです!私はまだやれます!だから見限らないでくださいー!)」

 

 

 妖夢は速度を上げて天界を目指すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「(天子様……一体どこに行ったのでしょうか!?)」

 

 

 衣玖は天界中を駆け巡った。どこには天子はいなかった……天子が居なくなること自体不思議なことはない。前にも一度こんなことがあったから。しかし、ベットも無くなっていることが問題だった。前は地上に降り立ったので、今度も地上だろうと予測はできたが何故ベットまで一緒に消えてしまうのか……?

 

 

 「(はっ!?天子様は何者かに誘拐されてしまったとか!?)」

 

 

 ベットごと誰が誘拐なんてするか!と思うかもしれないが、実際は萃香がベットごと天子を連れ去った。衣玖の推理は当たりだった。だが、衣玖はそんなこと知るわけもない。何故ベットも共に消えたのか思考を凝らしていると衣玖の視界が見知った顔を捉えた。

 

 

 「衣玖殿、急に天界に押しかけて申し訳ないね」

 

 「豊聡耳ミミズクさん!」

 

 「君とは本当に()()する必要があるみたいですね……!」

 

 

 神子の顔に青筋が立つが気持ちを抑えることにした。ここは天界、下手なことを起こせば天子に迷惑がかかってしまうためCOOLに対処することにした。

 

 

 「ゴホン!急で申し訳ありませんが、天子殿に会いたいのですが?」

 

 「……天子様なら……」

 

 「衣玖さん!神子さん!」

 

 

 第三者の声が聞こえてきた。その声も聞き覚えがある声だった。

 

 

 「妖夢?君が何故ここに?」

 

 「お二方、天子さんはどこですか!?」

 

 「そんなに慌ててどうしたんだ?君らしくない」

 

 

 神子は落ち着きがない妖夢を慰めているがそれでもそわそわしている。天子の姿を見つけようと左右と天界を見渡す。

 

 

 「天子さんは天界にいないのですか?」

 

 「はい……実は……」

 

 

 衣玖は事の事情を説明した。話を聞く二人は真剣そのもので先ほどまでの空気は一変していた。

 

 

 「天子殿が誘拐?天子殿程の方がそう簡単に誘拐されるなど……いや、それほどの実力の持ち主ということだろうね。誰にも気づかれずに事に及んだところを見れば侮れない相手のようだ」

 

 「そ、そんな!?天子さんが誘拐だなんて……一体誰が!?」

 

 「それをみんなで調べるんだ。衣玖殿、心当たりはないか?天子殿に恨みを買っている人物がいないか?」

 

 

 衣玖は考える。しかし、パッと思いつく相手はいない。天界では天子は人気者だ。地上でも天子を悪く言う者は衣玖が見た限りだといなかった。

 

 

 「そうか……そうなれば……天子殿を直接探し出すしか方法はなさそうですね」

 

 「しかしミミズクさん、天子様を探す方法だなんて……」

 

 「あるんですよ。知り合ったばかりですが命蓮寺という所はご存じですか?それとミミズク言うのを止めてくださいと何度も言っているでしょう!」

 

 「命蓮寺……確か聖白蓮という方がいらっしゃる寺のことですね?」

 

 「無視ですか……もう慣れましたけれど……そうです。聖とは紅魔館パーティーの時に知り合いましてね、良くしてくださる方なのですが、そこに探し物を探し当てることができる人物と知り合いのようだ。その者に頼めば天子殿を探してもらえると思いますよ?」

 

 

 衣玖に雷が走った。天子を見つけられる手がかりを掴めるのならば、それにすがってでも見つけ出す覚悟があった。

 

 

 「ミミズクさん!今すぐ命蓮寺へ向かいましょう!」

 

 「そうですね。もう私は君にとっては豊聡耳ミミズクなのですね……」

 

 「神子さん気をしっかり持ってください。気を取り直して命蓮寺へ行きましょう?」

 

 「ああ……」

 

 

 3人は手がかりを見つけるため命蓮寺へと向かった。

 

 

 ------------------

 

 

 ……どうしてこうなった?

 

 

 天子は困惑していた。天子は萃香と小さい萃香達に連れられてどこかに連れていかれたのは覚えている。洞窟内を駆け巡り、同じような通路を通りやってきたのは洞穴だった。その中に連れていかれた。

 周りには酒、酒、酒の山……酒瓶だらけが転がっている場所へとやってきた。一体ここはどこだろうか?そして、何より天子が置かれている状況と言うのが……

 

 

 手足を鎖で繋がれて逃げられなくなっていた。鎖は天子の手足と壁に繋がれ、周りには小さい萃香が天子を見張っていた。

 

 

 「……なぁ、小さい萃香……鎖を外してくれないか?」

 

 

 小さい萃香は言葉を喋らない。首を横に振り天子の申し出を否定する。

 

 

