比那名居天子(♂)の幻想郷生活   作:てへぺろん

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結婚騒動ようやく終結の時!


色々と書き直して納得できるような内容に書きあげたつもりですが、こんな結末が見たかったと思うかも知れませんがご了承ください。


それでは……


本編どうぞ!




60話 天界結婚騒動終幕

 ズズズ……

 

 

 「はぁ……いいお茶ね♪」

 

 「勝手に飲むな!」

 

 

 パコンッ!

 

 

 「いった~い!霊夢なにするのよ!?」

 

 「『なにするのよ!?』じゃないわよ!私が飲もうとしていたお茶を勝手に飲むだなんて何考えているのよ!処すわよバカ賢者!」

 

 「霊夢がいじめる~!オヨヨヨ……」

 

 「ウソ泣きするな!」

 

 

 パコンッ!

 

 

 博麗神社で騒いでいるのは博麗霊夢と八雲紫であった。博麗神社の縁側では些細な争いが行われており平和そのものであった。

 

 

 「いった~い!」

 

 「全くもう……それで紫、今日は何しに来たわけよ?」

 

 「ん?藍待ちよ」

 

 「……それで?何故ここにいるわけよ?」

 

 「暇つぶし♪」

 

 「……」

 

 

 パコンッ!

 

 

 3回目の鉄拳が紫の頭に直撃する。

 

 

 「いった~い!どうして霊夢!?」

 

 「暇つぶしで私の大切なお茶を飲むんじゃないわよ!」

 

 「もうそれぐらいで文句言って……あ、やめて、足で蹴らないで!」

 

 

 そんな小競り合いをしていると遠くの方からこちらに向かって来る一つの影があった。その影は博麗神社の縁側で霊夢に蹴られている哀れな賢者の元へとやってきた。

 

 

 「……なにをやっているんですか紫様」

 

 

 八雲藍……哀れな賢者の式である。呆れた瞳で自身の主を見つめる……

 

 

 「あっ、藍おかえりなさい。どうだったかしら?」

 

 「はっ、裏を取りましたがやはり例の件には差異が生じているようです」

 

 

 やはり優秀な式は違った。気持ちを一瞬で切り替えて受け答えをするところは流石だろう。

 

 

 「……どんな差異だったの?」

 

 「それはですね……」

 

 「ちょいちょい!ちょっと待ちなさいよあんた達!!」

 

 「なによ霊夢、話に割り込んできて……」

 

 「両隣にあんた達が座って何の関係もない私を挟んでそんな会話しないでくれるかしら!」

 

 

 紫の意地悪なのか、自然と移動した紫と藍が霊夢を挟むように縁側に座り報告するという小さな嫌がらせ。間に挟まれている霊夢は地味な嫌がらせを受けて苛立ちを覚える。

 

 

 「怒らないでよ、ちゃんと話してあげるから」

 

 「しょうもない嫌がらせするんじゃないわよ!それに話を聞きたいなんて言ってないわ」

 

 「それで藍の話しているのはね……」

 

 「(無視か!?)」

 

 

 霊夢の顔に青筋が浮かんでいるのを楽しんでいるのかわからないが紫は気にせず説明し出す。結局霊夢は話を聞く羽目になった。

 

 

 そして紫の説明はこうだ。

 

 

 今幻想郷で話題になっている天子と華扇の結婚話の真意を確かめているところだった。地上では皆お祝いムードでそれぞれ準備をし始めているが、その話は本当なのかを疑った紫が藍に頼んで調べさせていた。そしてたった今、藍はその成果を持って紫の元へと帰ってきた。

 そして藍が語ったのは結婚話は嘘ではないが、それは予行練習という形のものであった。実際に天子と華扇は結婚することはなく、練習相手としての関係だそうだ。つまり地上の者達は勘違いしていると言う事である。しかもどこから漏れたのかわからないが、この話は元々流すことなどなく執り行われる予定であったそうなのだが……

 

 

 「ふ~ん、どっかのバカがこの話を鵜呑みにしてあろうことか広めちゃったわけね」

 

 「そういうことよ霊夢」

 

 「それでなんなの?なんであんたが天子の結婚話を私に聞かせたのよ?」

 

 「霊夢はこの話をどう思うかしら?」

 

 「どう思うって……別に結婚ぐらい好きにさせてやればいいじゃないの?」

 

 

 霊夢に取って別に悪い事ではなかった。無理やり結婚させられる話でもないし、やりたいのならば勝手にやればいい。祝うことはするけど止めようとは思わない……天子に色々と借りはあるが、この結婚が天子の決めたことならば手を出すなんてことはしないし、予行練習と来たものだ。それならば何も問題はないし、関わる必要すらないだろう。霊夢はそう思っていたが、紫は何か霊夢に求めている……そんな勘がしたのだ。

