比那名居天子(♂)の幻想郷生活   作:てへぺろん

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輝針城編に続き弾幕アマノジャク編開始です!


二人の行く先は一体どこに……?


それでは……


本編どうぞ!




弾幕アマノジャク 孤独の子編
70話 指名手配


 天邪鬼 鬼人正邪 

 

 

 

 【この者を捕らえた者には多額の報酬を与えん】

 

 

                       八雲 紫

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 多くの妖怪達に御触れが出回った。これを見た妖怪達は報酬に興味を示した者達がいた。面白そうと興に乗じる者もいた。またあるものは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「うぅ……ここは……?」

 

 

 知らない天井が視界全体に広がっていた。大きすぎると思ったが、彼女は誰よりも小さかった。

 

 

 ここは……どこ?私は何をしていたんだっけ……?

 

 

 針妙丸はまだボーっとする頭を回転させながら知らない場所にいる経緯を思い出そうとしていた。

 

 

 ――ッ!?そうだ!私は小槌で願いを叶えようとして博麗の巫女に……そうだ小槌はどこに!?

 

 

 慌てて小槌の所在を探す。あれを誰かに取られて悪用でもされれば大変なことになる。しかし意外なことに小槌はご丁寧に針妙丸が寝ていた布団のすぐ横に置かれていた。

 

 

 よかった……小槌は無事みたい。けれどなんだろう?小槌が大きくなったような気がする……あれ?小槌ってこんなに大きかった……っけ……!?

 

 

 針妙丸が不思議に思う。前までは小人である針妙丸でも膝下程度の大きさはあった。小槌もどうってことなく持つことができたのだが気づいてしまった。体を見ると更に小さくなってしまっていた。もはや今の針妙丸の身長はおおよそ20cm程度の大きさしかない……打ち出の小槌を使いすぎた代償であった。小人の体を大きくしたいと願っていた針妙丸にとって絶望的な結果になってしまった。

 

 

 「そ、そんな……これじゃ私……そこら辺にいる虫と変わらないじゃない……!これって小槌を使いすぎたせいなの?う、うそだ……あんまりだぁ……あァァァんまりだァァアァ!!!」

 

 

 わんわんと泣き叫び大粒の涙を流して悲しむ針妙丸。その泣き叫んだ声を聞いたのかドタドタと足音が向かって来る。障子を開け放ち入って来たのは金髪の少女……針妙丸はこの少女を知っていた。

 

 

 「何の音なんだぜ!?あっ!お前だったのか……って泣いているのか!?一体どうしたんだよ!?」

 

 

 異変を解決しに来て針妙丸の前に立ち塞がった博麗の巫女と同じ人間の魔理沙が聞きつけて部屋に入って来た。泣いている針妙丸を見るなりあたふたしながら「霊夢にいじめられたのか?」「霊夢に恐喝でもされたのか?」と心配そうに聞いてくる。針妙丸が持っていたあの悪しき妖怪である八雲紫に仕える博麗の巫女の仲間とは異なる印象を受ける。

 

 

 うぅ……心配してくれている?意外に優しそうな……でもあの博麗の巫女の仲間……何かを企んでいるんじゃ?でもこの人もそうだけど、博麗の巫女から怖い感じがしなかったなぁ……

 

 

 針妙丸は魔理沙が近づいてくると警戒した。しかしハンカチを押し当てて小さい針妙丸の涙を拭う手は優しく本気で心配してくれている様子だった。

 正邪から聞かされていた博麗の巫女は八雲紫と言う悪しき妖怪に従う殺戮マシーンの印象だったが、今思えば戦っていた博麗の巫女からそんな様子はなかった。人間らしく熱い目をしていたし、戦いに卑怯な真似はしてこなかった。正々堂々と戦って針妙丸は敗れたのだ。文句の言いようがない敗北……そして目の前の魔理沙の行動は針妙丸に疑念を抱かせた。「博麗の巫女もこの人も悪い人なのか?」っと……

 そんな時に魔理沙の後ろに影が現れた。「あっ」っと針妙丸から声が漏れたが魔理沙は気がつかない。その影は手に持っている棒状の物を振り上げてそのまま魔理沙に振り下ろした。

 

 

 バシッ!と音を立て棒状の物が振り下ろされた箇所を擦りながら痛がる様子の魔理沙は振り返る。その影は呆れた様子で魔理沙を睨む博麗の巫女……霊夢であった。

 

 

 「いてて……霊夢何すんだよ!?」

 

 「誰が『霊夢にいじめられたのか?』『霊夢に恐喝でもされたのか?』ですって?私を何だと思っているのよ」

 

 「鬼巫女」

 

 

 バシッ!と棒状の物が再び魔理沙の頭に振り下ろされた。

 

 

 「痛いって!同じ個所狙うなよ!!」

 

 「自業自得よ、魔理沙が私のことをそういう風に見えていただなんて……これから魔理沙が遊びに来たら水でなく泥水を提供してあげるわ」

 

 「それは勘弁してくれ」

 

 

 傍から見ていた針妙丸はこの様子に悪い印象を受けなかった。言っていることは厳しいが何やら仲が良い様子に冗談交じりに受け答えする二人を見た針妙丸はこれが友達かと思った。

 

 

 仲が良さそう……私もこんな風に正邪と仲良くできるかな……あっ!正邪!正邪はどこに!?

