それぞれの異変が終息します。そして天子はと言うと……
それでは……
本編どうぞ!
「くらえぇえええええええええええええええ!!!」
「くっ!?」
ガキンッ!
お祓い棒が力負けして投げ飛ばされる。
「ヤバいぜ霊夢!」
魔理沙の声が聞こえて来た。私のお祓い棒が離れたことで私が負けると思っているのかしら?そんなことないと言うのに、この程度で負けるほど弱くは……
「――!伏せて霊夢!」
「――ッ!」
咲夜の声も聞こえて来たが、心配される声ではなく警告するを示した言葉を含んでいた。その言葉と背筋がゾワリと寒くなるのを感じて私は身をかがめた。
そして霊夢の頭を
危うく脳天に穴を開けるところだったわ……この針妙丸とか言う小人……侮れない!
霊夢はすぐにその場から離れ地面に落ちていくお祓い棒へと目掛けて急降下する。地面に触れるギリギリのところでうまくキャッチできた。そしてすぐさま再び敵へと対峙する。
「……やってくれるじゃない、危うく脳天に穴ができるところだったわ」
「私には負けられない理由がある!勝たなきゃいけない約束があるの!あなたなんかに負けたくない!幻想郷のためにも私は……貴方達を倒してやるんだから!!」
強い瞳ね……今まで相手にしてきた妖怪とは訳が違う。真っすぐに突き進んでくる……迷いが無い。この小人が異変を起こしたのは間違いなさそうだけど何かが違う気がする。話も微妙に差異を感じるけど……倒せばどうでもいいと、異変を終わらせられる思っていた。そう思っていたんだけれどこれは中々骨が折れそうね……今まで異変を通して色々な相手に会って来たけど、ここまでの信念を貫こうとする相手を見るのは初めてな気がするわ。途中から気迫され始めていたなんて魔理沙達には言えない……弱者って自分で言っておいて結構強いじゃない。
「そう……あんたなら……倒せる
「倒せる
決意の瞳だ。霊夢は針妙丸の瞳へと吸い込まれるような感覚を覚えた。それだけではない、何者にも揺らぐことのない強い意思……針妙丸の姿が大きく太陽のように見えていた。小人なのに誰よりも大きい魂の叫びをあげているかのように……!
それからしばらく攻防が続いていた。ここに来て初めて霊夢が防戦一方の形となり、徐々に押され始めている……霊夢は次から次へと新たなスペルで対抗するが、針妙丸がそれを攻略していく。先ほどと立場が逆転し、小人の猛攻は止まらない。
「でぇやあああああああああああああああああ!!!」
「ぐっ!?」
討ち合う二人……苦しい表情をしているのは霊夢、針妙丸の額には汗が流れ飛び散る……しかしその瞳は闘志を燃やし、勇気を身に纏うその姿はまさしく勇士であった。
魔理沙と咲夜はこの光景に驚きを隠せない。霊夢が押され負けるかもしれない状況……でも手を貸すことはない。スペルカードルールに従っているだけではない、二人はこの決闘を邪魔するべきではないと見た。誰もあの二人の決闘を邪魔してはいけないと魂が吠えていた。
「いやぁあああああああああああああああああ!!!」
針妙丸の放った衝撃で霊夢は吹き飛ばされる。そして針妙丸の手札は残り一枚……霊夢の手札も残り一枚……お互いに最後の一枚だけとなってしまった。
「やるわね、小人のくせに今じゃ巨人じゃないかって思ったわ」
「私の闘志は燃え続けている!私はこの戦いに勝ってこの小槌で願いを叶え、弱者が見捨てられない楽園を築くの!!」
どこが弱いんだか……残り一枚まで追い詰めるなんて……
霊夢は微笑を浮かべた。誰にも気づかれない程に小さな笑みが微かにそこにあった。
あんたみたいな奴は……嫌いじゃなかったわ。けれどこれでお終いよ、これ以上異変を長引かせることはしたくないしね。
霊夢にふっと光景がよぎる……腹から血を流して地上へと落ちていく妖怪の姿……命の鼓動が尽きかけた状態で放り出された先に待っているのは……
……名も知らないあいつのように……あんたを仕留めたくないから……だからこれで終わりよ!!
霊夢は最後の一枚のスペルカードを取り出した。
「これでおしまいにするわ!!」
「最後に勝つのはこの私だよ!!」
『七人の一寸法師』!!!
