それでは……
本編どうぞ!
「もう、お姉ちゃんなんで来ようと思ったの?」
「だ、だってあなたが心配だったから……」
さとりは地霊殿から消えたこいしを探しに萃香達が暴れている旧都に向かっていたが、戦いの衝撃に吹き飛ばされて瓦礫に埋まりそのまま気を失って、霊夢達に発見された。しばらくして目が覚めたさとりは地霊殿の自室のベットで寝ており現在に至る。
「と、とりあえずこいしが無事で良かったわ。旧都の方は壊滅的だけれど……」
そう……私が気を失っている間に終わっていた。萃香さんは元に戻ったが旧都の方は元には戻らなかった……お燐が霊夢さんを呼んできてもらい今回の騒動は終わったのよ……私の仕事は数えきれないほど多くなってしまったけどね……
地底を任されているのはさとりだ。今回の騒動で出た損害や妖怪達への対応が責任者として重くのしかかる。
泣きたい……どうして私から平穏を奪うの?私が何かした?地底では私は好かれる方ではないと自分自身わかっているわよ。心読めるしどう思われているかなんてすぐにわかる。中には私のことを好いてくれる奴もいるけど、私にとっては迷惑ですよ。だって、ロリコン野郎に好かれたって嬉しくないですし……いやらしい想像しているのバレバレなんですから……萃香さんも萃香さんですよ!地上との取り決めを今まで無視して自由にやっていたのを勇儀さんの友人だからって大目に見てあげていたんですよ!それに他の方々も旧都を滅茶苦茶にして責任者の辛さを分かれっての!!もう今回の騒動で私は怒りました!みっちりと文句言ってやりますよ!!
ベットから出て立ち上がり、旧都を滅茶苦茶にした萃香達に文句を言おうと席を立った時に扉がノックされた。
「……誰ですか?私は今、機嫌が悪いんですけど?」
「あ、あの~さとり様、お燐です。その……お客様がさとり様に会いたいと言っております」
客?もうこれから今までの溜まりに溜まったストレスを開放してやろうと思ったのに……仕方ありませんね。一旦気を落ち着かせましょう。こいしも傍にいるんですし……くっ!また胃が痛くなってきた……こんな時に手元に薬が無いなんて……私なんでこんなについていないのよ!!?
不満を抱えながら来客を待たせるのもどうかと思い招き入れる。さとりはその来客には初めて出会う人物だった。
「こんにちは、さとりさん」
入って来たのは腰まで届く青髪のロングヘアに真紅の瞳をさとりに向ける。ドキッとさとりは心臓が脈打つが聞こえた気がした。
あら……カッコイイ方……そ、そうじゃなくて!何見惚れているのよ!待ちつけ私、いつも通りに対応するのよ。見た目がカッコイイ方だからって内面まで同じだとは限らないわ。私は知っているのよ、
さとりは知っている。他者の心を読むことにかけた能力を持っているさとりにとっては秘密などすぐにばれてしまうもの。実際に旧都に出向いた時は見たくもない卑猥なモノを見て頭から当分離れていかなかった。それに地底には最近萃香ファンクラブとかができたことも耳にしていた。
別に好みなんてそれぞれですけど、どうせあなたもそういう
さとりは警戒していた。地底の多くの妖怪からも忌み嫌われているだけじゃなく、中にはそう思わない連中もいるがさとりにとっては敵と同じだった。幼児体型である体であらぬ妄想を抱く連中を味方だと思わないから……そんなこんなでさとりは地底では地霊殿に引きこもることが多い。地底の責任者という立場もあり、書類をまとめる日々が多かった。そんなさとりは今回の騒動で今までの鬱憤が噴火しかけていた。地上から時々やってくる鬼の萃香を見逃していたのは勇儀の知り合いであり、彼女には建物の建設などで力仕事を任せられる存在で必要だった。人手が足りない時には酒で釣って頼みに行ったこともあった。大体勇儀と萃香が喧嘩して崩壊した建物を直す方が多かっただけなのだが……
「お兄さん大丈夫だった?」
「私は大丈夫だよ。まぁ、衣玖達は今もあれだけどね……」
ん?こいしの知り合いの方のようね。こいしとは一体どういった関係なのでしょうか……?もし如何わしい関係なら即刻出て行ってもらうべき……!