 

 

 異変の最中、博麗の巫女を止めるために傍を離れた正邪のことを思い出した。彼女がどうなったのか心配した針妙丸は敵であるはずの博麗の巫女に質問する。

 

 

 「す、すみません!正邪はどこですか!?」

 

 「正邪?正邪って()()に載っていたよな霊夢?」

 

 「ええ、そうね」

 

 

 ()()っと言うのが何なのかわからない針妙丸は首を傾げる。

 

 

 「鴉天狗の文とはたてって奴が持って来た手配書に名前が載っていたんだ。ご丁寧にイラスト付きだぜ」

 

 

 そう言って魔理沙がポケットから取り出したのは一枚の紙、それを針妙丸に両手で見えるように開く。そこには確かに正邪の名前が載っていた。イラストも正邪の特徴をよく表していた。そして針妙丸の目を釘付けにしたのは【この者を捕らえた者には多額の報酬を与えん】という一文……そして最後の八雲紫の名前だった。

 

 

 ――八雲紫!!そんな……正邪が指名手配されているなんて……!

 

 

 針妙丸は己の弱さを恥じた。自分の正義感で正邪を巻き込んでまで異変を起こして失敗した……そのせいで正邪は追われる身となり、今もどこかで報酬欲しさに狙われているに違いない。拳に力が入るが、それは小さな小さな悔しさだった。

 そんな時に霊夢が何を察したのか針妙丸に詰め寄る。

 

 

 「……針妙丸、あんたには色々と聞きたいことがあるの。話してくれるわよね?」

 

 「……はい」

 

 

 針妙丸は今までの経緯を語る。そして知る……正邪の正体と今まで利用されていたこと、小槌は下克上の世界という叶えきらない願いを叶えようとするあまりに魔力が枯渇していく一方で、意図せず洩れ出した魔力が無関係の妖怪達を凶暴化させ付喪神達を生み出していたことを……

 

 

 初代の一寸法師が鬼を退治した時に、願いを何でも叶えられるという鬼の秘宝『打ち出の小槌』を手にいれ、姫と大きな身体を得た。初代はそれ以外のことは願わずに『打ち出の小槌』を家宝とした。何故願いをもっと叶えなかったのか……『打ち出の小槌』は鬼の魔力が込められた道具であり、乱用すると身を滅ぼしかねないだろうと考えたからである。

 しかし小人も代を重ねるごとにその教えは忘れ去られて己の欲望を叶えようとする小人が現れてついにはその禁忌を犯してしまう。

 

 

 一人の小人の末裔が、小槌で自分の欲を叶え始めてしまった。次々に叶えられる願いは更に小人の欲望を加速させた。一度始まった連鎖は止まらず、最後の願いに『豪華な城を建てて民を支配したい』と小槌に願って輝針城を造り上げた。小人の願いは叶えられたかに思えたがその時に小槌の魔力は尽きてしまった。途端、出現した輝針城は逆転し、民のいない鬼の世界へと小人族もろとも幽閉してしまう。小槌が願いを叶える際に求められる代償であった。

 それから長い年月を経て、もう小人族で過去を話す者もいなくなり、針妙丸は小槌の事を知らなかった。そこに目を付けたのが鬼人正邪だった。そして彼女は正邪に言われるがまま偽りの小人の歴史を信じて小槌に弱者が見捨てられない世界を作り上げようとしたのだ。

 しかし結果は失敗、正邪は姿を眩ましてしまう……針妙丸は利用されていたのだ。

 

 

 そ、そんな……正邪がそんなことをするわけない!

 

 

 針妙丸は今まで一人で生きてきた。色々な困難が彼女を襲い、小人であるが故に理不尽なことも多くあったが、それでも精一杯生きてきた。そんな時に命の危機(猫にじゃれつかれる)に瀕してしまうかに思えた時に出会った。それが正邪であった。

 そして話を持ち掛けられ針妙丸は彼女を信用した。純粋な針妙丸は正邪を疑わなかったが、今となって真実を知ってしまう。それでも針妙丸は彼女を信じたかった……自分と同じく正邪もまた一人だったから。

 

 

 「正邪はそんなことをしない!」

 

 「随分と信用しているのね?会って間もない相手だというのに」

 

 「そ、そうだけど……正邪は私に色々と教えてくれたよ!」

 

 「それも全部嘘だったけどね」

 

 「そ、それは……」

 

 

 霊夢に言われて押し黙ってしまう。言い返せなかった……霊夢の言ったことは本当なのだから。

 

 

 沈黙が続く……俯き顔の見えない針妙丸とそれを見下ろす霊夢……重苦しい空気に耐えかねて魔理沙が間に入り込む。

 

 

 「ま、まぁいいじゃないか!針妙丸はどちらにしても反省しているようだし、その正邪って奴も捕まえて話し合えばいいじゃないか!お前はどうしたいんだよ針妙丸?」

 

 

 私……私は……!

