今度はどっちが勝つのか……また幽香が勝利するのか?それとも天子か?
それでは……
本編どうぞ!
「あはははははは!これをくらっても戦意を喪失しないなんてね!」
「まだまだ……先は長いぞ!」
「そうね、そうよね!こんな楽しい時間をすぐに終わらせるなんて罰当たりよ!」
幽香さんがエンジョイしております。ちなみに私も今もの凄く気分が好調しています。仕方ないよね、私達戦闘狂だし?楽しいもんは楽しいんだから仕方ないじゃない。お互いに傷つき血を流している状況なんてあんまりないと思う。特に幽香さん、血がついていて本当ならばもの凄く怖いはずなのに玩具で遊んでいる子供のように見えてしまうのは私の目に特殊フィルターでも入っている証拠なのかな?まぁそんなことはおいておこう。
先ほどからお互いに攻撃し合いそのたびに血を流して打撲跡ができる。そして何と言っても幽香さんの力が増々増加していっている。私もまだ100%のパワァーを出していないため対抗できる。徐々にお互いに隠し玉を出し合っている……そんな状況が先ほどから続き
「――隙ありよ!」
「――!?」
ガキンッと音を立て、手に持っていた緋想の剣が宙を舞う。これをチャンスと天子を仕留めんと幽香の傘が牙を向く。
こうなったら
凶器が目の前に迫り、天子はとっておきを出すしかないと悟った。
『無念無想の境地』!!!
「なっ!?」
幽香の表情が驚愕に包まれた。これまで天子の顔面を傷つけるはずであった傘がぽっきりと折れてしまったのだ。しかも天子は怯むことなくその場に立っていた。
「どういうことなの!?あなたの肉体にはそこまでの強度はなかったはず!?……そうか先ほどの!!」
幽香は理解したらしく、天子が直前に発動した『無念無想の境地』が原因だと見抜いた。
「なるほどね、その力で自分の身体能力を上昇させ私の攻撃に耐えたと」
「……そういうことだ幽香さん」
「ふふ、楽しませてくれるじゃない!」
めっちゃ痛いけどね……
うん……正直泣きそうなほど痛い……傘でぶん殴られるんですよ?しかも顔、女の子にとっても命と同じ価値がある顔をカっチンコッチンな傘が幽香さんの腕力によってぶん殴られるんですよ?くっそ痛いです。イケメンに生まれ変わった私に何するんじゃー!って叫びたい……けど叫んだら痛みに耐えられずに泣き出してしまいそうよ……我慢するんだ私……
一時的に身体能力を強化し、あらゆる攻撃に怯むことなく行動できるようになるけど、萃香の時みたいに幽香さんの力が半端ないから痛み感じまくりです。幽香さんの暴力的攻撃をガードができなくなるのは辛すぎる……できれば出したくなかったけれど仕方ない。一定時間は元天子ちゃんの我慢強さを活かして耐えて、幽香さんの攻撃をものともしないと勘違いさせれば精神面にも攻撃できる。精神攻撃は基本中の基本、イケイケドンドンの特攻で攻め立てる!
「今度はこっちの番だ!」
「チッ!」
今度は天子が幽香を攻め立てる。緋想の剣は飛ばされて離れた場所に転がっている……ならばと拳を握りしめ打ち出す。
「ぶがっ!?」
顔面に一発ストレートを入れてやった。受けた幽香は反動で飛ばされて地面を転がるが、すぐに起き上がる……殴られた頬が赤く腫れあがり口の中が切れたのか血が見られた。
女性を殴るなんて最低ですって?残念、私は外見イケメンな男であるけど中身は女の子だからノーカンです。ノーカン!ノーカン!ノーカウントなんですよ!それに手を抜くことは無礼ですし、既にお互いボロボロなので気にならない。でもこれで増々闘志を燃え上がらせてしまったみたい……鋭い眼光に睨まれ、歯は数本が折れ地面に落ちている状態でも怒りと喧嘩の楽しさを表現しているかのように妖気は目で見える形となって幽香さんを包んでいたから。
「はぁ……はぁ……ふふ、あはははははは!女性を躊躇なく殴るなんて……あなたは鬼?それとも悪魔?いいえ、違うわね……あなたは正真正銘の天人だったわね。ふふ、ごめんなさい……あまりにも嬉しくて自分でもわけわかんなくなってきちゃったの。うっふ♪すごく……ものすごく痺れる拳をありがとう♪気持ちいい痛みだったわ♪」
ドⅯ発言に聞こえてしまうが、皆忘れちゃいけない……幽香さんはドSだからって今の表情は皆に見せられない。トロ顔ならずにアヘ顔に近いわね……大人の女性である幽香さんがそんな顔しちゃいけませんってツッコミたい……
「いい一発を貰ったんだからこっちもそろそろとっておきを見せてあげるわ!」
ドクンッ!
