比那名居天子(♂)の幻想郷生活   作:てへぺろん

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今回も天子の出番はほぼ無い!……主人公ぇ(´・ω・`)


本編どうぞ!




36話 探し人

 天子が行方不明になっている時に地上では……

 

 

 「ナズーリンさん、天子さんはまだ見つからないのですか!?」

 

 「ま、まってくれ!私だって頑張って探しているから……後もう少しで見つけられるはずなんだ!」

 

 

 ナズーリンは焦っていた。無縁塚の地下にはなにかお宝が埋まっていると言って近くに小屋を建てて生活していた。命蓮寺の一輪と雲山がナズーリンを訪ねてきた。

 ナズーリンには【探し物を探し当てる程度の能力】を持っている。その名の通り、目標を探すサーチ能力であり、ダウジングロットやペンダントに加えて、鼠を使役した探し方もする。何度もナズーリンがご主人と呼ぶ寅丸星がよく無くす宝塔を見つけてきている。そのせいで探し物に関しては手慣れたものだ。

 今回の依頼も簡単に見つけてやると意気込んだが、命蓮寺に出向いて話しを伺うとそれは物ではなく人物だった。比那名居天子なる人物を捜索してもらえないかというものであった。探し物は得意だが、人を探すとなるとそれとこれとは話が別になってしまう。ダウジングで人を見つめられるか試したこともないし、自分の能力が及ぶ範囲なのかわからなかった。賢く知的で狡猾な面を持っているナズーリンはこの依頼を断ろうとしたが、必死にお願いしてくる衣玖と妖夢の姿……いつもは頼りになるご主人が自分に宝塔を探してもらう時のような情けない姿を見ると嫌とは言えなくなってしまった。

 

 

 仕方ないと思い引き受けることにした。部下の鼠たちを総動員すれば見つけられるだろうと高を(くく)っていた。だが、探せど探せども見つからなかった。魔理沙達も協力して探していたのだが結局見つからなかった。日が落ちてその日は解散となり、衣玖と妖夢は最後まで諦めようとしなかったが、神子と聖に説得されて休まざる負えなくなった。神子はみんなが寝静まった後も青娥達と協力して捜索していたがそれも無駄に終わった。天子が見つからずに、数日も経っており、全員に焦りが見え始めていた。今日も手の空いている者達が協力して各地を捜索しているがまだ見つかっていない。ナズーリンも引き受けてしまった責任感を感じて焦っていたのだ。

 

 

 「ナズさん、あなたが頼りなんです!今日こそ絶対に天子様を見つけてください!」

 

 

 衣玖が懇願する眼差しを送る。これほど期待されて何の成果も残せなければナズーリンのプライドにも傷がつく。何とかして今日こそ見つけなければと必死に探しているのである。

 

 

 「君達静かにしてくれ!今やっているよ!」

 

 

 ナズーリンがダウジング等で捜索していると魔理沙達がやってきた。

 

 

 「衣玖、妖夢、今日も天子は見つかっていなさそうだな」

 

 「魔理沙さん……はい……ナズさんに頑張って捜索してもらってはいますが……」

 

 

 衣玖の表情に影が落ちる。今だ手がかりがない状態……時間が経つにつれて焦りと不安が膨れ上がっていく。

 

 

 「パチュリー様やお嬢様達にも協力してもらって捜索しているけど……こちらも手がかり無しよ」

 

 「私も同じ、人里で見た人はいなかったわ」

 

 

 天子に恩があるレミリア達は天子の捜索に協力的姿勢をとっている。しかし、それでも天子の行方が掴めない。咲夜とアリスも懸命に探しているのだがそれでも成果はない。人里で天子の姿を見かけた者はいないかと尋ねても誰もいなかった。

 

 

 「私の方もダメだったぜ。天子の奴、どこにいるんだよ……」

 

 

 魔理沙の方も当てが外れた。何故これだけ探しても手がかり一つ見つからないのか不思議で仕方なかった。

 

 

 「天子さん……大丈夫ですよね?もう……会えないなんてこと……ないですよね……?」

 

 「妖夢、お前天子の弟子になんだろ?弟子が師を信じてやらないなんてダメだろ?」

 

 「魔理沙さん……そうですよね。私は天子さんの弟子なんです!私は天子さんにまだ謝っていないし、天子さんなら大丈夫に決まっています!」

 

 

 元気を取り戻した妖夢。だが、問題がまだ残っている。手がかりが何一つとしてないことだ。このままでは今日も昨日と同じで何の成果も出ずに終わってしまう……しかし、小さな賢者が疑問に思う。

