比那名居天子(♂)の幻想郷生活   作:てへぺろん

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黒歴史……皆さんにはありますか?私には……あります!思い出したくもない記憶って鮮明に残っているものなんですよね……(´・ω・`)


それでは……


本編どうぞ!




48話 再戦の道

 「天子、昨日映姫に何を言われていたのですか?」

 

 「カセンサン、アナタハナニモシラナクテイイ……イイネ?」

 

 「あっはい」

 

 

 ワタシハキノウノコトナドキニシテイナイ……ケッシテ……

 

 

 誰もが消したい記憶……黒歴史を掘り起こされた時のショックは大きかった。天子の目は光が失われて心もいつもとは違い冷たく冷え切っているようであった。今日の食卓は非常に静かである……茶碗が置かれる音だけでも部屋に木霊するかのように感じる程の静けさだった。これもみんな天子の状態のせいである。そんな状態の天子を見かねて華扇は話題を振った。

 

 

 「きょ、きょうはどういった修行をしましょうかね……天子はリクエストとかありませんか?」

 

 「ワタシハタダ……ムシンニシュギョウスルマデ……」

 

 「(駄目だこれは……天子がこれほど傷つくとは一体何が……少し気になる……)」

 

 「アハハ……クロレキシノートヲナゼツクッテシマッタ……アノトキノワタシヲチマツリニアゲタイ……」

 

 「(やっぱり詮索するのは止めよう……)」

 

 

 世の中には知ってほしくないことなどいくらでもある。少々気にはなるが天子のためにもこれ以上詮索することはしないでおこうと決めた。だから話題を変えることにした。

 

 

 「て、てんし、それじゃ……いつ頃に幽香と再戦するつもり?」

 

 

 幽香という単語に天子は反応した。

 

 

 ……はっ!?私は一体今まで何を……そんなことよりも幽香さんとの再戦時期は考えていなかったな。このまま修行に明け暮れて何年も経ってしまったんじゃ意味がない。それにこんな短い期間で私は以前よりもパワーアップしたと自覚できる。流石華扇さんの教えが良かったからかもしれないな。

 目標……『幽香さんと親友(とも)になる』今の私ならばあるいは……考えていても仕方ない。行動あるのみ!

 

 

 「華扇さん!」

 

 「ひゃ!は、はい!?」

 

 「今から幽香さんの元へ行こうと思います」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「はぁ……今日はいいネタがないものですかね?」

 

 「なんで私にそんなこと聞くのですか?私は今、仕事中なんですけど?邪魔しないでもらえますか文……さん」

 

 

 樹木の枝に腰かける二人の姿があった。だが、二人の距離は何故か離れているがこの二人ならば何らおかしくない距離間である。射命丸文と犬走椛と言う犬猿ペアなのだから違和感も何もない。

 

 

 「また呼び捨てにしようとしたでしょ!椛冷たすぎますよ!?」

 

 「私はいつも通りです。いつもの犬走椛ですが何か?」

 

 「そうだったわね。椛は私に()()は冷たいですからね!」

 

 「そうですよ。いつも通りの私……ん?あれは……」

 

 

 椛が何かを発見したようだ。彼女には【千里先まで見通す程度の能力】言わば千里眼を持っている。遠くの光景などこの能力で堪能し放題と言う訳だ。そして椛が見た者とは……

 

 

 「あれは天子さんと……時々見かける仙人……何故二人が……?」

 

 

 ふっと横にいる(距離が離れている)文の様子が気になったので見てみるとそこには残像を残して飛び去った後だった。

 

 

 「チッ!あいつ天子さんの元へ行きやがった!」

 

 

 千里眼でもうスピードで天子の元へと飛んでいる文を確認できた。連れ戻そうにも天狗達のテリトリーから出てしまって警備中の椛は持ち場を離れることはできなかった。

 

 

 「あのパパラッチめ、天子さんに余計なことすると只ではすみませんよ!」

 

 

 帰って来たら一回斬る必要があると再認識した椛であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「お二人共これからどこへ行くかぐらい話してくれてもいいのではないでしょうか?」

 

 「内緒だ」

 