心臓の音が鳴った。それはこれから起こり得ることに対しての警戒を意味しているものだろうか……
妖気が更に大きく、目に見える妖気が形を作っていく……羽の生えた幽香その者を映すような妖気が彼女の背後に降臨していた。
これは……スタ〇ド!?しかも幽香さんそっくりです……羽の生えた幽香さんか、圧倒的な妖気がスタ〇ドの正体……これは一筋縄ではいかなくなった。私が強くなっても幽香さんを超えることはできないのかな……否!弱気になっちゃダメよ私!これは試練、幽香さんと
「それが幽香さんの本気だな?」
「ふふ、
「
マジですか……これで100%じゃないなんて……幽香さん戦闘力53万以上ある気がして来た……53万実際にあったら幻想郷事態が粉々になっちゃうけどね。でも完全にラスボスですねこれは……もう少しレベルアップしておいた方が良かったかもしれない……戦いは実力が近くないと面白くないと私の本能が囁いている……が、幽香さんと私は実力が近いのだろうかと今疑っているところよ。私妖気なんかないし、スタ〇ドなんて出せない……スタ〇ド出せる幽香さんが羨ましいわ。私だって一度オラオラオラオラ・・・オラァ!ってやりたかった……いや、スタ〇ド無しでもオラオララッシュをやれるチャンスだってあるはずよ!!
どちらにせよ、今の幽香さんを倒すためにはこちらも
「覚悟はできたかしら天人さん?」
「そうだな、元よりそのつもり……だけど私はまだやられはしないさ」
「そう、それでこそ……私の
激しい激突が戦場を襲った。
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オモシロイ!
タノシイ!
オモシロイ!!
タノシイ!!
オモシロイ!!!
タノシイ!!!
滅茶苦茶になりそうな思考をグッと堪えるために唇を食いしばる。食いしばりすぎたことで唇から血が出てているが気にもならない、痛みなど感じない、何もかもおかしくなりそうな感情を我慢してまで目の前の相手から注意を逸らすことができない血に染まった花がここに居た。
「はっ!」
妖気を極限状態にまで解放し、とっておきまで見せた幽香の頬に再び拳が一発めり込む。
「ぶぐぅっ!?」
注意を怠っていたわけではない、気を抜いたつもりもない、しかし一発確実に当てられた。それも一度殴られた同じ場所……今度は口からだけではない、鼻からも我慢できなくなった血が流れ出る。
しかし食いしばった。足に力を入れ踏ん張った。一度目と同じように飛ばされることはなかった……同じにはなりたくなった。同じ屈辱は味わいたくなかった……けれど……
「ぐがぅ!?」
今度は腹に一発……拳が入った。肺の空気が一気に漏れ出して苦しくなる……だが休む暇もなかった。
「オラオラオラオラ!」
一発、二発、三発、四発も体に打ち込まれていく。どれも体に痣を作るには十分な威力だった。
「――オラ!」
そして五発目の拳は更に力が入った一撃だった。たまらず幽香の体は吹き飛ばされて地面をバウンドしながら転がっていく。
既に体もボロボロ、服も髪も土に血に汗で汚れきっていた。傍から見れば汚い以外の何物でもない姿をした幽香が地面にボロ雑巾のように転がっている。
こんなことは初めてだった。今までの中でこんなに惨めに汚く、そして諦められない存在と出会うことはなかった……
彼女はつまらなかった。
彼女は心から笑わなくなった。
彼女は弾幕ごっこに付き合うことになった。
彼女の毎日は
彼女は強かった……否、強くなり過ぎた……相手になってくれる者などいない……
彼女は無気力だった……花達と毎日会話して平凡に暮らすことも彼女にとって幸せの毎日だ。
だけど……それだけでは彼女は満足できなかった。
彼女を満足させることができたのは小さな人形の存在だけだった。その小さな人形は彼女を心配し、声をかけて恐れられているはずの彼女に近寄って行った。彼女が個から群となった。その人形とならば楽しかった、遊び、会話して一緒に花の面倒を見てくれる……一人より二人の方が良かった。花達も二人を歓迎するように風に揺られていた。しかし、彼女の心の底には諦めきれない闘志が渦巻いていた……
闘いたい……ごっこ遊びなんかじゃない命をかけた闘いを……