さとりは
「(うわぁ!生さとりだ!こっち見てるよ!ゲームで見るよりも幼くてかわいい♪原作と同じで
……はっ?何言っているの?私のことを知っているにしても……
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「なるほど、『転生』ですか……信じられないことですが、ここは幻想郷ですのでなんでもありなのですね」
「あっ、ちなみに人里には転生を体験済みの稗田家の女の子もいますよ」
「そうなのですか?興味ありますね」
現在書斎には天子とさとりの二人だけになっていた。さとりは天子の心を覗き見ると不可解なことを読み取ることとなった。天子の方もさとりが心を読む能力を持っているの知っていた。さとりは天子と話す必要があると思い、お燐とこいしには席を外してもらい二人だけで話し合うこととなった。
天子は隠してもさとりには全てが筒抜けになるので、包み隠さず語ることにした。自分は転生者で、この幻想郷に生きる者達は東方シリーズに登場するゲームのキャラクターであるということを……そして自分は男ではなく女であることも語った。
「信じてくれましたか?」
「そうですね。まぁ、初めは『原作と同じだ』とか意味がわからなかったですが……あなたの心を読んでいると真実であることが伝わってきましたよ。それにしてもあなたが比那名居天子だったとは……萃香さんも凄い方に惚れ込みましたね」
「あはは……でも、私は萃香に好きと言ってもらえて嬉しかったですよ」
笑みを浮かべる表情はとても美しく輝いていた。事情を知らぬ女性が見れば心がキュンとしてしまうだろう。だが、さとりは知った。比那名居天子が男性という肉体を持ち、女性の魂を持つということを。
「嬉しそうですね」
「ああ、だって私は東方大好きなファンの一人だからね。原作に出てくるキャラ達と出会うだけじゃなく、一緒に異変を解決したり、宴会もしたんだからね!いろいろあるけど私はとても嬉しいよ!こうして実際にさとりちゃんと話すことが出来ているのだから♪」
私ってばいつになくテンションアゲアゲ状態です!だって今まで私の悩みを打ち解ける相手がいなかったのだから……ゲームキャラに出会って興奮して夜も眠れないとか変な相談しようものならかわいそうな目で見られるのは確定だからね。
天子は今まで転生したことを誰にも打ち明けることはなかった。しかし、さとりは違った。さとりは心を読むことができるから隠し事などできないし、それに天子は何故かさとりならば話しても大丈夫と思えた。勘と言うやつだ。会った瞬間にびびっと天子の体に電流が走ったのだ。
「私的には自分が
「あっ!?す、すまない……でも、私が男である時点で原作崩壊しているし、何も気にしなくていいと思うぞ?もしかしたら気分を悪くしたか?」
自分が実はゲームのキャラだったなんて嫌……だよね……
「いえ、私は大丈夫ですよ。嫌だなんて思いません。原作がどうとか私には関係ありませんから。気にしていませんし、私が仮に
「感謝?」
さとりは嫌がるどころか嬉しそうに言った。
「私には妹のこいしがいます。お燐も、ここにはいませんがお空もいます。地霊殿には私にとっての家族がいます。地底で私は好かれていない方ですが(ロリコン野郎共は除く)幸せものですよ。こいし達がいることが私の幸せですからね」
さとりちゃんじゃなくてさとりさんって呼ばないといけない気がしてきた。立派だ……生前の私だったらゲームのキャラとしてここに存在するとか知ったら自分の人生と製作者を絶対恨むもん。そんな私に比べてさとりさんは心が強いなぁ。
「止してください。褒めても何も出ませんよ。それに私としては『ちゃん』より『さん』の方がいいです。舐められている感じでムカッとします」
「す、すまない……」
「謝らないでくださいよ……それとなんですが、さっきから男口調ですけど私の前では素の喋り方でも問題ありませんよ?誰かに言いふらしたりしませんので」
そ、そうしたいのはやまやまなんだけれど……男の姿で女口調ってのはさとりさんの前でもちょっと……それにこの喋り方になれてしまってどうしても男口調になってしまうんです……女口調に慣れてしまって天界でうっかり口調が出てしまうと皆から変な目で見られてしまうかもしれないんです……ごめんなさい……
申し訳なさそうに縮こまる天子。いつもの天子とは違い、本来の自分を知っているさとりしかいないこともあって体育座りでポツンと椅子の上に小さく身を丸めていた。
「謝らないでくださいよ……あなたも苦労しているんですね」
「……あなたもって……さとりさんも苦労人ポジションの方か?」
「それはもう……聞いてくださいよ!この前なんて……!
