比那名居天子(♂)の幻想郷生活   作:てへぺろん

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遂に50個目投稿です。後何話書くことになるのだろうか?


エタらないようにやっていけるか不安があったりしますが頑張るしかなさそうです。


そんなわけでして……


本編どうぞ!




49話 嵐の前の静けさ

 「スーさん、今日もいい天気だね♪」

 

 

 朝早くから鈴蘭畑の手入れをしている小さな女の子がいた。名前はメディスン、スーさんとは鈴蘭の花のことをそう呼び、鈴蘭が好きなメディスンは毎日お世話をして話しかけている。鈴蘭には毒があるのだがそれを含んでもメディスンは大好きなのである。そして花をこよなく愛する女性がもう一人いる。

 

 

 足音が聞こえて来てメディスンの背後で止まる。その足音を何度も聞いたことがあるメディスンは振り返り笑顔で抱き着いた。

 

 

 「幽香おはよう!」

 

 「おはようメディ」

 

 

 メディスンは鈴蘭だけではなく幽香も大好きだ。そんな幽香がここに来てくれるだけで嬉しくなるのだ。でも最近のメディスンには悩みがあった。幽香に元気がなかったそのことがメディスンを心配させた。以前のようになんでもないと言って帰ってしまうのだろうか……そんな心配事がメディスンを不安がらせていた。

 

 

 「……幽香、今日は大丈夫そうだね」

 

 「……何のことかしらメディ?」

 

 「幽香最近元気なかったから心配してた。でも今日は前よりも元気そうで安心した」

 

 「ふふ、そうね……明日が特別な日だからかしら」

 

 「特別な日?」

 

 

 そう言って首を傾げるメディスンは何のことかわからなかった。

 

 

 「幽香にとって特別なの?」

 

 「そうよ……特別になるといいけどね

 

 「幽香なにか言った?」

 

 

 メディスンには何か呟いたように聞こえたが幽香は首を横に振った。

 

 

 「なんでもないわ。そうだメディ、今日は一緒に遊んであげるわ」

 

 「えっ!いいの!?」

 

 「ええ、最近構ってあげられなかったからお詫びよ。今日はずっと一緒よ」

 

 「やったー!!」

 

 

 メディスンの顔がみるみるうちに笑顔になりぴょんぴよんと飛び跳ねる。周りの鈴蘭の花達も一緒に飛び跳ねているかのように風に吹かれて踊っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時間が経ち、太陽が沈みかけていたその頃に終わりは迎えた。

 

 

 「メディ、そろそろ夜になるわ。今日は終わりにしましょう」

 

 「……もう終わりなの?」

 

 「ええ、メディ今日は楽しめたかしら?」

 

 「うん!おままごともおいかけっこも楽しかった!」

 

 「そう、それは良かったわ」

 

 「でもね、私は幽香と一緒にいれたことが一番嬉しかったよ!」

 

 

 ニコッと向ける笑顔は宝石のように輝いて眩しかった。いつも以上にその笑顔は眩しく本当に宝石があるかのような輝きを幽香は目を離せなくなっていた。

 

 

 風見幽香と言う妖怪を知らぬ者はいない程の名前、そして彼女は四季のフラワーマスターとも呼ばれており、凶暴な性格で危険度は『極高』ましてや人間に対する友好度は『最悪』とまで某書物に評されている。幽香は妖怪であるが、人間のように生活している。家を持ち、食事をして掃除もしたり当然花の世話もする。人間と何も変わらない彼女だって買い物はするときがある。必要な物が欲しくなったら人里まで買いに出かける程の人間性を持ち合わせているのだが、いざ人里に入れば先ほどまで騒がしかった通りは氷河期が来たかのように静まり返り、赤ん坊の泣き声すら聞こえなくなる。犬や猫の動物もそこからいつの間にか姿を消している。全ての視線はたった一人に注目する。視線が交差すれば人間の方が慌てて視線を逸らし、誰も声をかけようとしない。幽香が一歩進めば道が裂けたように人だかりが別れる……誰からも恐れられる妖怪であり、同じ妖怪からも恐れられるのが『風見幽香』なのだ。