 

 

 グッと拳を握りしめて魔理沙と霊夢に胸の奥から言いたいことを言い放つ。

 

 

 「私は正邪ともう一度話合いたい!今度は利用するされる立場じゃなく、本当の友達としていたい!」

 

 「……そっかそっか!よし、それじゃ行くか針妙丸!」

 

 

 魔理沙はそう言うと立ち上がり針妙丸を肩に乗せる。いきなりなのでグラッとよろめいて危うく落ちそうになる針妙丸はしっかりと魔理沙にしがみつく。

 

 

 「魔理沙、どこへ行く気なの」

 

 「決まっているじゃないか。その鬼人正邪の元へ行くんだよ!」

 

 

 ニカッと笑う魔理沙に呆れてものも言えない様子である。針妙丸は目を丸くして驚いていた。

 

 

 「報酬目当てかしら?」

 

 「それは霊夢の方だろ?私は報酬も金も興味ない。ただ針妙丸に協力しようと思っただけだぜ」

 

 「あんたが人助けならぬ小人助けなんて……明日は嵐ね」

 

 「ひどい言われようだぜ。それに天子の影響もあるのかもな、友達になろうとする針妙丸の思いを聞いたらなんだかジッとしていられなくなってな」

 

 

 天子って誰?っと針妙丸は思ったが、今は正邪のことの方が心配でそれほど気にしなかった。

 

 

 「それに霊夢、少しホッとしたんじゃないか?正邪が生きていたことに」

 

 「……何のことかしら……」

 

 「言いたくないならそれでもいいぜ。私は針妙丸と一緒に正邪と天子を探すから……行こうぜ!」

 

 「えっ?あっ、はい」

 

 

 針妙丸は魔理沙が言った「正邪が生きていた」ことが気になったがそれも確認する暇もなく空へと飛びあがり加速して行く。

 

 

 魔理沙……さんには後で聞いてみよう。それと……待ってて正邪、私が会いに行くからね!

 

 

 目的地はわからない。だが、それでも二人は探す……それぞれの思いを胸に抱いて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「はぁ……魔理沙にも困ったわね。面倒ごとが増えてこっちは迷惑しているのに……」

 

 「お~い霊夢~!さっきのチビ助はどこ行ったんだ~?」

 

 

 フラフラとやってきたのは萃香だった。襲い掛かってくる妖怪達をちぎっては投げちぎっては投げを繰り返して博麗神社を守った。嫌々やっていたので終わった後は裏手で寝転がり酒に酔い居眠りしていた。ようやく目を覚ました萃香はチラっと見かけた小人のことが気になった様子だった。

 

 

 「もう魔理沙と共に出かけたわ」

 

 「ありゃ?久しぶりの小人に会えたと思ったのになぁ」

 

 「そういうなら居眠りなんかしてんじゃないわよ」

 

 「こっちは雑魚相手で疲れたんだよ……まぁ、あのチビ助にはまた会える気がするし別にいいけどね」

 

 「あっそ」

 

 

 霊夢は素っ気なく応える。

 

 

 「ところで霊夢は報酬が欲しくないのか?お金が手に入るかもよ?」

 

 「……」

 

 「だんまりか、霊夢にしては珍しいね。普段の霊夢なら喜んで飛びついていったものを」

 

 

 お金に困っているわけではないがここは人間が来るには厳しい土地。賽銭も入っていることの方が珍しいので金目の物があれば手を出して損はない。実際に霊夢は宝と聞けば目の色を変えて飛びつく……普段の霊夢ならば。

 今日の霊夢は萃香から見たら報酬に反応しないただの博麗の巫女だった。「異変か?」と小さく呟いたが、霊夢の瞳を見た時に何かを察したのかそれ以上何も言わなかった。

 

 

 「私には関係ないことだからいいけどね。あ~あ、退屈しのぎにその天邪鬼をぶちのめしに行こうかなぁ……」

 

 「萃香」

 

 「はいっ?」

 

 「留守番お願い」

 

 「え、ちょ」

 

 「留守番してなかったらボコるから」

 

 

 霊夢はそう言って空へと飛びあがった。急なことに萃香はポカンと口を開けて去って行く霊夢を眺めているだけ……

 

 

 「……一体なんなんだよ霊夢!!!」

 

 

 萃香はまた神社でお留守番することになった。

 

 

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 「見つけたぞ!みんなかかれ!!」

 

 