 

 「(私がダウジングや部下の鼠たちを使っても見つからない……他の連中も様々な方法で探しているがそれでも手がかり無し……何日も探し続けているのに……もしかしたら手がかりは()()には無いのでは?)」

 

 

 小さな賢者ナズーリンが一つの可能性を見つけ出した。

 

 

 「(一度試してみる価値がありそうだね)」

 

 

 ナズーリンはそそくさとその場を立ち去り、ある場所へと向かった。

 

 

 しばらくしてある場所にたどり着いた。そのある場所とは大きな穴が開き、地上の者達が入ることを許さない地底へ通じる穴だった。

 

 

 「(もし私の予想が正しければ……)」

 

 

 ナズーリンは手に持っているダウジングを穴に向けて様子を窺った。すると、ダウジングロッドが反応を示した。ナズーリンの予測が確信に変わった時だった。

 

 

 「(地上で誰も見つけられず、ダウジングが反応しなかったのは地底にいるからだ。ダウジングも距離が遠すぎて反応しなかったんだな。でも、ここならば地底にある旧都に近い……比那名居天子は地底にいる!)」

 

 

 ナズーリンはすぐさまみんなに知らせに行くことにした。

 

 

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 「それで萃香はどうなったんだ?」

 

 「それがうちにもわからへんのや。うちとキスメは見送っただけやさかい、今頃地上でデートの続きをしてるんとちゃう?告白が上手くいけばの話やけれどな」

 

 

 店の中で酒を飲む二人……勇儀とヤマメの姿がそこにあった。

 

 

 「成功したのか?」

 

 「わからへん……けど、うちの見立てでは失敗したんとちゃうかな?萃香にはまだ早かったんとうちは思う」

 

 「なるほどな、でもヤマメのおかげで萃香の奴デートできたんだろ?いいよなぁ!私もデートしたいな!」

 

 「勇儀の場合はデートと言うより飲み会とちゃう?」

 

 「はははっ!そうなるかな、萃香が認めた男と酒を飲み交わす……これは譲れないな!」

 

 

 くいっ!っと勇儀の片手にある【星熊盃】に入っている酒を一気に飲み干す。星の模様がある赤い盃のことで、これは鬼の名品であり、注いだ酒のランクを上げる品物である。それに次々と酒を注いで飲み干していく様はまさに鬼だ。

 酒を豪快に飲みながらつまみに手をつけようとした。しかし、そこにはつまみがなかった。先ほどまでテーブルに置かれていた勇儀の分のつまみがいつの間にか消えていたのだ。

 

 

 「おん?おい、ヤマメ、私のつまみ食ったか?」

 

 「え?うちがそんな意地汚いことせえへんよ?」

 

 「ふぅん……嘘はついちゃなさそうだな。そうなれば……」

 

 

 勇儀とヤマメに気がつかれずつまみを取った人物の正体に心当たりがあった。

 

 

 「こいしだろ?どこにいるか知らないが出てきてくれ。さっきのつまみは楽しみにとっておいたんだからよ」

 

 

 カタッと音を立て、つまみが入っていたはずの皿がテーブルに現れた。先ほどまではそこに何もなかったはずなのに、誰も皿を置いた姿は見えていなかった。だが、二人は驚かない。

 

 

 「全部食っちまったのかよ……こいし」

 

 

 名前を呼ばれて返事をするかのように薄っすらと二人の目の前に一人の女の子が姿を現し始めた。

 

 

 「あれれ?バレちゃった?」

 

 

 【古明地こいし

 薄く緑がかった癖のある灰色のセミロングに緑の瞳。帽子を被り、黄色のリボンをつけている。上の服は、黄色い生地に、二本白い線が入った緑の襟に黒い袖、下のスカートは、緑の生地に白線が二本入っている。左胸に閉じた目があり、そこから伸びた二本の管が体に伸びている。

 (さとり)という人の心を読むことができる妖怪なのである。

 

 

 しかし、相手の心を読む能力を持っていたが、その能力のせいで周りから嫌われることを知り、読心を司る第三の目を閉じて能力を封印し、同時に自身の心も閉ざしてしまったことで、心を読むことができなくなった代わりに【無意識を操る程度の能力】を手に入れた。この能力により、無意識で行動できるようになったこいしはあちこちをフラフラと放浪する妖怪となった。

 無意識により周りにそこにいても認識されないため透明人間のような状態になれるのだ。

 