幻想郷は様々な種族の生命が存在し、妖怪の賢者と博麗の巫女によって課せられたルールがあった。
『スペルカードルール』
これが彼女を縛り付けた。自由にできない鎖をつけられて我慢する日々が続いていた。花達と小さな人形の存在が少しでも彼女の心を癒す支えになるはずだった。
そんな時に彼女は知った。天界に住み、幻想郷に降り立った一人の天人のことを……それが彼女の鎖を解き放つ最後の『期待』になると信じて……彼女はその天人と出会うことにした。
妖気を極限状態まで解放した。初めは圧倒できた。肉体を強化し、傘が折れてしまう程の強固な肉体となった天界の住人に血を吐かせることができた。幽香の化身となった妖気から無数の光弾が発射され、体を貫く……焼き抜くといった感じで肉体に傷をつけていった。しかし、次第に立場が逆転していった。
緋想の剣……そう言っていた変わった代物に幽香の化身となった妖気が切り裂かれた。まるで悲鳴をあげるかのように妖気がブレて苦しみの表情を現した。緋想の剣が妖気の塊である化身を切り裂いたのだ。何度も切り裂かれていった……それを黙って見ている程の幽香ではなかった。幽香も何度も拳で殴りに行った……血を流しながら拳を振るった。だが、一瞬の隙が生まれてしまい化身は首を斬られるが如く幽香と切り離された。その瞬間に幽香に宿っていた力が急激に低下するのを感じた。
脱力感……全身に力が入らずにふらついてしまった。その瞬間に拳が幽香の頬にめり込んだ。
そして何度も拳の衝撃が幽香を襲い、吹き飛ばされて地面をバウンドしながら転がっていったのだ。
汚い姿を晒し、幻想郷で恐れられる妖怪と言えば風見幽香……そう誰もが疑いもしない事実であった。しかし今の姿はそんな彼女の印象とは程遠い惨めな姿だった。
今の天候は晴れ、雲一つない空となり美しかった。その美しい空とは対照的な戦場で幽香は空を見ていた。
「……」
何を思っているのか、何も思っていないのか、幽香は只単に空を眺めていただけだった。何も発せず、身動き一つもしない……そしてその光景を眺めている天人比那名居天子は血を滴らせながら黙っていた。
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……………………
…………
……これは……夢……?
私は……こんな地べたに転がって空を見ている……?土まみれで血だらけで……らしくない汗で汚れきった姿をしたままで?誰にこんな姿にされた?こんな惨めで無様な姿に……?
その答えはわかっている。今闘っているのだから……
「うぅ……ぐぅ……!」
ポタポタと鼻血を滴らせて立ち上がる。
力が入らずに膝を付きそうになるが無理をしてでも立ち上がる。
何としても彼の顔を見たくて目を向ける。
目が合った……穢れの無い純粋な真紅の瞳、髪は腰まで届く青髪のロングヘアには土埃に血が染みつき今では半分が赤に染まっていた。服も汚れて、シミ一つ嫌う天人の姿とはかけ離れた姿でそこにいた。
ああ……あなたはなんて変わり者なの……天人ならば汚れることを嫌い、地上に降り立つことさえないと言うのにあなたは違った。天人はつまらない存在だと思っていたけどあなたは違った。誰よりも強く、誰よりも気高く、誰よりも美しいと感じた……この私が……この風見幽香がそう感じたのよ。あなたは今までの常識を覆す天人さん……私の心を離さないでしかも私をおかしくしてしまう天人さん。あなたといると楽しくて仕方ない、あなたといると面白くて仕方ない、あなたと目が合うと鼓動の高鳴りを抑えきれない!どうしてくれるのよ……
私は……あなたを……
「ごばぁっ!!」
幽香の口から血が吐き出される。体が耐えきれずに抑えられずに吐き出された血は足元に血だまりとなっていく。体が限界だと……もう既に限界を超えていると訴えていた。しかしそれを……
彼女はどうでもいいとさえ思えた。彼女の目に映るものたった一人……期待外れと失望したはずの天人……比那名居天子しか映っていなかった。
……ぐぅう!?はぁ……はぁ……体なんてもう……どうでもいいわ!天人さんあなたとまだ決着はついていない!姿形なんて今の私には興味はないわ!今の私は……あなたしか見えない……見ちゃいけないの!私に見せて!見せ続けてぇ!あなたの力……全てを……!!!