 「意地悪ですね天子さん、でも私は挫けませんよ!例え火の中水の中草の中森の中!スカートの中にだって取材(ネタ)のためならばどこへだってついて行くのですから!」

 

 

 一瞬ピカ〇ュウと叫びたくなってしまったじゃないか文……おっといけないいけない、文のペースに乗せられてしまうところだったわ。華扇さんと目的地を目指して下山しているところに文がやってきて「取材(ネタ)のにおいがしましたので私も同行させてください!」っと言ってついてきちゃいました。取材(ネタ)のにおいの元は華扇さんかと思ったのだけれどそうじゃなかった。文と華扇さんは直接的な面識はないとのこと、ならば余計に食いつかないとおかしいと思った。あの文が華扇さんに対してはよそよそしい態度を取っている……文自身もそういう態度を取ってしまっているか理解できなかったようだ。いつもの文ならばグイグイ来てもおかしくはないのだが……しかし、私だから文が何故華扇さんに対してよそよそしいのかわかった。

 やはり本能が告げるのか、はたまた元上司(萃香)のパワハラで体が覚えているのか……苦手意識が表面に現れているようだった。文にとっては知らないでいい事もあるみたいだし、私が教えることはないから黙っておくだけだ。

 

 

 無理やりに文も同行することとなったが、これから行く目的地を知れば引き返して行くだろう。なので私はちょっとした悪戯心から文にはどこへ向かうかは内緒にしておいた。着いてからのお愉しみというやつだ。

 最近修行続きで流石の私もストレス解消したかったところに丁度いい(カモ)がやってきた……(カラス)なのにカモとはこれ如何に……文の反応を見て癒されよう♪

 当然華扇さんが「行き先を伝えなくていいの?」と聞かれたが文がどういう反応をするか見てみたいという好奇心が勝ったから華扇さんにも黙っといてもらうことにした。私だって悪戯妖精になる時だってあるのよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……っと言う訳で私達が向かっていたのは太陽の畑だったわけだ」

 

 「て、てんしさん!この私を()めましたね!この清く正しい射命丸文を!?」

 

 「清くない正しくない、椛のスカートの件は今だって憶えている」

 

 「あ、あの時のことを今でも……でも私はもう心変わりしたんです!今の私こそ真の清く正しい射命丸ですから!あっ!急用を思い出しましたのでこれで失礼させていただきます!」

 

 

 前科持ちが何を言う……でももう遅いわよ文、あなたは自ら「取材(ネタ)のにおいがしましたので私も同行させてください!」と言ったのを記憶している。華扇さんも証人だから何を言っても引き返せない……それにもう遅いのだよ文……

 

 

 記者としての勘が逃げろと警告していることを感じ取った文はすぐにこの場から飛び立とうとしたのだ。しかし文は困惑していた。

 

 

 「(……私は何故飛び上がらないのでしょうか?今頃誰にも邪魔されない空を駆け巡っているはずなのに……あやや?何やら足に違和感が……!)」

 

 

 違和感を感じた方へと視線を向ける……そこで見たものは足に絡みついている無数のツタが逃がさないと主張していた。文は理解してしまった……自然にツタが足に絡みつくなどありえないと。視界に天子と華扇が文を見ていた……否、正確には文の背後に目を向けていた。文の首がギギギッと(きし)むような音が聞こえそうな感じで振り返った。

 

 

 「どこへ行くつもりかしら……天狗さん♪」

 

 

 笑顔(目が笑っていない)の幽香が立っていた。目があった瞬間に血の気が引いていく感じが文は体験しているだろう。開いた口が閉じることなく固まっているのだから……

 

 

 うわぁ……文ったら顔が死んでるわ。無理もないか、振り返った目の前に幽香さんの笑顔(目が笑っていない←これ重要)があったら嬉しいもんね……目が笑っていたらだけれど。「あやややや!」とか言って文が取り乱すと思っていたけど、硬直しちゃったか……悪戯の度が過ぎたわね。今度お詫びの品をあげないとね。

 やっぱりこの世界の幽香さんは絶対強者なのですね、だからこそ今日はここに来たんだ。幽香さんに己を示すために!