 

 

 「そう、好きにさせてあげればいいだけの話よ」

 

 「じゃあなんなのよ?私に何を求めているのよ?」

 

 「……これを見て頂戴……」

 

 「――?」

 

 

 紫はスキマを開いて霊夢に見せた。紫の顔に疲れが見えた気がしたが構わずスキマの中を覗き見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「カァぺ!!(たん)が出るわ!!」

 

 「メス豚のくせに!メス豚のくせに天子様にぃいいいいいいいい!!!」

 

 「コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス……!!」

 

 「首を……首を斬ってバラバラに蘇れないようにして差し上げましょう……あはは♪」

  

 「私の天子殿を!!?キョンシーにする前に私も彼女で遊ぶとしましょうか……!!!」

 

 「ここまで私を……不快にさせるなんてね……あなたも罪ね天子♪」

 

 

 スキマの中に6つの影が天界を血みどろ色に染め上げようとしている光景を見た……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……なにこれ?」

 

 「……私もそう思ったわよ……」

 

 

 紫の顔に明らかな疲れが見えた。霊夢は今ので全てを察した。

 

 

 「……前より数が増えていたわよ?」

 

 「……それを私に言わないで霊夢……まさか地底の次は天界に喧嘩を売るなんて……!」

 

 「紫様!気をしっかり持ってください!」

 

 

 頭を抱える紫……おそらく天子の結婚話を聞きつけて例の連中がそれを阻止するために天界へと乗り込んだのであろう。その証拠に全員の目がヤバかった……光などそこにはなかったのだから。

 

 

 霊夢はこの時ばかりは紫に同情した。もしあの連中が天界に喧嘩を売ったら天人と地上の者達との関係は悪化して良からぬことが起きてしまうかもしれない。それを危惧した紫はこうして彼女達を監視していると言う訳だ。

 

 

 「大変ね紫……まぁ頑張って頂戴。相手は6人だけど紫の【境界を操る程度の能力】ならなんとかなるでしょう」

 

 

 他人事のように言う霊夢はのんびりとお茶を口に運ぶ。

 

 

 「何言っているのよ!あなたも一緒に来るのよ!」

 

 

 ブゥウウウウうううううう!!?

 

 

 霊夢の口からお茶が噴射された。

 

 

 「ゲホゲホッ!はぁ!?紫なに言っているの!?」

 

 「お願い霊夢!今回ばかりは橙を連れていくわけには行かず、私と藍だけじゃ怖いの!あなたもあの目見たでしょ!?あんな光が存在しない深淵に染まった目を生きている間にそう見られるものじゃないわよ!」

 

 「あんなの二度と見たくないわよ!それにこれは天子の問題だから私は関係ないわ!!」

 

 

 霊夢は無関係だと主張するが……

 

 

 「あの子達が天界で暴れた後、地上に戻ってきてまた異変でも起こされたらそれはそれで大変なのよ!八つ当たりでとばっちりを受ける可能性もあるのよ!?そうなる前にあの子達を捕らえて元通りにしないと幻想郷はお終いよ!!」

 

 「知らないわよ!?無関係な一般人を巻き込むな!!」

 

 「天子に借りがあるでしょうに!それにあなたのような一般人が居て堪るもんですか!妖怪を次々と黙らせる博麗の巫女でしょあなたは!?」

 

 「放しなさい紫!!」

 

 「絶対に嫌!!」

 

 「……やれやれ、今回は紫様もお手上げですよね……」

 

 

 紫が怖がるのも無理はない。6つの影は尋常じゃないオーラを身に纏っていた……藍もそれを見た時に腰を抜かしてしまうところだったのだから。

 

 

 「(……しかし紫様が私にこの調査を依頼して来た時は驚きましたね……)」

 

 

 それもそのはずなのである。紫が藍に事の真意を確かめる依頼を出したのは幻想郷中に結婚話が広がる前だったからである。

 

 

 「(もしかしたら紫様……比那名居天子のことをずっと見ていたのでは……?)」

 

 

 その真意は藍でもわからない……

 

 

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 「総領息子様、ご準備はよろしいですか?」

 

 「あ、ああ……!」

 

 

 会場へと繋がる扉の向こうから天子の父親の声が聞こえてくる。天子の父親は自ら司会役を名乗り出た。やってみたいとのことだったので任せることにしたのだが、その声を聞くだけで天子の心臓の鼓動がバクバクと音を立てていた。

 

 