 

 

 しかし、目の前の一人のお人形の女の子は恐れることもなく一緒に遊んで楽しいと言った。一緒にいることが嬉しいと言った……ただ小さな子と遊んで横に居るだけ、それだけでも今は太陽が沈みかけ夜になりそうで肌寒い風が吹いているにも関わらず、幽香は温かい気分だった。

 

 

 「(……私にこんな純粋な笑顔を向けられるなんてね……)」

 

 

 今まで会うたびにメディスンの笑顔を見てきた。見慣れたもののはずなのに今日の笑顔はいつも以上に感じるものがあった。商売だから仕方なくといった笑顔でもなく、皮肉な笑いでもない純粋な笑顔……()()()向けられる笑顔を幽香はあまり知らなかった。ふっと思い出すのはメディスンの笑顔ともう一人の男の顔……

 

 

 『「おこがましいかと思うが……もう一度私と戦ってほしい……いや、私と戦ってください!お願いします!!」』

 

 

 「(……もう一度戦ってほしい……か……)」

 

 

 初めてだった。無残にも敗れ屈辱を味わったにも関わらずに再び幽香の元へとやってきただけでなく頭を下げた。お願いしてきたのだ……幽香と出会えば二度と会いたくはないと思う連中ばかりなのに天子だけは違った。期待外れと突き放したはずの天子が戻って来て目を見た。その目は闘志が宿っており、以前と比べても差が歴然だった。

 

 

 「(明日が楽しみね……本当に明日が特別な日になればいいけれど)」

 

 

 期待はしていないが、楽しみであった。メディスン以外に自分に対して積極的に接してくる存在はいなかった。そんな天子に冷めきっていた(こころ)が反応していたことなど幽香自身はきがつくことはなかった。

 

 

 帰りに幽香はそっとメディスンの頭に手を置き……

 

 

 「……それじゃね、メディ」

 

 「うん、バイバイ幽香」

 

 

 その言葉だけを残して鈴蘭畑を後にした。冷たい笑顔ではない、二人だけの時に見せてくれる優しい笑顔であった。

 

 

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 風が吹く……周りには障害物が何もない開けた空間の大地に佇む二人の姿……生憎今日は雲が出ていて太陽の光が遮られてしまっていた。天候までは以前と同じとはいかなかった。天子自身の力で何とかしようとする気にはなれなかった。天候が二人の心境を示しているかのようだったから……

 以前と同じこの場に佇む二人が(あい)まみえた時と変わりない景色のまま。この瞬間のために努力を続けてきた天人は以前とは比べものにならない程に成長しているだろう。景色は同じであれど、この場にいる者は前までとは大いに違うのだ。

 

 

 「幽香さん、私の我が儘に付き合ってくれて感謝します」

 

 「……私はただ、また無様な姿をさらけ出してくれそうで、かわいそうな天人さんに同情しちゃっただけよ」

 

 「ひどい言われようだ」

 

 「弱い者は死に方も選べないのよ」

 

 

 弱い者は死に方も選べないか……幽香さんにとっては私はまだそう思われているのかな?余裕の笑みなのかわからないし……幽香さんを知らない人物から見た第一印象は作り物の笑顔を形取った仮面を被っているように見える。だけど私は幽香さんを知らないわけはない。

 

 

 私は転生者、目が覚めた時には比那名居天子だった。初めは異常なことだったから戸惑った私だったが、私自身が東方ファンであったことが幸いで動揺よりも愉しみが勝った。これから出会うであろうキャラクター達と交流し、一緒にバカなことをやって異変に関わったり酒を酌み交わす仲になりたいと思っていた。初めて出会ったのは衣玖だったね、転生前の私とは違い美しい女性で口が勝手に開いていたっけ。転生してからの天界は私に対して酷い者だったけど、それに耐えて天人達のために私は尽くしたことで周りの反応が変わっていった。次第に衣玖と共にいることが多くなり彼女の性格もわかるようになっていった。衣玖は私をよく心配してくれて仕事では私以上に仕事をしてくれていた。プライベートはちょっとだらしないけどそこが良かったんだけれどね。