 それを合図に一人の少女に群がる妖怪達……狙われた少女は強い訳ではない。逃げるのは得意な天邪鬼の鬼人正邪は賞金と報酬目当て、はたまた先の異変のお礼と言わんばかりに狙われたが、正邪に触れることなくその妖怪達はすぐに地面に倒れ伏せる。動揺が妖怪達に広がる……ケタケタと笑う正邪を見て驚愕する……のではなく、その傍らにいる青髪のロングヘアの青年に目を奪われている。

 

 

 「ケッケッケ!バカな奴らだ!この鬼人正邪様を捕まえようとするなんてバカだぜバカ!ば~か!!」

 

 

 見下すような視線を浴びせ煽りに煽る正邪を睨みつける妖怪達、その視線にビビったのか青年の影に隠れて身を守る。それでも相手を煽ることだけは欠かせない度胸は大したものだ。妖怪達は今にもそのウザったい顔を捻りつぶしてやりたいと思っていた。しかし手が出せない……圧倒的な強さを保有する青年を前に尻込みするしかない。

 

 

 「お、おまえは一体……何者なんだ!?」

 

 

 一匹の妖怪が呟いた。

 

 

 「私は比那名居天子、ただの天人くずれだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……っとは言ったものの……これじゃ私達が悪役です。本当にすみません妖怪さん達……

 

 

 天子は正邪を守っていた。襲い来る妖怪達をバッサバッサとなぎ倒していき、山盛りに重なった妖怪達がそこらに転がっている。勿論殺さずに気絶させているだけなのだが、悪いのは全部こっち側であることを忘れてはならない。

 

 

 「バカ!アホ!悔しかったらここまで来てみろよ?おっ?来れないのか?へなちょこどもよ!」

 

 「な、なんだと!?」

 

 「言いたい放題いいやがって!!」

 

 「ぶっつぶしてやる!!」

 

 

 妖怪達は顔を真っ赤にして怒りを表す。だが、襲ってこない……天子が前に立ちはだかり壁となっている限り思うように手が出せないでいる。そんな状況だからこそ正邪は煽るのを止めない。

 

 

 「まぁ、お前らなんて私一人でも問題ないがどうしてもこいつが私の役に立ちたいと言っているし、ここは手柄を譲ってやるしかないよな。いや~仕方ないことながら、私でも()()で倒せるへなちょこ妖怪共の相手をさせられてしまうなんて天子の奴も可哀想になぁ♪」

 

 

 こらこらやめろ。本当ならば私も向こう(追う)側なんだけど正邪を守るって誓ったし仕方ないことなんだけど……私を壁にして挑発しないでよ。すんごい睨まれているんだから……正直怖い……

 

 

 手配書が出回り正邪は指名手配されることとなった。妖怪達は気楽に考えていた。

 『たった一人の弱小妖怪を捕まえるだけで八雲紫に恩を売ることができ、報酬まで手に入れることができる』

 

 

 そう思っていた。しかし現実は異なり正邪には強い味方がいた。

 

 

 比那名居天子……知る者は知っている。鬼の伊吹萃香、凶悪な花妖怪の風見幽香に勝利した強者……それが目の前にいる。知らぬ者はこの場で知る、天子の強さはこの場にいる妖怪全員でかかっても軽くひねりつぶせるだろうと言うことを……

 

 

 「ど、どうしよう……蛮奇ちゃん、影狼ちゃん私達じゃ勝てないわよ!」

 

 

 おっ!?あれは……草の根ネットワークの皆さんじゃないですか!

 

 

 天子は聞きなれた名前が聞こえた方を見るとそこには大きなタライに浸かる人魚姫、そしてタライを乗せた台車を押しているのはオオカミ女、その隣にはフヨフヨ浮かぶ無数の顔が浮かんでいた。

 

 

 「天邪鬼を目の前にして……それにしてもあれは誰?あの天邪鬼の仲間みたいだけど……それにしても強すぎるね。姫と蛮奇と同時に相手しても勝てる未来が見えない……それにカッコイイ♪

 

 「えっ?何か言った影狼ちゃん?」

 

 「う、ううん!なんでもないよ姫!」

 

 

 やっぱり草の根ネットワークの3人組だ。ここで会えるとは……状況が状況なだけに、もっと違う形で会いたかったなぁ……

 

 

 天子は残念に思う。今の状況は敵対関係にあり、気軽に話しかけることすらできない。彼女達までこっち側に巻き込んでしまうことはしたくないからである。

 その3人組とは……

 

 

 【わかさぎ姫

 深い青色に縦ロールの髪型をしており、耳の位置には人魚らしくひれのようなものがついている。服装は全体的に深緑色の和装で、下半身は魚の尾で正に人魚姫そのものの姿をしている。フリルの量は多めであり、肩紐とスカート裾全体に白いフリルがふんだんに盛られている。

 普段は歌を歌ったり、石を拾ったりして暮している大人しい妖怪であり、人間には敵対心を持たないおっとり系の淡水人魚である。

 

 