 は、はじまった!お付きの方に準備OK出してしまったけれど今にも崩れそう……心臓の音がうるさいぐらいに感じる。こんなに緊張するだなんて思ってもいなかったわよ……それに結構な人数がいる……何人呼んだんですか父様は!これただの練習なのに他の天人達もノリノリで来てたみたい……やっぱり暇だから?それか面白そうだから?中には「総領息子様の結婚式の練習のためならお付き合いします!」って言ってくれたお付きの方もいたけど……そのせいで余計に緊張しちゃっているわよ!それに……

 

 

 「華扇ちゃ~ん、頑張りましょうね~♪」

 

 「は、はい!」

 

 「もうそんなに硬くならなくていいわよ~!今はママのことを本当の華扇ちゃんのママと思っていいから~♪」

 

 

 後ろの方で聞こえてくる会話が気になる。母様は華扇さんの母親代わりとなってエスコート役としてバージンロードを歩く仕事をする。華扇さんも緊張しているみたいで私と同じでよかったと思った。

 

 

 『「……好きよ……天子……」』

 

 

 あの耳元で囁かれた言葉が思い出される。華扇さんがいきなり抱き着いて来た時には驚いたけど、耳元で好きと言われた時の私は呆然だったのだろう。なんであんなことを言われたのだろう……?もしかして華扇さん本当に私のことをす……

 

 

 「それでは皆様方、お待たせいたしました。新郎新婦のご入場でございます!」

 

 

 その考えは中断せざるおえなかった。

 

 

 き、きた!!で、でばんね!し、しぜんに振舞えるかしら……ええい!私は比那名居天子だぞ!これぐらいでビビっていたら元天子ちゃんに怒られる!しっかりしろ私!!

 

 

 自分に喝を入れて息を思いっきり吐いた。

 

 

 ……よし!闘魂注入完了!練習だけど本気で最後までやってやる!狙うはミッションコンプリートよ!!

 

 

 扉が開かれた。そこには見知った顔があり、天人達は現れたいつもとは違った凛々しさを備える天子を見て驚いていたようだった。特に女性の方はその姿に魅了され視線を釘付けにする者や頭から湯気を出して失神してしまう者が少なからずいた。そして次は花嫁である華扇が母親に連れられて現れた。すると周囲から「おお!」「あの美女は何者だ!?」など驚きの声が聞こえてきた。「羨ましい!」「今度は私が総領息子様と!」などの声(特に女性)も聞こえてきたがそこはあえてスルーした。

 

 

 「それでは新郎新婦が入場いたしましたので、これより開式させていただきます」

 

 

 そこから順に進んで行った。視界である父様がコメントしていき、私と華扇さんが誓いの言葉を台本通りに読み進める……ここまで本格的に用意しているとは恐るべし父様、母様……結婚指輪は残念ながら用意が間に合わなかったので形だけ執り行われることとなった。私はここまで用意してくれていた父様と母様に感謝してもしきれない。私だっていつかは本当に結婚式を挙げれる日が来るのを楽しみにしている……今日の結婚式の練習をやれて本当に良かったと思っている。

 

 

 天子は今という瞬間を喜んでいた。自分のためにここまで用意してくれて祝福してくれる両親とそれに付き合ってくれている『名居』の一族の皆さん、その他諸々の方達の協力によってこの結婚式が成り立っている。これは天子が今まで築き上げてきた信頼の証でもあり、人望そのものであった。

 

 

 転生前まではただの引きこもりの人生を送っていた私だけど、それが今や人々の前に立ってこうして祝福されている……今まで苦労して来たことが報われた感じがする。これで元天子ちゃんに恩を返せたかな?

 

 

 天子は今まで起きたことを思い出す。他者から認めてもらおうと努力したり、強さを磨いたり、異変にまで関わった。それが昨日の事のように思い出される……

 

 

 ……私は皆にこんなに祝福されるだなんて……なんて幸せ者なんだ……!

 

 

 天子は自身の幸福を噛みしめていた時だった。

 

 

 「それでは皆様方お待ちかね……口づけの時間です!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………はっ?

 

 

 父様……今なんて言ったの?なんでそんなにいきなりテンション上がったの?それに……え?え?口づけって……!?

 

 

 それって……キスのこと!?聞いてない!そんなの私は聞いてないわよ!!?

 

 

 天子は予期せぬ事態に戸惑った。これは練習であって本番ではない。しかし周りの天人達(両親も)は会場の雰囲気にヒートアップしてしまいノリノリの状態であった。酒に酔いしれたように興奮状態となった会場は本番と変わらない空気を醸し出し、練習であることを忘れてしまったようだ。

 

 

 「おお!キッスの瞬間か!」

 

 「ゴクリ!ファーストキッス!これは見逃せませんな!」

 

 「総領息子様……お幸せに……!」

 

 

 ちょっ!?そこの天人達止めてよ!!あっちは何故か泣き出しているし!?もう滅茶苦茶よ!!?