 そんな日常にある日異変が起きた。正確には地上(地底)で起きていることを知った私は妖怪に襲われていた少女を救い天界からの生活から飛び出した。そこから様々な出会いがあった。

 

 

 人里で寺子屋を営む慧音や不老不死の妹紅、暇つぶし程度に喧嘩することになったけどお互いに認め合い酒を酌み交わすこととなった鬼の萃香や清くない正しくない文や幻想郷の賢者紫さん達、妖怪に襲われているところを助けたことで弟子になってくれた妖夢に幽々子さん、辛い過去を乗り越えた神子達など私には今までに数多くの出会いがあり、私は皆のことを【親友(とも)】だと思っている。そして今もその出会いの延長線上……

 慧音から聞いていた。幽香さんは一人でいることが多いらしい……ほとんど一人でいる状況になってしまうようだ。周りから怖がられているのに平然としているように見えているけど……私にはそうは思えない。一人でいることの辛さは味わっているから……

 

 

 「ふふ、あなたは弱い者のままなのかしら?」

 

 「いいや、今までの私とは一味も二味も違うぞ」

 

 「へぇ……それは楽しみにしておくわ。じゃ、無駄話もあれでしょうし……お互いに痛く無くなるまで()り合いましょうか」

 

 

 恐ろしいことを平然と言ってしまうから怖がられたりしてしまう理由なのだろうけど、逆にここまで堂々としていると憧れてしまう。強い女性って感じで羨ましい……けれど、今日はそんな幽香さんに見せつけるのだ。修行で会得した強さを!そして喧嘩した後には……

 

 

 今度こそ幽香さんと【親友(とも)】になるんだ!

 

 

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 「もうすぐ始まりますね。どっちが勝つのでしょうか?」

 

 

 隣にいる文屋こと文の奴が言っている。当然勝つのは天子の奴……っと言いたいところだけどよ、幽香の野郎の強さは身に染みている。天子は一度幽香に敗れ去った……だが、天子の奴は強くなって帰って来た。あの目を見ればわかるぞ、あの闘志の宿った目は敗北など頭にない目だ。あるのは勝つことのみ、人里で度々見かける仙人……名は茨華仙、本名は茨木華扇だったな。それが私の隣にいる……天子の戦いを見届けるためにやってきたらしい。こいつと天子が屋根の下で共に暮らしていたかと思うと正直焼いてしまうのを堪えている。そんな小さなことで怒る女と思われたくないからな。もしかしたらこいつも私の敵として前に立ちはだかるのだろうか……いや、今は私自身の私情よりも天子と幽香の奴だ。二人共思う存分に暴れられるように以前と同じ場所で戦うことになるとは……

 

 

 天子が強くなったのはわかるが、今だ幽香の強さの鱗片を見たことはない……前まではそれほどの実力の差があった。私もボロ負けしちまったからな……だが、今回の天子はやってくれる、そう信じている。そして勝ってくれるに決まっている。そうじゃないといけない、私が好いた奴が軽々と負けるなんて許さないからな。

 

 

 妹紅が天子を見つめる目には信頼が込められていた。

 

 

 「これは熱い展開です!一度敗れた主人公が修行の果てに新しい新技を体得して再び敵に挑戦する……少年漫画の王道ですね!そして追い詰められた敵は真の姿へと変身して主人公に襲い掛かる!そして主人公は苦戦を強いられるが見事に打ち破って勝利する!こんな展開を現実世界で見られるなんて私感激です!!」

 

 

 ……っとこいつを忘れていた。文と華扇の奴が呆れているぞ?私もだが、もう慣れている自分が悲しい……

 

 

 「なんですか皆さん?私の顔に何かついてます?はっ!?もしかして私が主人公のヒロインポジションだから嫉妬しているんですか?」

 

 「早苗あなたは時々訳の分からないことを言いますね?」

 

 

 華扇の言う通りだ。結構早苗の奴とは話したりするが、時々妄想が激しいことがある。そのおかげで何かと問題事に関わってしまうことが多々ある奴だから、保護者である守矢の神様も苦労しているみたいだ……ご愁傷様としか言えないな。今回も()()()とか()()()の影響だろう……スマブラとか言うのをやってみたが面白かったな……今度守矢神社にお邪魔するか。