「……幽香さん」
ああ、彼の声が聞こえてきた……その声を聞くだけで脳が揺さぶられてしまう……私はおかしくなってしまったのかしら……でもそれでもいい。今は只、彼を見ていたい……声を聞きたい……全てを……頭から指の先まで全てを葬ってあげたい!私が肉片になるまであなたと闘いたい!!!
「……な、に……かしら……」
その感情が爆発しそうなのを堪えて返す。言葉を発するだけでも辛い程の胸の痛みがあったがそれすらも我慢した。会話が途切れて天子との繋がりを失いたくはなかったから……
「そろそろ限界じゃないか?」
「い、え……まだ……まだ……ものたりないわ……よ……」
本当ならば限界だ。限界を超えて無理している……誰が見てもそうだが彼女自身は認めない。ここで終わるなんて彼女は望まないし望んでいない……100%出しきっていないのだから。
「嘘は良くない……幽香さんは無理している」
「……」
「私だって限界だ。だが、幽香さんの方は限界を超えているんじゃないか?」
「……」
何も答えない……ふらつく足にかすむ視界、それに対して天子は疲労しているがちゃんと立っていた。差が表面に現れてどちらが有利かを物語っている。
「そうよ!これ以上二人の戦いを続行することは審判である私が許しません!」
遠くの方から声が聞こえてきた。所々に砂埃を被っているがちゃんとした足取りで三つの荷物を抱えながら近づいてくる……
華扇だった。そして抱えられているのは死闘の流れ弾や衝撃で巻き込まれた早苗、妹紅、文の変わり果てた姿だった。
「二人の戦いがあまりにも激しすぎたために周りに多大な被害が出たわ。ご覧の通りに三人は気絶、地形も凹凸ができてこれ以上の騒動は妖怪の賢者も黙っていることはないでしょう」
華扇の言う事はもっともだった。荒れ地と化した大地、妹紅たちは目を廻して気絶し華扇はご立腹の様子……ここまでのことをして妖怪の賢者である紫が姿を現さないのは配慮してもらっているのかそれとも……
「とにかく中止です。天子わかりましたか?これ以上は只の殺し合いです。戦ってもいいですが殺し合うのはルール違反です。幽香もわかりましたね?」
「……や……」
「?幽香あなた何て……?」
幽香が何かを呟いたか聞こえなかった。もう一度聞きなおそうとした時……
「――嫌よ!!」
静かになって戦場に木霊した。心の底から否定した彼女の気持ちが言葉となって出てきたようであった。
「……私は……待ってたの……私を……満足させてくれる存在を……!ずっと我慢していた……ずっと耐えてきた……どんなに花を愛しても消えることはできず、心の底に巣作っているこの思いのせいでメディにも心配かけた!……このまま我慢するしかないと思っていた時に彼が現れた……期待を込めて、込めて、込めて……ようやくこの思いを満足できるかと思ったのに……まだ全力を出しきっていないのに……終わらせるなんて……!絶対に嫌よ!嫌なの!!嫌って言ったら嫌なのよ!!!」
駄々っ子のように喚いた。今までの幽香から想像できないような姿だった。「嫌!嫌なのよ!」そう叫び続ける幽香の声が辺りにしばらく響くだけであった。
しばらく幽香は喚いていた。喚き散らした……気絶していた三人も目が覚めて幽香の様子に困惑していたが誰も幽香を止めることはなかった。寧ろ全てを吐き出させてあげようと思っていた。彼女のため込んでいた苦しみをわかってあげるために……
「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」
喚き散らした後には静寂が戻って来た。その全てを聞いていた天子は最後の提案を出す。
「……華扇さん、やっぱり止めないでほしい」
「天子!?あなたまさかとは思いますが……!」
「そのまさかだ。幽香さんともう一勝負したい」
