比那名居天子(♂)の幻想郷生活   作:てへぺろん

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幽香との決着がついた。花の異変編のラストでございます。


それでは……


本編どうぞ!




53話 花の妖怪と天人さん

 楽しかった……

 

 

 今までこんなに楽しめたことはなかった……

 

 

 私は長い時間生きてきた……

 

 

 その中で最高の時間だった……

 

 

 そう……

 

 

 私は心の底から満足できた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「うぅ……ここは……どこかしらね?」

 

 

 記憶にない部屋、そして医薬品のにおい……となれば自ずと答えが見えてくるわね。

 

 

 「永遠亭かしらね。メディが毒を提供しているとか言っていたし」

 

 

 永遠亭は確か医者……薬剤師かしらどっちだったか……まぁいいわ。そんなこと興味はないし。

 

 

 「……やってくれたわね……」

 

 

 幽香は体中に包帯だらけ、歯は何本か折れてなくなっていた。

 

 

 傷痕もすぐに治っちゃうし歯も生え変わるから深く気にすることはないけれど、私が痛々しいこんな姿を晒すなんて……生まれて初めての経験ね……とても為になる経験を味わったわ。

 

 

 明らかに重症の体でも動けているのは永遠亭の薬のおかげだろう。しかしそれだけではなく幽香自身の肉体的能力の高さによって普段と変わらない動作ができるのは流石である。並みの妖怪ならば死んでいるか数か月は指一本も動けないはずなのだから。

 そんな幽香の視線を独占する光景は入って来た。それは……

 

 

 「ZZZ……」

 

 

 先ほどまで幽香と戦っていた天子が隣のベッドで寝ていたのだ。

 

 

 「……なに呑気に寝ているのかしらね……」

 

 

 あの私を死ぬまで追い詰めた天人さんには間違いないのだが……どうも締まらない。顔は一緒、包帯は巻かれているが紛れもない天人さん。同一人物なのだけれどこの私を倒した彼が呑気に隣のベッドで寝ているのを見たら気分的に……ね。

 

 

 幽香は隣でぐっすりと寝ている天子の顔を覗き込むためにベッドから降りようとして気がついた。

 

 

 私って体が動けない程に疲労していたはずだけれど!?体がもう回復している……?

 

 

 そんな時に戸が開いた。そこから現れたのはうさ耳をした妖怪だった。

 

 

 「さてとちゃっちゃと取り換えしないと風見幽香が起きてしまって……あっ」

 

 

 目があった。鈴仙はメデューサに睨まれて石に変えられてしまったが如くその場で動けなくなってしまった。しかも瞳から留めなく液体が流れ始めていた。

 

 

 「……ちょ……」

 

 

 「ちょっと」と言おうとした時だった。鈴仙がいきなり床にぶっ倒れてしまった。幽香に声をかけられると思った精神が鈴仙を守るために彼女の意識をシャットダウンしたようだった。これには幽香も唖然とするしかない。

 少しして音を聞きつけたのかもう一匹のうさ耳妖怪がやってきた。

 

 

 「鈴仙ちゃんなにしているのぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!?」

 

 

 幽香の姿を視界に入れた瞬間、脱兎の如く逃げ出して行った。これにもどうすることもできずに幽香はまた唖然とするしかなかった。

 

 

 「もう一体何事……あら?起きたのね」

 

 

 もう一人やってきた。その人物は八意永琳、彼女は幽香を特に怖がらずに対応していた。

 

 

 「……私を見ても怖がらないのね」

 

 「私は医者でもあるので、怪我人を差別するなんてことはありません」

 

 「大したものね。耳を生やした二匹の内の一匹はさっき逃げ出したわよ?」

 

 「てゐね、全く優曇華ぐらい持って行ってくれればよかったのに……」

 

 

 幽香は思った。こいつは強いと……どんな状況にも冷静でいられるのはそれほどの精神を持った強者であることを知っていたからだ。

 

 

 永琳は鈴仙を近くのベッドに寝かせて幽香の近くに椅子を持ってきて座った。

 

 

 「今から体の健康チェックするので質問に答えてね」

 

 「……その前に聞きたいことがあるわ」

 

 「……なにかしら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「彼は……大丈夫だったのよね?」

 