 

 

 天子がこの高まる興奮の場を落ち着かせようとした。けれどそれは意外な形で阻止された。

 

 

 誰かが手を握る……傍にいるのは華扇一人……っとすると……!

 

 

 「……華扇……さん?」

 

 「天子……して

 

 

 華扇はか細い声で僅かに聞こえただけだが、その意味はハッキリと伝わった。

 

 

 瞳はウルウルと揺れており、何かを望んでいるようだった。顔も赤く、手から伝わってくる体温が熱く感じる。

 

 

 目と目が合い、時間が止まったように感じた。そんな中で天子はと言うと……

 

 

 こ、これは……!?まさか……華扇さんもこの場のノリに酔ってしまったの!?父様も母様も他の皆も全員!?私だけが正常なの!?華扇さん元に戻って!そうじゃないと本当にキスしてしまうことになっちゃう……練習なのに女性のファーストキスを奪うことなんてできないわよ!!

 

 

 天子は混乱していた。そして更に悪い事に……

 

 

 「天子!緊張するのはわかるがパパ達が応援してやるからな!皆様方!息子の天子に勇気をお与えください!せ~の!」

 

 「「「「「ちゅ~う!ちゅ~う!ちゅ~う!!!」」」」」

 

 

 ……応援された。

 

 

 子供かあんたら!!!父様なにやっているんですか!!?それに『名居』の皆さんも何しているんですか!!?母様も便乗しないで止めて!!!結婚式じゃなく幼稚園になってるから!!!ってか、女性の方々の視線が怖いんですけどそこだけなんでなの!!?

 

 

 混沌とする会場は結婚式場と言うよりも幼稚園児の茶化し合いの場になっていた。途中まではうまくいっていたのだが何故こうなった?神様は余程笑いが取りたいようだ。

 

 

 「……天子……」

 

 

 華扇の腕が天子を抱き寄せた。いくら待っても望んたことをしてくれない天子に痺れを切らしたのか、華扇の方から近づいていく。そして次第に顔と顔に息がかかるほどの距離となり、甘い吐息を感じる……

 

 

 ダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメ華扇さん!華扇さんの大事なファーストキスを奪う訳には……!?

 

 

 天子の抵抗も虚しく潤いのある唇と唇が重なり合う……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ちょっとまでやゴラァああああああああああ!!!」

 

 

 重なり合うその前に扉を勢いよくぶち破って入って来たのは例の6つの影だった。

 

 

 「――誰だね君達は!?」

 

 

 扉をぶち破って結婚式に乱入する大胆で失礼な連中に驚く会場……

 

 

 ――ふぁ!?な、なに!?こ、この6つのあからさまにわかるシルエットは……!!?

 

 

 結婚式場に現れた謎の影の正体とは一体!?

 

 

 「衣玖!?妹紅と妖夢に神子も……それに幽香さん……と萃香!!?」

 

 「す、すいか!?あ、あなたは地底にいたんじゃ!?」

 

 「フ……フフ……フフフ……華扇……ヒサシブリノサイカイダナ……ヌケガケナンテユルサナイゾ!!」

 

 

 萃香が怖い!?ヤンデレ萃香の再来だぁああああああああああ!そして衣玖達も……

 

 

 「天子様……お久しぶりでございます。私達が地底で汗水流していたのに、天子様は地上で何をされているのですかね……ねぇ……天子様?」

 

 

 衣玖の目が笑っていない……それどころか光が灯っていない……しかもしかも……

 

 

 「よう天子……ルーミアと慧音から聞いたぜ……結婚するんだってな?それなのに親友(とも)の私を呼ばないとはどういうことだ……あ"あ"ん?」

 

 「天子さん、大丈夫ですよ!この魂魄妖夢が邪魔者を排除して差し上げます!私に斬れぬ首などないのです!」

 

 「天子殿、そちらの方をちょっと借りたいのですよ……なに心配いりません。ただ青娥に頼んで芳香殿の仲間を増やすだけですから」

 

 「あなたって本当に罪な人ね……私も一緒に可愛がってあげるわよ♪」

 

 

 妹紅、妖夢、神子、幽香さん……誰の瞳にも光は灯っていないかった。あれれおかしいな~?私の気のせいか殺気を感じるんだけど……!?しかも殺気が私と華扇さんに集中しているのは何故だろうか!?