 

 「こんなことができるのは地底でこいしだけだ。全部食っちまいやがって……仕方ないか。おかわりすればいいだけの話だしな」

 

 

 勇儀は空になった皿をどけてもう一度つまみを注文した。勝手に食べられても怒らないのが「勇儀姐さん」と地底の妖怪達から呼ばれる一つだ。太っ腹なところも勇儀としての良さだろう。勇儀は酒をコップに注ぎ、こいしに手渡した。

 

 

 「ほれ、飲めよ。つまみだけじゃ喉が渇くだろ?」

 

 「ありがとう!」

 

 

 こいしの見た目は子供だ。だが、妖怪の見た目が=年齢とは限らない。こいしは一口飲むと渋い顔をした。

 

 

 「辛い~!」

 

 「ちょっと強かったか?まぁ、そういう酒だからな。やっぱりお子様には無理だったな」

 

 「むぅ~!子供じゃないもん!」

 

 「ははは!そう言っている内はまだ子供だろうな!」

 

 

 こいしは頬を膨らまして抗議するが勇儀は愉快に笑う。ヤマメも勇儀に釣られて一緒に笑い出す。3人で盛り上がっていると勇儀たちの見知った顔が店に入ってくる。

 

 

 「おっ!パルスィじゃないか!こっちこいよ!」

 

 

 【水橋パルスィ

 金髪のショートボブ。目の色は緑色であり、耳は先の尖ったいわゆるエルフ耳である。服はペルシア人女性の礼装であるペルシアンドレスに近い。また、服の裾やスカートの縁には、橋姫伝説の舞台である宇治橋を髣髴とさせるような橋の形をした模様や装飾が施されている。

 種族は橋姫。彼女は地上と地下を結ぶ穴の番人であり、本来は地上と地下を行き来するものを見守る守護神的存在なのだが、嫉妬深い性格の所為で通行者にちょっかいをかけてくることもある。

 

 

 何気なく立ち寄った店に勇儀たちがいるのを気づいたパルスィは恨めしそうに勇儀たちを睨む。

 

 

 「3人で仲良くしているのが妬ましいわ!」

 

 「またそれかいな、これで何度目やろなぁ?」

 

 「そんなに妬んでいるとしまいにハゲてしまうぞパルスィ」

 

 「ハゲないわよ!」

 

 

 なんやかんやでパルスィも飲み会に参加することになり、妬みながら飲み会は続いていた。ふっとそんな時にこいしが思い出したように言った。

 

 

 「あ、そう言えば勇儀のところの……小さい子はどうしたの?」

 

 「んぁ?小さい子?……萃香のことか?」

 

 「そう、そんな名前だった気がする。お姉ちゃんがいつも言ってた。『地底で問題ごと起こさないでほしいわよ……これだから鬼は……』って言っていたよ」

 

 「はははっ!時々私も萃香と混じってどんちゃんしているからな。でも、それが鬼だ。伝えておいてくれ、鬼だから仕方ないとな」

 

 

 豪快に笑う勇儀は萃香とよくどんちゃん騒ぎを起こしてよく地霊殿の主を困らせている。こいしは地霊殿の主の妹なのであるが、よくブラブラと気ままに放浪しているのだ。 

 

 

 「それで萃香がどないしたん?」

 

 

 萃香の名前が出て来て気になったヤマメはこいしに尋ねた。

 

 

 「萃香ちゃんはここ(地底)に住み着いているの?」

 

 「あいつが?いいや、あいつは地上の鬼だ。帰りが遅くなって私の家に泊まりに来たりするが基本的にはちゃんと帰るぞ。地上の者がここにいるのは本来ならルール違反だからな。それがどうしたんだ?」

 

 「住んでいないの?それじゃ私の見間違いだったのかな?」

 

 「一体さっきから誰のこと話しているのよ?3人でわかった話をして……妬ましいわ!」

 

 

 パルスィが自分だけ会話に入っていけず除け者になっていることで嫉妬していた。ヤマメが落ち着かせて伊吹萃香について教えた。パルスィは地底で暴れる鬼の萃香の名前は知っていたが、詳しくは全く知らなかったのだ。

 

 

 「……っというわけなんよ」

 

 「ルールを破って勝手に地底に来ていたのね。流石は鬼ってところだわ。自分勝手で妬ましい……!」

 

 「結局妬まれるのか」

 

 「……ねぇ、そろそろ続き話していいの?」

 

 「ああ、悪いなこいし。それで見間違いとはどういうことだ?」

 