 

 

 「あら?そこにいるのは惨めに敗れ去った天人さんじゃない?」

 

 

 日傘を差して天子を見つめている目はどこか冷めきった様子だった。言葉にも温かみを感じない只単に文字が耳に入ってきている感じがして不快にさせる。

 

 

 「ああ、そうだ。幽香さんにコテンパンにされてしまった比那名居天子だ」

 

 「確かそういう名前だったわね。まぁ、どうでもいいけど」

 

 

 天子に対して既に興味を失っているようだった。視線が天子の隣にいる華扇に移る。

 

 

 「見ない顔ね……何者かしら?」

 

 「私は()()()、普段は妖怪の山で修行している仙人よ」

 

 「ふぅん、仙人ね……」

 

 

 妹紅や早苗には見向きもしなかったが、品定めするかのような目つきでまじまじと華扇を観察していた。やがて口角を上げて笑った。

 

 

 「仙人さん、良かったらお茶でもしない?いいハーブ茶があるのだけれど」

 

 「いえ、私は結構です」

 

 「……そう」

 

 

 固まっている文を通り越して華扇さんの前へ……幽香さんの誘いをきっぱりと断る華扇さん……これはやっぱり幽香さんが私に対する好感度が下がっている証拠よね?目移りされてちょっと寂しいんですけど……好感度0?もしくはマイナスならベットの中で泣ける自信がある。それでも諦めないのが第二の人生をスタートした私、比那名居天子よ!黒歴史ノートなんてなかったんや!過去の私よりも今の私の方が大事!今の私が早々に引き下がることなどしないわ!!

 

 

 「幽香さん!」

 

 

 突如大声を張り上げたことで警戒していた華扇や硬直して動かなかった文も我に返り、視線が天子に集まる。

 

 

 「突然申し訳ないが、私達がここへ来たのには訳があるんだ」

 

 「……訳ね……どういったことかしら?」

 

 「おこがましいかと思うが……もう一度私と戦ってほしい……いや、私と戦ってください!お願いします!!」

 

 

 頭を下げた。嘘偽りのない気持ちを込めたお願いだ。恥なんてものはないし、幽香さんにもし否定されるならばそれはそれで仕方ないと思うかもしれないが、私が許せない。華扇さんに協力してもらって天界も他の皆に任せっきりにして結果を出せないだなんて今までの苦労も時間も私の幽香さんに対する想いも無駄になってしまう。だから私はたったこれだけのシンプルな言葉に私の想いを込めた。態度で示すしかないのだ。前は挑戦される側だったけれど、今度は私が挑戦する側なのだから。

 

 

 何秒?何分?何時間は過ぎていないだろうけどそれぐらい長い感覚に陥った。何の返答も示さない幽香は只、頭を下げる天子を見つめるだけ。華扇も文も固唾(かたず)を呑んで見守っている。

 

 

 「……そう」

 

 

 ようやく幽香の口が開き言葉を発した。(きびす)を返して歩き出す。

 

 

 「ちょッ!ちょっと!?」

 

 

 たまらず華扇が幽香に声をかけると歩みを止めて一言……

 

 

 「……三日後よ」

 

 

 三日後?幽香さんそれってもしかして!?

 

 

 「三日後また来なさい……あなたの誠意に表してもう一度だけ戦ってあげる。でも、今度も期待外れなら……」

 

 

 それだけ言い残してこの場を去って行ってしまった。そして残された天子は拳を強く握りしめた。

 

 

 三日後……それが幽香さんに私の想いの全てをぶつける日になるということだ。この日が勝負だ。後二日は練習に打ち込める!当日には最高のコンディションで行かなければ幽香さんに無礼と言うもの。待っていてください幽香さん!私は必ずあなたと親友(とも)になってみせる!!