針妙丸最後のスペルカードが発動された!
これがあんたの……針妙丸の思いね。久々に熱くなれたお礼よ……これが私の思いよ!!
霊符『夢想封印』!!!
霊夢から色とりどりの大き目な光弾が次々と飛び出し、その光弾は針妙丸目掛けて迫りくる。
「――!?」
針妙丸の弾幕がかき消される。針妙丸は急いでその場を離れようとするが、光弾は針妙丸を取り囲む。
「(――しまっ――!?)」
そしていくつもの光弾は針妙丸を包み込み……
「(……ごめん……正邪……!)」
光と共に炸裂した。
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「終わったな……霊夢」
「ご苦労様、お茶でも出しましょうか?」
「いいわ、今はお茶なんて飲む気にはなれないし……って言うか咲夜あんたどっからお茶を出すつもりなのよ?」
「それは企業秘密ですわ」
霊夢のスペル 霊符『夢想封印』が決まり光が晴れた先には針妙丸が地上へと落ちていく……それをふわりと抱きかかえる。霊夢の手の中には霊夢と然程変わらない大きさだった針妙丸の姿はなく、元々は少女の膝下程度の大きさしかなかった針妙丸の体は、打ち出の小槌を使いすぎた代償で更に小さくなってしまっていた。下手をすれば手に収まるサイズの正に小人サイズであった。
「その小人、とても勇敢なのですね。戦いを見ているだけで熱くなれたわ。それにお嬢様が好きそうなので持って帰ってもよろしいですか?」
「おいおい、咲夜は何を考えているんだぜ……確かに滅多に見ることのない激戦だったな。霊夢がここまで追い込まれるなんてな」
「そうね……全くどこが弱者なんだが……」
「それで霊夢はその子をどうするつもり?」
「……異変のことについて話を聞くわ」
「そう……ならば私もそのお話に御一緒させてもらおうかしら」
バッ!と魔理沙と咲夜は声をした方を振り返る。そこには見慣れたスキマが開いてその開口に優雅に座っている妖怪の姿があった。
「……紫居たのね」
「あら、霊夢は驚いてくれないのね」
神出鬼没のスキマ妖怪である八雲紫がいつの間にか背後に居たことに魔理沙と咲夜は少なからず驚いたが霊夢は一切そのようなことはなかった。ただ霊夢は手元の小人を見つめているだけである……
「そんなにその小人が気になるの?オヨヨヨ……霊夢が構ってくれなくて紫は寂しいわ~」
「はいはい……それで紫は何しに来たのよ」
「冷たい態度ね……いいわ。先ほど言った通りよ、その小人の話に興味を持ってね」
「……針妙丸が今回の異変の黒幕なんじゃないかってことでしょ?」
「針妙丸と言うのねその小人さんは……そうよ。霊夢の言う通り、そして今回の異変は幻想郷のパワーバランスを崩しかねない異変……いいえ、ハッキリ言うわ。悪意を持って起こした異変の黒幕を野放しにすることはできないのよ」
「ちょっと待てよ紫!それなら針妙丸の奴が黒幕だったら……針妙丸はどうなるんだよ!?」
魔理沙は紫に食って掛かった。だが、紫は表情一つ変えずに魔理沙の感情を受け流す。そして冷たく言い放つ……
「始末するわ」
「そんなこと駄目に決まっているだろ!?」
魔理沙がすかさず反応する。始末……それはすなわち言わずともわかること。この世からいなくなるということを意味している。魔理沙はそれを拒絶する。
「確かに今回の異変はあぶねぇ異変だったかもしれないかも知れないけど結果はそうならなかったからいいだろう!」
「魔理沙落ち着いて」
「どうして咲夜は落ち着いているんだよ!紫の奴は針妙丸を消そうとしているんだぜ!?」
「そうね……けれどそれも仕方ないことよ。魔理沙冷静に考えてみて?この異変をもし成功してしまい、この子が言う弱者が見捨てられない幻想郷になったら……一体どうなると思う?」
「そ、それは……」
魔理沙は口ごもる。今回の異変は下手をしたら幻想郷を変えてしまう異変だったことはわかる。しかしその影響までは魔理沙は考えてもいなかった。ただ良くないと言う事しか把握していなかったのだ。