 

 

 「華扇さんにも分からないことがあるとは!?教えましょう!王道な展開ですが、敵に挑む主人公を心配し見守るヒロインに仲間達、見事ボロボロになりながらも敵に打ち勝った主人公はヒロインと結ばれて幸せなハッピーエンドを迎えるのです!まさに今、天子さんと幽香さんが繰り広げられる展開に合っているんです!わかりましたか華扇さん?」

 

 「えっ?ああ……わ、わかった気がするわ……」

 

 

 グイグイと詰め寄る形の早苗の迫力に負けて曖昧な返答しか出て来なかった。

 

 

 「今視聴者さん達が望んでいるのは『早苗×天子』つまり『早天(さなてん)』の時代なのですよ!!」

 

 

 文ですら「何言ってんだこいつ」みたいな顔で早苗を凝視する。私だってそうだ……だが、今の発言は良くねぇ……発言からして悪気はあったわけはないが『早苗×天子』だと恋仲と言っているようなものだ。いや、実際そう言ったんだろうけど、天子への想いに気づいた私にとってそれは嫌味にしか聞こえなかった。勿論、早苗の態度から天子へ恋心を抱いているわけではないとわかる……わかるが軽々しく言わないでほしい……今ので少し……ほんの少しだけだがキレそうになった自分がいた。危うく早苗に掴みかかろうとしてしまうところだった……冷静でいられた自分を褒めてやりたいぐらいだがここで釘を刺しておくのがいいだろう。

 

 

 「おい早苗、軽々しく『早苗×天子』なんて言うんじゃねぇよ。もしそのことを()()()()に聞かれてみろ。今は地底にいるが這い出してきてボコボコにされてしまうぞ?寝ている間に闇に葬られないよう気をつけておけよ」

 

 

 妹紅の言葉を聞くと早苗は顔が蒼白になり、はわわっ!?とあたふたするのであった。

 

 

 全く天子の奴も罪深い……私も()()()()の一人に属することになるとは夢にも思わなかったぞ。初めて会った時なんてそんな感情これっぽっちも感じることはなかったし、心の底から友人になれるとは思いもしなかった。でもそれでもいいと今は思っている……永遠の命を生きる私を化け物などと思わずに女の子として接してくれる奴を気にしない程、私は鈍感じゃない。共にいると楽しいし、愚痴を言ってもめんどくさいと言わずに優しく返してくれる……何よりもあいつカッコイイしな。外身も中身も反則級な男だから惚れるなと言う方が無理だ。現に今地上にいないのが幸いだが、()()()()は天子に惚れている……ライバルが多いようだが、それでも譲るつもりは()の私にはない。前の私であるならば身を引いた……いや、この想いを気づくことすらなかっただろう。

 まさか輝夜がきっかけで自分自身の想いに気づくとはね……まぁそんな訳でチョイと早苗に苛立ちを感じたが、こいつはライバルにはなりえないから安心だ……今はな。天子は優しい奴だから無自覚に落としていきやがる……マジで罪深い奴だと思う。かく言う私も落とされた中の一人だがな。だから……

 

 

 「はわわっ!?こ、このままだと私はミキサーに入れられてシェイクされてしまいます!どうしましょう!?」とか言っている早苗を放置して戦場へと目を向ける。

 

 

 だから……天子勝て!勝ってまた一緒に酒を飲み交わそうぜ。お前とはまだ一緒にいたいから……

 

 

 ------------------

 

 

 「それではこれより、比那名居天子と風見幽香との試合を始めます!」

 

 

 華扇が高らかに宣言した。天子は緋想の剣を取り出し、いつでも要石で追撃できるようにしておいた。一方の幽香は以前と同じで相変わらず笑顔のまま……後は合図を待つだけ……

 

 

 「……天人さん、一つ聞いてもいいかしら?」

 

 

 そんな時だった。無駄話も……とか言っていた幽香が不意に質問して来た。

 

 

 「なんだ幽香さん?」

 