 

 

 「華扇さん!こういちゃいられない!後二日も修行できる時間がある。必ず幽香さんに勝つために早速帰って修行しよう!」

 

 「張りきってますね。しかしその(こころざし)は素晴らしいです!やはり風見幽香は侮れない存在……ですが天子も以前より強くなったのは事実です。最後まであなたの修行を見させてもらいますよ!さて、帰ったら早速彭祖らにも手伝ってもらいましょう!」

 

 「そういうわけで文、悪いが先に帰らせてもらう!」

 

 「あや!?ちょ、ちょっとまっ――!」

 

 

 何やら熱くなった天人と仙人が駆けだして二人の背に炎が燃え盛っているようにも見えたのは気のせいだろうか?もうスピードで駆けていく二人の姿を只見ていることしかできない文はと言うと……

 

 

 「……はぁ、行ってしまいましたか……天子さんが熱くなるとはね。しかしあの風見幽香と比那名居天子との戦いは只の試合になるわけはない……それに相手はあの風見幽香ですからどうなることやら……でも」

 

 

 足に絡みついていたツタを風が切り裂いて空高く飛び上がる。

 

 

 「私は天子さんを応援していますよ。今度は勝ってくれると信じてね……」

 

 

 ------------------

 

 

 あっと言う間に幽香との約束の日になった。目が覚めた天子は太陽の光に照らされながら空を眺めていた。

 

 

 「今日が運命の日か……緊張するな」

 

 

 幽香と戦った時のことを思い出していた。修行して以前よりも強くなったと実感できるが今度は勝てるだろうか?無残にも敗れ去った自分の姿が見えてしまう。

 

 

 「しっかりしろ私!今までこの日のために修行して来たんだ。今度こそ幽香さんに食いついてみせる、意地でも食らいついてやるぞ!」

 

 

 気合を入れるために頬を叩く。修行を始めた理由……『親友(とも)』となるために比那名居天子は風見幽香に挑戦するのだ。

 

 

 「天子」

 

 

 背後から忘れもしない今まで共に修行に付き合ってくれた人物の声が聞こえてきた。

 

 

 「華扇さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「天子、頑張っているようですね……」

 

 

 空を見上げている天子の後姿を物陰から見つめていた。

 

 

 初めて会った時よりも更に大きく見える背中ですね。よくここまで厳しい修行に耐えて来ましたね……私の修行に耐えたのはあなたが初めてですよ。まぁ、霊夢とあなたしか修行を受けたものはいませんでしたが……そもそも霊夢にはこれほど厳しい修行などしていませんからノーカウントですよね……

 しかし、あの風見幽香と親友(とも)になりたいと言う理由だけでここまで耐えたことが驚きでした。あなたのような天人は初めてでしたよ。

 

 

 華扇は今までここで共に天子と過ごした時間を思い返していた。

 

 

 料理に掃除ができて勉学に体力共に問題ない知性と肉体、顔はイケメンでスタイルもナイス筋肉!超優良物件じゃないじゃないですか!そんな天子と今まで一緒に居たのに何も深い関係(意味深)にならなかったのは何故!?夜な夜な布団の中で色々と妄想していた私が馬鹿なの!?いつでも襲われていいように準備していたのに……それとも私って魅力ないの……?沢山食べる方は嫌いではないと言っていたし、いつも優しくしてくれました。もしかして胸!?私の胸は自分で言うのもなんですが小さくはないかと……はっ!?天子はまさか貧乳好きだったとか……ならば必然的に(全体が)小さい萃香が好みと言うことに……!?

 

 

 モワンモワンっと頭の中にピンク色が広がっていく。はわわっ!?と口元を抑えて顔が赤みを()びていく。

 

 

 「話に聞いていたけど勇儀とも面識はあるみたい……デカ乳が好きならば勇儀に必然食いついていくはず……でもそんな様子はなかった。やっぱり天子って貧乳好きなの!?私は中間だからどちらにも属するはずですが、見向きもされていなかったとか!?私と勇儀の出番はないということなの……それならば私はこのまま独り身……んっ?」

 

 

 いつの間にか隣には一匹の虎と虎の背中に乗る二匹の大儂、彭祖らが居たのだった。知らぬ間に声に出していたようで動物たちに聞かれてしまっていた。華扇を見る目が痛い者を見るかのようだ。

 

 

 「な、なんですかその目は!こら久米!ため息しないで!?そもそもあなた達には関係な……『「フッ」』竿打!今鼻で笑ったわね!動物のくせにご主人様に対してなんたる態度ですか!?」

 

 

 ムムム!本当にしつけがなっていないペットですね。一体誰が育てたのでしょうか……って私だ?!