「力のない者全てが悪い訳じゃないけど、一気に変化してしまったらみんな適応できない者が多い。それだけならまだしも、悪さを行う輩が出てくる。そう言う輩は必ずしも存在して、力の強い者が規律を守ることによって抑制されているの。でももし抑制する存在が無くなれば?その輩はチャンスと捉えて好き勝手に暴れまわる……そうなれば誰がその輩を退治するわけ?」
「わ、わたしや霊夢が退治すれば……」
「それが現実にできたらいいわ。この子は具体的には内容は言わなかったけれど、弱者が幻想郷を支配して幻想郷のルールを壊す……こうなってしまえば幻想郷中がパニックになり、人里関係なしに妖怪が襲ったり、弾幕勝負など平和的解決法も意味を為さずに暴力沙汰になって多くの命の危機になってしまうかも知れなかったのよ?幻想郷中が混乱して収拾がつかなくなって幻想郷事態が成り立たなくなる可能性があったと今回の異変の規模はそうだと私は見ているわ」
「流石は完全で瀟洒な従者と呼ばれるだけあるわね。どう?私の式になってみない?」
「私にはお嬢様がいますので……それに約束しました。生きている間は一緒にいますと誓ったので丁重にお断りさせていただきます」
深々と頭を下げて紫の申し出を断った。
「あら残念ね。いい式になると思ったのに……」
「おい紫!話を逸らすなよ!咲夜が言う通りの可能性だってあったのはわかった。けれど無事に終わったんだからいいじゃないか!」
「あのね……あなたは甘すぎる。その小人を庇う必要があなたにある?」
「そ、それは……」
「ないでしょ?あなたはただ情けをかけたいだけ、その小人に悪意が無かったとしても結果そうなってしまってからじゃ遅いのよ。もうわかったでしょ?だから……そこをどきなさい!!」
紫は妖気を体から放つ。その瞬間に空気がガラリと変わり、魔理沙と咲夜の肌に鳥肌が立つ。並みの妖怪では決して感じられることのない強者の貫禄がそこにあった。汗が流れて息を呑む……足が小刻みに震えるのが感じ取れてしまう。何かを発しようと口を動かすが言葉が出て来ない……口をパクパクさせるのがやっとだ。二人は恐怖に支配されていたのだ。
そんな状態では戦う事すら叶わない……紫は無視して魔理沙と咲夜の間を通り過ぎ霊夢の前へと降り立った。
「さぁ、霊夢もわかっているでしょ?その小人をこちらに……」
紫が手を針妙丸に伸ばし……
パシンッ!
「……」
「霊夢!?」
その手を霊夢が振り払った。
そのおかげで紫が発していた妖気は身を潜め、魔理沙と咲夜は息を吹き返したかのように体が軽くなる。
「紫、針妙丸はまだ異変の黒幕だと断定したわけじゃないわ。だから今は何もしてはダメ……話をするって言ったでしょ。針妙丸が話してくれるまでは手を出しちゃいけないわよ」
霊夢は紫に対して冷たい視線を送る。それが何を意味しているのかはわからないが少なくとも針妙丸には手を出せないと言う事は確かである。
「……そう……そうだったわね。霊夢の言う通りにするわよ」
踵を返して紫はスキマを作り、スキマの中へと姿を沈めていく。
「また来るわよ……」
それだけを言い残して紫はスキマと共に消え去った。
「紫の奴は帰ったか……言葉は通じても話は通じない奴だぜ!」
「妖怪の賢者の言う事も大切よ魔理沙。魔理沙はこの子に加担し過ぎているわよ?」
「そうかもしれないが……霊夢みたいな勘じゃないが囁いて来るんだ……黒幕は別にいるってな」
「……それって今、考えた言い訳じゃないの?」
「うるさいんだぜ!完全で瀟洒な従者なのに小さいことを言うんじゃないんだぜ!」
魔理沙の対応にやれやれと頭を抱えるしかない咲夜は、視線の先にいた霊夢に話を振る。
「その子が本当に黒幕なら妖怪の賢者に引き渡すの?」
「ええ、紫に任せた方が楽だし私は関係ないから。もう博麗の巫女としての異変解決はこれで済んだことになるのだから後はどうでもいいわよ。煮るなり焼くなり好きにしてって感じ……赤の他人だからね」
霊夢は平然と言ってのける。その言葉に対してムスッとした表情の魔理沙だったが、それでも魔理沙は何も言わなかった。