さとりは語る。地底で起きる大半のことの後始末はさとりが全部片づけていた。とある閻魔の取り計らいにより、地底に地霊殿を建てそこで生活する許可をもらった。それまでは良かったのだが、地底の管理を任されてしまい、いつの間にか地底には地上から忌み嫌われていた妖怪達が住み着くようになった。その妖怪達が問題を起こした時の対応や責任を担うようになってしまい書類をまとめ、睡眠もとれずにデスクワークに励んでいた日々を語る。ブラック企業さながらの理不尽だった。最近では地底の妖怪達も大人しくなりさとりは平凡を取り戻せたと思っていた矢先に今回の騒動が起きてしまいカンカンに怒っていた。
「――それで萃香さんを何度大目に見てあげたと思っているのですか!今度という今度は文句を言わないと私の気が落ち着きませんよ!!あいたた……興奮したら胃が……」
さとりさん滅茶苦茶怒ってます……私の目には怒りマークが浮き出ている気がしてならない。さとりさん苦労しているみたいですね。なんか申し訳ない……萃香達には私からきつく言っておくから許して!後で胃薬買ってきてあげますから!
「あなたなら彼女達も言うことを聞きますのでお願いします。胃薬を買ってきてくれるのは嬉しいですが、そこまでしていただなくても……いえ、やっぱりお願いします。この後の仕事量を考えたら更に胃が……」
ストレスで大変そうだ。心読めなくてもわかるぐらいにさとりさん顔が真っ青ですね……健康にいい料理でも作ってあげようかな?
「あ、あら?天子さんって料理作れるのですか?それは食べてみたいですね。あなたの心を覗いている時に見えてしまった数々の料理がおいしそうだったので……」
「そうか、それならば後で台所を借りるとするか。好きなものがあるならば作って差し上げよう」
「そうですか?ならばお言葉に甘えましょうか。あなたが来るまでにいろいろと爆発しそうだったので……リフレッシュできる料理がいいですね」
さとりさんストレスがマッハなのですねわかります。だがその前に本題だ。萃香と衣玖達のことなんだけれど……
天子は旧都を滅茶苦茶にしてしまった萃香と戦うことしか視野に入れていなかった衣玖と妖夢と神子の3人はどうなるのかと心配していた。地底の責任者がさとりと言うこともあり、ここを訪ねたのだ。
流石に地底の妖怪達はカンカンに怒っているでしょう……萃香も衣玖達も私のためにやったことなんだから責められてほしくない。私が身代わりになってあげようかなとも思っているけど、そんなことをすると萃香も衣玖も妖夢も神子も自分を責めてしまうかもしれない。どうすればいいのか悩んでいるとさとりさんを思い出したのだ。だから私はさとりさんに何とかしてもらえないかと交渉しに来たわけ。勿論、タダとはいかない。ちゃんと損害賠償を払う覚悟だ。足りないんじゃないかと思うでしょうけど、私自身の資産はもの凄く多いから十分足りるはずです。頭も下げる覚悟だ。それでも許してくれないのなら片腕一本差し上げることだってしてあげるわよ。
さとりは
「あなたって他人に対してそこまで熱くなれる方だなんて……なるほど、萃香さん達が惚れるわけですね」
「萃香達って……衣玖達もか?」
「わかっているくせに、あなたは鈍感ではないはずですよ?あなたを巡る女の争いのせいで旧都は壊滅的状態になって私が苦労するという現実は受け入れがたいですけどなってしまったものは仕方ありません。萃香さん達が起こした騒動の後始末は私に任せてください」
でも、さとりさん達だけで大丈夫なのだろうか?相手は勇儀さんや萃香と違う鬼もいたし、力づくで文句とか言ってくる妖怪もいるはず……
「大丈夫ですよ。私だってこう見えても妖怪なのです。それに勇儀さんとは仲がいいですし、私には
「さとりさん何か言ったか?」
「いいえ別に何でもないですよ。とにかく地底のことは私に任せてください。暴力沙汰なんて起こさせませんから♪」
そう言って天子に向かってウインクするさとりに天子は照れてしまった。
うわぁきゃわいい♪さとりさんきゃわいいです♪こういう妹欲しかったわ。私一人っ子だったし……どうさとりさん?私の妹になってみませんか?