 

 天子が聞き返す。幽香はすぐには答えなかった。天子から見れば口が微かに動いていたが言葉に詰まっているように見えた。不思議に思っているとようやく幽香の口から言葉が出た。

 

 

 「……あなたにとって私はどう見える……?」

 

 「(どう見える……か……)」

 

 

 意外にもそんなことを口にした。何を意味しているかわからない……わからないが、天子は嘘をつくこともせずに思っていることを口にする。

 

 

 「花が大好きで、喧嘩好きで、とても強い……けど一人ぼっち……私にはそう見える」

 

 

 正直に今の幽香……この世界の幽香がどう見えているのか答えた。幽香はそれを黙って聞いていたが……

 

 

 「……私にはね、メディって子がいるの」

 

 

 メディ……天子はその名前を聞くと驚いた様子だが納得した表情だった。天子はその名に関する者を知っている。幽香と関連付けるなら外せない子であることは東方ファンなら一度は目にし、聞いたことのある名前……

 

 

 「メディスン・メランコリーだな」

 

 「あの子と知り合い?」

 

 「こっちが一方的に知っているだけだ。なるほど、メディスンちゃんがな……」

 

 

 メディスンと名を聞いてからどこか安堵の表情をしていた。これには幽香も首を傾げていたが……

 

 

 「……よかった」

 

 

 そう天子が呟いたのを聞き逃さなかった。

 

 

 「よかった?何を言っているのよあなた……?」

 

 

 幽香はわからなかった。何故そう天子が呟いたのかを……

 

 

 「いや、私は幽香さんが一人だと見ていたけどそうじゃないんだなと思ってな。メディスンちゃんがいるなら幽香さんは一人ぼっちなんかじゃない。幽香さんは既に親友(とも)がいた……そう思うと安心したんだ」

 

 

 幽香は驚いていた。今までの幽香から考えられない程大きく目を見開いている程だった。

 

 

 「私が一人じゃないですって……?」

 

 「ああそうだ。幽香さんは一人ぼっちじゃなかったんだ。その様子だと自分では気がついていないようだな。メディスンちゃんの名前を言う一瞬、穏やかな顔をしてたぞ?」

 

 

 これにはまた驚いたようだ。どんな顔をしていたかわからないが今の幽香は笑っていた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 花のような可憐な笑みを浮かべていた。

 

 

 「ふふ……そうなの。ふふふ……天人さん、あなたって本当に面白い人ね。これじゃ私……またあなたに期待しちゃうじゃない」

 

 「今度は期待してくれて構わない。今度は負ける気など微塵もないからな。今度こそ勝って幽香さんと親友(とも)になるんだ。後、メディスンちゃんとも親友(とも)になりたいと思っているが……どうだろうか?」

 

 「……ええ、もしも私に勝つことがあれば……メディを紹介してあげるわ。でも気に入られないかもしれないわよ?あの子人間嫌いだし」

 

 「私は天人なのだが……メディスンちゃんにとって私の分類は人間に入るのか?それとも妖怪に区別されるか……?」

 

 「どうかしらね、大丈夫かもしれないし、大丈夫じゃないかもしれないわね」

 

 「あはは、大丈夫と思いたいね」

 

 「うふふ♪」

 

 

 笑顔を形取った仮面を被った幽香はいなかった。純粋な笑顔をこれから死闘が始まろうとしている天子(宿敵)に向けている。

 合図を出すタイミングを逃した華扇はその様子をジッと観察していた。

 

 

 「(あの風見幽香の曇り一つない笑顔……あんな笑顔を見たら彼女も一人の妖怪なんだと思ってしまうわねぇ)」

 

 

 幽香の意外な部分を見れた華扇はどこかその表情は和らいでいた。

 

 

 「華扇さんすまない止めてしまって、合図を出してくれ」

 

 「わかりました天子、幽香もいいですね?」

 

 「ええ……構わないわ。いつでもどうぞ」

 

 「それでは……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「試合開始!!」

 

 

 いつの間にか空は雲一つもなくなっており、二人の心境を示すかのように太陽の光が二人を照らしていた。

 

  


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