 【今泉影狼

 長いストレートの黒髪に狼の耳が生えており、手には長く鋭く赤い爪を伸ばしている。服は赤・白・黒からなる三色のドレスで、これは花札の「芒に月(すすきにつき)」という札と同じデザインになっている。

 種族は狼女だが落ち着いた性格の持ち主であり、狼に変身した状態であっても冷静さを失うようはことはない。満月の夜は毛深くなるのを気にしており、肌を覆い隠してひっそりと暮らしている妖怪である。

 

 

 【赤蛮奇

 赤いマントを身に着けており、そのマフラーのような部分で口が隠れている事が多い。妖怪とバレないように首の切れ目を隠していると思われる。髪の色は赤で、リボンの色は青。リボンと黒い服には周りに赤い刺繍がついている。赤いミニスカートと黒いブーツを履いており、ブーツにも赤い刺繍もしくは紐のようなものがついている。

 ろくろ首でありながら、飛頭蛮としての性質も含んでおり普段は人里で人間に紛れ、ひっそりと生活している。

 

 

 人魚姫であるわかさぎ姫、狼女の影狼、そして()()()()()()()の蛮奇っき、こうして3人と会えるとは感激です♪蛮奇っきが一緒ってことは二次創作の草の根ネットワークのようね。原作では蛮奇っきが草の根ネットワークの一員とは名義されていないからね。でも仲が良さそうで何よりです。

 フヨフヨ浮かんでいるのは蛮奇っきのゆっくり顔だね。こうして見るとただのゆっくりにしか見えない……ゆっくりとは何かって?伝説の生き物だよ。

 さて、それは置いておいて……草の根ネットワークの皆がここに居ると言うことは正邪が指名手配されていることは確実になった。しかし妖怪達の様子から推測するに私が正邪と共に居ることは知らなかったみたいだけど何故だろうか?紫さんならてっきり私も指名手配されるかと思ったんだが……?

 

 

 ふっと考え事した。それを絶好の機会だと思ったのか一匹の妖怪が天子に襲い掛かる……

 

 

 「くらえぇあああああああ!!!」

 

 

 大きな爪を振りかざすが容易に緋想の剣に防がれそのまま押し返される。バランスを崩した妖怪に腹パンをくらわせると白目を向いて意識を手放した。

 

 

 ちゃんと手加減しているわよ。それにしても弱いわね……いや、私が強くなり過ぎたのか張り合いがない。こんなことを思うのは戦闘狂(バトルジャンキー)あいつ(天子)のせいだろうか?面白味がないとも感じ取れるのは毒されている証拠ね。脳内会議に参加した時は文句を言ってやろう。

 

 

 「ちくしょう!なんだよあいつ!あんな奴は手配書に載っていなかっただろ!どうなってんだよ!?」

 

 「し、しらねぇよ!」

 

 「あいつは放っておけって!()()天邪鬼さえ捕らえればいいだけのことだ!」

 

 「そ、そうだな。大して力のない()()妖怪だけ相手にすればいいだけのことだしな!」

 

 

 この妖怪達はバカなの?声に出したんじゃ私達にも聞こえるって……それじゃすぐに対策を練られてしまうのがオチなのに……ある程度相手したら正邪と一緒に適当に逃げましょう。これじゃ日が暮れちゃう……

 

 

 「正邪、少し下がっていてくれ……正邪?」

 

 

 天子は正邪を下がらせようとするが、正邪の手が天子の服を握って離さない。それも強く握りしめていた。怯えているのか?そうではない……不安なのか?そうでもなかった。

 

 

 「……()()……()()……!

 

 

 悔しさと憎しみに汚れきっていた目があった。それは永遠亭で天子が見たものと同じものだった。牙を剥き出しにし、妖怪達を睨む正邪は今にも飛び出す勢いだった。

 

 

 「な、なんだ天邪鬼?隠れるしか能のない弱虫野郎が俺様を睨みつけやがって……!」

 

 

 妖怪の一言がきっかけで正邪は飛び出した……が誰かが正邪の腕を掴み引き寄せる。ジタバタと暴れる正邪だが、一発の手刀が正邪の意識を奪う……その光景を見ていた妖怪達は何事かと唖然とする。正邪を気絶させたのは仲間であるはずの天子だったからだ。

 

 

 「すまない正邪……今は寝ていてくれ」

 

 

 事情が把握できない妖怪達は突如のことでどうしたらいいのかわからずに固まってしまう。

 

 

 「急用を思い出した。皆には悪いが私達は失礼させてもらう」

 

 

 正邪を担ぎ森の中へと走り去る天子の後姿を見送るしかできなかった。ようやく我に返った妖怪達はその後を追うが天子達を見失ってしまうだろう。残されたわかさぎ姫らは一体何が起こったのかわからずに見ているしかできなかった。

 

 

 「一体何がどうなっているの?」

 

 「さ、さぁ……蛮奇は何が起こったかわかった?」

 

 「いや……でも天邪鬼の様子が変だった。それ以外はわからない……」

 