 

 

 「ど、どうしてあなた達がここにいるのですか!?」

 

 

 予想していないことが起きて更に殺気を当てられているのが気のせいではないことがわかってしまった華扇は血の気が引いていた。しかも状況が状況であるため言い逃れができない。

 

 

 「衣玖ちゃんじゃない~!おかえりなさ~い!元気にしていた?」

 

 「はい、私は元気ですよ……主にこのメスぶ……華扇さんのおかげで」

 

 

 衣玖……華扇さんのこと今メス豚とか言おうとしたの?気のせいだよね?衣玖がそんなお下品な言葉を使う訳ないよね?……いや、今の衣玖は時々表に現れるダーク衣玖の可能性あり……って言うかもう瞳に光がない時点でダーク衣玖だよね……

 

 

 「それで衣玖、今パパ達は結婚式をやっているところなんだ。それにそちらの方々は?」

 

 「こちらの方々は天子様と()()仲良くしている方々です。天子様が結婚すると聞いて駆け付けた次第でございます」

 

 「そうだったのか?それならばそちらの方々も参加してもらってくれても……」

 

 「いえ、それには及びません。天子様はこの後やり残している()()()()()()お話がありますので……」

 

 「大事な話とな?」

 

 「はい、とても()()()()()()お話ですのでどうしても天子様が必要なのです」

 

 「あ、いや……衣玖、私は……『天子様、()()()()()()お話……ありますので……』ハイワカリマシタ……」

 

 

 私は何もかも察してしまった……衣玖ならぬダーク衣玖とこの後()()()()()()お話をしなければならないようだ……元はと言えば衣玖達のことを考えずに乗ってしまった私にも責任があるわけだし……

 

 

 「それとメスぶ……華扇さんとも()()()()()()お話がありました。ですのでお借りしていきます」

 

 「えっ!ちょ……!?」

 

 「華扇……チョットオモテデロヤ」

 

 「て、てんしたすけ――!!」

 

 「サセネエヨ!」

 

 

 ワナワナと震えて涙目で天子に助けを求めるが、萃香にホールドされ、妹紅と妖夢と神子に笑顔のまま連れていかれた。さらば華扇よ……

 

 

 「天子様、幽香さんも一緒についてきてくれるので……()()()()()()お話をいたしましょうか」

 

 「……ゆ、ゆうかさん……これは話せば長くなるものであって……」

 

 「ダメ♪」

 

 「まだ何も言っていないぞ!?は、はなしだけでも!!」

 

 「話は聞いてあげるわ。()()()()()()にも参加しなくちゃいけないから手短にお願いにするけどね」

 

 

 ()()()()()()って華扇さんとどんなお話をするつもりでいるの!?ちょっと待ってください!!華扇さんはただ私の練習相手であって何の罪も……!!!

 

 

 「さぁ……行きましょう天子♪」

 

 「おわぁ!?ゆ、ゆうかさん!力こめすぎ……い、いたい!ほ、ほねがメキって……!!?」

 

 「ふふ、私からの愛よ♪」

 

 「これでは鞭だぞ!?」

 

 「旦那様、奥方様、それに『名居』の皆様方……大変失礼したしました。ですが緊急のとてもとても大切なご用事ですのでご了承ください」

 

 「あ、ああ……」

 

 「それでは失礼しました」

 

 

 バタンッ!と扉が開き式場は静寂に包まれた。新郎新婦が連れ出されるという前代未聞の結婚式にみんな騒然としていたが……

 

 

 「天子よ……まさかあのような者達にあれ程慕われていたとは……!パパは感激だ!!」

 

 「そうね~♪きっと天子ったら地上でも土地開発とかしていたのね~♪最近天子も衣玖ちゃんも天界にいないと思ったけどそういうことだったのね~♪」

 

 「天界の者達だけではなく、地上の者達にもパパ達のように楽しく暮らせる楽園を作るために天子は地上で活動していたのか!それもパパ達に内緒でだぞ!流石パパとママの子だ!やはり天子は優しい子だな!!」

 

 

 全部いい方向に捉えてしまう……普通ならばこんなことにはならないがこう受け止めてしまうのが良くも悪くも天子の両親なのだ。

 

 

 「う~ん、でも天子がいなくなっちゃたし、華扇ちゃんもお話があるとかで一緒に行っちゃったし……天子の花婿姿を見ることも華扇ちゃんのかわいらしい姿を拝見できて満足だけど練習もここまでね~」

 

 「おお、そうだったな。これは練習だったな!いやはやうっかりしていたわ!ワハハハハ!!」

 

 

 ひとしきり笑った後、天子の両親は『名居』の者達に謝罪する。

 

 

 「そういうわけでして『名居』の皆様申し訳ありません~」

 