 

 

 一人漫才している華扇を鼻先でくいッと押す彭祖。まるで天子の元へ行けと言っているような行動をした。

 

 

 「なにするのよ彭祖……天子のところに行けと?ごほん、言われなくても行くつもりですよ。ペットのくせに気が利くと言うか何と言うか……」

 

 

 何がともあれ、今日は天子にとって今までの成果をぶつける大切な日……色々と思うことがあるでしょうね。ここは師匠としての労いの言葉でも送っておきましょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「天子」

 

 「華扇さん」

 

 

 振り向いた天子の頬は少し赤かった。気合を入れた跡が残って彼の意思の強さを表しているようだ。

 

 

 「今日が幽香との再戦の日です。今までの修行で学んできたことを忘れずに幽香と思う存分ぶつかってきなさい、そして必ず勝つのです」

 

 「ああ、この日のために華扇さんに弟子入りしたんだ。妖夢にも胸を張れるようになったつもりだが、それを示さないと意味がない。以前の比那名居天子ではないことを見せつけて幽香さんをあっと驚かせてやる」

 

 「その心意気ですよ」

 

 

 良い顔ですね……グッときます!ご飯5杯はいける気がしてきたわ!って今は真面目な話をしている最中なのよ!平常心よ平常心……私は只の仙人なのだから……賢者タイムよ私!

 

 

 「(華扇さん鼻息が荒い?どうしたのだろう?)」

 

 

 ふーふー!っと鼻息が荒いが段々と落ち着きを取り戻して無事に元の仙人状態に戻って来た。

 

 

 「ふぅ……私が言えるのはこれぐらいですね。あなたにしてあげられることはありません」

 

 

 乗り切ったわ私、名残惜しいですけど天子との共同生活はこれにて終了……毎日食べれる手作り料理を味わえないとなると残念ですね……あの美味しいホカホカのご飯、肉汁が溢れてくる感触、ベストな塩加減の魚、色鮮やかな甘みが染み込んだ野菜の数々……本当に名残惜しいです……

 

 

 そう思っていると優しい感触が頭に触れた。残念と思う心境が知らず知らずのうちに俯いた状態になっていた。そのため触れられるまで気がつかなかったが、それは感触の正体は手であった。

 

 

 「華扇さんが何も心配することはない。幽香さんと本気でぶつかってくるだけだ。無事にとはいかないけど必ず勝ってみせるから」

 

 

 天子の優しく落ち着かせるための温かい手が華扇の頭を撫でていた。

 

 

 ふぅわぁ♪なんて優しい手の感触なんですしょうか~♪ずるいですよこれは……イケメンに撫でられる日が来るなんて夢にも思いもしなかったわ♪

 

 

 ふにゃぁ♪っと俯いた表情がとろけていた。だが、それも(つか)の間、頭の上に置かれていた感触が遠のいていった。

 

 

 「あっ、すまない華扇さんに対して失礼だったな」

 

 「そ、そんなことはないです……よ」

 

 「華扇さんってば子供っぽいところがありますね」

 

 「わ、わたしが子供ですって!?天子は私をそんな目で見ていたのですか!?」

 

 「ふふ、ちょっとありました」

 

 「な、なんですと!?私は子供ではありません!立派な大人なのですよ!あなたに私が如何に大人か教えてあげ――!」

 

 「(げぇ!説教モードだわ逃げないと!)おっともうこんな時間だ!華扇さん先に行っているからな!」

 

 「あっ!?天子待ちなさいよー!!」

 

 

 天子はそそくさと走って逃げていってしまい森の中へと消えて行った。

 

 

 ムムム、私は子供じゃないのに……ただもっと撫でてほしかっただけなのに……天子も逃げてしまいましたね。あなただって子供っぽいところがあるじゃありませんか。鴉天狗の時なんかまさに大きな子供だったじゃありませんか……こんなことももう終わりですか、寂しいものですね。これからは天子と一緒に居られる時間が必然的に少なくなっていくのですね。こんな時間がいつまでも続けばいいのになぁ……

 

 

 天子が去った後をゆっくりとした足取りで追いかけていく華扇の姿は何か物足りなさを感じさせていた……

 

 

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