「遠慮しておきますよ。私は地霊殿の主ですから、まぁ、あなたとこうして気を遣わずに話せる存在はあまりいませんから嬉しい誘いですけどね」
「だったら私達
「そうですね、見た目は男性でも中身は女性ですし襲われることはないでしょう。それにあなたは信頼できる方だとわかりましたし、私も愚痴を気軽にこぼせる相手が欲しいと思っていたところです。外の世界の
「ああ、いいとも。私もさとりに何かあれば喜んで手を貸すよ」
「ふふ、お願いしますね。比那名居天子さん」
「ええー!
「こいつとは失礼ですね」
萃香がさとりを指さして天子に詰め寄っていた。客室に集められた今回の騒動に関わった人物が全員集合していた。
「ああ、何かダメな事でもあるのか萃香?」
「いや、別にそんなことはないんだけど……」
私はさとりさんと仲良くなった。ストレス解消スタミナ料理を食べさせて元気がついたさとりさんは満足そうで私も笑みがこぼれた。美味しそうに食べる姿は見た目と同じで子供っぽかった……そう思っていたらつま先を踏んずけられていた……こ、これも仲良くなった証拠だよね?食べ終わったさとりさんは十分満足して元気になったので今回の騒動の落とし前を伝えに衣玖達に会いに来た。そこで萃香は話を聞くと驚いた様子だった。ちなみに私が転生者であることは語っていない。そこんところはさとりさんと話し合ってまだ話すべきではないと判断されて語らなかった。だが萃香の反応がいちいち大きい感じがする?
「天子は私とだけの
「ん?萃香何か言ったか?」
「いいんや、なんでもない……」
結局何だったんだ萃香は?まぁいいか。それよりも衣玖、妖夢、神子が動かない。やっぱり伝えた内容が内容だからかな……
さとりさんと話し合って地底で暴れた責任を問われることになった衣玖達には地底で働くこととなった。期限は旧都が元通りになるまでの間だ。それまでは地底で生活し、タダ働きということだ。これに妖夢の保護者である幽々子さんが反対するかと思ったが「寧ろ修行のためにやっちゃって」と賛成した。青娥さんも「最近腑抜けているのでいい気味ですわ♪」と面白がっていた。その時の二人の目に浮かんだ涙が忘れられない……
「あの……天子様、私は天界の仕事もありますので両立はちょっと難しいかと……」
「それならば大丈夫だ。衣玖の分も私がやっておく。最近衣玖ばかりに仕事をやらせていたので申し訳ないと思っていたところだからね」
「あ、あの……そ、そういうことではなくてですね……天子様と離れ離れになるのは……」
衣玖ごめんね、さとりさんと話し合って責任はちゃんと自分自身で取らないといけないってさとりさんに言われたの。でも安心して衣玖、天界の雑務等は私がやっておくし、地底には勇儀さんもいるから大丈夫だよ。戦いが終わったら勇儀さんに滅茶苦茶褒められた。今も勇儀さんが私を満面の笑みで見つけている。余程気に入られたみたいだ。さっきも「彼女達に何もないように私が天子の代わりに見ておいてやる。私生活も私達が支援してやるから心配すんな!」って引き受けてくれたんだしね。勇儀さんを慕う妖怪(変態)の気持ちがわかる気がする……勇儀さんパネェ!