「あなたが言うなら私から何も言わないわ。さて、異変は解決したんだから帰りますわ。お嬢様がそろそろプリンをねだる頃合いですので」
「紅魔館の当主はお子ちゃまだな……」
「そこがいいのよ魔理沙♪あなたにわかるかしら……いつもなら夜を統べる王の風格を漂わせているお嬢様がふっとした時に見せるあの可愛らしい仕草に表情……そして極めつけは『咲夜が作ってくれたプリンは美味しいわよ♪』って私に微笑みかけてくれる笑みが最高なのよ!」
「お、おう(咲夜が時々みせるこれは相変わらずなれないんだぜ……)」
鼻息が荒いメイドは魔理沙にレミリアの良さを次々に語る。その語る目はどこか天国でも見ているかのようであったが、対して魔理沙はどうでもいいかのように適当に話をつけていた。
背後の雑音を尻目に霊夢は手の中で疲れ果てて眠っている小人を見つめていた……
「(……針妙丸が本当に異変の黒幕?異変を引き起こしたのは針妙丸のようだけど……何かが引っかかるような気がする。それに……)」
霊夢は逆さ城の窓から外を眺めた。
「(名も知らないあの妖怪が気になる……あいつは針妙丸と関りがあった?とにかく目が覚めてから色々と聞くことが多そうね……)」
霊夢は誰にも気づかれることなく深いため息をついて異変は終息することとなった。
「……あの小人が異変の黒幕だと想定しても何かが引っかかるわね……いるかしら藍?」
「はっ!ここに」
スキマから姿を見せた紫が発した言葉に反応する声……木陰の傍から姿を現したのは八雲藍であった。
スペルカードルールは幻想郷内での揉め事や紛争を解決するための手段であり『殺し合い』を『遊び』に変えるルールである。今回の異変には遊びと言うものが感じられない……『殺し合い』までにはいかなかったものの、幻想郷のパワーバランスが総崩れする可能性があったこと、打ち出の小槌を使って願いを叶えていく過程で溢れ出た小槌の魔力によって道具が付喪神化したり一部の妖怪達が暴れるようになった。博麗神社にまで押し寄せることになり、幻想郷が機能しなくなるのを紫は恐れた。そして見つけた……逆さ城の内部で小槌を扱う小人を……その小人と霊夢達が戦うのをスキマから紫は観察し、その間に藍は紫の命令で幻想郷中を観察していた。待ち合わせの時間となり一度この場へと帰って来たのだ。
「どうだった藍、幻想郷の様子は?」
「はっ!付喪神化した道具達の大半は元に戻り、暴れていた妖怪も正気を取り戻した様子です。そしてその背景には秦こころ及び地底の覚り妖怪、唐傘の妖怪の手によって終息したもようです」
「秦こころ……この前に異変を起こした子ね。それに地底の覚り妖怪が何故地上に……?」
「おそらくかの者は古明地さとりの妹である古明地こいしでしょう。話を耳にしたことがあります。無意識を操るとか……」
「意思に関係なく地上に出て来てしまったわけね……ちゃんと条約は守ってほしいものね……」
これにはお手上げといったばかりに呆れた。本来ならば地底の妖怪が地上に無断で出てくるのはご法度なのだが、今回ばかりは藍の報告によれば異変終息の手助けをしたそうだったので紫は見てみぬふりをすることにした。こいしは地霊殿の主であるさとりの妹なので弱みを握っておけば、これをチラつかせて言う事を聞かせるようにすることなど紫ならばやってのける……決してそうじゃないと信じておきたいがそれは当の本人にしかわからない。そして話題に上がらない小傘は泣いてもいい……
「それでもう一つ……鬼人正邪となる者の情報があります」
「鬼人正邪?」
紫はその名に心当たりはなかった。一体どこの妖怪か……見当もつかない。
「藍、その鬼人正邪について教えて」
藍は紫に鬼人正邪のことを伝える。体の特徴、どんな性格で何の妖怪なのかまで紫に伝えた。
「天邪鬼……今回の異変は弱者が強者を蹴落とす下克上、その鬼人正邪が深く関わっているとみて間違いなさそうね」
「はっ!そしてその鬼人正邪は博麗の巫女……霊夢の手によって重傷を負ったようです」
「霊夢が?意外ね……お遊びじゃないだなんて……もしかしたらその鬼人正邪が今回の黒幕って可能性もあるかもしれないわね」