 「折角こちらからお呼びしておいてこのような形になってしまい誠に申し訳ありません」

 

 

 天子の両親が『名居』の一族の者達に頭を下げようとするが手で制される。

 

 

 「いえいえ、わたくし共も楽しめましたし十分ですよ。それにわたくし共もお二人の息子さんである天子殿には感謝しています。天界をより良い住処にしてもらいましたし、毎日の日常に変化が訪れて今では家族でカジノに通うようになってからハマってしまいましてな!これが止められなくて……」

 

 「わたしも今までごろごろと家にいるか散歩する程度の日々でしたが、ボウリングとかいう遊びが友人と白熱しまして今ではスコアを競い合うまでに……ボウリングクラブを友人と立ちあげて、そこで出会った新しいボウリング仲間と一緒に楽しむ日々に明け暮れていますよ!」

 

 「僕は今まで食べたことのない料理を食べれて満足なの!」

 

 「あたしも!桃だけじゃ飽きて美味しくなかったもん!!」

 

 「私なんて天子様に大切なペンダントを見つけてもらいましたのよ!もう見つからないと思っていましたのに」

 

 

 次々と自分達の趣味の話をし出した『名居』の者達。これも今まで天子が自身のせいで消えてしまった元天子の誇りを守るため、比那名居家を悪く言わせないためにやってきたことだ。それが認められて天子のことを悪く言わなくなった寧ろ天子を尊敬する者まで今の天界は変わったのだ。

 そんな口々に天子の良さを話している光景を見ていた天子の父親の瞳から雫が垂れた。

 

 

 「パパ……」

 

 「ママ……パパ達は本当に素晴らしい子を授かったようだ」

 

 「……そうね~」

 

 「あの子はパパ達が悪く言われることを良しとしなかった。天界に来た時は苦労したが今ではこうして共に話し合えている……やはり天子はパパの誇りだ!」

 

 「ママも天子を誇りに思うわよ~♪」

 

 

 二人の親は幸せそうに手を握りしめ合うのであった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「いい話のところ申し訳ありませんが……天子様、もう一度言ってみてください」

 

 「……あ、あの……結婚式はただの練習であってだな……華扇さんは私の練習相手として呼んだだけなんだ……」

 

 「それならば何故私ではいけなかったのですか?いつも傍に居て天子様のことを一番に想っている私が……何故呼ばれなかったのですか?」

 

 「衣玖は……地底に居たから……邪魔しちゃ悪いと思ってだな……」

 

 「ふ~ん、それなら私を呼べばいいじゃない?」

 

 「幽香さんは知り合ったばかりでそんなことに巻き込んだら怒るかなって……」

 

 「じゃ、何で私に頼まない?慧音に用事を頼まれている時以外は基本手が空いているんのだがな……私なら知り合ってばかりじゃないだろが……そこんところどうなんだよ……天子よぉぉ?」

 

 「いや……妹紅は……」

 

 「……天子さん……出来損ないの弟子は……不要ということでしょうか……やっぱり私は要らない子……」

 

 「よ、ようむ!それは違うぞ!妖夢が出来損ないだなんて思ってなんか……!」

 

 「天子殿は私を守ってくれるのではなかったのですかぁああああ!!!」

 

 「神子泣かないでくれ!!今回のことは仕方なく……!」

 

 「シカタナクナンダ?華扇二タノムヒツヨウナンテナカッタダロ?ナンデダ天子……ワタシノコトガイヤダナンテイワナイヨナ……!?」

 

 「萃香のことが嫌だなんて思わないわけでして……その……」

 

 「「「「「「……」」」」」」

 

 

 ……周りを囲まれて正座中の比那名居天子です……めっちゃ怖いです……そこまで深く考えていませんでしたすいません。脳内会議で華扇さんがベストだと回答が出て、流れに乗った結果……このざまです……

 

 

 「華扇モナンデダ?天子ノレンシュウ二ツキアウダケナラ……キスナンテスルヒツヨウナイヨナ?」

 

 「……えっと……その……」

 

 「あ"あ"ん?聞こえねぇぞこらぁ!」

 

 

 天子の隣でウェディングドレス姿の華扇がポツンと縮こまって正座していた。

 

 

 萃香もう少しそのヤンデレ抑えて!それに妹紅ただの不良になってるわよ!華扇さん怖がってるからやめてあげて!!私もチビっちゃうから!!!