「諦めなさいよ、あんた達が暴れて壊したんだから自業自得よ」
「そ、そんなぁ!霊夢は私がいなくて寂しかったんだろ!?働いている間は酒禁止とか拷問だよ!」
「知らないわよそんなこと。それに寂しくなんてないわよ。酒を飲みたいのならばさっさと元通りにすることね」
「霊夢の鬼!悪魔!無一文巫女!そんなんだから胸も貧相なんだ!!」
萃香の頭にお祓い棒が振り下ろされタンコブから煙を上げる物言わぬ骸となった。
「ゴホン!ええ、そういうことになりました。なので彼女達にはしっかりと責任をとってもらいます。よろしいですね?八雲紫さん?」
さとりの言葉でこの場にいる全員の視線が一人に集束された。八雲紫は霊夢達を地底に送り届けた張本人だ。先ほどから一言も言葉を発しない紫に確認を要求した。紫は目を細めて何かを考えていたが、すぐに答えが返って来た。
「ええ、構いませんわ。勝手に地底へ訪れては条約を破っていた萃香にも原因はありますしね。それに地底での揉め事に関しては私が関与する必要はないでしょ?地底は地底、地上は地上なのですから」
「……まぁそうですね。あなたの言いたいことはわかりました。しばらくの間はこの方達を預からせていただきます」
「天子様!」
「天子さん!」
「天子殿!」
このままでは地底での生活を余儀なくされてしまう。そう思った3人は天子に詰め寄るが……
「……3人共……壊したら責任取らないといけないよ。その間地上のことは任せておいてくれ。だからその……頑張って」
がっくりと膝をつくのであった。
ちなみにパルスィは後で勇儀に干されたらしい……
------------------
「霊夢すまないな。私のせいで迷惑をかけてしまって……」
「別にいいわよ。萃香が天子を攫わなければこんなこともならなかったし、地底でパルパルしている子に目をつけられることもなかったんだから」
紫のスキマ経由で地上へと帰って来た天子達一行はそれぞれの帰路についていた。アリスと咲夜は用も済んだので一足先に帰って行った。もう夕日が沈みかかっており、辺りは暗くなってきていた。そしてこの場にいるのは天子を含め5人……霊夢と青娥と幽々子と紫のみとなっていた。
天子は自分を探してくれたことを感謝し、アリスと咲夜にお礼を言い、霊夢にもお礼を伝えているところだ。
「まぁ、感謝しているなら今度お賽銭入れて頂戴。そうすれば私の機嫌は良くなるから」
「そうだね。そうさせてもらおうか。いつまでも引き止めると妖怪に襲われてしまう……博麗神社まで送ろうか?」
「いいわよ。私を誰だと思っているの?博麗の巫女よ?妖怪如きに後れを取るわけないじゃない」
霊夢はそういうとそのまま空へ飛んで行ってしまった。残されたのは青娥と幽々子と紫と天子のみ。
「幽々子さん、妖夢が居ない間は天界で住む気はないか?一人だと苦労するだろう?」
「ありがとう、でもね私は白玉楼から離れるわけにはいかないわよ。あそこには魂達がいるし、案外あなたに会いたくてすぐに地底を元通りにしてしまうかもしれないでしょ?お誘いは嬉しいけど、白玉楼で待たせてもらうわよ」
「そうか、ならば時間の合間に白玉楼にお邪魔して妖夢の代わりをいたそうか。それならば何の問題もないだろうけど、毎日とはいかないしな……」
天子は妖夢が地底にいる間、地上のことは任せてと大見えをきってしまったが、幽々子の世話をどうしようかと悩んでいた。ノープランで実行に移してしまうことも元天子の影響があるのかもしれない……
「それならば藍と橙が住み込みで働かせるわ。それならば幽々子が餓死することはないでしょう」
「ちょっと紫!餓死するとは失礼ね!」
「一度妖夢が出て行って帰って来なかったときに廊下で死にかけていたのは誰かしらね?」
「うぐっ!?あ、あの時は私も若かったから……って今も若いわよ!それに私は既に死んでます!亡霊やっているんだからね!」
プンスカと怒る幽々子を
「うふふ♪豊聡耳様の泣き顔……かわいかったですわ♪」
「神子がいない間は青娥さん達はどうするのだ?私にも責任がある故、何か手伝うことはないか?」
「う~ん……特に今のところはないですわね。それに豊聡耳様がいない方が最近回っている気がしますわ。豊聡耳様は毎日『天子殿成分が足りない……足りない……足りない……』とか言って腑抜けていましたのでお邪魔虫が居ても居なくても問題ないですわ」
「(青娥さんえげつないなぁ……)」
そう笑顔で語る青娥に内心やべぇと思う天子であった。青娥自身は神子のことを思ってきつく当たっているだけなのだった。