 

 隣にいる天子を横目で見て永琳に聞いた。聞かれた永琳は「傷薬を塗り、飲み薬も処方しておいたから問題ないわ。寧ろあなたの方が危険だったんだから」そう言うとほぅっと息が漏れた。

 

 

 「……そう……さぁ、健康でもなんでもチェックするんでしょ?さっさとやって頂戴」

 

 「はいはい」

 

 「……なによその顔……」

 

 

 永琳は幽香を見る目が温かみを帯びていたことが不快に思えた。

 

 

 「いいえ……メディスンにあなたのこと聞いていたから」

 

 「ああ……そういうことね」

 

 

 それだけで理解できたわ。この医者は私の普段見せない面を知っていることを……

 

 

 「でも、話には聞いていたけど今のあなた……もっと柔らかい感じがするわ」

 

 「……別に……今まで通りの私よ……」

 

 

 そうよ、私は今まで通り……只最近は満足できないがために気分が良くないってだけだったのだから……

 

 

 「ふふ、彼のおかげかしらね?」

 

 

 そう言って天子を見る永琳はどこか悪戯じみた笑みを浮かべていた。

 

 

 ふん!天人さんは確かに私を満足させてくれたわよ。それは認めてあげるわよ……それに強い……私を初めて追い詰めたんだから……

 それだけじゃない。天人さんは変わり者……今まで見たこともない天人さんなのよ。私のことを諦めずに親友(とも)になろうとしたぐらいなんだから……

 

 

 幽香は……笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから色々と質問された。特に永琳は幽香をいじることはなかったので、ちゃんと大人な対応ができる相手でよかったと密かに思った。今の幽香に相手をどうこうできる程の気力は残っていなかったから。しばらく質問をされた幽香は永琳から解放され、数日間は絶対安静と言われたため再びベッドに潜り込んだ。しかしあれ程重症だったのに数日間安静にしていれば元に戻るなんてここはどんな場所だと思っている幽香であった。

 

 

 「……暇ね……」

 

 

 病室なので只単に寝ていることしかない。何もやることがない病室で寝転がっているのは彼女の性に合わなかった。

 

 

 「……」

 

 

 そんな幽香は身を起こしており、いつの間にか天子がいるベッドに近づいていた。そこで呑気に寝ている天子の寝顔を拝見している花妖怪。

 

 

 「……私と親友(とも)になりたいと思うなんてね……そんなあなたに敗れ去った私はどうかしているわね」

 

 

 そんなことを覗き込みながら呟いていると……

 

 

 「……幽香さん何か用か?」

 

 「きゃ!?」

 

 

 目と目があった。それにおもわず飛びのいてしまうだけでなくみっともない声を上げてしまった。

 

 

 「ちょ、ちょっといきなりでビックリしたじゃないのよ!」

 

 「すまない、少し前に目が覚めたんだが……幽香さんの顔がどんどんと近づいてきてどう反応しようか迷っていたんだ」

 

 「うっ!」

 

 

 そう、いつの間にか覗いていた幽香の顔と天子の顔が少し押せば当たってしまう距離にまで近づいていたのだ。そして目が合うのだから飛びのいてしまうのは無理はない。知らずにそこまで近づいているなんて気づいていなかった自分に嫌気がさす。それに天子の視線に耐えかねたのか幽香はそっぽを向いてしまった。

 

 

 ほ、ほんとうにビックリしたじゃないのよ!全く……こんなくだらないことで驚く私はどうかしているわね……満足したせいか気が抜けているのかしら……?

 

 

 「(……気のせいか少し幽香さんの顔が赤かった気がするが……?)」

 

 「……なによ、言いたいことがあるなら言いなさい」

 

 「……幽香さん、もしかして照れているのか?」

 

 「……照れてないわよ……」

 

 

 天子に振り返らずにそれだけ言うとベッドへと戻って行って掛布団で身を隠してしまう。

 

 

 「……」

 

 「……」

 

 

 いきなり静かになった病室……お互いに何を話せばいいのか会話がみつからない。気まずい雰囲気が漂う……

 

 

 「……」

 

 「……」

 

 「……」

 

 「……ねぇ」

 

 