 「私、地底でブラブラしていたら見たの。その萃香ちゃんが男の人(?)と一緒にお風呂に入っているのを」

 

 「「「……はっ?」」」

 

 

 勇儀たちは時が止まったように動かなくなった。萃香のことを一番よく知っている勇儀ですら自分の耳を疑ったぐらいの動揺が体に走った。

 

 

 「ちょ、ちょっと待てこいし、その鬼は頭に二本の角を生やしていてお前ぐらいの小ささだったか?」

 

 「うん、生えていたよ。それと私の方が少し大きいもん!それでね、勇儀と一緒に居るところ何度も見たからあれは萃香ちゃんだと思ったんだけどなぁ?男の人と喜んで一緒にお風呂に入っていたのを見つけて、あれが萃香ちゃんの旦那さんなんだって思ったけど違うの?」

 

 

 どうやらこいしの話に出てくる萃香らしい人物はらしいではなく本物のようだ。本物の萃香が地底に滞在していることに別に驚くことはない。問題なのは萃香が男と一緒に風呂に入っていることが問題だったのだ。

 

 

 「萃香、一体そんな破廉恥なことしてややわぁ!その男の方はどちらさんやの?」

 

 「う~んとね……髪は長くて、青色でね、目が赤かったよ。それとカッコイイ顔のお兄さんだったよ」

 

 「……えっ?」

 

 

 ヤマメはその特徴を聞いて真っ先に思い描いた人物がいた。しかもその人物なら萃香と一緒に居てもおかしくはない。数日前にその人物と会って、萃香のデートをキスメと共に見送ったのだから……

 

 

 「おいヤマメ、そいつに心当たりあるのか?」

 

 「あ、ああ、まぁ……比那名居天子って知っている?」

 

 「萃香に聞かされたぜ。あいつが羨ましいぜ!本気で喧嘩できる相手だって聞いているが……まさか天子がここにいるのか!?」

 

 

 勇儀は目を輝かせた。地底にいるならば一度戦いたいと思っていた……しかし、すぐに思う。何故ここにいる?しかも萃香と一緒に風呂にまで入っている。それも萃香は勇儀に何も知らせずにこいしによれば数日前の話だ。その後もこいしから詳しく聞いた話だと小さい萃香が天子を見張っており、鎖で繋がれていたとこいしは語った。

 こいしは無意識の能力で萃香にも天子にも気がつかれずに様子を窺えた。だが、こいしは無意識の状態であるために、天子を助ける気は起こらなかった。珍しいものを見たとそのままどこかへフラフラと行ってしまったのだ。そのことを聞いたヤマメはまさかと思い、萃香と天子がデートした日のことを勇儀たちに伝えた。

 

 

 「それからうちとキスメは見送っただけやからどうなったかわからへん。てっきり地上に帰ったのかと……」

 

 「こいしの話だと萃香の様子がおかしいようだな」

 

 「えっ?萃香ちゃんの様子おかしいの?元々あんなのじゃないの?」

 

 「そんなわけあるか。それにしても天子を独占するように洞穴で暮らしているか……その萃香と天子がデートした日の出来事を知る奴を探して事情を聞いてみようぜ」

 

 

 萃香の様子がおかしいと判断した勇儀は萃香に何があったのかそのことを知っている者を探そうと立ち上がろうとした時に視界に入ってきた。先ほどから下を向き、汗をかいて沈黙しているパルスィが視界に入ってきたのだ。勇儀はパルスィを睨む……すると、勇儀の視線を感じたのか汗が留めなく流れていた。

 

 

 「……おいパルスィ、お前何か知っているな?」

 

 

 話しかけられたパルスィの体が飛び跳ねた。完全に動揺して勇儀の目を見れない程だ。そんなパルスィに勇儀が詰め寄った。

 

 

 「おいパルスィ、知っているなら今のうち話した方が身のためだぞ?」

 

 

 勇儀は拳を鳴らしてパルスィの瞳を逃がさないように睨みつける。蛇に睨まれた蛙ようにパルスィは動けなくなっていた。

 

 

 「……じ、じつは……」

 

 

 パルスィはゆっくりと話し始めた。

 店で食事をした後に橋の所まで戻ってきたパルスィは見てしまった。橋の上でイチャイチャするカップルに見えた男と女の姿が……男の方は青髪のロングでパルスィでも見惚れてしまう美しさを持ったイケメンに、女の方が頭に角を生やした子供だった。兄妹かと普通は思うのが、その容姿はあまりにも似てないので凹凸カップルだとパルスィは確信した。パルスィは隠れて様子を窺うことにした。