 「そっか……それにしてもさっきの青髪の男性カッコよかったわぁ♪」

 

 

 惚けた顔をした影狼は天子に見惚れていたようだった。フリフリと尻尾が左右に機嫌良さそうに振れている。

 

 

 「天子……そう言えば人里でそんな名前の天人が度々天界からやって来るって聞いた」

 

 

 蛮奇はボソリと呟いた。彼女は人里で隠れながら生活しているその中でよく耳にした名前だった。噂も色々と聞いており、それを思い出したようだった。天狗の新聞には興味を持たず、詮索することもしない彼女の性格から天子のことは話で聞いた程度しか知らなかった。しかし、噂はどれも悪い噂はない。寧ろ印象を良くする噂話ばかりだった。そんな人物が何故天邪鬼と一緒にいるのか不思議に思っていた。

 

 

 「人里での噂は良好……とても悪い人物に見えない」

 

 「蛮奇ちゃんがそういうなら悪い方ではないのかもしれないけど……」

 

 「どうしてあの天邪鬼と一緒に?」

 

 

 わかさぎ姫と影狼は頭を捻らす。異変が起きて、小槌の魔力に影響され暴れてしまう。そこを通りかかった霊夢らによって退治された経緯がある。その異変の黒幕である正邪ことを知った3人はお返しと言わんばかりに捕らえて八雲紫に突き出そうと考えていた。ハッキリ言って正邪は悪者である。天子は正邪と正反対の噂しか聞かず、人里でも人気者である。そんな人物が何故なんだと考えても二人にはわからない。縁も薄い彼女達は天子のことをまるで知らないのだから。

 

 

 「私達が考えても無駄だね。姫、蛮奇は逃げた天邪鬼を追う?」

 

 

 影狼は二人に問いかけるが首を横に振った。

 

 

 「私もう疲れちゃったわ。地上にいるとその内干乾びてチルノちゃんを心配させちゃうわ」

 

 「……私ももういい、天邪鬼一人ならまだしも噂の天人が一緒ならどうしようもないもの」

 

 「そうだよね、悔しいけど今は我慢するしかないか……でも次会った時は必ず仕返ししてやるから!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ここまで来れば安心か……」

 

 

 天子は無事逃げきることができた。誰も天子のスピードについてこれる者などいなかった。

 

 

 なんとか撒くことはできたわね。けど問題が……

 

 

 背中に担いでいる正邪をそっと下ろす。気を失って眠っているその顔は、先ほどの憎しみがこもった瞳を感じさせないものだった。だが、天子は安心できなかった。またしても正邪は暴走しかけ、天子が止めなければそのまま妖怪達に襲い掛かっていただろう。天子は何故正邪が自分を見失う原因を考えていた。

 

 

 正邪がこうなった原因はなんだろう?思い出せ私……原因さえわかれば対処の仕様が出てくるはず……!何だ?正邪はあの妖怪達に対して襲い掛かろうとしていた。何がきっかけだ?そもそも何があった?草の根ネットワークの皆を見つけて私が隙を見せたと思った妖怪が襲って来た後に原因はあるはず。それまでは正邪は相手を煽っていたしおかしな様子は見られなかった。原因はあの妖怪達か?

 

 

 考え込んでいた時に何者かが向かってくる気配を感じ取った。すぐさま木陰に隠れて様子を窺っているとやってきたのは見知った顔だった。

 

 

 「ちょっと文!こっちで本当にあっているの?」

 

 「なんで私まで駆り出されないといけないのですか……」

 

 

 あれははたてと椛、それに文までいる。正邪を探している様子ね……

 

 

 「ぶつくさ言ってないで上司の命令に従いなさい椛!これは大スクープなんですよ!」

 

 「何が大スクープなんですか、お尋ね者を捕まえて八雲紫から報酬でも貰おうって算段では?」

 

 「何を言うんですか!私は純粋に平和を願って捕まえるだけです。そんで根掘り葉掘りと赤裸々な過去までインタビューするだけですよ!」

 

 「それが目的なんじゃないの……でも文のいう通りこの天邪鬼は捕まえた方がいいって大天狗のおやじも言っていたしね」

 

 「はたてさん、大天狗様のことをおやじ呼ばわりはちょっと……」

 

 「椛も無理に庇うことないわよ。もうあのおやじったら私のスカートをジロジロ見ているのまるわかりなんだから!もう気持ち悪い!!椛も生肩をジッと見られていたでしょ?一発殴ってやっても罰は当たらないわよ」

 

 「そ、それはそうですが……」

 

 「二人共無駄話はそれぐらいにしましょう。大天狗様の気持ち悪さなんて今に始まったことではないでしょう?私が売った椛の脇チラ写真を隠れて眺めているぐらいですから……」

 

 「「えっ」」

 

 「あっ」

 

 

 長い沈黙が生まれる……だが、次第に椛の顔が真っ赤に燃え上がり背負っていた剣を引き抜く。

 