 沈黙を破ったのは幽香の方だった。掛布団に隠れて姿は見えないがハッキリと聞こえた声だった。

 

 

 「……ありがとう……」

 

 「……何がだ?」

 

 

 いきなり謝られて訳がわからない様子だ。

 

 

 「……あなたと闘えて満足できたわ。これで心置きなく花やメディに力を注げるわ」

 

 「そういうわけか」

 

 「そういうわけよ、たったそれだけのことよ。言いたいことはそれだけ……」

 

 

 言う事だけ言って幽香は何も喋らなくなった。だが、その言葉には重みはなく柔らかい印象を受ける。

 

 

 「……そうか」

 

 

 天子はそれだけ言うとベッドで再び横になる。

 

 

 「……あっ、そうだ幽香さん一ついいか?」

 

 

 一体何よ……少し気を許したからって気軽に声かけ過ぎじゃないかしら?やっぱり変わり者ね……

 

 

 「……なにか用かしら?」

 

 「一つ約束してほしい」

 

 「……なにをかしら?」

 

 

 天人さんと一つ約束をした。どこまでも変わった天人さんだった。でもこれが彼の良いところなのね……世の中まだ捨てたものじゃないみたい……

 

 

 ------------------

 

 

 いきなりですが……

 

 

 私は無事退院した!

 

 

 やっぱり永琳さんの医学薬学は世界一ィィィィーーーーッ!!!でした。チートキャラはやっぱり凄い!!

 

 

 まぁそれでも数日間入院していたんだけどね。幽香さんとはベッドが隣だったけど色々と思うことがあったのか初めの頃よりも会話が楽でよかった。体の方は大丈夫か?とか顔を殴ってすまなかったって謝ったら「……別に……気にしてないわ……」って……これってもしかしてツンデレ対応ってやつかな?実は幽香さんはツンデレキャラだったんだ!とか私の妄想が(はかど)った。ごちそうさまです♪

 妹紅たちも見舞いに来てくれたんだけど、妹紅は輝夜とドンパチやり始めるわ、早苗は遠慮なく見舞いのフルーツなんかを完食(私と幽香さん一口も食べれなかった)してしまうわ、文には根掘り葉掘り入院している時の二人だけの夜にナニしているのか聞いて来るわで大変だった。幽香さんがそのたびにぶちぎれそうになっていたのは言うまでもない。けれど、皆が幽香さんに対する態度が変わっていたのは事実だった。以前は会うだけで恐れられていたのに、今ではちょっと(?)怖いお姉さん的な感じの印象になっているようだった。幽香さん自身も妹紅たちに対する態度も柔らかくなっていた。根掘り葉掘り聞こうとした文をアイアンクローの餌食にしたりとかはしたけどね。

 そして幽香さんが目覚めたある日、私は幽香さんと一つ約束した。それは……

 

 

 「この子がメディよ」

 

 

 メディスンちゃんと会う約束をしたの。そして私は今、メディスンちゃんがいる鈴蘭畑でメディスンちゃんと会っている。

 

 

 「初めまして、私は天人くずれの比那名居天子だ」

 

 「……メディスン・メランコリー……です」

 

 

 ぎこちなく挨拶するメディスンちゃんにハートが飛び出しそう!かわいいです♪お人形みたいなかわいさがある……あっ、メディスンちゃんはお人形だったわね。でも確信できた。メディスンちゃんはかわいいと!異論は認めない!!

 

 

 「メディ、この天人さんのことどう思う?」

 

 「う~ん……」

 

 

 う~んと考えるメディスンちゃんを横で見守る幽香さんはやっぱり仲良しみたいだ。メディスンちゃんと幽香さんは縁があるから必然的仲良くなるのは当然だよね。仲良さげに話していると姉妹みたいで見ている私も心がポカポカするわ。それにしてもかわいいなぁ♪えっ?誰かって?勿論メディスンちゃんと幽香さんの二人だけど何か?

 

 

 「う~ん……私はお兄さんのこと悪い人じゃないと思う」

 

 「どうしてメディ?もしかしたら天人さん、メディのこといやらしい目で見る変態かもしれないのよ?」

 

 

 幽香さん何言っているの!?やめてください!!もし私メディスンちゃんに嫌われたら泣いちゃう!帰ったらベットびちょびちょに涙で濡らしちゃう!!!