 会話は遠いので聞こえてこないが、様子を窺っていると幸せそうな顔をする二人を見ていて妬ましく思ってしまった。ハンカチを噛みしめて何度も妬ましいを繰り返していた。そんな時に女の方にあるものが宿っていることをパルスィは発見した。

 

 

 パルスィには【嫉妬心を操る程度の能力 】がある。彼女にとって嫉妬心とは力の源であり、弱肉強食の地底世界において強い力を保つために積極的に能力を行使しているらしい。ちなみに自身の嫉妬心でも力を得ることが出来る。

 この能力で女の方に嫉妬の炎が生まれかかっていたのを発見し、パルスィはその嫉妬の炎を膨れ上がらせてしまった。そこから状況は一変し、何やら男は無数に増えた女に連れられて行った。意外な展開に困惑したが、イチャイチャしている方が悪いと決めつけてそれ以上気にすることを止めた。その男と女が天子と萃香であったことを彼女は知らなかった。

 

 

 全て語ったパルスィはまさかこんなことになるとは思っていなかった。遠くから見ていたので萃香だと気がつかなかったし、嫉妬心を(こじ)らせて天子が監禁されるとは夢にも思わなかったのだ。こいしの話を聞いていてヤバイと思っていたところに勇儀にそのことを見透かされてしまったわけだ。

 

 

 「はぁ……パルスィお前何やっているんだ……」

 

 

 勇儀はため息をついた。萃香は天子に対する思いから何かがあって嫉妬心が生まれ、パルスィがその嫉妬心を増大させてしまったことで萃香の様子がおかしくなったものだと理解した。この原因はパルスィにあった。

 

 

 「わ、わたしだってそこまでになっているとは思わなかったんだから……」

 

 「まぁ、過ぎてしまったことをとやかく言うつもりはないが……暴走している萃香を元に戻さないと天子がかわいそうだな。後、地上では問題になっているかもな」

 

 

 こいしの話は数日前の話だ。今この間も天子は萃香に監禁されていることになる。きっと無断で天子は監禁され、萃香から天子のことを聞いていた勇儀は地上との関係を危惧した。

 天子はあの八雲紫も一目置いている存在であり、天子の交友関係は幅広い。天子が行方不明になったら必ずその者達が動き出す。それにここは地底で、地上とは仲がいいとは限らない。悪いことになれば地上の妖怪達が地底に攻め込んでくることになるかもしれない。それは不味い……これは早く天子を開放してやらないといけないと決めた。

 

 

 「どないしよ勇儀……?」

 

 「さとりの所に行くぜ」

 

 「お姉ちゃんの所に?」

 

 「ああ、何かと地上とのやり取りがあるだろうし、さとりには知っておいてもらわないとまずいからな」

 

 

 【古明地さとり

 やや癖のある薄紫のボブに深紅の瞳。フリルの多くついたゆったりとした水色の服装をしており、下は膝くらいまでのピンクのセミロングスカートを履いている。頭の赤いヘアバンドと複数のコードで繋がれている第三の目が胸元に浮いている。

 古明地こいしの姉であり、こいしと同じく(さとり)妖怪。【心を読む程度の能力】のせいで妖怪や怨霊から非常に嫌われてしまっており、自身でもそれを自覚しているためか他者との接触を嫌い、基本的に地霊殿に引きこもって暮らしている。逆に言葉を話せない動物などからは好かれているのか、地霊殿は動物達で溢れている。

 

 

 地霊殿の主であり、地底の管理を任されている人物である。今回のことをさとりに知っておいてもらわないと後々ややこしいことになるので報告しに行かなければならないのだ。

 

 

 「なら、うちも行く。そもそも萃香に提案してデートするよう仕向けたのはうちやさかい責任はとらんと」

 

 「私もお姉ちゃんに会いに行く~」

 

 「私は……」

 

 「パルスィは強制的についてこい」

 

 「……ハイ……」

 

 

 勇儀たちは地霊殿へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「天子♪今日は早風呂で一緒にハイロ♪」

 

 「(皆知っているか?ラスボスからは逃げられない……今日も萃香にまたベッタリされた一日だ)」

 

 「天子……今日も一緒ダロ?嫌だナンテ言わないヨナ?」

 

 「ヨロコンデオトモサセテイタダキマス」

 

 

 天子に救いの手は届くのだろうか……?

 

 


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