「天子あなた何バカなことを言っているの!?」
華扇は怒った。二人共既に限界だった。幽香に至っては限界を超えている……このままいけば命を散らすことに繋がってしまうそう危惧していたのに、天子が戦いを続けたいと申し出たからだ。しかしそれだけで怒っているのではない。華扇は天子が心配で仕方ないのだ。傍から見れば二人共重症だ。立っているだけでも奇跡的なのに話までしているのだから……
「お願いだ華扇さん、幽香さんの思いを無駄にできないんだ」
「わかっているの!?このまま続けると二人共死んでしまうかもしれないのよ!?」
「大丈夫だ、私はしぶといし、幽香さんも死なせたりしない。だって私は幽香さんと
「天人さん……」
幽香が天子に向ける視線はどこか温かさを含んでいたが天子がそれを知ることはなかった。
「うむむむ!もう知りません!勝手にやって死んでも私は知りませんからね!」
華扇はプンプンと怒って遠くの岩場まで行ってしまった。この場から立ち去らないだけ温情であろう。
「おい天子本気かよ!?」
「そうですよ!天子さん人生ゲームオーバーを体験するつもりですか!?」
「あやや、早苗さんちょっと言っていることがわからないですが……天子さんこれ以上は体が持ちませんよ?」
妹紅、早苗、文に心配されても意思をかえることはなかった。もう既に天子は答えを出したのだ。
「すまない皆、私は幽香さんの思いに応えたいんだ。それが比那名居天子としての幽香さんに対する敬意だからな」
「「「……」」」
三人は何も言わずに華扇と同じ岩場に向かい見守ることにしたようだ。
「……ありがとう……皆」
天子は心の底からそう思えた。そして向き直った……
「幽香さん、次で最後にしよう。本気の本気……100%の全力で相手をしてほしい!」
「……ええ!ええ!!本気の本気……全力で相手になるわよ!!」
二人は向かい合う……決着をつけるために!
「いくわよ天人さん!!」
「ああ!こっちもいくぞ幽香さん!!」
幽香の突き出した手のひらに光が集束していく。みるみるうちに光の塊が大きくなりサッカーボール程の大きさに……だが、そこに集束するエネルギーは今までの比ではない。
「私の最後の本気……100%のマスタースパークを味合わせてあげるわ!!」
マスタースパーク……霧雨魔理沙も幽香から盗み取ったとされる代表的な技。正確には幽香の技はマスタースパークと言う名前かわからない。だが、名付けるとしたらそれしかない。魔理沙と同じ光のエネルギーがどんなものでもパワーで粉砕する「弾幕はパワーだぜ!」に相応しい技……それと同様に幽香のこれもどんなものでも粉砕する力を持っている。マスタースパークとそう呼ぶに相応しすぎるのだ。
「マスタースパークか……」
天子は考えた。『無念無想の境地』で耐えしのぐことはまずしない。全力で相手をすると言ったのに守りに入ることは論外だ。攻撃あるのみだが、中途な攻撃でもすればマスタースパークにかき消され天子の負け。ならば中途半端な攻撃じゃなければいい。天子が持つ最大級の技で相手するしかない!
「(コレしかない……ぶっつけ本番になるけどコレしか対抗できると思えるものがない……どちらにせよ本気を見せつけて勝たないといけないならばやるしかない!!)」
緋想の剣が天子の前に浮遊し回転し始める。すると霧のような赤いエネルギーが天子の元に集まり始めた。
「(周囲の気質が天子の元へ……一体何をするつもりなの?)」
遠くの方で見守っていた華扇も怒りがいつの間にか収まりその光景に目を奪われていた。
「幽香さん、私の全力受けてくれ!!」
「私のマスタースパーク……生易しいなんてものじゃないわよ!!」
二人の手元に集まった光が今……
『マスタースパーク』!!!
『全人類の緋想天』!!!
強大なエネルギーが二つ同時に放たれた!!