 小さい萃香……今からプチ萃香と名付けよう。本物の萃香は私を鎖に繋いだ後、食べ物持ってきてやるって言ってどこかに行ってしまった。凄く嬉しそうな顔だったが、やっていること束縛と同じだ……これってもしかしてかの有名なヤンデレっていうやつ?私ってば萃香に病まれてしまったの?……超怖いんですけど!!?どうして萃香がこんなことするようになったの!?萃香の様子が変化したのは気がついていたけれど……それにプチ萃香も本物の萃香も瞳から緑色の光が宿っている……いつもの萃香の気配ではない。この緑色の光が萃香をおかしくしているのか?それか何かしらの影響を受けたと推測するが……

 

 

 天子は考えたが答えが出てこない。さっきからずっと天子を見つめている小さい萃香達の視線が気になって気が散ってしまっている。

 

 

 プチ萃香の視線が濃い気がするわ……何とか逃げ出したいけどこの鎖ただの鎖じゃない。萃香が言うには力を制御する鎖だとか言っていた。なんでそんなもの持っているのよ……とにかく鎖を外せない以上逃げ出すことができないでいる。それに今の状態の萃香から逃げたら私の運命は……!

 

 

 萃香に八つ裂きにされる自分の姿が脳裏に浮かぶ。嫌な汗が流れそうならないようにしないと思うのであった。

 

 

 「ふふふん♪天子帰ってキタゾ!」

 

 

 入り口から現れたのは本物の萃香だ。手に袋を持っており中身がパンパンに入っていることが見て取れる。

 

 

 うわぁ!帰って来ちゃった!落ち着け私……いつもの比那名居天子を演じるのよ。ビビっているなんて知れたら萃香に何されるか……COOLになるのよ私!

 

 

 「ドウシタ天子?ワタシが帰ってキテ嬉しくナイのか……?」

 

 「いや、嬉しいぞ。萃香の姿を見ることができて何よりだ」

 

 「二ヒヒ♪そうかソウカ♪でも、小さいワタシの姿を見ていたはずダケレド?」

 

 「本物の萃香を見たかったんだ。プチ萃香もいいけど、やっぱり本物の萃香を見れて私は嬉しいぞ」

 

 「も、もう天子ったら~褒めるのがウマインダカラ♪」

 

 

 褒められて顔を赤く染めて体をくねくねさせる萃香は褒められて照れる乙女の姿に見えた……そう見えただけだった。出て行った時と変わらない緑色の光が瞳に宿っている。その瞳が天子を逃がさないと言っているような錯覚を覚えさせられる。

 

 

 やっぱり萃香の様子がおかしい……萃香の言葉も何か違和感を感じてまともに聞こえるが正常でない気がする!萃香に術でもかかっているならば近くに術者がいるはず……だが、動けない状況ではどうしようもできない。何か打開策はないか!?

 

 

 何とか周りの状況を視界に入れて打開策を練る。洞穴の中は布団が敷いてあり、酒瓶の山、最低限のテーブルや木箱ぐらいしかなかった。元々この洞穴は萃香が地底にやってきて、酒を飲み過ぎて帰る時間が遅くなったり、博麗神社に帰るのが面倒になった時の寝床にしていた。勇儀が居る時は勇儀の家に泊めてもらうのだが毎回勇儀が暇なわけはない。この洞穴はそのために用意されていたもので、最低限の物しか置いていなかった。そんな最低限の物しかない洞穴からどう抜け出そうかと思考を凝らしていると萃香が近づいてきた。

 

 

 「天子のタメに色々買ってキタんだ。今日から毎日一緒に居られるカラ奮発シタゾ!」

 

 「そ、そうなのか……ん?毎日?」

 

 

 様々な食材が入った袋を小さい萃香に渡す。そんな様子を見ている天子は萃香の言葉に引っかかった。

 

 

 「……萃香、私の耳がおかしくなければ今、毎日とか言わなかったか?」

 

 「ソウダ言ったゾ?恋人同士なら一緒に居てもおかしくナイだろ?いいや、一緒にいるべきナンダ。ワタシは天子のことがスキ、天子もワタシのことがスキだ。なら毎日一緒に生活して、食事もお風呂も寝床も一緒ダ!」

 

 

 天子は萃香の言葉に衝撃を覚えた。

 

 

 毎日って……私もしかしたら監禁状態じゃない!?今更気づくって思うかもしれないけど、一日だけデートに付き合うっていうのはどこに行ってしまったの!?うそ~ん……このままだと私は萃香と共に一生ここで暮らさないといけないの?萃香と一緒にいるのが嫌とかじゃないけど、今の萃香と一緒は色々と不味い気がする……

 

 

 「萃香……悪いが今日一日だけのデートのはずだ。明日には地上に帰って仕事もしないといけないし、天界には衣玖も待っている。私がいないといけないのだよ」

 

 

 天子は断ろうとした。だが、瞬時に後悔する。瞳に宿る緑色の光が強さを増して萃香が天子に迫る。

 

 