 

 

 「そうとは思わない」

 

 「あらどうして?」

 

 「だって幽香が楽しそうにしているから!」

 

 

 笑顔で言ってのけるメディスンにポカンとする幽香。天子もどういうことかわからないでいた。

 

 

 「今の幽香とても楽しそうにしているよ?ここにお兄さんと来た時なんて幽香鼻歌歌ってたじゃない」

 

 「なっ!?」

 

 

 ああ、そう言えばそうだったわね。日傘を差しながら鼻歌歌っていたから邪魔しちゃ悪いと思って少し後ろを歩いていたんだけどもしかして無意識だったの?

 

 

 「しかもその時すっごいニコニコしてたよ?」

 

 「――メディ!!」

 

 

 咄嗟に幽香がメディスンの口を塞いだが既に遅し……天子には全てまる聞こえだ。

 

 

 「そうなのかメディスンちゃん?」

 

 「うーうー!」

 

 

 口を塞がれているのでうーうー!と唸ることしかできないが様子からして嘘ではないだろう。

 

 

 幽香さんに気に入られたってことよね?にゅ~ん♪遂に念願の幽香さんと親友(とも)になれる……!

 

 

 「……ならないわよ」

 

 「ふぁ?」

 

 

 変な声が出てしまった。しかし幽香さん今なんと?

 

 

 「……だからあなたと親友(とも)にはならないと言っているでしょ?」

 

 「なん……だと……!?」

 

 

 うそ~ん……私頑張ったじゃん……死ぬ思いして幽香さんに勝ったじゃん……これで認められていないってこと?幽香さん難攻不落の城ですか?

 

 

 「嫌じゃないわよ……人をなんだと思っているのよ」

 

 「口に出していないのに何故わかる?」

 

 「そんな顔してたからよ」

 

 

 マジか……それにしても困った。以前よりも接しやすくなったけどまだ壁があるように感じるのは気のせいかな?いや、気のせいではないわね。やっぱり幽香さんは一筋縄ではいかないようだ。

 

 

 「メディ、久しぶりにお茶を入れてあげるわ」

 

 「ええ!本当!?私幽香が入れてくれるお茶大好き♪」

 

 

 ぴょんぴょんと飛び跳ねるメディスン。鈴蘭畑の花達もその様子を見て微笑んでいるように揺ら揺らと風に吹かれていた。

 

 

 メディスンちゃんが嬉しそうで良かった。幽香さんも明るくなったしやっぱり私のやったことは間違っていなかったようね。

 

 

 うんうんとこの状況を見て頷いていると……

 

 

 「あなたも早く来なさい………………………………天子

 

 「ああ、わかった。今すぐに……ん?今名前で呼んだか?」

 

 

 今幽香さんが私のことを天子って……

 

 

 「……親友(とも)にはなってあげないけど……友達にはなってあげるわ」

 

 

 天子とメディスンは意外な幽香の発言に唖然としていた。

 

 

 「――な、なにボケっとしているのよメディも!二人共早く来なさい!来ないとお茶を入れてあげないわよ!!ふん!!」

 

 

 そう言ってそそくさと立ち去ってしまった。

 

 

 「幽香、お兄さんありがとうね」

 

 「えっ?何のことかな?」

 

 「幽香が笑顔になった。嘘じゃない本当の笑顔に……これってお兄さんのおかげでしょ?」

 

 「ううん……まぁそういうことになるのかな?」

 

 「幽香色々と最近溜まっていたようだけどそれが抜け落ちたみたい。あんな幽香見るの初めて!」

 

 

 そっか……全部吐き出せてスッキリしたってわけか。これが本当の幽香さんなんだな……少しずつ幽香さんが皆に受け入れてもらえるように私も幽香さんに協力したいといけないな。

 

 

 「幽香を待たせると怖いから早くお兄さん行こう♪」

 

 「――ああ!」

 

 

 憑き物が落ちた幽香の姿は人間からも妖怪からも恐れられていた時の姿とは程遠かった。きっと彼女が幻想郷の住人達に受け入れられる日が近い事を祈るばかりである……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この日、幻想郷の至る所に生えている花達が笑っているように見えたとか……

 

 

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