「それとなんですが……重傷を負った鬼人正邪は小妖怪共と遭遇して更に傷を負い、瀕死の状態にまで陥りました。しかしその時に現れたのが……比那名居天子です」
「……えっ?」
意外な人物の名に声が漏れてしまっていた。
「瀕死の鬼人正邪を抱えてそのまま森の中へ……おそらく永遠亭に向かったと思われます。それ以降の情報は残念ながら……」
「……そう」
紫は顎に手を当てて考える。
「(比那名居天子……またあなたが関わってくるだなんてね、異変を起こしたのはあなたではなさそうだけど……黒幕は小人か天邪鬼か……しかし小人の方は打ち出の小槌が願いを叶える際に求められる『代償』を知らなさそうだったし……まさか本当の黒幕は!?)」
紫はすぐに行動に出た。スキマを開き、中へと入って行く。
「紫様?」
「藍、ちょっと出かけてくるわね」
紫は目的の人物に会うために再びこの場から消え去った。
「もうおチビちゃんなんて言わないからその薙刀でツンツンつつくのやめてくれない?」
「ダメ、まだ私の気が収まらない……私は怒っているのだぞー!」
ロープで縛られていたのは堀川雷鼓だった。そして雷鼓に薙刀でつついていたのはこころだ。危ない行為なので良い子のみんなは決して真似しないように。
「やったねこころ♪」
「凄い!こころってこんなに強かったんだ!わちき驚いたよ!」
「当然だ」
こいしと小傘がこころをヨイショする。ふんすと鼻息を鳴らして胸を張るこころは上機嫌のようだ。
「雷鼓姐が負けちゃった……弁々姉さんどうなっちゃうの?」
「大丈夫よ、この子達は私達を悪く扱ったりしないわよ」
「どうしてそんなこと言えるの?」
「考えてみて八橋、あの暴力巫女に比べたらどっちの対応が優しい?」
「断然こっち」
博麗の巫女に返り討ちにされた時と比べればどれほどこの子達が優しいか身を以て実感する。
「それでおチ……こころは私達をどうするつもりかしら?負けたからにはもう好きにするといいさ」
雷鼓は諦めた。どうであれ敗者が何かを言える立場ではないことぐらい知っている。これで道具の楽園を築くという夢は終わりを告げる……
「なら……ツクモンジャーのメンバーに入れ」
「……はっ?」
雷鼓は自分の耳を疑った。
「……なんだいそれは?」
「私達が結成した
「……それでその……つくもんじゃーは何をしている
「う~ん……特にない。私達の気分次第での活動だ」
「……」
雷鼓は計画性のない連中だと思った。だけど、嫌とは思わなかった。名前はダサいと思ったがあえて何も言う事はしなかった。
「ふふ、まぁいいわ。負けた私達がとやかく言う事はできないからね。でもいいのかしら?私達は黒幕なのかもしれないのよ?」
「あ、そういえばそうだった」
「そういえばって……」
うっかり忘れていた反応を示すこころに呆れる。
「でも雷鼓は黒幕って気がしない……戦ってみてわかった。雷鼓はそんなことをするような付喪神じゃないって。だから私は雷鼓達を許す」
薙刀を振りかざして雷鼓を縛っていたロープを切り裂いた。
「あんた……!?」
「これからは仲間だ。雷鼓」
こころは手を差し出す。その手とこころの表情を見比べながらふっと笑みがこぼれる。
「あんたには敵わないわ……完敗よ」
「ふふん、当然だ♪」
「これからはお世話になるわ。弁々と八橋とも共ね、そっちのお二人もよろしくね」
「うん♪よろしくね♪」
「わちき達の方こそお願いします」
「弁々姉さん、成り行きで私達も入ることになったけど……」
「いいじゃない、こういう終わり方もなんだか素敵よ。それに……雷鼓姐さんが喜んでいるみたいだからこれでいいのよ」
こうして霊夢達が表の異変を攻略している裏でこころ達の活躍があったそうだ。
そして……
「……おい、これからどうするつもりだよ……?」
ここは地上……の霧の湖。そこで三角座りしながら湖を眺めている正邪と……
「……ノープランだ」
天子の姿があった。
この二人が幻想郷の住人を巻き込んだ逃走劇を繰り広げる日は近い……!