 「ダメだ!ダメだダメだダメだダメだダメだー!!天子はワタシと一緒にいる方が幸せナンダ!大丈夫ダゾ天子!お前を連れ戻そうとスル奴はワタシが追い返してヤル。それにワタシだけを見てくれ……そんな竜宮の使いナンテ名前出すんじゃナイ!天子にはワタシだけでイイ……天子はワタシの傍に居てくれるだけでそれでイインダ。傍にいるだけでワタシは幸せダ……天子だって幸せダロ?ソウダロ?ソウダロナ?ワタシタチはスキな者同士なんだから!それが恋人同士ってヤツナンダロ!?もしワタシタチの幸せを邪魔しようとスル奴がイルナラバ……絶対に許さない……ユルサナイカラナ!!!」

 

 

 ひぃいいいいいいいいい!!?こ、こわいわよ萃香!!?目がマジじゃん!!!これはヤンデレという証の証明よ!はわわわわ……萃香にヤンデレ属性が付与されるなんて……一体萃香に何が起こったのよぉおおおおおお!!?神様仏様!誰でもいいから助けてくださいぃいいいいい!!!

 

 

 比那名居天子は地上でその日を境に行方不明となった……

 

 

 ------------------

 

 

 「二ヒヒ♪天子あ~んしてくれ♪」

 

 「あ、あ~ん……」

 

 「オイシイか?ワタシが作った料理は?」

 

 「お、おいしいです……はい……」

 

 「ソウカソウカ!もっと食べてくれ」

 

 

 天子は相変わらず鎖に繋がれていた。

 

 

 天子が監禁されて何日経ったかわからない。寝たことは寝たが、動揺と混乱で頭が正常に働かない日もあった。滅茶苦茶時間が経っているとは考えにくいが、それでも日は何日か過ぎたはずだ。天子は何日過ぎても萃香から解放されない束縛された日々を送っていた。

 

 

 天子はこれまで何度も萃香を説得しようとしたが無理だった。無理なら力づくでどうにかできないかと思ったが、いつも傍にいる小さい萃香が監視をし、特別な鎖に繋がれているためそれもダメだった。だが、唯一鎖を外される時があった。風呂に入る時と寝る時だ。これには鎖が邪魔であるために外される……天子は初めチャンスだと思った。

 風呂は近くにある温泉が湧き上がっている所へと向かうのだが、当然萃香が一緒についてくる。そして小さい萃香も一緒だ。いつまでも小さい萃香を残しておくには力を使い続けないといけないので、数が今までより少なくなって10人程度だが、それでも萃香×(かける)10と計算すると勝てる気がしない。何とか風呂に入っている時に逃げ出そうかと考えたがそれも無残に敗れ去った。萃香も一緒に入ってきた。幸いなことに萃香一人だけだったが、無防備な裸体が天子の体に密着しようと迫ってきた。天子も中身は女の子であるためちょっとドキドキするぐらいだったが、今の萃香なら何をしでかすかわからなかった。イケない関係に陥ってしまうのではないかと内心ビビってしまった天子は逃げるよりも素直に大人しくしておく方がいいと思えた。男であれば理性を抑えられずに萃香を襲っていただろう……自分の中身が女の子で本当によかったと感謝していた。逆に何度か襲われそうになったが、優しく接することで萃香は落ち着いて事なき終えることができた。

 さて、ここまで話すともう後は寝ることだけなのだが、当然布団は一つしかない。萃香は天子にしがみついて眠るため天子が逃げるチャンスは無くなったと言う訳だ。それが今日まで続き現在に至る。

 

 

 「(やばいわ……絶対衣玖が怒っている……それに天界の連中もしかしたら地上に宣戦布告とかしてないよね?不安で私のメンタルやばいんですが……)」

 

 「どうした天子?もう食べないノカ?」

 

 「も、もうお腹いっぱいだ。ありがとう萃香」

 

 「ソウカソウカ、じゃあ片づけるから待っててクレ」

 

 

 萃香はずっと天子の傍に寄り添っている。このままずっとここで暮らしていくのかと天子は半分諦めかけていた。

 

 

 「(何マイナス思考になっているのよ!駄目ね……まだ私は諦めないわ。萃香を元に戻していつもの日常に戻るのよ!)」

 

 

 もう半分の意思は諦めていなかった。何としても萃香を元に戻していつもの日常に戻る強い炎を宿らせていた。

 

 

 萃香は片づけ終わったのか、天子の傍までやってきていつも通り顔を埋めて甘えようとする……しかし、一匹の小さい萃香がやってきて萃香に耳打ちをした。萃香の様子が変化したことに気づいた天子……緑色の光が強くなり真剣な表情になっていた。

 

 

 「……遂に来たか……天子、お前はココで待ってイロ。必ずお前を守ってヤル」

 

 「萃香……?」

 

 

 そう言うと萃香は小さい萃香を残して出て行った。残された小さい萃香は天子を守るように陣を組んで何かに備えていた。

 

 

 「(プチ萃香達が……萃香が先ほど言った言葉……あれはもしかして……!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……天子はダレニモワタサナイ……ゼッタイニ!」

 

 

 鬼は向かう……邪魔者を排除しに!

 

 

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