「まぁまぁ……幽々子、藍と橙を送るから先に帰っててくれない?そっちの邪仙さんもそろそろお帰りの時間では?」
紫は指を鳴らし、スキマが現れた。それぞれ幽々子と青娥の前に送り届けようということだろう。スキマの先は白玉楼と神霊廟に繋がっているようだ。
「(ん?私の前だけスキマが現れない……何故?)」
天子の前にだけスキマが現れずに紫が立っているだけだ。
「幽々子、それと邪仙さん……私は少し彼とお話があるのでお先にどうぞ……」
「紫……」
「大丈夫よ幽々子、ただ少しお話したいだけ……何もしないわよ」
「……その言葉……信じたわよ」
幽々子は紫と天子を見比べてそのままスキマの中に消えて行った。青娥も何かを感じ取ったのかスキマの中へとそそくさと入って消えてしまった。残されたのは紫と天子だけ……お互いに何も喋らぬまま時間が過ぎていく。
「(え、紫さん話があるとか言ってだんまりですか?ど、どうしたのよ?私まずいことしたかしら……!?)」
天子はもしかしたら紫が怒っているのではないかと原因を頭の中で探したが一向に出てこなかった。まず、表情筋一つも動かさずに天子を見つめる姿にどうしたらいいのか戸惑っていた。
「……比那名居天子」
「……は、はい」
「……ごめんなさい」
紫は天子に謝った。何のことか訳がわからない天子はポカンとするしかなかった。
「いきなりでごめんなさいね。萃香のことよ、勝手にやったこととはいえ、私の友人が迷惑かけたわね」
「(そうだった。萃香と紫さんは昔ながらの付き合い……私と萃香以上に友歴が長いんだよね。友達想いの紫さん……素敵やん!)」
友達の仕出かしたことについて謝罪する紫の姿を見た天子の中で紫への好感度はぐぐーんっと上がった。
「私は気にしてないよ。萃香も私のことを想ってやってしまったことだ。様々な要因が重なって今回のことが起きた。地底に迷惑をかけてしまったし、地上の皆にも心配かけた。紫さんにも心配かけて申し訳なかった」
「……私は別に心配なんてしていなかったわよ。あなたのことなんて」
「……そうか(え?そうなの……普通にショックなんですけど……)」
紫のちょっとした言葉に傷ついた。天子は帰って布団の中で泣こうと決めた。
「……まぁ、心配はしていなかったわよ。
「(え?それってどういうこと?)」
紫の語った言葉の意味を理解できなかった天子は紫を見つめるが、目の前にはいつの間にかスキマが現れていた。
「お話は終わりよ。そろそろ帰らないと天人達が騒ぎ出すんじゃないかしら?」
「(げっ!?そ、それはマズイ!!)紫さんありがとう、それではまた!」
天子は急いでスキマの中へと入り天界へと帰って行った。
「……比那名居天子……地上だけでなく地底にまであなたの影響力は及ぶようね」
スキマを閉じ、独り言を呟いた。周りには誰もおらず、一人だけの空間……夕日が沈み暗闇が支配した空間に一人で佇む賢者。
「ずっと見ていたわよ、萃香と一緒にデートしている時から……ね」
紫は天子を監視していた。スキマを開き、天子の行動を全て目に焼き付けていた。萃香がおかしくなったところから萃香が元に戻るところまでバッチリと監視していたのだ。誰もそのことに気づく者は一人としていなかった。そのまま静観を続けておくつもりであったが、このままだと地底が崩壊してしまうかもしれない……流石の紫もそれは良しとしなかった。丁度博麗神社に地底からお燐が訪れていたのを知っていたため、博麗神社に出向くことにした。妖夢と神子の保護者達二人を引き連れて地底へとスキマを繋げたのだった。
「まさか萃香の嫉妬がここまでだったなんてね……恋は盲目と言うけれど……盲目になってしまったせいで地底で働かないといけなくなるだなんて……お馬鹿ね」
はぁっとため息が出た。萃香は当分地底でお世話になるだろう。自業自得なことながら友人としてため息が出てしまった。
「……何故私は彼にこんな言葉を彼にかけたのかしら……」
紫自身も無意識に発してしまった言葉の意味を理解することはできなかった……
「天子様……うぅ……天界へ帰りたいです……」
「私も……幽々子様のお食事を作っている方がいいです……」
「天子殿成分がこのままでは不足してしまう……無念です……」
「勇儀……お酒だけでもくれ……私餓死してしまうよ……」
「駄目だぞ萃香、私は天子の代わりにお前たちの面倒を見てやっているんだ。ちゃんとしないと天子の顔に泥を塗ることになるからな。あんた達もだぞ、
「「「「「そんなぁああああ!!!」」」」
地底では悲痛な叫びが木霊していた……