 

 

 「そうですよ、何故なのですか?回答によってはキョンシーになるよりももっと面白いものになるかもしれませんよ?ん?それがいいと思いますよ」

 

 「私は生首がいいと思います。私の刀でスパッと苦しめずに切り落としてみせます」

 

 「あら、苦しめずなんてダメよ。苦しめてから切り落とさないと面白くないじゃない♪」

 

 

 神子の面白いものって何よ……それに妖夢それただの辻斬りならぬ首切りになっちゃう!幽香さんも残酷なこと言わないであげて!子供が聞いたら泣き出しちゃうから!

 

 

 「それで……理由を聞かせてもらってもいいですか?メス豚さん……答えによっては焼却処分も辞さないですよ?」

 

 

 もう衣玖が一番ひどい気がしてきた……でもこればかりは華扇さんが悪いのではなく私の責任よ。だから華扇さんを責めるなら私だけを責めてよ!

 

 

 そう言おうとした……その時!

 

 

 「……好き……ですから……

 

 

 ピクッ!

 

 

 その言葉に反応したのは私だけではなかった。この場にいる全員が……華扇さんがその口から言った言葉を間違いなく聞いた……

 

 

 「……メス豚さん今なんと言いましたか……?」

 

 「……好きと……言ったのです……」

 

 

 今度はハッキリと自分の意思を伝えるように……

 

 

 「私は……天子のことが好きなんです!」

 

 

 茨木華扇は迷うことなく宣言した。これには周りの全員驚愕していたことだろう。

 

 

 「私は天子と共に修行をして、生活している内に彼の良さがわかりました。初めは確かに顔がイケメンで料理も洗濯もできる超優良物件ぐらいの目で見てましたよ!でも……次第にそれだけじゃないってわかったのです」

 

 「華扇さん……」

 

 

 華扇は語った。今まで共にいることが長い程、離れていくのが寂しく思っていた。そんな時にこの話が舞い込んできた。天子が相手なら、この結婚式が本当であればどんなに嬉しかったか……今では心の底から天子のことを思う一人の恋する乙女となっていたことを……

 全てを話し終えた華扇は息も絶え絶えだった。胸の奥のものを全て吐き出して自身の思いを伝えたのだ。

 

 

 「……萃香、私を好きにしていいわ。どんな形であれ抜け駆けする形になったのは本当だから」

 

 「華扇さん!」

 

 「天子!邪魔しないでください!これは……私なりのあなたに対する想いを同じくする者達に向けてのけじめなんです。お願いですから邪魔しないで……」

 

 「……」

 

 

 私は何も言えなくなった。華扇さんの気持ちを聞いてしまった私には……どういえばいいかもわからずに何と言っていいのかわからなくなった。私の言葉は今の華扇さんの邪魔になるだけだから黙っているしかできなかった。

 

 

 「さぁ、好きにしなさい!」

 

 

 命を奪われても構わない……その覚悟だった。華扇は一時の幸せを感じれたし、衣玖達の気持ちがわかってしまった。天子を思うあまりに天界まで来てしまう彼女達の気持ちを蔑ろにして自分だけ先に夢を見ようとしたのだから……罰を受けても仕方がないと。

 目を塞ぎ、例え首を取られても覚悟していたのだが……一向に何も起きない。待てども何の変化が起きないことに不審に思い恐る恐る瞳を開けると……

 

 

 「はぁ……お前も私達と同じかよ……」

 

 「萃香……?」

 

 「ケッ!これで我慢してやる!」

 

 

 バチンッ!と萃香が華扇にビンタした。しかし顔が吹っ飛ぶこともなく頬が赤くなっただけだった。

 

 

 「……どうして?」

 

 「どうしてだって?はん!おい耳毛教えてやれよ」

 

 「耳毛と言わないでください!ゴホン……華扇殿」

 

 「あっはい」

 

 

 違和感を感じた。先ほどまで受けていたプレッシャーが感じられなくなり見渡せば萃香や衣玖達の瞳には光が宿っていた。

 

 

 「あなたの想いは我々の心にグッと響きました。抜け駆けしたのは許し難いですが、心の底から天子殿を好いていることを理解出来ました。もしあなたの心が俗物になり果てていれば容赦なくあなたの首はさらし刑に処されていましたけど」

 

 

 サラッと恐ろしいことを言う神子にゾワリと背筋が寒くなってしまった。

 

 

 「ですが、あなたは正直に話してくれました。あなたも私達と同じだった……華扇殿もこれから同士です。時には敵になり、時には味方になり得る存在というわけです」

 

 「は、はぁ……」

 

 

 華扇さん……その反応よくわかる。私もそんな感じよ……衣玖達の間でしかわからない友情(?)のおかげで華扇さんは助かったみたいだ。よかった……このまま袋叩きにされるのかと思ってビクビクしてたけどもう安心みたい。

 

 

 ホッとため息が出る。すると華扇がそっと天子の方を向いた。

 

 

 「すみません天子……でもさっき言ったことは本当です。でも……まだあなたの答えは出さないでください」

 

 

 いきなりの事で訳がわからない。答えを出さないでって……?どういうことなの華扇さん?