 

 「文さん……今度という今度は許しませんよ!!」

 

 「ま、まって椛!あの時はお金がなかったから仕方なく売ったまでで後で回収しようとして忘れていただけでして……!」

 

 「言い訳無用!羽をむしり取って焼き鳥にしてあげますよ!!」

 

 「ひぃいいい!はたて助けて!!」

 

 「引くわーマジで」

 

 「はたてぇええええええええ!!?」

 

 「かくごぉおおおおおおおお!!!」

 

 「あややややややややややや!!?」

 

 

 猛スピードで逃げる文を追いかける椛とはたてはその場を去って行った。

 

 

 文……自業自得ね。椛も大変ね、今度差し入れでも持って行ってあげよう。それにしても文たちも動いているということは……これってつまり【弾幕アマノジャク】が始まっているってことよね。そうなると参加したメンバーが追手として幻想郷中駆けまわっているってことか……難易度が高いステルスゲー(ステルスゲーム)になりそうね。段ボールのおじさんぐらいに隠密性が必要かしら?私一人ならまだしも正邪を連れて隠れるのは中々難しいわね……どこか潜伏できるところはないかしら?

 

 

 ドンッ!

 

 

 ん?何の音かしら?

 

 

 その時に天子の耳に飛び込んで来たのは何かを叩くような音……まるで太鼓のような重い響きを感じさせる音であった。

 

 

 「……気になるな」

 

 

 眠っている正邪をチラリと確認する。未だに目を覚まさない正邪を放っておくのはどうかと思ったが、音の正体が気になった。連れていくよりもこの場に残していた方が危険は少ないと判断した天子は音の正体を確認するために走り去っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 確かこの辺り……あれは……こころちゃんに小傘と雷鼓さん達か!

 

 

 音の正体を確認するべく草木から顔を覗かせる天子が見たものはこころ達に雷鼓達が演奏を聞かせている光景だった。先ほどの音はやはり雷鼓が太鼓を叩く音であった。

 

 

 「いい音だろ?この太鼓の音は?」

 

 「うん、わちき音楽のことはよくわからないけど心に響いた感じがしたよ!」

 

 「そうそう……(こころ)だけに」

 

 「……ね、ねぇこころ……それ自分で言っていて恥ずかしくならない?」

 

 「……ごめん」

 

 

 シュンっと能面で顔を隠してしまうこころに笑いが起きる。雷鼓達も釣られて笑ってしまい笑われてしまったこころは頬をぷくっと風船のように膨らませていた。

 

 

 「ごめんごめん悪かったよ。お詫びに今度一曲聞かせてあげるからさ」

 

 「……今はダメなの?」

 

 

 こころがそう言うと残念そうな顔をする雷鼓。

 

 

 「ごめんな、この後私達は会いに行きたい奴がいるんだよ」

 

 「そっ、鬼人正邪って言う奴にね。ねぇ、弁々姉さん」

 

 「そうね八橋、ちょっとその方に用ができちゃったの」

 

 「ムムム……それならば仕方ないな」

 

 「悪いね、そう言えばもう一人のおチビちゃんはどこ行ったんだい?姿が見えないが……?」

 

 「こいしは自由だからわちき達もどこかに行ったかまでは……」

 

 「そうかい、それじゃもう一人のおチビちゃんにもよろしく伝えといてね」

 

 「おお、またなー」

 

 

 雷鼓達はこころ達と別れて去って行った。報酬目的なのか、はたまた異変の時のお礼返しなのかはわからないが正邪を探しに行ったことは間違いない。そんなこともいざ知らずにいるこころと小傘はのんびりと次何しようかと相談していた。

 

 

 雷鼓さん達も正邪を探しているみたいね……見つかるのは時間の問題ね。草の根ネットワークの皆には私が正邪についていることがバレたし、紫さんも知っている。私のことを伝えていないのかは不思議に思うが好都合ね。報酬に興味なさそうな幽香さんや華扇さんが参加しないだけで喜ばしい。私が居るなんて知ったら幽香さんは興味を持っちゃうし、華扇さんならば私が道を踏み外したのかと勘違いして正そうとやってくるかもしれない。萃香や妖夢に神子と妹紅は原作でも追手として登場しているから正邪を探しているんだろうけど……衣玖はどうしているかな?巻き込むわけにはいかないと勝手に出てきたけれどやっぱり心配しているよね……衣玖にも立場があるだろうし天界の事情もある。どちらにせよ今は何もできない。今はただ正邪の精神を安定させることだけに集中しよう。

 

 

 音の正体も確認でき、情報を手に入れた天子は正邪の元へと帰ろうと振り返る。するとそこには二つの緑色の瞳があった。ドキリと心臓が跳ね上がるが堪えて平静を保つ……ゆっくりと顔を離すと瞳の主の顔が露わになる。

 

 

 「こいし!?」

 

 「どう?驚いたお兄さん?」

 

 

 驚いたってどころじゃないわよ!!って言いたい……マジで口から心臓が飛び出るぐらいびっくりしました。振り返ればそこには目があったなんてシャレにならないわよ……こいしは悪戯好きね。まぁ可愛いから許すけどね!可愛いは正義ハッキリわかんだね!!