 

 

 「私は結婚式の練習に便乗して私の好きと言う想いを天子になすりつけようとしました。でも天子は練習のつもりでしたのに……結婚式を利用したのです。卑怯な真似をして天子の心を掴もうとしました」

 

 「そんな卑怯だなんて……」

 

 「いえ、天子がどう思おうが私が嫌なのです。天子のことを思っているのは私一人だけじゃないですし……そして私は決めたのです。私は正々堂々と天子の心を奪うことにしました」

 

 「華扇さん……!」

 

 

 照れているが、ハッキリとした笑顔で天子を見つめる瞳は本物だった。その瞳には強い頑固とした意思が宿っていたのだ。

 

 

 ……そっか、わかったわ華扇さん。華扇さんの想いが私を動かしたその時に答えを出すわ。私の心は複雑だからその時はいつかなるかわからないけどもしもその時は……

 

 

 「ああ、楽しみにしているよ華扇さん」

 

 

 その想いに応えよう……!

 

 

 「これは……また天子様につく虫が増えてしまいましたか」

 

 

 衣玖、メス豚から虫に変わった?少し……ほんの少しだけマシになったのかな?まだ少しダーク衣玖が残っているようだ……早く元の衣玖に戻ってくれないかなぁ(切実な願い)

 

 

 「ったく、ライバルが多くなったわけか」

 

 「あら、萃香は嫌なの?蹴落としがいがあって面白そうじゃない♪」

 

 「幽香お前もなんだよな?天子のことがす……」

 

 「な、なにを言っているのかしら!?わ、わたしはただ面白そうだからこのメンバーに入っているだけよ!ほ、ほんとうよ!!」

 

 「嘘だね」

 

 「だ、だまりなさい!」

 

 

 萃香と幽香は喧嘩し始めてしまった……はぁ、一時はどうなることかと思ったけど穏便に済んでよかったわね……

 

 

 「おいおい待てよ、これで華扇の()()は終わったけどよ……天子の方がまだじゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 んんん?妹紅は何言っちゃっているのかな~?華扇さんの()()?あれれおかしいなぁ~?丸く収まったと思ったのになんだろうこの嫌な感じは……

 

 

 天子の全身から嫌な汗が出る。今のは聞き間違えだと神に願っているのだが……

 

 

 「そうでしたね。天子さんの()()はこれからでしたものね」

 

 「では天子殿、私達と()()しましょうか」

 

 

 神は天子を嘲笑(あざわら)った。

 

 

 妖夢、神子……何を言っているの!?()()終わったじゃん!たった今終わったじゃん!さっきので終わりでよかったじゃん!!華扇さんが良いこと言って終わりでよかったよね!?どうしてまだ物語は続くんじゃ♪みたいなこと言っているの!!?

 

 

 「そうだったそうだった、天子お前……私達のこと忘れていたのか?地底にいる間、一生懸命働いていた私達がようやく天子に会えることに喜んだのに……待っていたのは結婚話でした。それを聞いた私達はどんな思いをしたと思う……んん?」

 

 

 萃香ちょ!?拳をコキコキ言わせながら近づいてこないで!忘れていたわけじゃないの!ただ川の流れに身を任せてしまっただけでして……!

 

 

 「しかも華扇以外の誰にも相談せずに執り行われるという……まるでバレるのが嫌だったみたいな……これについてはどう説明してくれるつもりだ……あぁん?」

 

 

 妹紅ダメダメダメ!火は止めてって……あぶなっ!?近づいけたら髪に引火しちゃうから脅さないで!!!

 

 

 「どういうことかしらね……私の親友(とも)になりたがっていたあなたが私に黙って面白そうなことをしようとしていた……まだ親友(とも)にはなれなさそうね天子♪」

 

 

 幽香さん……その笑顔怖い……お願いそんな顔で寄って来ないで……!

 

 

 「そこのところ色々と詳しくお聞かせ願えますか……」

 

 

 衣玖の冷たい視線と重なって……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「て・ん・し・さ・ま?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「華扇さん……」

 

 「……頑張って……」

 

 「oh……」

 

 

 華扇さんに助けを求めたけど無理でした。そしてこれから身に起こる出来事に目を逸らすことなどできないということがわかった……

 

 

 ああ……さようなら……父様……母様…… 

 

 

 救いの手も届かず天子は衣玖達と長いこと()()()()()()お話をしましたとさ。

 

 

 めでたしめでたし♪

 

 

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