 

 

 「何しているのお兄さん?」

 

 「ああ、ちょっとな……」

 

 

 ううん……これは言っていいものだろうか?こころちゃんと小傘は正邪が指名手配されているなんて知らない様子だけど、正邪が居る場所を他人に知られるのはあまり良くない。下手に情報が流れれば見つかってしまうだろうし……

 

 

 「おーい!二人ともお兄さんがここにいるよー!」

 

 

 草むらから飛び出してこころと小傘に合図するこいしは自由奔放だなぁと思うしかない天子だった。折角隠れていたのに台無しだ。

 

 

 「天子こんなところで遊んでいたのかー?」

 

 「こいしもこんなところにいたの……どうも天子さん、お元気そうで」

 

 「ああ、こころちゃんも小傘も元気そうだな。ところでこころちゃん、私は遊んでいるわけではないぞ」

 

 「そーなのかー」

 

 

 ぐはっ!こころちゃんVersionの「そーなのかー」は不意打ち過ぎてきゃわいすぎる♪マジ萌えるわ♪きっとこいしに教えてもらったんだな……ナイスだこいし!よくやった!!

 

 

 天子の心のアルバムに一枚の光景が保存された。心の中でガッツポーズをする姿は誰にも見られることはない。

 

 

 「それでお兄さんは木陰で隠れて何していたの?まさか盗撮?」

 

 

 違うよこいし!そんなことしないってば!こころちゃんのそーなのかーは心のアルバムに保存したけど、盗撮なんかしません!するのは文だけです!

 

 

 「そんなことはしない。通りがかったら音が聞こえてきたな、音の正体が気になって見ていたのだ」

 

 「そうだったんですね。わちき達は雷鼓さん達と友達になって色々とお話していたところです」

 

 「ツクモンジャーのメンバーが増えたんだよ!」

 

 

 そうだったのか……こいしツクモンジャーってなに?何とか戦隊シリーズかな?考えられるのは付喪神戦隊ツクモンジャーってところだけど……こいしは付喪神じゃないよね?それは気にしちゃ負けか。

 

 

 天子は考えるのをやめた。当の本人たちが良ければそれでいいと投げ出した。

 

 

 「天子、今暇か?私達と共に遊ぼう」

 

 

 こころが天子の服を引っ張る。何もやることがなくなったこころは暇で仕方ないのだ。

 

 

 「遊んでくれないと返さないぞ」

 

 

 ぎゅっと力を込めて逃がさないようにする。こいしも便乗してこころとは反対側の服を引っ張り周りを固めてくる。小傘はただ「あはは……」と苦笑いするしかない。

 

 

 困った……何が何でも返さないという意思が伝わって来るぞ……こころちゃんは中身はまだ子供だから仕方ないけど今は正邪のことがあるしな……こころちゃん達なら本当のことを伝えてもいいか。

 

 

 天子は意を決して本当のことを話すことにした。

 

 

 「こころちゃん、こいし、小傘、聞いてほしいことがある」

 

 

 真剣な表情で語り掛ける天子に顔を見合わせる三人は大人しく聞くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「そんなことがあったのか……よくやったぞ天子」

 

 

 天子の頭を撫でるこころは何故か誇らしげだ。

 

 

 こころちゃんに褒められるとは……悪くないわね♪こういう癒しポイントもありって思えるわ。さて、三人には本当のことを打ち明けたけどこの後どうしようか?遊ぶまで帰らせてくれないことはなくなったが、それでも正邪を匿える場所は見つかっていない。正邪の精神が不安定な要素を取り除く方法も見つかってないときた……問題がありすぎてどうしたものか……

 

 

 「お姉ちゃんに頼ってみたら?」

 

 

 何気ない一言が天子の体を駆け巡る。その何気ない一言を放ったのはこいしだった。こいしの姉と言えば覚妖怪の古明地さとり……以前地底にお邪魔した時に天子の裏事情を知っている人物で素で話し合える数少ない相手……そして何よりも彼女の能力は【心を読む程度の能力】だ。それで正邪の心を覗いて原因を掴めれば……!

 

 

 「そうか!その手があったか!」

 

 「お兄さんどうしたの?」

 

 「こいし、すまないが地底へ行きたい!連れて行ってくれるか!?」

 

 「うん、いいよ」

 

 「助かる!こころちゃん、小傘、悪いがこいしを借りていくぞ」

 

 「わかった。何か知らないが気をつけろよー」

 

 「あっ、わ、わかりました」

 

 

 天子はこいしの手を握って正邪の元へと走り出した。古明地さとりという希望を見つけ、天子は再び地底へと目指すのであった。

 

 

 

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